第6話
前話のあらすじ:太一、系統外魔法について語る
「私たちが今、こうやって使っている魔法具にはそういった歴史があったんですね」
「魔法具が生まれた経緯はわかったが、魔法と魔導の違いに魔法具がどう関わって...ああ、そういうことか」
「石動君、何かわかったんですか?」
「恐らく、詠唱等を使って発動させる魔法というものが本当の魔法であって、一部やほぼ全てが術式化されていて、魔法具を使って発動する、俺たちが今使っている魔法というのは、厳密には魔法ではなく、魔導に該当する...ということなんだろう」
「正解。まあ、こいつはもう暫くしたら授業で習うんじゃないかな...たぶん」
「たぶんって...なんかこう、ものすごく曖昧ですね」
「『今の魔法は魔法か魔導か』っていう論争は以前から学者間で行われているんだが、『今の魔法と当時の魔法では発動プロセスが異なるのだから魔導である』と主張する魔導派の学者たちと、『詠唱であろうと魔法具であろうと発動される魔法に大きな違いはないのであれば魔法に該当する』と主張する魔法派の学者たちとの間で意見が対立して、結局どうするのかっていう結論が出てないらしいからな」
「な、なるほど...」
「あまりにも意見がまとまらないもんだから最近、一部の学者から『古代魔法と現代魔法と区分すればいい』といった意見も出始めて、三つ巴の争いに発展しているそうな」
「もう、何が何だかわからない状況ですね」
「まあ、それぞれが言わんとすることもわからんわけではないが、議論するならもう少し別の部分に時間を割いてほしいと、俺は思っている」
「話を聞く限り、学者の中で争い続けているのは『表現をどうするか』ということでしかないから、もう少し本質的な内容を議論すべきということには賛成だな...ちなみに、魔法と魔導の2つに分類するとした場合、さっきの話に出てきた『魔法術式が組み込まれていない杖を使った魔法』はどっちに分類されるんだ?」
「魔法を術式化しているわけではないから、俺は『魔法』に分類されると思っているが、もちろんこれに対しても反対する主張がある」
「『魔法を発動する際に使用するもの』といった見方をすれば、当時の杖も魔法具になるのだから、魔法ではなく魔導である...みたいな感じでしょうか」
「まさにその通り。どっちの話もとにかく、勉強する側からしたら傍迷惑でしかない」
「石動君も言ってましたが、大事なのはそこじゃないと思うので、早く決めちゃったほうがいいと思います。そうすると系統外魔法は、魔法にも魔導にも分類されない『それ以外の魔法』ってことになるのかな?」
「いや、系統外魔法と言われる魔法も、俺たちが使う魔法のように、『魔法』と『魔導』にさらに細分化されるんじゃないかな」
「二人とも半分正解。順一郎の言う通り、系統外魔法も『魔法』と『魔導』に分類することができるんだが、そもそもとして『系統外魔法』に分類される魔法がいくつあるのか、そして、さらにそれを魔法と魔導に分類できるの魔法いくつあるのかはよくわかってない。だから一緒くたに『系統外魔法』と言われているっぽいんだけどな」
「今わかっている範囲では、系統外魔法はいくつあるんですか?」
「過去の調べの中で、魔法の使用も含めて存在が確認されている系統外魔法は3つだな。1つ目が『無属性魔法』...属性が付与されていない攻撃魔法・防御魔法ってのはだいたいこれに該当する。2つ目が『召喚魔法』、こいつはその名の通り、別の場所にあるものを手元に召喚する魔法なんだが、術者の中には『モノを召喚する』のではなくて、『自分をそのモノがある場所に逆召喚する』といった高度な技が使えるらしい。そして3つ目が精霊を介して魔法を発動するという『精霊魔法』。ただ、精霊魔法はここ最近使われたという記録が残ってなくて、術者が潰えてしまったのではないかといわれているから、現存する系統外魔法ということなら2つになるんだろうな」
「その3つの中でさらに魔法と魔導に分類できるものはあるんですか?」
「とりあえず、無属性魔法と召喚魔法の2つは魔法と魔導に分類できるってことはわかってるが、精霊魔法は使える術者がそもそも少なかった上に、現在はその術者がいないといわれているから、魔法と魔導に分類できるのかは分からん...ああ、そういえば、精霊魔法以上にその存在が怪しいといわれている系統外魔法に『神格魔法』っていうのがあったな」
「神格魔法...?」
「神格魔法は一部文献にその名前が記載されていたことからその存在が明らかになったらしいんだが、わかっているのは名前のみで、単語以上の情報は今のところ見つかってないから、どんな魔法かは全くわからん」
「一概に系統外魔法と言っても、その中では結構複雑なんですね」
「系統外でない魔法も、もう少し詳しく調べていけば、思った以上に複雑だったりもするらしいぞ...っと、そろそろ到着しそうだな。系統外魔法はここらへんでいったん終わりで大丈夫か?」
「うん、いろいろ教えてくれてありがとうね」
「今回の話は俺も参考になったが、クラス委員長としてはこういった話に力を入れるのと同じくらい、通常の授業もさぼらずまじめに受けてくれほしいところだな」
「それはそれ、これはこれだ」
「石動君の言う通り、それもこれもしっかりと、です」
車内でそんなやり取りが繰り広げられる中、太一たちを乗せたバスは午後のフィールド演習先である魔法大学の演習場へと到着するのであった。
遅くなりましたが第6話、更新しました。
第7話も順次アップしていくので、これからもよろしくお願いします。