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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第7話

前話のあらすじ:太一、引き続き系統外魔法について語る

「貰ったぁ!」


「ちっ、アースウォール!」


演習場のあちこちに響く爆発音や金属音―――魔法大学の演習場では現在、太一が所属するクラスの生徒が参加する形でバトルロイヤル形式の演習が行われていた。


現在演習に参加している多くの生徒は演習を見ている教師陣に自身の魔法をアピールすべく、他の生徒とチームを組むなどして少しでも勝ち残る可能性を高めた上で、自身の得意とする魔法を相手にぶつけあっていたのだが...


「おうおう、どこもかしこも派手にやってんねぇ...まあ、俺はもうしばらく様子を見させてもらうけどな」


クラスの生徒の一人であり、そしてこの演習に参加している太一はというと、多くのクラスメイトとは異なり、演習場に設置された建物に姿を隠し、周囲の様子を観察していた。


「今回が実戦形式としては初めての演習ってこともあって、多くの相手を倒して目立ちたい...じゃなかった、トップに立ちたいって気持ちはわからんでもないが、最初から張り切りすぎてると、後半確実にばてるってことを想定してないのかね...演習前の説明の意味を理解していればそういったところを含めての演習ってのはわかると思うんだが」


そういいながら太一は、演習前に担当教官から説明のあった内容を思い出していた―――




「よし、全員そろっているな。それじゃあ午後の演習の説明を始めるぞ」


魔法大学の演習場に到着すると、太一たちはすぐに演習場に隣接する建屋に移動し、今回の演習を担当する教師からフィールド演習に関する説明を受けることとなった。


演習場(ここ)に移動したことから...というか、シラバスをしっかり読んでいればわかることではあるんだが、フィールド演習については今回から少しづつ、実践形式の演習を行っていく」


その発言を受けて室内のあちこちから、「よっしゃ」「待ってました」といった喜びの声が上がるとともに、一部生徒からは「これでこれまでの成績を挽回できる」といった実戦形式の演習に対する期待の声も上がった。


「騒ぎたくなる気持ちも分かるが、まだ俺の説明は終わってないからお前らもう少し静かにしろ。じゃないと騒いでいないやつも含めて全員一律で点数下げるぞ」


その脅し(注意)が効いたのか、ざわついていた室内が一気に静まり返った


「ちなみに今日の演習は、もしかしたら先輩に聞いたりして、内容を知っている者も中にはいるかもしれないが、隣のフィールドを使ったバトルロイヤル形式の演習となる。バトルロイヤルということからも分かる通り、今回は生き残り形式の演習になるわけだが、『撃墜された』かどうかの判定は、今から配布するこのバッジを使って行う」


皆に見えるよう、中央に青色の宝石が埋め込まれた金色のバッジを教師が自身の胸の前に掲げると、部屋の後ろに座っていた太一たちより年上の青年たちが生徒一人一人にバッジを配布し始めた。


「このバッジには防御用の魔法式と体に受けたダメージを計測する魔法式が組み込まれているんだが、一定以上のダメージを受けると真ん中に埋め込まれた宝石の色が青から赤に変わると同時にブザーが鳴るようになっている...と、口だけで説明しても分からないところもあるだろうから、その様子を記録したこの映像を見てほしい―――まあ、こんな感じで一定以上の攻撃を受けると、バッジの宝石の色が変わってブザーが鳴るから、今回の演習はこの状態になったことをもって『撃墜された』と判定する。ここまでの説明でわからないことや聞きたいことがある者はいるか?」


「フィールドの大きさはどのくらいですかー?」


「隣のフィールドの大きさは概ね500メートル四方だが、ある程度の時間が経過したところで対象フィールドを200メートル四方に縮小する。縮小する座標は放送で指示するが、フィールドが縮小された後に対象フィールドの外にいた場合は、バッジが赤になっていなかったとしても撃墜判定になるから注意してほしい」


「はーい」


「ブザーが鳴っても攻撃をやめなかった場合や、バッジが赤になった相手に攻撃した場合はどう判定するんですか?」


「お互いの攻撃がほぼ同時だったり、攻撃しようとしてきたときに第三者の攻撃が先に当たったりといった、『自分の攻撃を止められなかった場合』は例外扱いになるが、『故意に攻撃を行った』と判断されれば、どれだけの成績を残していたとしてもその者の当日の成績は0点にする。ちなみに演習の様子は常時モニタリングしているから、その攻撃が故意だったかは大体判断できる」


「え、あちこちにカメラが仕掛けられてるってことですか?」


「それを教えると、モニターしていないところで何かやろうとする(やつ)が出てくる可能性があるから、どうモニターしているかは申し訳ないが、ここでは教えてやることはできないことになっている」


「攻撃系の魔法が苦手な場合はどうすればいいんですか?」


「今回の演習はバトルロイヤル形式であっても勝ち残りではないから、やり方はいろいろあると思う。ヒントを一つ挙げるとしたら、今回の演習の成績は『最後まで残っているか』だけではなく、『どう戦ったか』『魔法をどのように使ったか(・・・・・・・・・)』といったことも踏まえた上で点数をつける、ってことだな。そこからは自身で考えるように」


「ええっと、わかりました...」


「他にはないか?特に無ければこれから演習に入りたいと思うが、今年は去年までとは違ってグループを2つに分けて実施したいと思っている。去年までの全員参加型の演習だと、密集状況が高いからか、開始数分で撃墜判定されて、技能を十分に測定できなかったということがたまに発生していたから、今回からそういった事態をできるだけ避けるためにも人数を半分に絞って行うことになった。ちなみにグループ分けはこれからくじで決めるが、第1グループが演習をしている間、第2グループはこの部屋で第1グループの演習の様子を観察してほしい。第2グループが演習中の時はその逆だな。じゃあ、前から順にくじを引いていってくれ」




「『どう戦うのか』ってのは、前半の演習の様子を見て、前衛と後衛で組むなり、拠点を構えて周囲にトラップを仕掛けるなり、色々とやってるみたいだけど、『この演習をどうやってあの場所からモニターしているか』ってところはさすがに難しいかったみたいだな...主要なポイントはカメラでモニタリングしているとしてもそれには限界があるし、魔法が当たって故障するリスクだってある―――とすれば、それとは別の方法でこの演習全体をモニターしている...で、合ってますかね、先輩?」


そう言いながら太一は、自らが身を隠している建物の一角に視線を移した。


「―――モニターの方法を推測するだけならともかく、こちらが隠れている場所まで見破るなんて...いや、あの人が事前に注意していたことを考えれば、さすが期待のルーキーといったところかな」


姿を隠すことのできるものが何もなかったはずの場所から声が聞こえ、空間が突如として歪み始める。その歪みは数秒で収まったのだが、それとともに姿を現したのは、太一が先ほど説明を受けていた教室内に同席していた一人の青年であった。


遅くなってすみません、第7話更新です。


第8話は今週末を目標にアップしたい(校正中)と思いますので、これからもよろしくお願いします。

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