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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第51話

前話のあらすじ:太一、一心と聡祐に試作型魔法具を授ける


「アームドパックtypeD...?ぱっと見、ただのシールドにしか見えねぇけどな」


「天宮、お前は本当にわかってないな。太一がそんな単純なものを作るわけないだろ」


太一が聡祐に差し出した魔法具を見ながらそう言う黎斗と肇であったが、黎斗たちとともに近くで魔法具をじっと観察していた順一郎はシールドの裏側に何かが装着されていることに気づいた。


「太一、そのシールドの裏側...取っ手のあたりに何かがついているみたいだけど...それは一体なんだ?」


「いいところに気づいたな順一郎。これはシールドを保持するためのものだ。そしてこのユニット(・・・・・・)がこの魔法具最大の特徴だ」


「俺からしたらただの出っ張りにしか見えねぇんだが、それがどうしてシールドを保持するのに活かされるんだ?」


太一の回答に首をかしげる黎斗だったが、順一郎は太一の口から発せられた単語を呟きながら今回出されたシールドがどのような魔法具について考えていた。


「シールド、保持、ユニット...まさか、そういうことか」


「石動、何かわかったのか?」


何かに気づいたような反応をした順一郎に黎斗が質問する。


「太一が開発したその魔法具、恐らくはシールドを手に持たないで使えるようにする魔法具だ」


「シールドを持たなくても使える?あー...ロボットアニメとかで偶に出てくる、シールドを手じゃなくて肩に直接装着するあれか。でもそういうのって大体、シールドを装着するアームみたいなのがついてるはずだろ?シールド( そ れ )の取っ手側についてるのはアームじゃなくて箱みたいなやつだぞ?」


「推測の域は出ないんだけど、恐らくその箱のようなものがアームそのものだったり、その箱の中にアームが隠されているんだろう」


「アーム?これがか?」


「順一郎の言う通りだ。今回シールドにつけたこの箱のようなものは、背中に装着...背負う基部とシールドを保持するためのアームの2つで構成されているんだ」


そう言って太一はシールドの取っ手側を順一郎や聡祐たちに方へと向けた。


「...たしかに、シールドに取り付けられたものをよく見てみると、切れ目のようなものが入っていて、切れ目の内側にはベルトか何かを通す部分があるね。さっきの説明を踏まえると、内側が背負うための基部、そしてその基部を囲うように巻かれているものがシールドを保持するアームということになるのか」


「ああ、その通りだ」


「へぇー...ってことは、それ使えば手を塞がずに攻撃を防げるってことだよな?そんな便利なものがどうして普及してないんだ?そんなに便利なものだったら既にあってもおかしくないだろ」


「天宮、本当にお前はアホだな」


「あん?何だって?」


「これまで普及してこなかったってことは、その魔法具に何らかの欠陥や構造上の問題が存在していからだ。今回の魔法具について言えば、アーム...つまり腕が増えるってことになる。本来人にないはずの3つ目の腕(・・・・・)を自在に扱おうとするんだから、相当な技術が必要になるはずだ」


「アームの操作が大変だってのなら、アーム使わずにシールドを近くに浮かせておけばいいんじゃねぇのか?」


「常に浮かせておくってことは魔力も常時消費するってことだぞ。お前はシールド浮かせるためだけに魔力を使い続けられるのか?」


「...もったいねぇな。浮かせてるだけで魔力使われるんだったら、その分を攻撃に回した方がいいな」


「お前は防御ってものをもう少し考えたほうがいいが今回は飛ばすぞ。常時使用型の魔法において一番恐れなきゃいけないのは魔力切れのリスクだ。俺たちをはるかに凌ぐ魔力量を保有する魔法師だったら魔力切れ(そんなこと)を気にしなくていいんだろうが、それだけの人材は魔法協会の中を探してもほんの一握りにしかいないはずだ」


「そういった人材は魔法協会に限らず企業側も欲しているけど、そのニーズが解消されたなんてことは僕も聞いたことがないね。それに、ある程度は術式やシステムで制御したりになるとは思うけど、完全な自動化は難しいから、それなりの空間認識能力も必要になるだろうね」


「ジュンの説明にさらに補足を加えると、それだけ高度な魔法具だと間違いなく値段もそれなりの額になるから、一介の学生が持つなんてこともまず無理ね」


「俺としては結構いい線行ってると思ったんだけどなぁ...」


肇や順一郎達の意見を聞きながら、黎斗はうなった。


「お前が考えそうなことはだいたい、他の誰かが一度は考えたものが多いってことだ」


「でも、空中駆けるあの魔法は誰も考えてなかったじゃねぇか」


「あれはそういった魔法が(・・・・・・・・)存在すること(・・・・・・)が世間一般に知れ渡っていないからだ。空に浮く、空を飛ぶってのは誰もが一度は考えるだろうが、空を駆けるなんてことは普通、考えないだろ」


「ちょっと肇、その空を駆ける魔法って一体何よ。私にも教えなさい」


「天宮...お前のせいでめんどくさい奴が絡んできたじゃないか」


「いやいや、柳が絡んできたのって俺のせいじゃないだろ。それに紅川、柳がめんどくさくなった時の対処はお前がよく知ってるんだから、お前がやったほうが確実だろ?」


「ちょっと2人とも、誰がめんどくさい刀を振るうだけの脳筋女ですって?その間違った考えを正す必要があるから、ちょっとこっち来なさい」


「いや、めんどくさいってのは確かに言ったけど、脳筋とか一言も言って...「天宮、(こいつ)は何でもいいから適当に理由かこつけて、誰かを相手に全力で刀を振りたいだけだ」...いやもう、その話だけでめんどくせぇ奴だな」


「そして、一度こういう状態になったらもう、あいつが満足するまで止まないから、(あいつ)の実家でもこうならないように周りが注意払ったりしてるんだよ」


「...紅川、なんかその、悪かったな」


「謝罪は行動で示せ。とにかく今はアイツを止めるぞ」


「...だな」


そう言い残して肇と黎斗はリサの不満(フラストレーション)の解消に付き合うべくリサの後ろをついていった。




「周りにいた天宮や柳(うるさい奴ら)あっち行って(いなくなって)静かになったし、説明もペースアップできそうだな」


「...相変わらず厳しい一言だね」


「事実を言ったまでだろ?話を戻してこのシールドユニット、空中に浮かせておく必要はないんだが、アームを動かすのにエネルギーは要るし、攻撃が来る方向を感知しなきゃならないから、一定程度の空間認識能力も必要...ってのが一般論なんだが、そんな売れなさそうな( 使用者を選ぶ )装備なんて作っても意味ないから、こいつはちょっと手を加えてある」


「ねぇジュン。彼、今サラッとすごいこと言わなかった?」


「太一はそう言うところがあるからね。本当はこういったこと、あんまり慣れるべきじゃないんだけど、太一()だけは例外だと覚えたほうがいいよ」


「咲希さん、鎖藤君は普通(・・)というものさしで測ったらダメなんです。鎖藤君にとっての『普通』は、私たちからしたら大体のことは『異常』なんです」


「...2人がそこまで言うってことは相当ってことね。リサや茜の魔法具( 件 )で理解してたと思ってたけど、まだ上があるのね」


「恐らくですけど、私たちに見せてない...というよりも、見せられないようなものもあるんじゃないかなって思います」


「(...白崎の奴、相変わらず鋭いな)」


「ところで太一、その仕掛けっていうのは具体的にどういった対策をしているんだ?」


「大きくは2つだな。1つがアームの動力源として魔力バッテリーとコンデンサを搭載したこと。もう1つがアームを自動で動かすシステムを積んでみたことだ」


「...いやちょっと待ってくれ太一。アームを自動で動かすということはつまり、完全自動の防御システムを完成させたってことだ。さっきも言ったように防御システムの自動化どこの企業もまだ開発できていないものなのにそれを完成させたっていうのか?」


「順一郎、それは空中に浮かせたシールドを自動で制御するシステムだろ?これはアームを自動で動かすってだけだ。似たようなものだったら現に存在する」


「...鎖藤の言うように、動体センターを搭載した自動追尾型の監視カメラや産業用のロボットアームは既にあるから、そういった技術を応用すれば出来なくはない。ただ、中々思いつくものゃないし、制御システムも言うほど簡単じゃないはずだ」


これまで黙って聞いていた晶が太一の説明を聞いてそう質問する。


制御(それ)については今はまだ仮の条件を入れているだけで、細かいところはこれからだ。だから試作品なんだけどな」


「つまり、その細かい条件の洗い出しもかねての運用...ということだね。鎖藤、この魔法具の大よそのイメージは掴めた。ただ、試作品(・・・)というからには問題点...デメリットもあるんじゃないのか。特に、これだけの機能が入っているのならなおさらね」


「デメリットは3つ。1つはさっき少し話したように、動作条件のパラメーターが仮置き...つまり魔法の威力によっては反応しない可能性があること。2つ目は、味方の攻撃にも反応する可能性があるってこと。そして最後にシールドを展開すると重心がずれることだ」


「3つ目は慣れてしまえばなんとかなりそうだし、1つ目もシールドの内側にグリップをつけて手動で動かすとかすれば何とかなるだろうけど...問題は2つ目だね」


「北上もそう思うか...俺も一番の問題は2つ目だと思ってたんだ」


「えっ、どうして2つ目が問題になるんですか?今までの話を聞いていたら、味方の魔力を予め設定しておけば解決できそうですし、鎖藤君だったらそのあたりも普通に設定してしまいそうな気がするんですけど」


「問題はそこの予め設定する(・・・・・・)ってとこだ」


「どういうことですか?」


「白崎の言う通り、味方の魔力や魔力波長なりに反応しないよう、予め設定をしておけば、味方の攻撃に反応することはなくなるんだが、穿った見方をすればその味方が裏切って攻撃してきた場合はそれを防ぐことができないんだよ」


「そんなこと...」


「現にこの前の演習でも似たようなことが起きてただろ。そして北上はその関係者...いや、関与者(・・・)だった」


「あっ...」


太一の発言から、この前の演習で起きたことを彩音は思い出した。


「主体的に裏切ったのか、そうせざるを得ない状況になったのかは関係なく、意図せず味方から攻撃される可能性ってのは0じゃないんだ。だからそのための対策も必要になるってことだ」


「...」


「例えばシールドの内側に設定を切り替えるスイッチを追加して、万が一の時はそれで対応する...というのはあるんじゃないか?」


「方法の1つとしてはありだが、シールドってのは基本的には攻撃を受けるものだから、その衝撃で機械が故障する可能性も否定できないぞ」


「...言われてみると確かにそうだね。とすると、デメリット1の解決策と同じようにシールドの内側にグリップを追加して物理的に制御するか、シールドユニットの制御をするための魔法具を新しく開発するかというのが回答になるのかな」


「後者は開発するのに間違いなく時間が掛かるし、対抗戦に間に合うかも何とも言えないから、現実的にはグリップ案だな。提案してもらったのに、悪いな」


「このシールドユニットがあるだけで僕の戦術の幅は十分に広がるから、今の状態でも十分だよ。ちなみに鎖藤、このシールドユニットについて、気になっていることがもう1つあるんだけど、聞いてもいいかな?」


「なんだ?」


「君はこのシールドユニットのことを『アームドパックtypeD』と言っていた。つまりこれにはまだ他のタイプも存在するんじゃないか?」


「よく気づいたな。今のところ5種類の試作品を作ったりしてる段階だな。開発済なのが防御型のtypeD(こいつ)と支援型のtypeAの2種類。開発中の残り3つが近接型のtypeB、射撃型のtypeG、狙撃型のtypeLだ」


「既に5つの開発を進めているなんてね...まずはこのtypeDを使いこなすところからやっていくつもりだけど、射撃型のtypeGが完成したらそっちも使わせてくれないか?」


「すぐには完成しないと思うから、そこだけは理解してくれよ?」


「わかっているよ。それに、射撃型(そっち)よりもまずは防御型(こっち)になれる方が優先だしね。それと、防御型( これ )のマニュアルがあったらもらえないか」


「マニュアルはこれだな。仮置きで入れているパラメーターは背中の基部で再設定できるから、実際に使いながら設定してくれ」


「わかった、ありがとう...時田さん、この魔法具をこれから使ってみたいんだけど、それを手伝ってもらえないかな。具体的にはさっき見せてくれた水球を僕の近くでいろんな方向に動かして欲しいんだ」


「水球を作って、北上くんの近くで動かせばいいんですね?わかりました」


そういってインテリメガネこと北上は茜に協力を取り付けてシールドユニットの習熟訓練をはじめるのだった。



第51話、更新しました。

前回の更新からだいぶ時間がたってしまい、大変申し訳ありません。

(色々あったのですが言い訳はしません、ひとえに私の管理不足です)


今回は、聡祐に渡したアームドパックに関する内容となりましたが、既に予想されていた方もいらっしゃったと思いますが、このアームドパックには複数のタイプが存在しております。

残る4タイプのアームドパックも今後出していく予定ですのでどのような魔法具であるのか、もうしばらくお待ちいただければ幸いです。

※うち1パックはすぐに出てくることになると思います。。。


次話は整備部部長の山野に関する内容になる見通しです。

引き続きよろしくお願いいたします。


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