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次の日もまた私は鞄に残りの10着の服をつめ呉服屋に来ていた。


「おー、約束通り来てくれたね。昨日あんたが帰ったあとにちゃんと服みてみたら、こりゃまた丁寧に縫ってあるじゃないの。昨日の服のお代あれじゃちょっと安すぎたから、今日の分と昨日の分でこれぐらいでどうだい?」


私はその金額に驚いた。


「いえ、こんなにいただけません!」


「何をそんな欲がないことをいっとるんだ。いいから、持って行きなさい。」


店主は笑いながらお金を封筒にいれ私の鞄につっこんだ。


私はそれならと、ありがたくそのお金をいただくことにした。


これで残された家族の生活は確実によくなるわね・・・と安堵の溜息をこぼす。




そしてその足で自分の髪を売りにくことにした。


「こりゃまた別嬪さんだねぇ、あんた!」


恰幅のいい女店主が私の肩を叩いてきた。


「あの・・・それで髪を・・・」


私は幾分か圧倒されながらも、髪の毛を買ってくれるか尋ねる。


「いいとも、いいとも。こんな綺麗な髪あたしゃ長年この店やってるけど見たことないよ。」


「よかったです。あの、何か髪を切れるものがあれば貸していただきたいのですが。」


「こんな綺麗な髪切るの勿体ないけどねぇ。」


笑いながらおばさんは小刀をかしてくれた。


私は自分の髪を全て掴み、ざくっと一気にかろうじで肩につくぐらいの長さまで切った。


「そんなに切っちゃって・・・。あんたの髪を好いてた人は泣いてしまうよ。」


おばさんは髪の毛を受け取りながらも残念そうに呟いた。


私は軽く笑い流し、思ったよりも貰えたお金を鞄にしまいその店を後にするのだった。




―――――――――――――――――――――――――――――――




後宮に戻る途中、激しい頭痛におそわれ近くにあった大きな木の元で体を休めることにした。


大きく深呼吸をし耳鳴りと頭痛に耐える。


幸い吐き気はなく、何分か休んでいると頭痛も我慢できる程度まで治った。


服だけで稼いだお金で妹は平民向けの普通の学校であれば、そこまで金銭面で苦労することなく通えるだろう。


あとはこの髪の代金を生活にあててもらえば・・・きっと今よりは楽な生活をできるはず。


借金は返し終わったし、死ぬまで働くつもりだからその分のお金も家族に渡す事ができる。


今のうちにまた財務室に行って今後お給金は実家に届けられるよう手続きをしなければ・・・


私はそこまで考え、自分の鞄の中にしまってある髪の代金をとりだした。


「このぐらいあれば半分ぐらい使ってもいいかな・・」


やはりアルキシン様に1つぐらい何か残したい・・・


貰ってくれるかわからないけれど何か買ってみようかな。




私は残った体力を振り絞るように身を立たせ、また街中へと繰り出した。


そして買った1つの腕輪。


金色の細工が施されている黒い腕輪。


見た瞬間、迷うことなくこの腕輪を購入した。


「アルキシン様と私が一緒になったみたい・・」


思わず心の中で思った事を口にだしてしまい、自分で自分の言葉に赤くなる。


だが、手の中にある腕輪が気分を高揚させるのであった。




―――――――――――――――――――――――――――――――





お昼頃、後宮に戻ると私の部屋にはアルキシン様がいた。


そして私をみた瞬間、私の頬を軽くではあるが殴ったのだ。


「どういう事だ!!!!!ユエ!!!!!!」


私は何の事だかわからず、打たれた頬に手をあて途方に暮れた。


「ユエ!!髪をどうして勝手に切った!!!何のために切ったんだ!!それにお前、どこにいってたんだ!」


アルキシン様は矢継ぎ早に言葉を連ねる。


「あの、邪魔だから切ろうと思って町にいって・・・それでお金あんまりないことに気づいたので・・・自分で小刀を使い切ったのですが・・・いけなかったでしょうか・・・」


私は大したことじゃない事に安堵し肩の力をぬく。そして、罪悪感を隠しながらも嘘をついた。


すると、アルキシン様がいきなり私を強く抱きしめた。


「お前の髪の毛も何もかもすべて俺のものだ。勝手なマネはするな!」


私は不覚にもうれしいと感じてしまった。


ただの玩具でも求めてくれるのが嬉しかった。


そして、もしかしたら最後の時・・・アルキシン様は腕輪を受け取ってくれるかもしれないと思った。


その後、アルキシン様に呼ばれたマリアが髪の毛を綺麗に整えてくれた。その際何度もマリアに「なんて勿体ないことを・・・あぁ・・・」と嘆かれ、その度に私は「・・・今度からはちゃんと相談するから ごめんね」と謝り続けるのだった。






そして余命を宣告された日から半年が経過した。


私は以前のように食事をとることができなくなってしまった。


スープのようなものと、果物は胃袋に押し込むようにすれば食べれるが、それ以外はあまり食べれない。


食べればすぐ戻してしまうからだ。


それでも私は毎日執務室に向かい仕事をした。


何度かアルキシン様に、顔色が悪いことや痩せたことを心配され、ノエルじい様の元へいくことを勧められたが、私は1度もノエルじい様の元へと足を運ばなかった。


そんな私に気づいたのか「ノエルの元へいけ!命令だ!」とまで言われたが私は行った振りをしていかなかった。


残り少ないとわかっているから少しでもお金をかせぎたかった。


それに、少しでも長くアルキシン様と共にいたかった。


服を作ることがなくなり睡眠が多くとれるようになったこともあり、体力が著しく衰えることはなかった。


それでもアルキシン様と夜を共にしたあとは、半日寝台から出られないという状態が続いた。




そして・・・ある日の朝。


私は吐き気が我慢できずそっとベッドから出た。


まだ朝も早いしアルキシン様が起きることもないと思い油断をしてしまった。


いつものように声を殺し吐いていると、後ろに人がいる気配を感じた。


それでも私は吐くのを止めることができず、後ろを振り向けないでいた。


すると、


「誰かおらぬか!!!!!!今すぐノエルをここに呼べ!!!」


怒鳴るアルキシン様の声が聞こえ、もう隠せないことを悟り、そのまま床に座りこんだのだった。


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