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治まらない吐き気


私は自分の死が確実に近づいていることを悟った。


「もうそろそろ実行に移す時かな。」


ちょうど20着目を作り終えた。


私はそっと自分の髪を縛る紐を解く。


腰までは届いていないが目標だった肩甲骨は超える長さまでにはなった。


これなら高値で買ってくれるかもしれない。


自分が作った今までの服を箪笥から出し寝台に並べる。


「んー。我ながら結構上出来かな。」


出来上がった服に私は満足しつつ、どうやって隠れて町までこの服を持っていくか考えをめぐらした。


2回ぐらいに分けて運べばいつも自分の使っている鞄にすべて入るかもしれない。


私はさっそく自分の鞄をひっぱりだし、中の物を全て出した。


そして、その鞄の中に10着ほど入れてみた。


その時、我慢していた吐き気が抑えられなくなり慌てて手洗い場にかけこんだ。


吐くのにも体力を使う。


私は息が切れ、立ち上がることすらできず、その場に座りこんでしまった。


「なんでよっ・・・!」


私は心底自身の体に嫌気がさした。


死ぬまでの間、こんなに苦しむなんて考えてもいなかった。


最近はアルキシン様と寝ている間にも、こっそりベッドを抜け出し吐くようになってしまった。


「もう疲れたかも・・・早く幸せになってくれないかしら・・・アルキシン様」


自分の言葉に自嘲的な笑いを漏らしてしまった私は、自分を奮い立たせ、力の入らない膝に無理矢理力を込め立ち上がった。


そして、水を口に含みうがいを済ませたあと、鞄を持ち町へと向かった。




やっと見つけた呉服屋に入り、自分の作った服を買ってくれるよう頼む。


「こんないい布の服いいのかい!?もちろん買わせてもらうよ。これでどうだい?」


店の店主は快くお金をたくさんくれた。


この半分で借金は返し終わる。


そうしたら残った半分のお金と、あと10着分のお金は家族に渡せると思う。


「店主さん、あと10着ほどあるんですが、明日もってくるのでそしたらまた買ってくれますか?」


私が尋ねると店主は笑って了承してくれた。


お店を出た私は、このまま借金を返しに行くことにした。


王宮の財務室にむかい自分の名を告げお金を渡す。


「はい。これにて全額払っていただけました。こちらをお受け取り下さい。」


財務官の一人が私に返済証明書を渡してくれた。



私は静かに財務室を離れ後宮へと戻った。




「はぁ・・・。」


寝台に倒れるように寝た私は、鞄の中にあるお金の事を思い出し身を起こす。


「これでお父さんとお母さん、そして妹の生活が少しでも楽になるといいけど・・」


私はそのお金を箪笥の中にしまった後、机に向かい手紙を書くことにした。


手紙で伝えるっていうのも逃げてるみたいだけれど、面とむかって言うなんて私にはできないと思ったのだ。


しかし、書こうとすると色々な思い出が蘇ってきてペンを持つ手が震えてしまった・・・でも今書かなければまたいつ体調が悪くなるかわからない。


少しでも体の自由がきくときに書いてしまわないと・・・。


そしてなんとか私は家族への手紙を書き終えることができた。


アルキシン様にも手紙を書こうかと一瞬思ったがただの玩具から手紙をもらってもやり場に困るだろうと思い書くのをやめた。


もしかしたら読まないで捨ててしまうかもしれない。


それはあまりにも悲しいから、そんな事態が起こらないように何も残さず死ぬ事を決めた。




そしてその日の夕方、自室で食事をもらっているとアルキシン様が訪れた。


自分も食事を一緒にとるという。


「珍しいですね?今まで私と一緒に食べたことなんてなかったのに。」


「近頃忙しくてあまりお前にかまってやれなかったからな。その謝罪を込めて一緒に食べてやろうと思っただけだ。」


不敵な笑みをみせるアルキシン様が可笑しくて笑ってしまった。


「アルキシン様は本当に王様になるために生まれてきた人ですね。」


「当たり前だ。父上のあとを継いで王になる事が俺のすべてだからな。」


そんなアルキシン様の言葉に、私は笑うのをやめ真剣に告げた。


「全てなんてことないわ。ちゃんと愛する人と一緒に幸せになるのだってアルキシン様の役目だもの。」


そんな私の言葉に眉を寄せるアルキシン様。


「なぜそれが俺の役目なんだ?」


「だって、アルキシン様が幸せそうにしてたら国民はみんな嬉しくなるでしょう?それに私もそんなアルキシン様の姿見てみたい。」


アルキシン様は何も言わずワインを口に含んだ。


「レイン様はご存知ですよね?カスミ草の彼女ってレイン様でした。」


そう私は告げると食べかけの夕飯に手を伸ばす。


「またそれか。二度と女の事などいうなと言ったはずだ。」


アルキシン様は怒ったように、音を立てグラスを机に置いた。


机がその反動で微かに揺れる。


「・・・ただカスミ草の人だったって言いたかっただけ。それ以外意味はないわ。」


私はわざとアルキシン様とは視線を合わせずに食事をつづけた。


そんな私にアルキシン様は反論することなく口を閉ざすのであった。


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