不審ナ偉イ人
一旦戻る。
なんか納得いかない。そもそも任務があったのならば朝、俺がアレンに会った時に言ってくれればよかったし今日が非番だから連絡が遅れたと言うのはもう、非番が何なのか分からない。
まぁ、アレンが大隊長から連絡を受けた事は確かなのでそこらへんは疑う余地も無いのだが…なんだか変な感じだ。
そんな事をグダグダ考えていても結局俺に何も分かる筈が無いので急いで駐屯地に急ぐ。
さっきこの門を出てきたと思っていたらもう戻ってきている。時間が流れるのがとても早い。
ぱっと見ただけではアレンはいなさそうだった。まだ戻っていないかそれとももう戻り大隊長への報告を済ませているか…どちらにせよまずは報告をしなければ…。
しかし、門に入る前に俺はボロボロのフードを深く被りしかし、それ以外はとても高価そうな衣服を着ている不審な人物を目撃した。しかも門の横に立っている。
いや…不審だったら門番をしている憲兵が何らかの対応をしている筈だ。そういう事をしないという事は単なる税金泥棒もしくは役立たずに過ぎないか、はたまた何か理由があるのか。俺にら分からないから兎に角憲兵の悪口を思い浮かべてニヤけている。
「オイ!そこの…奴!何をニヤけている。」
「すみません。ちょっと思い出し笑いを…」
「そうか…なら良い。」
まだ五十メートルはあったぞ。目が良いなあの憲兵は。
それにしても、あのフードの人物が気になる。
とても気になる。
何か声を掛けようか…でも憲兵が何もしないというのは問題無いという事だと思うし
「おい!お前!なに勝手に門の中に入ろうとしている?もう一般人の立ち入りは禁止だぞ。」
考えながらいていたらフードの人物との距離は無くなりあと少し歩けば駐屯地に入るところまで歩いていた。
そして、ここで止まり憲兵に第三小隊のエンブレム(大地に刺さった剣から影が八方向に伸びている、因みに正方形)と軍証を出す。
「ああ、ならよし。」
「その前に、このフードを被った女性と話をしてもいいか?」
「大丈夫だ。」
この憲兵、俺よりも階級が下だった。
まぁ…いいや…
「ところでお嬢さん、そんな格好でここに居ると不審人物と疑われるよ。て言う事で疑ったので詳しくお話を聴かせてもらえないですか?」
と、顔を覗きながら話し掛ける。フードを被っていたがその身体付きで女性だと分かった。
…………俺は何を言った?この御方に向かって…。
俺が『お嬢さん』と呼んだ方は、この王国の第一王女…エルシア王女だ。ヤバイ、これ確実に死刑じゃね?軍所属の物が第一王女に無礼をはたらいたとして…。せめて、あの憲兵だけは道連れに…
「良いですよ。何処でお話を聞いてもらえるのですか?」
嗚呼、これ、どうしよう。