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言葉に込める想いはいつも

作者: 洞 工夫

 言葉は届く。紡いだらその分だけ、きちんと。だから人は口を動かす。言葉を吐き出す。そうすることで自分を落ち着かせようとしているのかもしれないし、逆に奮い立たせようとしているのかもしれない。どちらにしても共通しているのは、言葉を放つ、という点だ。


 言葉は届く。でも。


「その中身がきちんと伝わるかは、分からない」


 その証拠が、この状況だ。


 告白されて、頷いて、手を繋いで。


 キスをして、嬉しくて、関係を持って。


 思い出つくって、楽しくて、楽しかったのに。


「私は君が好き。これからも、ずっと」


 その言葉の本当の意味は。言葉以上に広がる解釈は。甘美な妄想。蕩ける身体。にやつく私。世界は私を中心にきっと回っていて、彼がいなければ私はいないから、だから彼がいないと、世界は無くなる。


「無くなりそうだな、世界」


 想像力は逞しく。そう教わったはずなのに。自ら発した言葉の甘さに酔いしれて、私はどうやら前後不覚に陥っていたみたい。


 嬉しかったのに。楽しかったのに。


 初めてだったのに。緊張したのに。


 あなただけだと思ったのに。あなたしかいないと思ったのに。


「どうして。ねえ、どうして」


 ほら、言葉にしちゃえばこんなに短い。その言葉の中身を、あなたはどれだけ読みとれる?


 責めたら負けなのだろうか。許せば勝ったことになるのか。だとしたらこれは、なんの勝負なのだろうか。


 関係を続けるため? 好きでい続けるため? 愛想を尽かさないため?


 どれもが当てはまる気がして、なんだか悔しくて涙がにじむ。


「私はあなたが大好きです」


 浮気をされて、別れを切り出され。要するに一方的な、負け戦。そもそも勝負にすらならない。


「私はあなたが大好きです」


 どんな感情を込めればいいんだろう。何を吐き出せばいいんだろう。彼への怒りか、自分の不甲斐なさへの怒りか。とりあえずこの先は楽しむことも喜ぶこともないだろうから、せめて笑顔で送ってあげようか。いろいろ、ぐるぐる。頭ん中、回って。


「私はあなたが大好きでした」


 決して言わないだろうと思ってた。過去形なんて。


 私はいつだって、言葉に未来を託していたから。


「さようなら」


 その言葉の中身は何?


あなたには、伝わらないんだろうな。


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