表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
14/65

第13話

前話のあらすじ:天宮と紅川、6人を相手に勝利を勝ち取る

紅川の魔法によって拘束されていた4人は、自分たちの行動を制限していた風が徐々に収まっていくのを感じ、ゆっくりと目を開けた。


「風が...収まった?」


「私たちへの攻撃が止んだってことは、私たちのチーム(後ろの2人)があの2人を倒したってこと?でも、どうやって...」


「そんなこと、万が一でもあり得ないよ。僕たちのチームが負けたのさ」


混乱する生徒たちの中、長方形の眼鏡をかけた、いかにもインテリのような生徒だけが自分たちが置かれた状況を理解し、そして自分たちのチームが負けたという事実を混乱する3人に知らせた。


「あり得ないって、何でそう言い切れるんだよ。第一、あっちが勝ったんだったら、俺たちへの攻撃を止める必要もないだろ」


「はっきり言って、僕たちのリーダー(あの2人)に、彼らを倒すだけの実力はないよ。クラスメイトの分だけにはなるけど僕は一応、その人がどんな魔法を使ってきたかやその発動スピード、そして今までの演習の成績といった情報を調べて頭の中に入れているんだ。そういった情報からクラスメイトの実力の順位付けをすると、あっちの2人は少なくとも中の上くらいの力があると思うんだけど、こっちのリーダーは頑張って中の下に届けばいい方ってところ実力だね。クラスの中でトップクラスなものがあるとしたら、口の達者さと態度の大きさじゃないかな」


「だとしても、2人で1人の相手をすれば勝てる可能性だって...」


「まあ、どう思うかはそれぞれ勝手だけど、向こうで伸びている彼とそこの地面にへたりこんでいる彼女の姿を見れば、僕たちが敗北した(結果がどうだったか)ってのは嫌でもわかるんじゃないかな」


数で優っていた自分たちのチームが負けたことに納得できない生徒たちに対して、眼鏡の生徒(インテリ)はとある方向を指で示す。


それにつられて3人が指さされた方向を見ると、木にもたれかかりながら気絶している男子生徒と、4つの焼け焦げた窪みの中心で地面に座り込んだ女子生徒がおり、女子生徒については遠目からではあるが、胸に付けたバッジの色が赤になっていることが見て取れた。


「...そっか、私たち負けたんだね」


「じゃあ、あっちが俺たちへの攻撃をやめたのは...」


「恐らくは自分たちとまだ戦う意思があるのか、それを確認したいんじゃないかな...まあ、それは今こっちに向かっている相手の代表(本人)に聞いてみればわかるだろうね」


そう言いながらインテリは、自分たちのところへと歩みを進める天宮の方へと顔を向けるのであった。






「おう、お疲れさん。あんたらのボス―――これはまあ、実際にその姿を見たらわかる通り、今あんな感じで木の下でお休みされていらっしゃるわけだが、それを踏まえて質問したい。お前らはこのまま、俺たちと戦うつもりはあるのか?」


「「「「...」」」」


「お前さんら、あの2人組アホどもに何か弱みでも握られたりして、嫌々従って戦わせられてたんだろ?さっきの戦闘の時も何か、弱腰ってゆーか、積極的な姿勢じゃなかったしな...ただ、今この時点でお前たちが従わなきゃならない相手はもういない―――ここで俺たちと戦うも戦わないも、それを決めるのはあんたらの意思ってことだ。俺たちと戦うってのなら全力で相手をするし、戦うつもりがないってのなら俺らはさっさとこの場から離脱する。考える時間を少しやってもいいんだが、演習の残り時間考えるとそんな多くの時間は残ってないだろうから、できればこの場ですぐ決めてくれ」


このまま戦うか退くか―――この場でそう簡単に返事ができるような内容ではないものの、戦いに負けた以上、相手に従わざるを得ない。


しかし、この問いかけに誰が答えるのかは決まっておらず、仮に自分が代表で答えた場合に他の3人がそれに従ってくれるのかも明らかになっていない、そんな状況の中で天宮の問いかけに答える自信は3人には全くなかった。


―――そう、たった1人を除いて―――


「いや、ここで君たちと戦うのは止めておくよ。仮に戦ったとしても、束になって君たちに勝てるかどうか...ってくらいの実力差もあるだろうしね」


3人が無言を貫く中、インテリのみが天宮の質問に答えたのだ。


「いやいや、俺と紅川の2人がお前たち4人を相手に確実に勝てるなんて確証はないと思うぜ」


「たしかに万が一、というのもあるかもしれないけど、それでも個人の実力差は明らかだ。それに、集団戦では個の実力と同レベルでチームの連携も重要になるけど、さっきの動きを見る限り、そのレベルもそっちのほうが上のようだから、よほどのことがない限り、君たちが僕らに負けることはない、と僕は思うよ」


「それは過大に評価いただいているようで...」


「それと、渋々であったとしても、僕たちが今回やったことは褒められた行為ではないのは明らかだ。それを踏まえると、ここで演習からリタイアすべきじゃないかとも考えたけど、何かトラブルがあったわけでも、負傷したわけでもないのに勝手にリタイアするのは、『生徒の実力を測る』という、この演習の当初の目的に合致しない行為でもある」


「...」


「だからここは僕らが退いて、まだ残っているであろう相手に改めて挑もうと思う。勝手なことを言っている自覚はあるけど、それで手を打ってくれないだろうか」


「OKわかった、そもそも俺はそっちが俺たちと戦うつもりかどうかを確認したいだけだったから、そっちが大人しく退くってのなら特に何も言わないさ。ちなみに、そこの3人もそれでいいんだな?」


「えっ...あ、ああ、それでいい」


突然話を振られた男子生徒は一瞬うろたえるも、インテリの発言に肯定の意を示し、2人の女子生徒も無言で頷いた。


「んじゃ、そういうことにしますかね。ちなみに、挑む相手のアテは...?」


「相手がだれかまでは特定出来ていないけど、1つだけ心当たりがある」


そういいながらインテリは右側に視線をチラリと向ける。視線の先はただ木々が生い茂るだけだったが、天宮はこの4人が、正しくはインテリがだれに挑戦しようとしたのかを理解した。


「ああ、なるほど。相手がどんな奴かは俺もよく知らないが、凄腕なのは間違いないだろうから、挑むにしても気をつけてな」


「忠告、感謝するよ...そうだ、最後に1つだけお願いがあるんだけどいいかな」


「ん、何だ?」


「今回は僕たちがこの場を引いて納める形になったけど、もし次の演習で戦うことになった時は、真正面から相手をしてほしい」


「なんだそんなことか...勿論、俺はいつでも相手になってやるし、そうなったとしても手加減は一切なしでやらせてもらうぜ」


「ありがとう、それじゃあ僕たちはこのあたりで行かせてもらうよ。君たちも最後まで頑張ってくれ」


そう言い残すと4人は、インテリを先頭にして木々の中へと姿を消していった。

第13話更新しました。


第14話以降も出来上がり次第アップする予定ですので、もう少しお待ちいただければ幸いです。。

※なお、10話、11話、12話と、ここ数話、太一の出番がほぼありませんでしたが、第15話あたりから再度登場する予定です。



また、累計PV数も1000を超えました、ありがとうございます。

これからも引き続き執筆活動を進めていきますので、これからもよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ