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プロローグ

初投稿です。

至らぬ点、拙文、誤字脱字などやらかすかもしれません。

見て頂けたら嬉しいです。

目覚めの瞬間は、水中から(おか)へ浮き上がる感覚に似ているという。

薄く瞼を持ち上げ、隙間から差し込む光の眩しさを鬱陶しく感じながらも、何度かの瞬きの後、完全に目を開ける。


私は綾月鈴奈(あやつきれいな)


生まれつき身体が弱く、入退院を繰り返している。なので物語を読んだり、絵を描く事が趣味になった。

しかし不治の病だったり難病だったりではないので、それほど重く考えてはいない。むしろ明るく、笑顔で過ごすことを信条としている。


さて、そんな私であるが。


目覚めて早速、固まっていた。驚きで。

昨夜私は自室のベッドで、病院から貰った薬を飲んでから眠ったはずだ。

しかし、目の前に広がっているのは…………洞窟であった。


『………………え?』

「………………きゅ?」


驚きその2。自分の声が違う。その1は勿論、この事態そのものに対してである。


『………えっ?えっ?』

「………きゅっ?きゅぅ?」


うんやっぱり違う。第一、人の声じゃないよこれ。


『…うん、落ち着こう。まだ慌てるような時間じゃないよ、綾月鈴奈。そうだクールになれ』

「…きゅ、きゅきゅう。きゅっ、きゅっきゅ、きゅぅ。きゅきゅぅ』


………まだギャグを飛ばせるくらいの余裕は残っていたようである。重畳。


『………今、私、人間…だよね?』

「………きゅ、きゅう、きゅ…きゅっ?」


恐る恐る、視線を下へ向ける。もし私が『まだ』人間ならば身体があるあたりへ。

結論から言うと、身体はあった。


まず目に入ったのは、白銀。何処からか外界の光が差し込んでいるのか、白銀の鱗はきらきらと煌めいている。

次に、その鱗にびっしりと覆われた腕、その先の手、らしき部位。

小さいが、明らかに人ではなく、獣の(ソレ)は、鋭利な反射をこちらに返す。


『……………………』

「……………………」


沈黙。

そして、


『なんっじゃこりゃああああああっ!?』

「きゅうううぅぅぅっ!?」


私(?)の叫び声が洞窟の壁に木霊した。



『どないしよう…』

「きゅうぅ…」


ひとしきり叫んで、喚いて、転がり回ってやっと落ち着いた私はぽつりと呟く。虚しく洞窟に響く自分の声を聞き、言いようのない不安が込み上げてくる。


そして、すぅっと冷たい湿気を含んだ空気といい、リアルな音の響きといい、これが夢ではないという事実がひしひしと伝わってくる。

これから、どうすればいいのだろうか。


『すぅ〜…はぁ〜…』

「きゅぅぅ…きゅ〜」


一先ず深呼吸で落ち着く事にする。

第一に、今自分がどんな状態なのか、確かめねばなるまい。

こっちで生きていけるかとかそういうのはその後だ。


まず、両手を顔の前に掲げて見る。

さっき見た通り、今の手は鱗にびっしりと覆われ、爪は長めに伸び、鋭く尖っている。が、人間で言えば手のひらに当たる部分には鱗は無く、若干白い肌が覗いている。

それから腕、腹、脚と見ていく。腹の部分にも、隙間無く鱗が覆っていた。


『ふ〜む…』

「きゅう…」


…で、そこである事に気付いた。


今私は脚を投げ出して座っている。そして両手を顔の前に掲げているのだが、なんだか背中が重い。ベルベットとか重い布が乗っかってる感じ。力を入れるとそれはバサリ、と持ち上がった。


…多分私が思い至った事でほぼ間違いはないと思うが、今は置いておこう。決して現実逃避ではない。断じて、思い至った可能性を認めたくなかったとか、そういう理由ではないのだ!


『取り敢えず、歩けるかどうか…』

「きゅきゅぅ、きゅっきゅきゅ」


少し不安だが、腕を若干持ち上げて二本脚で歩いてみる。案外しっかりと立ち上がる事が出来た。一歩、また一歩と歩き出す。


『あ、そういやさっき散々転げ回ったじゃん』

「きゅ、きゅきゅきゅう、きゅっ」


準備運動はバッチリでした。


そうして私は、多少ヒョコヒョコしながらも、周りを探検し始めた。

少し歩いたところに水溜りがあった。シンと水面は静かで、洞窟の岩の天井を映し出している。

水溜りを覗き込んでみる。


白銀の鱗で覆われた顔、ちょこんとした小さい耳、そして澄み渡った紺碧の目。

そして背中には、蝙蝠に似た、しかしそれよりも力強い翼。

よく読んでいたファンタジー小説に出てくる、ドラゴンそのものであった。


『…………うぼぉぁ』

「…………きゅぅぅぁ」


信じたくない、信じたくはないが。

私、綾月鈴奈は、ドラゴンになってしまったようである。

注意。

主人公はよく叫びます。

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