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4 『魔法を教えて貰えませんか』

注意!

お食事前の方は読むのをご遠慮下さい。

太陽はすっかり高く昇り、森の中は明るく照らされている。鳥のさえずる声やそよ風が木々を撫で、心地いい気配を残して過ぎ去る。

今日も今日とて、森は平和だ。


『ゔぉえぇぇぇぇぇ……』


私を除いて。


「レーナ、耐えるのよ!吐いたら意味なくなっちゃうわ!」

『おゔっ、ぐぇ、ぉえぇぇ…』


家の庭に出て、布で口元を覆い、その綺麗な金髪をきっちりとまとめて、頭を覆う三角巾に隠しているエルフィさん(呼びにくいので略させてもらった)は私を叱咤しながらも大鍋をかき混ぜる木ベラを止めない。

一見無害そうな、透き通った淡い青の液体で満たされた大鍋は、見た目からは想像もできない凶悪な香りの煙をもくもくと立ち上らせている。


この家の薬棚には様々な大きさ、形の小瓶がズラリと並び、その一つ一つには例外なく何かが詰まっている。けれどそのどれもが鮮やかな色をしていて陽の光を透し、幻想的な景色を作り出していた。妙に濁っていたり気持ち悪い色だったり、それに加えてドロドロだったりしない、実にファンタジーな光景だった。

私はこれがものすごく気に入って、窓際から薬棚を眺めて味無しご飯から現実逃避したりするのが習慣になっていた。


が、この見た目に美しい魔法薬たち、とんでもない劇物揃いだったらしい。


効果が強すぎて丸一日感覚が麻痺する気つけ薬とか飲む量を間違えると全身痺れて動けなくなる滋養剤とか同じく使う量を間違えると失明する目薬とか。


結晶体の中に埋め込まれている小指くらいの小瓶の中身が、ほんの少し魔素(マナ)を含むと大爆発するニトロめいた物質だったと知った時は腰を抜かすかと思った。

シャボン玉液みたいな遊色(ゆうしょく)で綺麗だなーと思ってたらこれだよ。

結晶体は魔素(マナ)を一切通さない絶縁体のようなもので、この結晶体が長い間地中で放って置かれると地熱で溶けてコレになるんだとか。火山の噴火を誘発するとかどんだけですか。そんな危険物をこんなところに放り出さないでいただきたい。


で、なぜ私が今モザイク必至な状況になっているのかというと。


まともなご飯が食べられないというのは、思っていたより堪えることだったらしい。

日に日に生気を失っていく私を見て、エルフィさんが一計を案じてくれた。

私が味を感じないのは、病気ではないから『治す』ことはできない。

なら、身体を変化させたらそれに対応して味覚も戻るのではないか。

そういうことらしい。

…身体を変化させるのがどうして味覚を戻す事になるのか分からないけど。


今エルフィさんが大鍋で煮ているのは『変身薬』らしい。

使用者を身体の仕組みから別の姿に変えてしまう、かなり強力な薬。


『ぉゔっ、ぎ、ぐぇぇ』

「まだ効かないのね…!レーナ、もう少し耐えてちょうだい…!!」


しかし子供とはいえ、伝説の竜である。

毒薬は全く効かない、という伝承もあったらしく、その通りに薬の効きも極端に悪い。

お香のように薬を火で炙って煙を吸い込む薬なのだが、普通の人間ならスプーン一杯で済むはずが大鍋いっぱいを煮込むことになった。


その結果がコレである。


結局、鍋の中のものを全部使い切っても薬は効かなかった。


「あー、ダメだったか…」

『ずびばぜん、えるゔぃざ…おゔぇぇぇ』

「やり始めたのは私だから。気にしないで。…古代竜(エンシェントドラゴン)の投薬実け、ゴホン、耐性調査も出来たし」

『…………』


コノヤロウ。

吐き気が治らなくて話せないのでジットリと睨んだら、あらぬ方を向いてぴゅ〜と口笛を吹き始めた。

フラグ回収してしまったじゃないか。


『はぁ〜、これは本格的にヤバいなぁ…』

「そうねえ、変身薬が効かないとは思わなかったし、また別の手を考えないと」

『もういいです。……ぅぷ』


二日酔い体験はもう嫌だ。お酒飲んだことないけど。


「他に何か気を紛らわせる事があればね…」

『気を紛らわせること…』


そう言われてもここにはネットも漫画もないし、そもそも人じゃないから絵描いたりも出来ないし…………あ。


『エルフィさんって魔法使いなんですよね?』

「え?ええ、そうね」

『じゃあ、魔法を教えて貰えませんか』


そう言うと、エルフィさんはちょっと驚いたみたいだった。


「使えなかったの?」


がくっ。


『私異世界から来たって言いましたよね?魔法が無い世界だって』

「ええ、聞いたし覚えてるわ。でも、あなたは竜よ?てっきり使えるけどなにか理由があるものだと」

『へ?』


あ、そうだ。古代竜(エンシェントドラゴン)は魔法を使うんだっけ。

あれ?でも…


『私、それっぽい事といったら空飛ぶくらいしか出来ませんよ?』

「そ、そうなのね…。まぁ魔法を教える事は構わないけど、いいの?」

『え?なにが』

「だっていつか帰るんでしょう?魔法の無い世界に」


口元を覆う布を外して、エルフィさんは真面目な顔でじっと私の目を見た。


「元の世界について、何か聞けば答えてくれたけど、レーナは帰りたいとか…元の世界からここに来てどうしたいのか、一言も言わなかったわ。…でも、こちらで一生を過ごそうとしているようにも見えなかった。それは今は出来なくても、いつか帰ると決めていたのでは無いの?だから魔法にも関わろうとしないのかと…思っていたのだけど」


びっくりした。

確かに、言われてみれば…


『…エルフィさん』

「……何?」


『まっっったく何も考えてませんでした…!!』

遅くなりましてすみませんでした!!

ちょっと短いですが、書きたいだけ書くと長くなりそうなので良さげなところで切りました。

連投するかもしれません。

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