⑶ー空想の旅ー
『不協和音を音律へと具現させる階位』⑶ー空想の旅ー
㈢
一週間後、旅から帰ってきた抽象概念は、様々な店で手に入れた、コルクを自室に飾った後、創造観念に帰ってきたという言語を送った。また、続いて、新しいコルクに一言書いて、一人その言葉を読み上げた。
「つれづれなるものは、ただ、つれづれなるままに、物事を解釈する。」
王宮に変わったとこがないかどうか、確かめるために、王宮を一回り歩いた。抽象概念は、それなりの立場に座らされていることから、責任という言語を背負っている状態である。地位や名誉という言語、空想の旅では消失できていたそう言った現実的な言語達が襲ってくる。空想の旅の終わりは、また、会議が終われば、それこそ随分先になるであろうが、また新たな空想の旅への思いを掻き立てる。
王宮も歩き終わり、また、今日から始まる会議のために、一足先に自身の椅子へと座ると、思想通念がやってきた。
「こんにちは、創造観念から聞きました。旅に出られてたようで、収穫はありました?」
思想通念は、王宮の会議のメンバーの一人で、女性の立場にある言語学者の一人である。
「お久しぶりです、そうなんです、まあ、コルクを集めるのが半分の、簡単な旅に出ていました。」
思想通念は、それは良かった、といった挨拶をした後、抽象概念からゆっくり手渡されたコルクに会釈をし、嬉しそうに自身の椅子へと急いだ。そして、間もなく、会議が始まろうとする時、創造観念が来ていないことに気が付いた。携帯を見ると、言語が届いていた。
「旅から帰られた様で、お疲れ様です。風邪を引きましたので、本日の会議は休みます。またお話し、お聞かせ下さい。」
抽象概念は、風邪だと言うから少し心配したが、数日で戻るだろうとも思い直し、空想の旅を終えて、初めての会談に臨んだ。様子はまるで、新世界だ。




