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ー終わりにー

『不協和音を音律へと具現させる階位』ー終わりにー



抽象概念は、誰にも見せることのない小説に対して、それが、自分の死後に、誰かに読まれるであろうことは、想像していた。別段、それを気に留める訳でもない。ただ、自己のアイデンティティの様なものを、形に出来たことだけで、充分気持ちは落ち着いていた。


言語で成り立つ王宮、此処に、自身の進退を捨てて、入閣したのは、もう随分前の、子供の頃のことである。自分は、常に言語と対峙してきたし、それに見返りも求めなかった。思えば、自分は幼い頃、不協和音という不安の中で生きていた。調和というものを求めたが、自身の周囲に、その様な現象はなかった。やはり、王宮で、役割を遂げ、不協和音を音律へと導いたことが、実績として、自分は言語を内包できたのだろうと思った。


不可視の階位とは、王の補佐官とは別の、小説家という職業に在ると考えている。現実の階位など、無くても構わないのだろう。抽象概念は、そして、何の現実的価値のない、コルクから成る小説に身を投じた。創造観念も、理論信念も、思想通念も、その他の仲間達も、皆、訳の分からない言語を持ちながら、王宮に悩み、王宮の中で死んでいく。


抽象概念も、自分の何れ来る死のことを考えたが、考えるだけ時間の無駄だと思って、自室で眠りについた。その後も、抽象概念は、死ぬまで、王宮で仕事をし、言語と対峙する生活を送ったそうである。


『不協和音を音律へと具現させる階位』、という小説が、どうなったかは、その行方も含めて、知る人は一人もいないそうである。

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