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ウェジニールの翼  作者: 木柚 智弥
リンドフェンリルの空へ
15/16

挽回


 周囲に飛び交っていた風がピタリと止まる。

 腕を緩めずに後ろを見やると、頭を押さえて呻くフェリオルの横に、彼によく似た銀髪の女性と、さらに顔ひとつ分、背の高い金髪の男性が立っていた。

「フィルティア! ガレイルまで」

「そ、総主様……」

 こちらを見たフィルティアはため息を吐き、脱力したように言った。

「まったく、黙って聞いてりゃあ……」

 よく見ると、二人は研究者の白衣ではなく、初めて会ったときに見た神官の纏うような白装束を着ていた。

 今のルゼットは、これがクレシド幹部の正装――特に外部と交渉の場を持つときの服装だと知っている。

 彼女は背筋をまっすぐに戻すと、頭をさする父親を一喝した。

「正装が面倒だと言うからカトー大佐のほうを頼んだのに。あなたは一体、何をやってるんですかっ!」

「別に。奴なら撃退したぞ」

「じゃ、なんで保護すべき対象を鎌鼬で攻撃してるんです!」

 フェリオルは頭から手を下ろしてそっぽを向いた。

「だっておまえ言ったじゃないか。ユリウスには渡すなって。なのにこいつ、捕まってもいいから行かせろとか、ダメなら自爆させてくれとかバカなことを言うから、ちょっと懲らしめたらあいつが……」

 あいつと言われたフィルスは、フィルティアがこちらを向いた瞬間、地面に片膝をついて頭を垂れた。

「フィルティア様、総主様。罰はいかようにもこの身に」

「まてフィルス」

 慌ててしゃがみかけると、フィルティアが「ああ、いいから立て」とすぐに手を振った。

「大丈夫だフィルス。途中から聞いていた。おまえを咎める気なんてこれーっぽっちもないから。どうせ発端はこの焼きもち男がルゼットに酷いことを言って、おまえが抗議したら逆ギレしたんだろう」

 スパッと言い切られ、フェリオルはバッとフィルティアに向き直った。

「ち、父親に対してその言い草はなんだ」

「本当のことでしょうが」

 彼女は腰に手を当ててフェリオルを睨んだ。

「もうずいぶん昔のことなのに。愛するお兄さまを奪われた鬱憤を、その身内にぶつけて晴らしているような人、父親ってだけで尊敬できません」

(ええっ!)

 ルゼットが目を剥いて固まると、フェリオルの顔が悔しげに歪んだ。

「仕方ないじゃないか! ウルクにそっくりなんだから。見るだけであのときの悔しさがよみがえってくるんだよ!」

(ウルクと三角関係だったのか!)

 するとフィルティアがまたフェリオルの頭をパシッとはたいた。

「偉そうに開き直らないでくださいっ。確かにルゼットの外見はウルクにそっくりですけど、性格が全然違うじゃないですか」

「そんな細かいことを言われてもわかるもんか。とにかく似てるんだから」

「ああ、わかったわかった」

 黙って聞いていたガレイルがフェリオルの頭をポンポンと叩いた。

「子ども扱いはやめろよ!」

「私に比べたら十分、子どもだろうが」

 笑いながらいなされ、フェリオルはムッとして黙った。

「ちゃんと向き合わないから中身の違いがわからんのだ。まぁ、おまえの短気や不器用さも百年越しだから、今さら直らんか」

 苦笑混じりの台詞を聞きながら、ルゼットはだんだんわかりかけてきた。

 要するにこの人、ガキのまんま?

 ウェジンとは似ても似つかないフェリオルの冷淡な印象は、不機嫌な子どもが拗ねているのと同じレベルだったということか。

「………」

 ルゼットの肩から力が抜けた。

 嫌われているのは変わらないし、この先も好かれる要素はなさそうだ。けれど。

〈大好きな兄の心を持っていかれ、気が収まらなくて八つ当たりする弟〉

 そう思ったら不思議と諦めがついたような。

 ぼうっとしながらそんなことを考えていると、ガレイルがこちらを指差した。

「それよりフィルティア。フィルスを安心させてやれ」

 フィルティアがハッとこちらを向く。ルゼットは片膝をついたままでいるフィルスの肘をつかんで立ち上がらせた。

 フィルティアは二人の前に来ると、おもむろに頭を下げた。

「悪かったな、二人とも。父の所業は私の不徳。どうか忘れてくれ」

「おやめください。フィルティア様が頭を下げる必要などありません」

「調子狂うから顔を上げてくれよ」

 二人で口々に言うと、フィルティアはようやく頭を戻した。そしてルゼットに目を合わせ、気遣わしげに聞いてきた。

「さっき父が言った言葉は本当か」

「言葉?」

「カトー大佐に捕まってもいいとか、自爆させてくれとか」

 ルゼットは「ああ」と目を伏せた。

「あれは……気にしないでくれ。ちゃんとあんたの目の届くところにいるよ」

 たとえこの先は穀潰しと罵られるしかなくとも、フェリオルの言うとおり、ルゼットの管理責任者であるフィルティアに迷惑はかけられない。

「よくない。なぜそんな風に思い詰めたか、理由を話してくれないか」

「別に……」

 真摯に訊ねられて言葉に詰まる。

 今さら泣き言をぶちまけるのはバツが悪く、かといって本音を隠して説明するだけの気力はまだない。

 俯いたまま言いあぐねていると、フィルスが前に進み出た。

「フィルティア様にお願いがあります」

「わかっている。ルゼットをリンドフェンリルにくれというんだろう。検討の余地はある。そのためにも経緯を知りたいんだ」

「いえ。正確には国にではなく、私のもとにいただきたいんです」

 フィルティアは目を見張った。

「おまえに?」

「はい。ご許可いただけますか」

「それは……じゃあ、さっき『来てほしい』と言っていたのは、おまえの個人的なラブコールなのか?」

 えっ! と顔を上げると、フィルスのうなじがうっすらと赤くなっていた。

「そ、そう取っていただいても構いません。ですがまずはご説明します」

 フィルスはそう言って、先ほどのフェリオルとのやり取りを、ユリウスとのことも交えてフィルティアに伝えた。

「……ですからこれ以上は見過ごせません。特に、弟様方が翼をなくされてから生きる気力が薄れてしまわれて」

「やはり……」

「お気づきでしたか。この前、飛翔中に調子を狂わせたのもそのせいだと思います」

「そうだな」

 フィルスの訴えにフィルティアが頷く。

 ルゼットが空から落ちたことを、二人は思いのほか重く受け止めているようだった。

「もともとこの方は家族に囲まれて暮らしていらしたのですから、それが突然、目の前で奪われ、しかもお父上様の負の遺産まで背負わされては、いつ心の均衡を失ってもおかしくなかったのです」

「それを支えていたのがリグレとカイルの存在か」

「はい。弟様方が肩身の狭い思いをすることがないよう、ご自分は天空城で認められなければならない。その一念がこの方を辛うじて正常たらしめていました。けれどもそれがなくなってしまった。この先、ルゼットには生きる目標が何もないのです」

 切々と語るフィルスの声を聞きながら、ルゼットは自分でもよくわからなかった不調の正体を知った。

 弟たちが翼から解き放たれ、守るべきものがなくなってしまったからだ。

 フィルティアが額に手を当てた。

「その上、父の態度があれではな……過度のストレスを長期に受けた状態、即ち昔の〈翼〉たちの状況に近づいているというわけだ」

 フィルスは声を強くして続けた。

「このままでは危険です。この方の不調を治すには、やすらぎと癒し、そして生きる目標が必要です。天空城にいる限りそれは得られない。けれども私とリンドフェンリルならそれをさしあげられると思うんです」

「珍しく言い切ったな。その根拠はなんだ」

「私もまたこの方を必要としていることが、彼にはわかっているはずだからです」

 フィルスはこちらに顔を向け、微笑んでからフィルティアに戻した。

「実を言えば、少し前まではこんな大それたことを申し出る勇気などありませんでした。けれどためらっているうちに彼からどんどん生気が失せていってしまって、あげくの果てが今回の自爆未遂です。下手をすれば命を失いかねなかったのですから、なりふり構っている場合じゃないと悟ったんです」

 フィルスは再びこちらに向き直り、ルゼットの顔を覗き込んだ。

「あなたにもよく、僕が我慢していることを見抜かれましたよね。僕にもあなたがわかる。前はわかっても口には出せませんでしたけど、これからはためらわないつもりです。だから家族になりましょう」

 どうやら自爆と口にしたことが、彼に相当な踏ん切りをつけさせたようだった。

「いや、でも。……おれは」

「僕のこと、お嫌いですか?」

 首を傾げて率直に問われ、思考回路がショート寸前に陥る。

(ちょっと待ってくれ)

 思わず脇腹に手をやってしまったが、寝ぼけた電脳はブワンとひと鳴りしたあと、『血流活性。アドレナリン良好』とわけのわからない応答しかしなかった。その間、じっと水色の眼差しを注がれ、仕方なく正直に答える。

「き、嫌いと思ったことはない」

 むしろ気になってしょうがなかった。苦手に思ったのは、それを認めたくなかったからだ。

(おれは最初から、なぜかこいつが苦労したり危険に巻き込まれたりするのが嫌だった)

「じゃあ、来てくださいますね?」

 あからさまに表情を明るくされ、ルゼットは慌てて首を横に振った。

「だ、だからユリウスのことがあるだろ。おまけにフェロデ王の死因にも絡んじまって。どの面下げておまえのそばにいけるんだ」

「それはあなたの責任じゃありません」

 フィルスが声を強めると、フィルティアが口を挟んだ。

「ユリウスのことなら心配するな。連邦元首と軍司令官を呼び出して、協定違反で捕縛するよう脅しておいた」

「え……」

 フィルティアが後ろを振り返る。見上げたルゼットの目に、笑みを浮かべて頷くガレイルが映った。

「禁固一年、観察期間七年だ。これでやつも迂闊には動けまいよ。その間に色々な手が打てるだろう」

 力強く保証され、ルゼットは足元に目線を落とした。そこにフィルティアの声が降りかかった。

「だからルゼットがそれでいいなら私は反対しない。むしろ今のリンドフェンリルでは、常駐してもらえるならありがたいほどだ」

「本当ですか! ありがとうございます」

 フィルスが弾んだ声を上げた。が、フィルティアはそれを制した。

「喜ぶのはまだ早いぞ。ルゼットはフェロデの死にも負い目を持ってしまった。これもまた負担じゃないのか?」

「それはルゼットのせいではありません」

「まったく同感だが、なにしろ彼はウルクの遺伝子でできている。基本、繊細なんだ」

「繊細? おれが?」

 意外に思えて顔を上げるとフィルティアが頷いた。

「URK-8は仲間の調整役として、情緒を強調して作られたらしい。だから他者への情が篤いんだ。けれどその分、敵意や攻撃を受けたときのダメージも強くなってしまい、心配した伯父は手元に残した。だからおまえも、基地での生活が予測以上のダメージになった可能性はある」

「ああ……」

「まぁ、あのときの伯父の配慮が父に嫉妬心を生み、おまえに跳ね返ったというのがなんとも皮肉だがな」

 ちらとフィルティアが目線を後ろに向けると、フェリオルがおもしろくなさそうな顔で横を向いていた。

「おまえの罪悪感が解消されないうちは逆効果になる恐れがある。他の道も考えなければ」

 実は本部の衛星基地に移る話があってと続けられ、ルゼットは目を見張った。

「驚くことはない。これはリグレのからの要請だ」

「リグレの?」

「ああ。彼は上層部に、自分たちから翼が取れれば〈ウェジニールの翼〉は兄一人になるのだから、一緒に暮らす権利があるはずだと訴えた。『ガレイルの管理下なら周りに文句は言わせない』と」

 それが、リグレが翼を取ることを承知した一番の理由なのだと知れた。

 バカだ。おれのために、わざわざ周囲に波風が立つような要請をするなんて。

 胸の奥からブワッと熱いものが込み上げ、それを振り切るようにルゼットは勢いよく首を横に振った。

「それはない。おれたちは顔が似すぎている。二人のこれからを考えたら〈ウェジニールの翼〉を連想させるのはだめだ」

「ルゼット……」

 フィルスの手がそっと二の腕に添えられた。

「あいつらはこれからクレシドの一員として生きていくんだ。そこにこんな目立つ翼をくっつけた兄貴がいたんじゃ、ない腹を探られてよくないし……おれも辛い」

 こぼすように言うと、フィルスのもう片方の手のひらが肩を包んだ。

 温もりを感じ、しかしどうしようもなく孤独だとも感じる。同じ種族の者がどこにもいないというのは、想像以上に寂しい。

「そうか……」

 フィルティアも察したように押し黙った。

 しばらく沈黙が続き、涼風が森を揺らした。するとふいにガレイルが訊いてきた。

「フェロデのことがなければ、おまえはリンドフェンリルに住みたいか」

「えっ?」

「リンドフェンリルはおまえにとって暮らしやすい場所か?」

「それは、……」

 もちろん基地内より、故郷に似たリンドフェンリルのほうがずっと息がしやすい。でも。

 口にせずとも伝わったか、ガレイルは思案顔になった。

「ではもし、その件が挽回できたとしたら?」

「挽回……?」

「何を言ってるんだガレイル。フェロデは死んだ。挽回もへったくれもない」

 フェリオルが呆れたようにガレイルを見上げる。それを「その身も蓋もない言い方が子どもだと言うのだ」と頬をひとつねりしてから彼は続けた。

「有効な手がひとつだけある。ルゼットならできるかもしれない」

「おれが?」

「ああ、多分。ただ――」

 ガレイルは言いながら近寄ってきた。

「体に少々負担がかかると思う」

「えっ……」

 と声を上げたのはフィルスで、ルゼットは目の前に来たガレイルに目線を合わせた。

「だが効果は絶大だ。成功すれば間違いなくおまえは負い目から解放されるだろう。おまけにリンドフェンリルの問題も解決できるかもしれん。つまりフィルスの負担を減らすことができる」

「本当ですか!」

「まて。そんな都合のいい話があったなら、私の研究室でとっくに検討されているはずだ」

 思わず勢い込んだルゼットをフィルティアが引き止める。ガレイルは「いやいや」と片手を上げた。

「これは私とルゼット本人しか知らない事実に基づいているのだ。とはいえルゼットにも覚悟が必要になる。期間は約一年。強制してできることではない」

「一年……」

 いったいどんな仕事が課せられるのか。

 他の面々が怯む中、ルゼットは即答した。

「おれ、やります」

 それがどんなに厳しい内容でも、ガレイルの話が本当ならやるだけの価値はある。

 しかし横から声がかかった。

「待ってください。僕は承知しかねます。よく確認してから」

「フィルス、これはおれとガレイルの間の話だ。おまえは口を出すな」

 勢いを削がれてつい口調か鋭くなる。が、いつもなら恐縮するフィルスも今日は引かなかった。

「あなたをお迎えする国の長として、私には関わる権利があるんです!」

 キッと眉根が寄せられ、腕に添えられていた手に力がこもる。

「なっ」

 んだと? と言い返そうとした途端、今度はその指がフッと緩んだ。

「それに、あなたを請い願う者として、心配する権利もあるんです……」

 しょんぼりと肩を落とされ、言葉を封じられる。

「……こっ、……っ」

 ルゼットはフィルスのこのしょげた姿に弱かった。

「心配はいらない」

 ガレイルが笑いながら言った。

「どこの国のでもそれに似たことは行われている。人はみな、それを乗り越えて幸せをつかんでいるのだ」

 フィルスがおずおずと顔を上げた。

「そうなのですか?」

「むろん。ルゼットの場合は多少、人と条件が違うが、体は皆より頑丈だ。そう時を置かず回復できるだろう。おまえの励ましがあればさらに心強いはずだ」

 だから安心して迎える準備をしてやれと告げられ、フィルスは頬を紅潮させた。

「総主様がそこまでおっしゃるなら。彼の助けになれるよう、心して備えます」

 そうして彼は手を滑らせ、ルゼットの両手を大事そうに包んだ。

「―――」

 何の負い目もなく、大切な人たちと生きる。

 昔、あたりまえのように手の中にあり、突如失われたもの。

 それを再び与えようと手を尽くす存在に対し、長らく封印されていた感情に火が灯る。

 ――もし本当にそれを成功させることができたなら、この先はおまえの、おまえたちのために生きよう。

 柔らかく微笑む水色の瞳を見つめながら、ルゼットは心に刻み付けた。

「じゃあ、今後おまえはリンレーク試験国内で暮らすんだな?」

 数歩先に立つフェリオルに改めて問われ、ルゼットは慎重に答えた。

「ガレイルの提案が成功したら……そうしたいと思う」

「ふん。だったら二度と行方知れずになんかなるんじゃないぞ」

「えっ……」

 まるで心配したような口振りに目を見張ると、彼はバツが悪そうにそっぽを向き、一瞬後に姿を消した。

「最後までなんと大人げない……」

「それも今さらだ」

 フィルティアがぼやき、ガレイルがため息を吐く。

「あれでも八つ当たりしていることへの詫びのつもりなんだ」

 情けなさそうに説明され、ルゼットは笑ってしまった。

「いいよ。もう」

「ホントだぞ? カトー大佐に拐われたと知って、外縁部の結界をドイツのブレーメンまで伸ばして取り返しに行ったんだ。あんな大技、普通はやらないんだぞ」

「結界をブレーメンまで……!」

 結界の事情に詳しいフィルスがサーッと青ざめる。しかしルゼットにはよくわからない。

 それはただ、ユリウスへの対抗心から張り切っただけじゃないのか?

 そう思ったが、口にするのはやめておいた。

 もしかしたら、ほんの少しは惜しんでくれたのかもしれないから。

「ところでガレイル。ルゼットに何をさせる気なんだ。専用の武器や道具は必要か?」

 要るのなら手配するがとフィルティアが訊ねると、ガレイルは「道具……」と呟いて口を閉じた。

「一年もかかるならすぐに取りかかったほうがいいだろう。銃器類は所持可能かどうかを判別する必要がある」

 なにしろ時代がβ-4だからと付け足され、今までとは立場が変わることに思い至る。

(そうだ。助っ人はあらゆるハイテク武器がすべて『時々降臨なさる使徒様がお持ちの品々』で許されたが、常駐ともなれば制限しないといけないかもしれない)

 プラズマサーベルや閃光弾はどうなんだろうと考えていると、ガレイルが一瞬、肩を震わせてから姿勢を正した。

「それは、早いほうがいいだろうな。アルバータ基地内では疑問の声が上がっているようだが、クレシド本部はフィルティアの手法を評価している。今回の危機を回避できるかは注目の関心事、ルゼットの成功はクレシドの今後に影響を与えるだろう」

 思いがけず大きな話をされ、ルゼットは息が詰まった。

(おれに任されて大丈夫なんだろうか)

 すると不安を察したか、フィルスがすぐに寄り添ってきた。

 ガレイルが満足げに頷く。

「フィルス。おまえの存在がルゼットを支えるだろう。だから私は成功を確信している」

 フィルスは嬉しそうに頬を上気させた。

「それで、おれはどこで何を?」

 過酷な内容で明かしにくいのか、なかなか本題に移らないガレイルを促す。

「ああ、うん。それはだな……」

 彼の口から具体的な内容を明かされた瞬間。

「「「ええぇ―――っ!」」」

 緑豊かな森の上空に三人分の絶叫が響き渡った――。


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