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隻腕の魔法使い  作者: 木三並
第1部
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第10話

前話のあらすじ:太一、複数の系統外魔法を使う

「天宮、どーするよこれ」


遡ること数分前、紅川 肇 (くれかわはじめ)天宮(あまみや)黎斗(くろと)の2人組は、背中を岩壁に、残る3方を4人のクラスメイトに囲まれた(正確には6人であるが)現状を打破するための活路を見出そうとしていた。


「どーするもこーするも、やることは一つだ。あそこで余裕ぶっこいてるあの2人(アホども)をまとめてぶっ飛ばす」


「俺が聞きたいのは、『お前が何をやりたいのか』じゃなくて、『それをどうやってやるか』ってことだ」


「そんなもん...気合と根性だ」


「あのなぁ、さっきも『気合があれば何とかなる』とか、ほぼ考えなしに突撃して、失敗しかけたのをもう忘れたのかよ」


「...さっき上手くいかなかったのは多分、突撃する時の気合が足りなかったのと、一人で突撃したのが原因だったんだ。気合は入れ直したし、あとはお前が一緒に突撃してくれれば今度はいけるはずだ」


「あのな、こっちの人数が優位ってのならそれでもいいかもしれないが、数は少ない、逃げ道もない、増援もないの、ないない尽くしのこの状況、気合で何とかなる世界じゃないっての...これだから脳筋は」


「脳筋言うな!気合がダメってんのなら、他に何かいい手段があるのかよ」


「それがなかなか出て来ないからお前に聞いたんだが...はぁ、この脳筋(アホ)に相談した俺がバカだった」


「紅川、今日の放課後、校舎裏に1人で来いや。俺をアホ扱いしたこと、後悔させてやる」


「よし、その喧嘩買った。むしろこっちが返り討ちにしてやんよ」


演習そっちのけで紅川と天宮(味方同士)の間で繰り広げられる口撃だったが、それを遮るように大きな声が周囲に響く。


「あのさぁ、どういう意図があってそんなことしてるのかわかんないんだけど、三流ドラマの安っぽい友情みたいなのをこっちに見せつけてくるの、止めてくれないかな?見てて気持ち悪いんだよ。ああ、もしかしてこういったのを僕たちに見せつけて何とか時間を稼ごうって魂胆なのかな?残念だけど終了までまだ時間はあるし、そもそもそんな手には乗らないよ」


紅川と天宮のやり取りを遮ったのは、2人を囲うように立っている4人のクラスメイトではなく、その後ろ(・・・・)で薄笑いを浮かべる1人の男子生徒だった。


「はっ、どこぞのお坊ちゃんはそんなドラマを見られるほどに毎日が暇なのかねぇ...俺はそんなドラマを見るくらいだったら、魔法を磨くための練習に時間を割いたほうがよっぽど有意義だと思うぜ」


「天宮が言ってることに同感だな。それに、そんなのばっかりに時間を浪費して魔法の訓練をしてないから、実技の成績で俺たちを上回ったこともないし、その程度の考えしか頭が働かないんじゃないのか?」


売り言葉に買い言葉、口撃には口撃―――紅川と天宮の2人は相手からの挑発を挑発で返すものの、挑発された男子生徒は余裕な態度を崩さなかった。


「その程度の挑発に激高して、なりふり構わず突撃してくるとでも思ったのかい?そんな安っぽい挑発には乗らないよ。数的にも優位なこの状況でそんなことするわけがないじゃないか。この近くに君らの仲間が潜んでいるってことなら多少驚くかもしれないけど、そんな人、この周囲にはいないみたいだしね」


そういいながら男は自分の隣に立っていた女子生徒に目配せする。


「ええ、この周囲150mには誰もいなかったし、探知の魔法が使われた様子もないから、あなたたちを助けてくれる人なんてきっとないわ」


「つまり、君らを援護をしてくれる人なんて、この周囲には1人もいないんだよ。だから降参してこちらのグループに入るか、君らを包囲している彼らに黙ってにやられるか、さっさと決めてくれないかな?特攻しても無意味だってのは、そっちの君がさっきその身をもって体験したばかりだし、方法がそのどっちかしかないってのは、君らがよくわかってるでしょ?」


「いま俺たちを囲んでいるこいつらも、そうやって脅して従わせたってわけか」


「脅してるなんて失礼な、彼らはこっちの要求を理解して協力してくれているんだよ...で、どっちにするか早く決めてくれよ」


自分たちの優位性が崩れることがないと信じているためか、男子生徒は高圧的な態度で紅川たちにしゃべり続けた。


「俺たちの周りに立ってる奴らの表情見れば、嫌々戦わさせられていることは本人たちが言わなくてもわかることだってのに、あのクソ野郎...飄々とあんなこと言いやがって」


「...天宮」


「おう、なんだ」


「作戦が決まった。俺がお前の支援と前2人の足止めするから、お前はその間にあのクソ野郎を全力でぶっ飛ばして来い。流石にあの態度は頭に来た」


「いいぜ、その作戦乗った。やることが単純で分かりやすいってのも理由じゃあるけど、それ以上にあいつの高圧的な態度とあのふざけた喋り方がさっきからとにかく気に入らなくて、どう調理してやろうかって思ってたところだったんだ。援護してくれるってんのならお前の分も含めてあいつの顔面を思いきりグーパンしてくる」


「それじゃ、20秒後に風系統の加速と 防御 (受け流し)の2つの支援魔法をお前にかけるから、それと同時にお前はあの2人めがけて突貫してくれ。万が一、間にいる2人とかが魔法でお前の移動の妨害をしてきたとしても、よけたりせずにそのまま全速力で突っ込め。妨害のほうは俺が何とかする」


「何とかするって...紅川、お前もようやく気合と根性の重要性ってのを理解し始めてきたみたいだな」


「そういった精神論に近い類のものは正直、あんまり理解したくないなんだが、今回の作戦(これ)に限っては多少の被弾と無茶は覚悟の上でやるさ...ただ、やるからには一発で成功させるぞ。成功の可否はお前にかかってるから、失敗しないように気はしっかり引き締めておけよ」


「おう、俺の気合と脳内シミュレーションは既にバッチリだっての」


「OK...んじゃ、行きますか!」


紅川がそういって天宮に魔法を発動しようとした瞬間、天宮が突撃しようとしていた相手の側頭部に青白い光弾が直撃するのだった。


遅くなりましたが、第10話を更新しました。


少しずつになるかもしれませんが、継続して更新していきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

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