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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第24話

前話のあらすじ:一部生徒の演習での振る舞いについて、先生が生徒を叱る

「総合3位かー、わかっちゃいたけどやっぱ石動は超えられなかったな」


前半・後半の結果発表が終わり、現在は総合成績に関する先生の講評が続けられているではあるが、先ほど講評を受け終えた天宮は頭の後ろで両手を組みながら、自身の結果に対する率直な感想を口にした。


「そりゃ、石動たち( あっち )は前半組1位で俺たち( こっち )は後半組2位って違いがあるわけだから、猛者ばかりの大混戦で勝ち取った2位みたいな明確な違いがないなら、その差はそう簡単に埋まらんだろ...それでもまあ、初回の演習で総合3位ってのはかなりいいスタートだと思うけどな」


「紅川君の言う通りですね。もちろん、これまでの基礎演習の成績も重要ではあるんですけど、最初のフィールド演習でトップ3に入れたというのは、『それだけの地力がある』という証明になりますからね。それと魔法大学に進む上で有利になるといった話も聞いたことがあります」


「ああ、それは俺も似たような話を聞いたことがあるな。俺が聞いたのは『初回の演習で好成績を残した生徒は希望通りの進路になることが多い』だったな」


「俺、その話初耳なんだけど」


年間の成績で優秀な成績を取ることが重要だとばかり思っていた天宮は、今回の演習が実は重要であったという事実にやや驚きを隠せずにいた。


「それは天宮、お前の情報収集が足りなかっただけだろうな」


「ゑ...太一も知ってたってことは、知らなかったの俺だけ?」


「私も噂で聞いただけなので、なにがどこまで本当なのかは正直わからないんですけど、大学の先生方が『今年の2年生にどんな有能な生徒がいるのか』を測る指標としてこの演習を活用したりするらしいですよ」


「実際、筆記試験はそれほど好成績ではなかったけど、最初の演習で好成績を残していた先輩が希望通りの進路を決めたっていう話も残っているからな」


「だから他の奴らも異様に気合いが入ってたんだな...よかったー、この演習でいい結果残せて」


「天宮君はきちんとした成果を見せていましたから先生たちの評価も高かったと思いますよ。むしろ石動君のサポートばっかりで、直接の戦闘にはほとんど参加してなかった私が総合で5番という評価をもらっているほうが恐縮です」


「さっきも言った通り、白崎さんが索敵魔法で周囲の様子をしっかり把握してくれていたから、僕は目の前の戦闘に集中できたわけだから、そんなに自分を低く評価する必要はないよ。先生も言ってたけど、防御魔法や支援魔法(ブースト)の付与といった索敵以外のサポートもしっかりしていたんだから、そういった点を評価した上での結果だと思うよ」


「石動君にそこまで言われるなんて...少し恥ずかしいですね」


「俺もサポート系の魔法をそこそこ使うってのもあって、白崎さんの前半での動きはモニターで様子を見てたが、派手ではないにせよ石動の行動に合わせたフォローやサポートを的確にしてたように感じたから、今回の総合5位って評価は俺も違和感なかったぞ」


「紅川君まで...えっと、ありがとうございます」


「むしろ今回の結果で一番意外だと感じたことは、総合1位が石動じゃなくて太一(こいつ)だったことだな」


「あ、それ俺も思ったわ。石動の動きって前半組の中でも群を抜いて良かったから、俺も1位は間違いなく石動だと予想してたんだよな」


「太一は講評で遠距離からの狙撃に加えて、多種多様な(トラップ)や魔法を駆使した戦闘ってのが高く評価されてたけど、後半は俺と天宮も残ってただろ?前半は石動が無双して他のチーム全部片づけてたから、それも踏まえても石動のほうが順位は高いと思ってたんだがな」


「相手の撃墜数も全体で一番だったのは太一じゃなくて石動とも言ってたしな...太一、何で1位だったのかお前だけ別に聞いたりしてないよな?」


紅川の疑問に呼応するように、天宮も結果を聞いて感じていた疑問を太一にぶつけるのだったが、太一はそれを即座に否定した。


「聞いてるわけないだろ...そもそも演習終わってからここに戻るまで一緒に行動してたんだから、そんなことをする機会がなかったことくらいお前も知ってるだろ」


「確かにそうだよなぁ...でも何で太一が1位だったんだ?石動が1位だったと言われたほうがしっくりくるのに」


「(...まあ、俺が1位だったのは、監視の方法やこの演習の意図に気づいたことに対する加点も影響しているわけなんだろうが、それはこいつらに言えないからな)」


「うーん、考えれば考えるだけわからねぇ...」


この演習に隠された目的を理解していない限り、解を出すことが困難な問題に頭を働かせる天宮だったが、そんな天宮や紅川の考えに異を唱えたのは総合成績で2位となった石動自身であった。


「倒した相手の数はそうかもしれないけど、後半の太一の行動を見ていると、今回の結果は妥当だったと思うよ。流石にあの戦い方は容易にマネできるものじゃないよ...」


「石動君の言う通りですね...私もあの戦い方を見て、『後半じゃなくて良かった』って思いましたもん」


「えっ、俺と紅川と戦った時に見せたあの空中跳び上がり以外にも太一こいつ、何かとんでもないことしてたのか?」


まさか本人とそのチームメイトだった彩音から異論が飛んでくるとは思わず、天宮は2人に問い直した。


「悪い意味じゃないですし、あの空中ジャンプ以上の驚きはなかったんですけど、鎖藤君の戦い方って、本当に『何でもあり』の戦い方だったんですよ」


「太一お前...この演習で一体どんな戦い方したんだよ」


彩音の話を聞き、天宮は再度太一に向かって質問し直した。


「あのアホに嫌々従ってたインテリ眼鏡たち4人が俺が隠れてた建物に近付いてきたから、魔法のトラップとワイヤートラップを使って丁寧に出迎えただけだ」


「多種多様なトラップってそういうことか...たしかに魔法の実技演習でワイヤートラップなんてのを使ってくる奴がいるなんて、普通考えもしないだろうから、そこには驚きはするだろうな」


「でもよ、それだけだったらそんなに驚くことないだろうし、それだけで石動を上回ようなる高評価を叩き出せるとは思えないけどな」


「それは天宮の言う通りだな」


「じゃあ、その2つのトラップが全く同じ場所に設置されていながらそれぞれ別のタイミングで発動するようになっていて、それで相手を全員拘束したとしたらどう思う?」


「「...は?」」


順一郎の口から出たまさかの内容に天宮も紅川は驚き、開いた口がふさがらなかった。


「相手のチームも鎖藤君が隠れている建物の周囲に何か罠が設置されているだろうというのは予想したみたいで、それを誤作動させるために建物に向かって魔法を使ったんだよ。そうしたら予想通り、放たれた魔法に反応する形で太一が仕掛けた魔法のトラップが作動したんだ」


「まあ、そこまでは普通だな」


「ただ、相手チームもトラップが二重に仕掛けられていることを用心して、別の魔法を建物に向かってもう一度を放ったんです。2回目に放った魔法はさっきみたいに何かに妨害されたりしないで建物に着弾したので、相手チームもトラップは解除されたと思って3方向から建物に接近したんですけど、魔法のトラップが発動したところを通り過ぎようとしたときにワイヤートラップが発動して、相手チームが全員拘束されたんです」


順一郎の話を引き継ぐ形で今度は彩音が説明を行った。


「つまり魔法のトラップがブラフで、本命はワイヤートラップだったんだ」


「補助系とか支援系の魔法って正直あんまり得意じゃないけどさ、ワイヤーじゃなくて魔法のトラップをフラフに使おうとするなんて、普通の人はほぼ考えもしないってのだけは俺でもわかるわ」


「同じ場所に設置したのは、相手が探知をかけた時に罠が1つしか仕掛けられていないように思わせるため...といったところか。石動がさっき『容易にマネできるようなものじゃない』って言ったのにも納得できる戦法だな。ちなみにトラップに拘束された奴らって、捕まった後はどうなったんだ?」


「そりゃもうワンサイドゲームで、太一が建物から動けない相手を一方的にタコ殴りにした...とかじゃないのか?」


「流石にそんな鬼畜な所業はしてないわ」


「確かにそういったことはしてなかったけど、ワイヤーを切ろうとした相手の武器を撃ち落としたり、魔法の詠唱をしようとしていた2人の足元に狙撃したりはしてたけどね」


「拘束した相手じゃなくて、手に持った武器を狙って撃ち落とすってあたりが流石の狙撃センスだな。でも何で次の狙撃は相手の足元狙ったんだ?」


「それは相手を攻撃することを目的とした狙撃じゃなかったってことだろ。恐らくは『妙なことをすれば次は当てる』といった警告...あたりだったんじゃないのか?(それに加えて、ここで相手がリタイアしてくれれば、不要な戦闘を回避して最後まで魔力を温存できるといった考えもあっただろうな)」


「まあ、一応そんなところだな。結局、相手さんは揃ってリタイアしてくれたみたいだから、こっちの意図はわかってくれたんだと思う」


「そこまでの話聞くと、太一が今回の演習で1位になったってのにも、さっきよりは理解できるようになった気はするな...」


「それは天宮の言う通りなんだが、俺はそれ以上に『太一を敵に回すとも面倒なことになる』ってことを改めて理解したわ。さっきの戦った時にも多少は感じてたことではあったんだが、今の話聞いて更に感じたわ」


「うん、それはその通りだと思うよ。僕も白崎さんも全く同じことを思ったからね」


「演習が始まった直後から鎖藤君に考える時間を与えなかったりすれば、まだ戦えるのかもしれないんですけど、少しでも時間を与えたりしたら、もしかしたら私たち4人掛かりでも勝てないんじゃないかって思っちゃいますね」


「流石にそれはないだろ」


「いや、僕も白崎さんの言う通りになる可能性は高いと思う」


「石動の考えに同感だな。さっきの二重トラップといいあの空中ジャンプといい、太一の技の大半は初見殺しだから、見たことない攻撃を仕掛けられた瞬間にこっちの勝率が一気に落ちるだろうな」


「気合いと根性でどうにかなればいいけど、さっきの話聞いてるとなぁ...」


「お前ら、俺のことを人外とか思ってないか?」


「そう思われても仕方ない行動を実際にやったんだから、仕方ないんじゃないか?むしろそういう自覚があるんだったら、少し自制すべきだろう」


「石動くんの言う通りですね」


「同感」


「右に同じ」


「お前ら今に見てろよ...」


太一たちがそんな他愛のない?やり取りを行う一方、教師による総合順位の発表とその講評はもうしばらく続けられるのであった。


3連休最終日になりましたが第24話を更新しました。


自分たちが見逃したインテリ4人と太一の戦いがどうなったのか知らなかった天宮と紅川でしたがやはり、順一郎たちの話を聞いて驚きを隠せなかったようですね。

(それだけ太一の行動が一般的ではなかった、ということなんですが...)


さて次回は、講評後の話が数話進続く予定ですが、次話では演習がすべて終わりバスに乗って帰ろうとする太一たちがとある人たちから少し呼び止められるといった内容になる予定です。

月内に1~2話アップできればと思っていますので、これからも引き続き、よろしくお願いいたします。


1都3県に2度目の緊急事態宣言が発令され、大阪・京都・兵庫についても宣言の発令を再要請するなど、新型コロナについてはいまだ厳しい状況が続いておりますので、どうぞお身体に気をつけてお過ごしください。

私も手洗い・マスク等のできる範囲での感染防止対策はしっかり取りたいと思います。


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