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或る生産職の日常  作者: 壷家つほ
第6話 転職の儀式
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32. 冒険者を測るモノ

 そもそも冒険者の「職業」の正体とは何であるか。


 それは「スキル」を効率良く使用、或いは育成していく為の仕組みの一つである。

 嘗て、スキルがただの技や技術、或いは「魔法」と認識されていた時代があった。この場合の魔法とは「魔法スキル」とは違う。神話や伝承と紐付いた不可思議な技――古い意味での魔法を指す。

 人類が今より無知だった頃のことだ。その時代には、経験や迷信を基にこういった技術を習得、鍛え上げていた。根拠となる理論に正確性が欠けていたのだ。

 しかしながら研究は進み、人は自分達が訳も分からず守ってきた技術を効率化、さらには進化させる知識を得た。肉体の状態や能力の配分を数値化して認識する「ステータス」、数値の大小を段階分けして能力の限界を測る「レベル」。最適化された「技術」は「スキル」と名付けられた。

 蛇足だが、現在ではステータスやレベルは単に数値のみを差すだけではなく、もっと広義の意味を持つようになる。けれども話の本筋から逸れる為、この場での詳細な説明は行わないことにする。

 こうして嘗ての神秘の解析が進んだことにより、個々の人間が習得できるスキルの数や威力には限界があることも判明した。人の肉体にスキルを嵌め込む為の枠は「スキルスロット」と呼ばれるようになるが、つまりはこのスキルスロットの数がスキル習得可能数でもあった。また、仮にスキルを習得できたとしてもステータス次第では十分に使いこなせなかったり、最悪の場合には心身が破壊される危険性もあった。

 因みに、冒険者適性の有無はスキルスロットの有無によって決定する。生まれつきスキルスロットがない者は、冒険者に必須とされ冒険者学校入学直後に習得させられる「冒険者基礎スキル」――心身の苦痛を軽減するスキルや蘇生スキルによる肉体の蘇生を可能とするスキル、ステータス成長の促進スキル等――を獲得できない。スロット数がゼロでなければ、上限はあるが数を増やす術もあるのだが、ゼロの者には現状手の施しようがない。故に、彼等資質を持たぬ者は冒険者としての活動が生涯許可されないのだ。

 話を戻すが、スキルに付随するこれらの問題を改善する為に誕生したのが「冒険者職業」制度だ。掻い摘んで言えば、スキルやステータス等を系統化して整理することにより、必要な能力と不要な能力とを分けることにしたのである。

 特定の職業に就いた者は、その職業に合わせた仕様にスキルスロットを改造される。必要に応じてスキルの習得を促進するように手を加えたり、スロット数を増やしたりされる。逆に、不要スキルの習得レベルや習得数を制限するような加工を行ったり、生まれ付きスロット数が多い者は、ステータスやレベルが低い内はスロットの穴を埋められることもあった。

 このように、主に転職等の際には激しい肉体改造が行われる為、転職者には冒険者組合から事前の健康診断が義務付けられていた。違反すると最悪の場合、スキルスロットからスキルを全摘出された上にスロットの穴を全て埋められ、冒険者資格や特権を奪われて、着の身着のまま放逐されることになる。


 さて、ここからは花々の話になるが、彼女にも特別抵抗する理由はなかったので、素直に冒険者組合の意向に従い、健康診断を受けに行くことにした。



   ◇◇◇



「このステータスを覚えておいて下さいね。授与式の後、面白いことになっていますから」

 健康診断の最後に、問診を担当した医師は健診結果が記載された用紙を花々に渡してそう言った。

「そんなに劇的に変わるものなんですか?」

「一次職、二次職転職時の『転職の儀式』よりもやや変化が大きいかもしれませんね」

「そうなんですか……」

 医師の言葉を聞いて少々不安になったが、今更後に引ける訳がない。

 診断書に目を落としたまま、花々は改めて覚悟を決めた。

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