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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第1話

―――キーンコーン、カーンコーン


「よーし、授業始めるぞー。休み時間に騒ぐのは自由だが、チャイム鳴ったんだから、大人しく席に着け」


チャイムが鳴るとともに、教師が教室に入ったことを受け、教室内で騒がしくしていた生徒たちもそれぞれ自身の席へと戻っていく。

そんな様子を見て、クラス委員長である石島順一郎は、号令をかけるために再度、クラス内の状況を確認していたのだが、そんな時、窓際の前から三番目(  とある生徒  )の机が空いていることに気づいた。


「先生、彼がまたいないようですが」


「またあいつか。あいつが授業を抜け出した回数は10回を超えたあたりからもう数えることをやめたんだが、この逃走癖はどうやったら治るもんだろうなぁ...出席している時の授業態度や成績は優秀だから、これ(サボり)さえなければ完璧なんだが」


「私の方で探してきましょうか?」


「石島、お前がそうやって周りを気遣ってくれていることは非常にありがたいんだが、これはもう、今に始まったことでもないから、お前の貴重な時間を削ってまであいつを探す必要はない」


「ですが...」


「どうせ終業のホームルームで嫌でも俺と顔を合わせることになるんだから、その時にでも俺から言っておくさ。あとそこのお前らも石島と一緒になってあいつを探しに行く必要はないぞ...そもそもお前達はこの前の試験の結果が芳しくなくて、進級できるかがただでさえ怪しいんだから、探す暇があったらまじめに授業を受けなさい」


そんな教師の言葉を聞き、クラスにどっと笑いが沸く。


「さて、今日の授業だが、前回教えたところが少し難しい内容だったと思うから、まずはそこのおさらいを行ってから、新し内容に進みたいと思う。恐らく次の試験にも出題すると思うから、特にお前たちはしっかりと板書を移して勉強しておくように――ということで石島、号令を頼む」


「わかりました、起立...礼」


「「「よろしくお願いします」」」








―――授業終了後の休み時間


「バカと何とかほど高いところに上る...とはよく言ったものだけど、やっぱりここにいたか、太一」


校舎の屋上で寝そべりながら空を見ていた 鎖藤太一 (授業をサボった生徒)は、彼を探しに屋上に現れた順一郎に突然、声をかけられた。


「ん?誰かと思えば順一郎か、何か用か?」


「用事がなければここに来ちゃいけないってわけじゃないだろ?もちろん、用事がないわけじゃないんだけど」


「そりゃまあ、ここは俺の部屋というわけでもないからな...で、その用事ってのは?」


「何か身に覚えは?」


「...ないな」


「いやいや、さっきの質問に対する答えに多少の間があったことが何よりの証拠じゃないか...用事ってのは『どこかの誰かさんが授業をサボっていること』だからね」


「全く、留年の可能性もあるってのに授業をサボるとは...この学校にはとんでもない野郎がいるみたいだな」


「その『とんでもない野郎』ってうのは太一、君の自身のことだけどね」


「俺の場合は筆記試験とかではきちんとした成績取ってるんだし、そういった観点からしたら留年の可能性ってのはないわけだろ?」


「たしかに試験の成績に(・・・・・・)限って言えば(・・・・・・)...ね。だから今のところは、さっきの時間のように授業を抜け出したとしても、先生たちに見逃してもらっているのかもしれないが、いつまでもそうであるとは限らないということのは理解しておいたほうがいいんじゃないのか?」


「一応そこはわかってるさ。だから出席しないと進級に響きそうな授業は大体出てるし、、他の授業も最低限出なきゃいけない日数+αくらいは出てるわけだから、多少は目をつぶってくれてもいいんじゃないか?」


「全く、サボらずに出ている授業もあると思っていたけど、そういう違いだったのか...仮に僕が目を瞑ったとしても、それは根本的な問題の解決にはなっていないから却下だ」


「ただ、制度上は問題ないだろ?」


太一は起き上がり、順一郎のほうに顔を向けながらそう言った。


「これはそういう問題じゃないと思うけど」


「OK、とりあえず次の授業は真面目に出席するよ」


「『次の授業は』じゃなく、『これからはきちんと』だ」


「前向きに検討する...んじゃ、俺は先に戻ってるわ」


「僕より先に戻っていなかったら来週1週間、次の授業もさぼったら2週間、昼飯をおごってもらうからね」


「へいへい」


片手をあげながらそう言い残して太一は教室へと戻っていった。


「...(去年、太一がこの学校に転校してきてから半年ほど――クラスにも一応溶け込んでいるし、本人もうまく隠しているようだから、クラスの中で気づいている人はほとんどいないようだけど、心に何か大きなものを抱えてこんでいるように感じるんだよね。)まあ、それが一体何なのかまではわからないけど、それが解消されない限り、もしかしたらこの問題(太一のサボり癖)を解決する、というのは難しいかもしれないな」


独り言のようにそう呟きながら、順一郎もまた次の授業のために教室へと戻っていくのだった。



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