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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第18話

前話のあらすじ:太一、インテリたちを撃破する

第18話


多くの生徒と魔法が入り乱れあう中、紅川と天宮はお互いの背中を合わせ、様々な方向から飛来する攻撃を捌き合っていた。


「『敵の敵は味方』って言葉があるけどさ、こうも入り乱れた状況になると、その言葉本当かよって思いたくなるもんだな」


「天宮、口を動かす暇があったら周りからの攻撃に集中しろ。この場にいる相手の総数はあの時と大して変わらないくらいなんだろうが、さっきと違ってどこから攻撃が飛んでくるか予想がつかない」


「だからこうやってお前の背中(こっち側)の対応は俺の方できちんと請け負ってるだろ?まあ、俺の背中(そっち側)はお前に任せてるから、そういう意味ではお互い様なのかもしれないけどな...っと!」


紅川とやり取りをしている最中、正面から不意に魔力弾(流れ弾)が飛んでくるも、天宮は魔力を纏わせた右手のガントレットで、迫りくるその魔力弾を正面から殴り飛ばした(・・・・・・)


「それによ。こんな状況になるなんて、ここにいる奴の大半が考えてなかっただろうし、もし考えてたとしても、一番最悪のパターンだろ絶対。そう思えば愚痴の一つや二つ、言いたくなるわ」


天宮は振りぬいた右腕をさらに横に一閃し、複数の方向から迫っていた石弾を弾き飛ばしながらそう続ける。


演習前に宣言があった通り、開始から30分程度立ったころ、フィールドの縮小が行われたのだが、指定された場所が前半とは異なり、フィールドの中央ではなく、フィールドの端(・・・・・・・)だったのだ。


残っている生徒にとって、この座標の指定は予想外であり、指定された場所へと急いで移動を開始したのだが、多くの生徒が前半の演習の様子から、「縮小されるなら中央」と思い、中央に近い場所にいたため、その道中に他の生徒と遭遇し、そのまま成り行きで戦闘状態へと移行することになったのだ。


「まあ、そりゃそうなんだろうけどさ、それ以前に...相手の魔法を殴って防御するなんて方法、一体どうやったら思いつくんだ?全く」


乱戦が開始されてから数分、既に何度か目にした光景ではあったが、魔法を殴って防ぐという天宮の独特な防御方法(スタイル)を改めて横目で確認した紅川は、驚き半分呆れ半分といった口調で独り言のようにそう呟いた。


「この防御をやってみたいってことか?」


その呟きが聞こえていたのか、左から飛来した魔力弾を今度は裏拳で弾き飛ばしながら、天宮が紅川に質問する。


「拳の当てどころが少しでもずれたりしたら、こっちが逆に大怪我するかもしれない防御方法を使おうなんて考えるわけないだろ...俺が言いたいのは、何があったらそんな発想にたどり着けるのかってことだ」


紅川は自分の身体が向いている方角から急に飛んでくる魔法や矢じりのような形をした石弾を、防御魔法を使って上手くいなしながら天宮の質問に答えた。


「最近、英語の勉強にと思って、ちょっと昔の海外のSF映画を見てたんだけどさ、それに銃弾を剣で防ぐっていう凄え技があってな」


「...まさか、そのシーンを見て『同じことを拳使ってできないか』みたいなことを思ってやってみたとかじゃないだろうな?」


「その通りだけど何か問題でもあったか?ただ、そんな練習に付き合ってくれるくらいバカスカ魔法を使えるような知り合いもいなかったから、練習は家の近くのバッティングセンターで野球ボールを相手にだったけどな。最初は当てるのに結構苦労したけど、気合入れて練習し続けたらできるようになったってとこだ」


「バッティング練習しようとお前の隣のケージに入った奴らは、お前のそんな姿を見て、間違いなく唖然としたんだろうな、容易に予想できるわ」


「周りの奴らは知らないけど、バッティングセンター運営してるおっちゃんは『昔、ボールを素足で蹴って飛ばした奴もいたしなぁ...』って、特に気にしてなかったな」


「そのおっさんを基準に考えるのは絶対に間違ってると思うぞ...とりあえず、物理的防御( そいつ )を覚えようとした経緯はわかったけど、肝心の英語はどうなった」


「...そっちはまだ勉強中だ」


「勉強中なんじゃなくて、魔法の練習に没頭しすぎて、英語の勉強するのを忘れてたパターンだろ絶対...全く、ある種の天才なのか、それとも本当のバカなのか、その判断はいまいちつかないんだが、今はやることやれよ」


「おう、まずはこの演習を最後まで生き残ること...だよな」


「わかってるならいい...まあ、ここにいるメンツ(・・・・・・・・)を見る限りでは、石動並みの実力を持った奴はいなさそうだから、前半みたいに残ったチームが石動のトコに軒並み倒される...ってことは起きないと思うんだが、あいつがいない(・・・・・・・)ってのがちょっと気になるな」


「いないって、誰がだ?」


「アホの頭に高精度射撃をぶちかましたやつって言えばわかるだろ?」


「...ああ、鎖藤か。ここにいないってことは、フィールドが縮小する前に誰かに負けたってことなんじゃないのか?あいつ、座席が隣ってのもあって、クラスのマドンナ( 白崎さん )から何かと声をかけられてはいるけど、チームを組めるような仲のいい友達は少なそうだから、この演習は単独行動だろうし、一対多の戦闘だったら基本的にはソロが不利だからな」


正面から迫りくる炎弾を右の拳で殴って相殺しながら、天宮は紅川の質問に答えたが、その考えに紅川は疑問を呈した。


一般論だったら(・・・・・・・)...な。ただ、あいつの場合はそうじゃない可能性のほうが高い」


「どういうことだ?」


「あの時のことを思い出してみればわかるだろ。狙撃があった時、俺たちの認識できる範囲に俺たち以外の誰かいたか?」


「そういや、あっちのチームの奴が半径150mには誰もいないとか言ってたな」


「ってことはつまり、あいつはそれより遠い場所にいたってことになるんだが、そんな場所から狙撃をしてきた...要はあいつの索敵範囲は俺たちより広い(・・・・・・・)可能性が高いってことだ。そんな奴が不用意に相手の接近を許すと思うか?」


「...しねぇな。それができるとしたら隠ぺい魔法を使える奴くらいか」


「もし俺があいつで、この演習をソロで切り抜けるんだったら、相手の範囲外から攻撃を仕掛けるし、近づかれないように周囲にトラップを設置したりすると思う。そういったことから考えても、あいつがそう簡単にやられるとは思えないし、あいつがやられていないと確信できる極めつけの理由がある」


「理由?」


飛来する攻撃をさばき続けながら、天宮は太一がまだやられていないと天宮が考えている理由を問いただす。


「あいつのところにはメガネ君たちが攻め込んだはずだが、この場所にあのメンバーの誰か1人でもいるか?」


「...あ゛」


紅川に指摘され、天宮は改めて周囲を確認すると、指摘のあった4人がどこにもいないことに気づいた。


「そう、ここには誰もいない...つまり、あいつに全員やられたってことだ。それに、それだけの索敵能力を持ってるんだったら、俺たちの動きを見て、この戦闘区域を回避して動いているって可能性も十分に考えられる」


「ってことは、この戦闘でみんなが疲弊したところを一気に急襲して、前半組みたいに一人勝ちに持っていくって可能性もあるってことか?」


「未だに姿どころか攻撃すらしてきていないし、その可能性はあるだろうな」


「じゃあ、俺たちもこのままチンタラ戦うんじゃなくて、ここから離脱する方法を考えなきゃまずいじゃねぇか」


「さっきからその方法も色々と考えてはいるんだが、いい案が思い浮かんでこないんだよ。この攻撃を防ぐことも忘れちゃならないし、手一杯だ」


「インテリたちを拘束したあの魔法で何とかならないのか?」


「あの魔法は拘束する対象の座標がある程度わかっている場合に効果を発揮するものだから、縦横無尽に動き回る相手には相性が悪いんだ」


「じゃあ、そのあとに使った炎の糸とか」


「あれは拘束は強力だが、その分、射程と捕捉数に制約があるから使いにくい」


「煙幕を発生させて相手の視界を奪ってる間に逃げるってのは...」


「それは俺たちの視界も奪われるし、周りからの攻撃がさらに防ぎにくくなる可能性があるってことを忘れるなよ?」


このまま防ぎ続けてもいずれジリ貧になることを理解したのか、天宮も考えうる手段を紅川に提案するも、効果的な手段でないためか、いずれも却下される。


太一が攻撃を仕掛けてくるという確証はないものの、逆に仕掛けてこない可能性もない、そんな目に見えないナニカに対する焦りが天宮と紅川を蝕み始めていた。


「くそっ...こうしてる間にも鎖藤がこっちに攻撃を仕掛けるための準備が進んでる可能性もあるってのに、ここから離脱することもできないなんてよ」


「そうなることを想定して回避したのかもな...アイツに直接聞かない限り、実際のところはわからないけど」


「ああもう、深く考えるのは止めだ!どうせここで色々考えてもらちが明かねぇんだ...こうなったら、多少のダメージは覚悟の上で前面にシールド張って突貫してこの区域を抜けるしかねぇ」


「そんなことやったら、シールド張ってない側面から攻撃を喰らって、ここから抜ける前に...いや待て、その方法があるか」


「お、いい方法が見つかったか?」


「メガネ君たちを拘束したときに使ったあの竜巻をシールド代わりに俺たちの周りに展開して、その状態で移動すればここから抜け出せる可能性はある」


「他に方法も思いつかねぇし、それでいくか」


「走る速度は俺に合わせてくれ、じゃないとあの竜巻に自滅しに行くことになるからな」


「お前の後ろを走れば何とかなるだろ」


「じゃあ、一気に行くぞ―――スピニングウォール アサルト」


そう言って紅川は自分たちの周囲にインテリたちを拘束したときに使った竜巻の強化版を展開し、戦闘エリア外への脱出を開始した。


遅くなりましたが第18話を更新しました。


フィールドが縮小され、残ったメンバー入り乱れての混戦という状況になりましたが、そんな演習も残り2話くらいで終了する予定です。

閑話についてはその間に挟む予定ですが、もしかしたら演習後の話として作成するかもしれませんのでその点はご了承いただければ幸いです。


これからも引き続きよろしくお願いいたします。

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