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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第43話

前話のあらすじ:太一、いらぬいたずらを仕掛け彩音に怒られる

「―――それはどう考えても太一が悪い」


「石動ならそう言うと思った」


「―――右に同じ」


会議室に戻ってきたところ、太一が彩音に怒られている様子を目の当たりにした順一郎は、近くにいた肇からその理由を聞き、太一にそう断言した。


「はいはい、この件については俺が悪うございましたよ...」


「鎖藤君、反省しているようには全く聞こえないんですけど...」


「反省してさっきのことが帳消しされるとかだったら考えるが、どうせそんなことにならな...「当たり前ですっ!」...だったらもう、次から気を付ればいい話だろ」


「それは...そうかもしれないですけど、その言い方にはなんか納得がいきません」


「そんなことよりも順一郎、お前の隣にしれっと座って、これからの話し合いにも当たり前のように参加しようとしている生徒(そっちの人)は誰だ?」


隣で不満げな表情をする彩音をよそに、太一は順一郎の隣にさも当然のごとく座る女子生徒へと視線を移した。


「本当はこの部屋に入ってすぐに説明しようとしていたんだけど、操作せなかったのは太一、君自身がいらないことをしていたからだろう...全く」


「彼については噂を含めて色々と聞いていたけど、本当に話題に事欠かない人なのね、順一郎( ジュン )


「...ジュン?」


順一郎のことを愛称で呼ぶなど、ただならぬ?雰囲気を感じ取った黎斗が首をかしげながら呟いた。


「そこは俺も気になったが、プライベートにはずけずけ踏み込むべきじゃないし、まずは彼女が何者なのか、それのほうが重要だろ?」


「確かに、言われりゃそうだな」


「彼のせいでまだ、自己紹介ができていなかったものね...改めて、私は三ツ星(みつほし)咲希(さき)。クラスは違うけどあなたたちとは同級生で、ジュンとは幼馴染なの」


「なるほど、だから愛称で呼んでたのか」


「それと、私は会計担当として生徒会にも所属しているから、ジュンとは放課後に顔を合わせる機会が多いの。特進クラス...いえ、あなたたちのことも生徒会室で少し時間がある時に、情報交換も兼ねて色々話をしていたから、ある程度は知っているわ」


「とりあえず、あんたがどんな人かってのはわかったが、順一郎がしゃべったとかいう『俺に関する色々な噂』ってのは、具体的にどんなことを聞いているんだ?」


隣で妙に納得している黎斗をよそに、太一は順一郎が咲希にどんなことを話しているのかが気になりそう質問した。


「そうね...授業をサボったり寝て聞いてないのに成績はなぜか上位だとか、実技では普通に見る限りでわからないくらいに手を抜いているとか、どちらかと言えばマイナス面の話を聞くことが多いわね。マイナスじゃないものだと...たしかこの前のフィールド演習で、何もない空間を三角飛びをするという人間離れの業を披露したとかかしら」


「最後のも含めて、ろくなものが一つもないな」


「鎖藤君はそう言いますけど、どれも大体あってますよね?三ツ星さん、できればそこに『人の話をきちんと聞かない』『すぐに言い訳をしようとする』ということ付け加えておいてください」


「白崎、二言余計だ」


「余計なことなんかじゃありません、どれも事実です」


「その情報も参考にしておくわ...それと白崎さん、私のことは咲希でいいわ」


「じゃあ、『咲希さん』って呼ばせてもらおうと思いますけど、私のことも下の名前で呼んでください」


「OK。次からはそうするわね。とりあえず、ジュンから聞いているあなたにまつわる話はだいたいそういったことが多いんだけど、1学年の沖田さん...ええっと、妹さんの方ね。彼女からは勉強だけじゃなくて魔法具の整備から日頃の相談まで、とにかくあらゆる面で頼りになる、信頼できる人って聞いていたの」


「遥佳と知り合いなのか?」


咲希の口から出てくるとは思っていなかった人物の名前に太一は少し驚いた様子で先に質問を行った。


「私、生徒会だけじゃなくて弓道部にも所属しているから、彼女と話をすることもあるのよ。ちなみに、あなたのことを聞いたのは、あの子の(部活道具)をあなたが弓道場に持ってきた時ね」


「あー...いつだったかは忘れたが、たしかにそんなこともあったな」


「だから、あなたが一体どんな人なのかっていうのは、少し前から興味があったの。そういう意味でも今日、あなたに会えたのはラッキーだったわ」


「そいつはどうも...とりあえず順一郎、そっちの三ツ星が生徒会メンバーってのはわかったんだが、対抗戦(あのこと)についても彼女には話してあるのか?」


「そもそも咲希は、対抗戦の代表メンバーとして僕が推したい人材でもあったから、ここに来るまでの間に、大まかには話をしてあるよ」


「だったら最初から彼女のこともボードに書いとけ。お前、さっきの話し合いの時に、三ツ星の『み』の字も出してなかっただろ」


「咲希が今日、生徒会室に居るのはわかっていたから、ボードに書いて説明するより、実際に連れてきて紹介したほうが早いなっと思ってね」


「だったら、先に名前だけ言って、『今から連れてくる』って言えばよかっただろ...とりあえず、関係者が全員揃ってて、話を聞かれちゃまずいメンバーもいないんだったら、さっさと本題(こっち)の話を進めるぞ」


「そうですね、もうしばらくしたら下校時間にもなりますからね」


「ってことで順一郎、ここからの進行は頼んだ。こういったことは俺よりもお前のほうが得意だろうしな」


そう言いいながら太一は、近くに置いてあった油性ペンを順一郎に向けて投げ、投げられた先にいた順一郎はそれを難なくキャッチし、椅子から立ち上がるとボードのほうへと歩みを進めた。


「全く、無茶な振り方をしてくれる...それじゃあまずは、今回の一番の目的である対抗戦の代表メンバーに関して話を進めよう。今のところ、咲希を含めた4人がその候補者として挙がっているわけだけど、他に追加したほうがいい生徒はいるかな?特に白崎さんはさっきの話し合いに参加できていなかったわけだから、気になる人がいたら挙げてほしい」


「ええっと、私の友達に魔力操作とか制御が上手な支援タイプの子が1人いるんですけど、その子は候補になるでしょうか...?」


順一郎に指名された彩音はおずおずと手を挙げながらそう言った。


「そうだね...紅川が支援魔法が得意な万能タイプであることを踏まえると、支援タイプって実質、白崎さん1人しかいないわけから、候補にはなってくるだろうね。ちなみにどこのクラスにいるのかな?」


「ええっと...戸木田茜ちゃんって言って、今はたしか進学Aクラスにいたと思います。魔力総量が少なくて、威力や範囲の広い魔法だったり、長時間魔法を使ったりすることができないことに悩みを抱えているんですけど、魔法の制御や操作はとても上手で、去年同じクラスだったときは、演習の時によく、コツとか教えてもらっていたんです」


「うちのクラスでもトップにいる白崎が教えを請うってことは、魔力操作に関してはうちの学年の中でも相当上位にいそうだな...俺は候補者として挙げて良い人材だと思うぞ」


「あ、ちょっといいかしら?私も進学Aにいるから、クラスメイトのことはある程度把握しているんだけど、彩音が言っている子の魔力操作が他の生徒と比べて抜きんでているというのは間違いないわ」


「太一、その子の問題を解決できる方法はあるとみていいかい?」


彩音の推薦に肇と咲希の2人が同意をしたことを踏まえ、順一郎は太一に確認を取った。


「実際に会って確認してみないとわからないこともあるから、この場では何とも言えない部分もあるが、問題が魔力総量(それだけ)なら、解決策は一応ある(・・・・)。それよりも三ツ星は進学Aにいるのか」


「ええ。私、年度末の試験の時に体調崩してしまって、実技試験を受けられなかったのよ」


「ただ、彼女の実力は僕が保証するよ。一概に比較はできないけど、体調が万全な状態だったら、特進クラスのトップに入り込めるだけの実力は持っているからね」


「つまり、去年の実技試験を三ツ星が体調万全な状態で受けていたら、天宮(こいつ)が特進クラスからあぶれた可能性も、もしかしたらあったってことだな」


「ちょっと待て太一、それはさすがに言いすぎ―――「いや、そうでもないだろ。進学Aってのは、筆記は優秀だけど実技面にやや課題を持っている生徒で構成されたクラスだ。三ツ星が今回、進学Aに進んだ理由が実技試験を受けられなかったからなら、そういった可能性は十分にありえる」―――紅川、お前も言うか?!」


「あくまでそういった可能性もあったってことだ。事実はそうなってない」


「そりゃまあ、そうだろうけどよ...」


「ただ、今回はそうでも来年の進級試験でそれが現実になるかもしれないんだから、そんな可能性を回避するためにも、お前はもう少し筆記の成績を上げておけ」


「ぐ、ぐぬぬぬ...」


あまりの正論にぐうの音も出ず、うなるしかない黎斗をよそに順一郎は話を進めた。


「じゃあ、白崎さんが推薦した人は候補に追加するとして次の内容だ。僕たちを除いて今、候補者として挙がっている生徒はこの人たちだ」


そう言いながら順一郎は、生徒会室から持ち出してきたパソコンを操作すると、20名弱の候補者の写真や所属等がスクリーンに表示された。


「そしてこの候補者のうち、氏名の前に『◎』か『○』が付いている人だけをピックアップするとこうなって、『◎』が付いている人に焦点をあてるとこんな感じになる」


すると、20名弱いた候補者が一気に8名にまで減り、ボードで『◎』が付いた5名の情報に赤い太枠が表示された。

ちなみに、彩音が先ほど推薦した生徒とこの場にいる咲希は赤枠で囲われた生徒(5人のうちの1人)である。


「赤枠が付いていない3人も学年全体で見れば上位にいるんだろうけど、この前の演習やさっきの話も踏まえると、咲希たち比べて劣っている印象がぬぐえない。とすると、学年代表として選ぶべきはこの5人なんだろうと思う。ただ特進クラスメンバーが1人しか(・・・・)いないこと(・・・・・)について、みんなの意見を聞きたい。僕としては正直、メンバーの選考よりもこっちの対応の方が面倒だと思っている」


「上位候補者5名の大半が非特進クラスだから、うちのクラス内から不満が出るんじゃないかってことか。まあ、不満は出るだろうな...この前の演習でアホやらかしたあの自意識高い系の奴とか特に」


「えっ、この前の演習でそんな問題になるような行動を取った子がいたの?」


「ちょっとというか、結構ヤバい奴が1人...な。自分は優秀だから、やることなすこと全て間違ってないって思考回路の奴だから対抗戦の代表選考(こういうこと)をやってるってのを知って、その代表を特進クラスからはともかく、他のクラスから選んだなんて聞いたところには、間違いなくかみついてくるな」


「ちなみに、その子は口先に伴うだけの実力は持っているのかしら?」


「太一の攻撃で多少ダメージが入っていた状態ではあったんだが、それでも天宮(こいつ)がワンパンで倒せる程度のレベルだな」


「何よそれ、ただ単にめんどくさいだけのタイプじゃない...」


「だからそいつが絡んできた時は徹底的に無視するか、周囲が一目見てわかるくらいの実力差を見せつけるかのどっちかをお勧めする」


「正論を言って納得するようなタイプじゃないってのはわかったから、その時はそうさせてもらうわ」


「咲希、紅川。彼を注意しないといけないのはわかるけど、まずは代表メンバーの構成について意見が聞きたい」


「俺はそんなに深刻に考えなくて良いと思っているな」


「私も紅川君()の意見に賛成ね。ジュン、あなたは考えすぎよ」


「...とりあえず、その理由を聞いてもいいかな?」


「お前は追加候補者の中に特進クラスの生徒がメガネしかいないってのを気にしているのかもしれないが、今回の5人は俺たちが対抗戦の代表に選ばれたことが発表されている上での追加選定じゃなくて、俺たちと同じタイミングで発表されるわけだ。だとしたら全体の半分以上は特進クラスって言えるんだから、さほど気にしなくていいだろ」


「それに今回の対抗戦、話を聞く限りでは学校の威信をかけた試合でもあるんでしょ?そんな大事な試合に能力が備わっていない生徒を出して、星を落とす方がよっぽど問題よ。変なメンツにこだわる必要はないわ」


「俺は聞かれてないが、2人の意見に補足しておくと、この前のフィールド演習でお前や天宮並みの火力を示した奴はうちのクラスにはいなかった。とすると、代表に選ばれたいのなら火力(それ)じゃない部分で何か秀でたもの―――例えば白崎の友達のように魔法操作に秀でているとかだな。そういったものを示す必要があると思うが、それに合致しそうな奴は俺が見る限り、戦闘面ではあのインテリくらいしかいなかったはずだ」


「俺は紅川や太一みたいに細かい分析とかは得意じゃないけどよ、何て言うかこう、戦ってビビッときた奴は、この前の演習では少なくとも太一くらいしかいなかった感じだな」


「表現が抽象的ってか曖昧過ぎるのが難点だが、意外と良い部分を突いた発言だな」


「『意外と』は余計だっつうの紅川」


「...なるほどね。白崎さんも同じ意見かな?」


太一と肇(聞いてもいない2人)から意見があったことから、順一郎は彩音の意見も確認した。


「ええっと、みんなの考え方とはちょっと違うかもしれないんですけど、対抗戦が開催されるからにはやっぱり優勝を狙っていきたいですし、姫川先輩たちも特化型がその鍵になると言っていたので、やっぱりそれができるベストメンバーを選ぶべきだと思います」


「聞く限り、全員似たような意見を持ってるみたいたが順一郎、こっちの意見も踏まえてお前はどう(・・・・・)考えるんだ(・・・・・)?」


「答えは出ているようなものだろ太一。それに、あの相談はあくまでもクラス内から不満が出た時にどう対処するのがいいのかを相談したのであって、あれが僕の意見というわけでもないからね」


「だったら決まりだな。あとはこの4人をいつ呼び出すかだが、個人的にはそいつらが抱えている課題が解決できるものなのかは早めに調べておきたい。場合によっては、候補者の再選考も想定しておかないといけなくなるからな」


「だったら明日にでも呼んで話をしてみよう。咲希、進学Aの候補者を連れてきてもらうことはできる?」


「それは問題ないけど、進学Bクラスの子はどうするの?」


「そいつは俺と天宮の知り合いでもあるからこっちで対応するさ。それでいいよな、天宮」


「おう、俺はそれで全く問題ないぜ」


「じゃあその方向で。明日は放課後にまたここに集合することにしようと思うけど、もし、追加で推薦したいって人が出てきた場合は、この場所に直接連れてくるようにしよう」


そう順一郎が告げると同時に、太一たちはホワイトボードや放置したままとなっていたボードゲーム等の片づけを行い、会議室から出ていくのであった。




第43話を更新しました。

(ギリギリではありましたが、7月中にもう1話、更新できてよかったです。。。)


今回は、順一郎が謎の美女(幼馴染)を連れて会議室に戻ってくる...といった所から始まりましたが、その美女こと咲希と彩音の友人の茜という新たなキャラが登場しました。

残る2人についても近々に明らかになる予定です。


さて次話は、太一が家に戻り、いまだに名前不祥な和尚と、とある話を行うといった内容になる予定です。


引き続きよろしくお願いいたします。


P.S.

第42話も少し修正をかけました

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