表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

6 『フラグ回収、乙です』

大体タイトル通り

今回少し短いです。

それから数日。

私はエルフィさんに魔法を教わったり、ちょっと森へ散策に連れて行ってもらったり、彼女の研究の手伝いをしたり…なんやかんや、楽しく過ごしていた。

その間に、ちゃんとこれからの事を話し合ったりした。と言っても本当にただ寝て起きただけなのでこの世界に来てしまった理由の手掛かりも何も無く、大した成果は無かったのだが。


そして、私はいつかここを出て行くべきだと思った。


ここの暮らしは、正直とっても居心地が良い。エルフィさんという、親切な人に助けてもらって、家に居させてもらって、魔法まで教えてもらっている。

何より好きに動けて、飛んで走って騒いで…憧れていた事が簡単に出来る。


でも違うな、と感じた。

確かに私は元気になりたかった。仲良くなった子が退院していくのを見送って、親には目一杯心配かけて、幼馴染二人には私のせいで余計に時間を取らせてしまっている。二人とも部活やら勉強で忙しいはずなのに、だ。


でもただ元気になればそれで良い訳がなかった。

心配させたくなかった。怖がらせたくなかった。悲しませたくなかった。大変な思いをさせたくなかった。

元気になって、それを迷惑かけた皆に見せなきゃ意味がないのに。

元気になるとしても、向こうで元気にならなきゃ。


だから私は帰る。

帰って、例えまた前の弱い身体になっても。

……もし、もう帰る場所が無かったとしても。


それもエルフィさんに伝えた。

エルフィさんは特に反対はしなかった。

少し寂しそうだったけど…。

この人にはすごくお世話になったし、これからもそうなるかもしれない。

だから帰る前に、ちゃんと恩返しをしよう。そう決めた。



『…エルフィさぁん、もう寝ましょうよ〜』


返事が無い。ただの研究バカのようだ。


私は少し前に存在を知った地下室。そこからしまい込まれていた本を何冊も引っ張り出して、エルフィさんはそれを読み耽っている。


…ここ数日の彼女の様子が変だ。いつも何か考えていて気がそぞろだし、毎晩遅くまで起きていて昼まで寝ていたかと思うと、夜通し起きていて翌朝フラフラしていたりする。

正直なところ、見ていてヒヤヒヤする。

魔法を教わったおかげでちょっと速く飛べるようになったり、風を少しだけ扱えるようになったから私も出来る事は増えたけどさ。


でもエルフィさん、井戸に転落したら私助けられる自信無いんでシャンとして下さい、マジで。


『…寝るか』


私まで寝不足では本気で危険だ。夜の間は外に出ないだろうしこのままにしよう。


テーブルの上のクッションに猫みたく丸まって、身体の力を抜く。

…だいぶこの身体にも慣れたなぁ。立ち方とか忘れてたらどうしよ。


何気なく窓から外をみた。

今夜は満月。こっちの世界では月が大きく見えて、向こうより青白い。何よりクレーターとか岩のごつごつした感触が分からないくらい、つるっと、のっぺりして見える。


そういえばこっちの神話だと、月は特別なんだっけ。

月は神々が住む世界からこの世界を見る為に空いた穴で、神々の世界に満ちる膨大な魔素(マナ)が流れ込んでいるとか。だから月の女神セリニは魔法の神様でもある、とか。

事実、満月の夜は普段より特に空中の魔素(マナ)が多くて、魔素(マナ)を一気に取り込んで変異したらしい魔物が活発になる。満月だけじゃなく、月が昼よりもはっきり光る夜は魔物の時間。危険だから夜遅くに街を出ないのが常識らしい。


まぁ深夜出歩かないのはこっちでも同じだけどね。命に関わる訳だ。


『あぁ〜ぁ…ぁふ』


うむ、眠い。私は寝る。


『おやすみなさ〜い』



薄く瞼を持ち上げる。目の前に木の棒が横向きに立っている。

…あ、私が横になってるのか。これテーブルの脚だわ。


「……イテッ」


身体を起こしたら天板に軽く頭が当たった。当たったところをさすって、そのまま頭をコリコリと掻く。大きい欠伸が自然と出た。


「…………ん?」


何か変だ。

手を目の前にかざしてみる。

普通の手だ。

うむ。普通の_______


「……アレ?」


五本の指。丸い爪。白く細い、人間(・・)の手。


「……………………」


下を見る。足がある。二本の、日に焼けていなくて細い足。

立ってみる。

足を捻った。


「ってェーーーー!!」


グニッて!グニッってなったよグニッて!あーあー腫れてきた。赤くなってまぁ痛そう。……私の足だよ!!

立ち方忘れるとか人間だろちゃんとしろよ!フラグ回収乙です嬉しくない!!


「レーナ…?どうしたの叫んだりし、て」

「エルフィさん!!何がどうなったんでしょうこれ!?」


足痛いし何がなんだか分からないし足痛いし涙出てくるし、今気付いたけど真っ裸だし…

え、何これ??


「え…え…?レーナ、よね?」

「ハイそうでっす!」


エルフィさんが!この事態に寝起きの頭が着いてきてない!まさか徹夜(オール)ですかそうですか!?


「と、取り敢えず水…水飲んで落ち着きましょう……」


フラフラと覚束ない足取りでキッチンの水瓶の蓋を開ける。


……あれ、なんかすごく嫌な予感がする…。


「アッ!?」

「足滑らせたーーーッ!?」


やばいですよ!まずいってこれはぁ!?


「とっ、取り敢えず引き揚げるんで暴れないで下さい、ってあちょっ、痛い痛いッ」


…その後なんとかエルフィさんを水瓶から引き抜き、二人で床にへたり込んだ。

……何この、朝からカオス…。

色々まとめ

神様が地上を覗きする穴、および窓。満月の夜は普段より多く神々の世界から魔素が流れ込むらしい。この事月の女神様セリニは魔法の神様にもなってる。

魔物

何気に今回初登場。生き物が魔素を取り込んで変異し、進化した生物。普通の獣より凶暴だったりする(設定)。

タイトルのフラグは鈴奈が作中で2本、私が前回の後書きで正式に立てた1本です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ