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駆逐艦『雪風』 ~小さき不沈艦~  作者: 伊東椋
昭和十九年~二十年
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第四十六話 発動!捷一号作戦





 「捷号作戦実施方面ヲ比島方面トス」





 それは、捷一号作戦の発動を意味していた。

 連合艦隊の残存兵力を率いて挑むこの決戦は、正しく日本海軍にとっては文字通りの意味での、最後の「決戦」であった。

 その参加戦力として、まず部隊が三分された。


 第一部隊(栗田長官指揮)――戦艦三(『大和』『武蔵』『長門』)、重巡六隻(『愛宕』『高雄』『摩耶』『鳥海』『妙高』『羽黒』)。ちなみに部隊の旗艦は『愛宕』である。軽巡一(『能代』)、駆逐艦九隻。

 第二部隊(鈴木中将指揮)――戦艦二(『金剛』『榛名』)、重巡四(『鈴谷』『熊野』『利根』『筑摩』)、軽巡一(『矢矧』)、駆逐艦『雪風』以下五隻。

 第三部隊(西村中将指揮)――戦艦二(『扶桑』『山城』)、重巡一(『最上』)、駆逐艦四隻。他、志摩中将率いる艦隊。


 作戦としては、主に主力部隊はこの三部隊に分かれてレイテに突入するため、第一、第二部隊はリンガを出航後、ブルネイで燃料補給を行い、第三部隊の西村艦隊と同時にブルネイを出撃。第一、第二部隊はサンベルナルジノ海峡を突破、サマール島東方において敵水上部隊を撃滅し、レイテ湾に突入。第三部隊は分離出撃し、主力二部隊に策応し、スリガオ海峡からレイテ湾に突入し、敵船団及び上陸部隊を殲滅するといった内容だった。

 要するに二手に分かれてレイテ湾に突入するというものである。

 だが、この三部隊をレイテに突入させるには、ハルゼー提督率いる空母十七隻を中心とした米機動部隊を何とかしなければならない。

 そして連合艦隊司令部は、この米機動部隊を誘き寄せる囮艦隊の編成を決意した。そして選ばれたのがマリアナ沖海戦で空母三隻を失い、最早戦う力を残されていなかった小沢中将率いる第三艦隊こと日本残存機動部隊であった。

 この小沢機動部隊は日本本土から出港し、フィリピン近海に存在するはずの敵機動部隊を北方に誘き出し、第一遊撃部隊の突入を援護する手筈となっていた。

 しかし先に述べたマリアナ沖海戦での空母喪失。そして台湾沖航空戦での航空兵力の著しい消耗により、小沢機動部隊の空母に搭載された艦載機数は百余機程度に満たない。

 強大な敵機動部隊を小沢機動部隊が引き付け、第一遊撃部隊がレイテ沖へ到達するまでに、如何に敵機の空襲を受けないようにするのか。これが鍵であった。





 現場に集った将兵たちが覚悟を決めるように、艦魂たちもまた同じだった。兵達が寝静まった夜空の下に佇む『大和』の艦上で、整然と並んだ艦魂たち。旗艦を退いた後も、彼女たちから「長官」と慕われる大和が、訓示を述べていた。


 「この決戦に勝たなければ、日本はこの戦争に勝てない。そのつもりで臨むように」


 大和の言葉に艦魂たちが意を決したような顔になる。その瞳には闘志が燃え滾っていた。

 大小様々な艦種、艦型の個性様々な艦魂たちが、共通した一つの想いを抱いている。

 それは決して、負けられない戦い。命を賭してでも、必ず成し遂げなければならないものだった。戦略的観点から見ても、フィリピンは日本が南方から本土に油を運ぶための、重要な中継地点だった。すなわち、日本の生命線を保っているのがこのフィリピンに他ならないのである。このフィリピンを奪われるような事があれば、自分達軍艦に燃料が供給されなくなり、戦争継続が不可能になるという事だ。

 これは祖国日本を護るだけでなく、自分達が今後戦えるか。それすらも懸かっている。御国の為であり、自分達の為でもあった。


 「日本の命運は、我々の双肩に懸かっている。心して掛かるように!」

 「おおー!!」


 地鳴りのような、彼女たちの威勢溢れる声が、『大和』の艦体すら震わせた。





 訓示が終わり、解散が告げられほとんどの艦魂たちが立ち去る中、雪風はある者に声を掛けられて踏みとどまった。

 雪風が振り返ると、その目の前には左目を前髪で隠した少女が微笑みながら手を振っていた。


 「時雨さん!」

 「久しぶり、雪風」


 白露型二番艦の艦魂、時雨との再会。時雨の方も雪風との再会を喜んでいる様子だった。

 手を合わせ、よく生きてくれたと、二人は互いに讃え合った。どちらも数多くの戦いを潜り抜けてきた武勲艦である。自分達が並び称されている事も、勿論知っていた。


 「……本当に、よくぞ生きて。雪風、嬉しいよ……」

 「時雨さん……」


 微笑む時雨の目の縁には、キラリと光るものがあった。

 これまでに数々の激戦を生き延び、「呉の雪風 佐世保の時雨」の片割れとして、その運の良さに定評があった彼女。だが、味方が沈む光景を何度も見てきたという事でもある。そしてそれは、『雪風』と同じであった。

 

 「今回は別々になっちゃうけど、お互いに頑張ろうね」

 「はい。時雨さんも、ご武運を」


 駆逐艦『時雨』は第一遊撃部隊第三部隊(西村艦隊)の所属艦として、第一、第二部隊とは別ルートでレイテ湾に向かう手筈であった。栗田艦隊と同時にレイテ湾に突入し、敵船団を撃滅するのである。その西村艦隊の護衛として『時雨』は配された。

 作戦中、時雨とは別行動となるが、雪風は次の再会を時雨と約束した。自分達が幸運艦と言うのなら、きっとまた会える。二人はそう信じ、それぞれの往く道へと進むため、束の間の別れを交わすのだった。






 昭和十九年十月二十二日

 ブルネイ湾


 朝日が昇って間もない湾内に、けたましい音が響き渡る。まず、静寂に身を置きながら紺碧の海に漂っていた各艦艇の揚錨機が音を立て、水しぶきをあげながら、錨鎖を巻き上げる。

 午前八時。曇り空の下、港を出港する日本帝国海軍大艦隊の雄姿がそこにあった。

 栗田長官の座乗する第二艦隊の旗艦『愛宕』のマストに、出撃を告げる旗流信号が掲げられる。いよいよ出航の時である。

 『雪風』もまた第二部隊の一員として、出撃準備に取り掛かる。艦橋から命令が伝達され、各配置に兵達が走り回る。

 錨が完全に巻き揚げられ、機関では各系統のバルブが開き、艦を動かす様々な原動力が蒸気タービンに送られ、完全修復を受けたプロペラスクリューが息巻くように海中を掻き回し始めた。

 ターボ発電機の歯車が壊れ、出力の少ないディーゼル発電機を駆動するしかなかった『雪風』だが、マリアナの時と違い、今回は全速力を出す事ができた。ターボの事など些末な事であった。

 出撃ラッパが勇ましく流れる中、まるで並び立つ山脈のような巨艦群がゆっくりと動き出した。『雪風』を含む小さき艦列が、まるで小鹿のように後を付いていく。

 その先導を往くのは第二水雷戦隊旗艦の軽巡『能代』を始めとして、駆逐艦八隻が軽やかに白波を立てながら海面を滑り往く。栗田長官を乗せた『愛宕』を基幹とした重巡第4戦隊、その後を『妙高』『羽黒』の重巡第5戦隊。そしてその更に後ろを山脈の中の高山が続く。艦隊の主力にして威風堂々の佇まいを露にした戦艦『大和』『武蔵』、そして『長門』の三隻が進んだ。

 出撃する第二艦隊を、第三部隊である戦艦『扶桑』『山城』などの西村艦隊の面々が登舷礼を以て見送る。その中には、数隻の駆逐艦も含まれており、幸運艦と名高い『時雨』の姿もあった。

 この時、『雪風』は第二艦隊第一遊撃部隊第二部隊の護衛として、戦艦『金剛』の右後方を進み、彼女たちの見送りを受けながら出航した。

 

 「こんなの、もう二度とお目に掛かる事はないかもしれませんね」


 都倉の隣で雪風が呟いたのは、自分の周囲に広がる情景に対するものだった。大和型戦艦を始め、日本海軍の総力が結集した大艦隊が艨艟を連ねている光景。黒鉄の城が並び立ち、天に林立している。

 日本海軍の艦魂として、雪風はその威容に見惚れていた。


 「これだけの軍艦が揃っているのなら、アメリカなんかに負けるはずがありません」


 雪風の意見には、都倉も似たようなものを抱いていた。『大和』や『武蔵』、『金剛』などの戦艦、重巡などが連なる光景は、胸の内を熱くさせる。大艦巨砲への憧憬は未だ根強く残っている事を実感させられた。

 この無敵艦隊が米軍を徹底的に叩き潰せば、戦争は今度こそ終わるかもしれない。都倉はそんな事さえ考えていた。

 しかし都倉の甘い考えを正すかのような、冷静な会話が『雪風』の艦橋でなされた。


 「問題は飛行機ですな」

 「!」


 砲術長の言葉を、都倉は聞いた。

 そう。今回の作戦に、空の掩護は付いていなかった。つまりこの無敵艦隊は、丸裸も同然の状態で敵艦隊へ突入するのだ。

 砲術長の傍で、寺内が八の字の髭の跳ね具合を指先で確かめながら答えた。


 「それが最大の問題だべな。ともかく、これまでは上向いてばっかだったから、今度は正面向いて戦いてえなぁ」


 寺内の呟きは、『雪風』もまた艦隊決戦に参加できればという強い願いが込められていた。対空戦闘ばかりしてきた『雪風』。対空兵装が強化されたとは言え、駆逐艦の本来の役目として、砲雷撃戦に飛び込みたいものである。

 都倉と雪風は自分達の考えの甘さに、肩を並べて猛省した。




 この時、そんな彼女ら、彼らを遠くからジッと見詰める存在が、密かに海面下を漂っていた――



 二十三日午前零時十六分。監視行動中であった米潜水艦『ダーター』がレーダーで多数の艦船を捉えた。

 四十分後、目標が大型艦十一隻を中心とする日本艦隊であることが判明すると、『ダーター』は僚艦と共に日本艦隊発見の緊急報告を打電。


 ――0800 Yamato and 40 others,departed Brunei. Course:North. Speed:18knots.――

 ――〇八〇〇ヤマト、以下約四十隻、ブルネイ出港。針路北。速力十八ノット――


 夜明けまでに二通の接敵報告が行われた。それは、日本艦隊の存在が初めて米軍側に明るみとなった瞬間だった。





 昭和十九年十月二十三日

 パラワン水道


 栗田艦隊はパラワン水道の北東を進んでいた。

 既に栗田艦隊も自分達が敵潜水艦に発見された事を把握していた。旗艦『愛宕』がその潜水艦の電波を捉えていたのである。

 だが、栗田艦隊が航行している海域は狭い水道にあり、高速で敵潜を振り切るには不利な条件下である。

 栗田長官は全艦隊に警戒を厳にするように下令した。

 『金剛』の右後方を進んでいた『雪風』も、周囲の不気味に漂う海面に細心の注意を払っていた。ぴんと張り詰めた緊張感が艦内に充満する中、艦橋に立っていた都倉は、十キロほど前方を航行中の第一部隊の左前方で、大きな水柱が何本も立ち昇るのを目撃した。


 「『愛宕』に魚雷命中!」


 報告が入る。乗員の誰もが戦慄を覚えた。

 午前六時三十二分、米潜水艦が放った魚雷四本が『愛宕』に命中した。栗田長官と幕僚たちは海に投げ出され、泳いで駆逐艦『岸波』に移乗した。

 そして間もなくして、またしても水柱が何本も天に屹立した。

 今度は後続にいた『高雄』がやられたのだった。

 数分の間に、艦隊旗艦を始めとする重巡二隻が轟沈に近い沈没を遂げた。

 しかしまだ終わらない。遠望の中にある第一部隊の左方で、次々と水柱が立ち昇る中、『雪風』の乗員たちは不安に駆られていた。雪風自身も、次から次へと降りかかる悲報に、震えが止まらなかった。

 今度は『高雄』の後ろにいた『鳥海』の右四キロを航行していた『摩耶』に、四本の魚雷が命中した。

 『愛宕』が被雷してまだ二十五分も経っていなかった。

 駆逐艦『岸波』に移った栗田長官は、旗艦を『大和』に移す方針を決めた。その際、第1戦隊司令官の宇垣纏中将が指揮を執る事になり、その旨が全艦に通達された。


 「……また、旗艦が真っ先にやられてしまった」


 都倉はマリアナ沖での記憶を思い起こしていた。マリアナ沖でも、旗艦(『大鳳』)が真っ先にやられていた。

 旗艦を含む重巡三隻を一挙に失ったのは不運であったが、それは十分に幸先の悪い事であり、都倉に嫌な予感を覚えさせるのも当然の事象であった。沸き起こる不安を抑えきれないまま、海図台を睨む。この先、まだミンドロ島の南にあるタブラス海峡を通ってシブヤン海に入り、狭いサンベルナルジノ海峡を抜けて、サマール島の東に出る。そこから南下して、レイテ湾に到達する。

 海図からわかる限り、艦隊が通る道中には二つの海峡の他、狭い水道が何ヶ所もあり、再び敵潜水艦の待ち伏せを受ける可能性は大きかった。

 不安を引きながら、艦隊は一つ目の狭い水道を通過した。





 昭和十九年十月二十四日

 スールー海


 先んじて出撃していった栗田艦隊の後に続き、第三部隊――西村艦隊が二十二日午後にブルネイを出撃。栗田艦隊とは別の進撃ルートとして、スリガオ海峡に向かっていた。

 しかし、海峡に入る前に西村艦隊は敵索敵機に発見される。


 「……もうすぐ敵機が来る。全艦、対空見張りを厳と為せ」


 旗艦である山城が、各艦に指示を伝える。相変わらず目は半開きだが、この時ばかりは、その瞳は真剣そのものだった。

 艦魂のその姿とは裏腹に、『山城』の巨体が波を掻き分け、威風堂々と前に進んでいた。その先導を重巡『最上』が往き、『山城』の後方に姉の『扶桑』が。そして『山城』の右舷には二隻の駆逐艦が走り、一方の左舷にも二隻の駆逐艦。その内の一隻として配置されていたのが、『時雨』であった。


 「……今頃、雪風も」


 その渦中に置かれても、時雨は自分と似た境遇を持つ戦友の事を思い出していた。

 時雨にとって、雪風との再会は特別な意味も含んでいた。

 彼女は、自分と同じだ。自分の本当の気持ちを理解できるのは、彼女以外にいない。

 別行動にはなってしまったけど、この海の果てで、彼女もまた戦っている。


 「……約束したんだ」


 また生きて会おうと、約束を交わした。

 遠くから煩わしい轟音が聞こえる。嗚呼、何度も聴いた事のある嫌な音。

 そして目に映る、虻の大群。悍ましい程に、嫌な虫ケラ共。


 「……来るな。近付くな。私に――」


 主砲が旋回、近付いてくる敵機群に砲身が向けられる。次の瞬間、強い風が吹き、長い前髪に隠されていた左目が、赤く煌めいた。



 西村艦隊が敵機の空襲を受けた頃、栗田艦隊もまた敵機の襲撃を受けていた。

 二十四日朝、栗田艦隊は之の字運動――ジグザク航法を続けながら、速力十八ノットでシブヤン海に入った。陣形は第一、第二部隊共に戦艦を中心にして、外周に巡洋艦、更にその外周に駆逐艦を配した輪形陣を二つ形成していた。

 しかしその上空に直掩機の姿は一機も無く、艦隊は丸裸の模様を晒していた。

 十時二十三分、『雪風』の艦橋見張り兵が、空襲第一報を報せた。


 「敵機発見、右九十度!」

 「対空戦闘!」


 寺内の命令が下り、ラッパがけたましく鳴り響く。

 兵達が配置に就くと、『雪風』の高角砲や機銃がぐるぐると回り出す。この時、来襲した敵機群は、グラマンF6Fヘルキャット戦闘機二十一、カーチスSB2Cヘルダイバー急降下爆撃機十二、グラマンTBFアベンジャー雷撃機十二の計四十五機であった。

 北東に進む栗田艦隊に対し、米編隊は太陽を背にして九十度方向から接近し、距離二万で三つに分かれて急降下で突入してきた。


 十時二十六分、『大和』の高角砲が火を噴いた。『大和』の艦橋で、栗田長官の命令で指揮を執っていた宇垣纏中将は、一年前の四月まで連合艦隊司令部の参謀長を務めた猛将で、敵機が距離一万五千まで近付いてきた所で、森下艦長と目線を交わし、『大和』の砲門を開かせるよう促した。

 敵機編隊は、第一部隊を狙ってきた。

 第二部隊の外周にいた『雪風』も、四門の12.7cm主砲の砲身を持ち上げ、その砲門を開いたが、砲弾は敵機に届かなかった。

 突入してきた敵機編隊は、熾烈な弾幕を掻い潜って、三隊がそれぞれ『大和』『武蔵』『長門』と『妙高』を襲った。

 一方で『雪風』などの方には一切、敵機は来ない。弾も届かないので、『雪風』の艦橋は高みの見物というような形で、上空にいっぱいの花火が咲く第一部隊の様子を眺めていた。

 都倉も歯痒い思いで、第一部隊の戦いぶりを遠望で見詰めていたが、双眼鏡を覗いていた寺内が「あっ」と呻いた。

 一隻の戦艦に、一本の火柱が上がった。


 「いけねえ、やられたぞ!」


 寺内が呻き声を上げる。火柱を上げたのは、『武蔵』であった。

 この時、『大和』の右後方にいた『武蔵』に爆弾一発が命中した。続けて二発の至近弾と、遂に雷撃によって一本の魚雷が右舷後部に炸裂した。立て続けに敵機の猛攻を浴びた『武蔵』だったが、その速力を衰える様子は全く見せなかった。

 更に同時刻、『武蔵』の前方にいた重巡『妙高』にも雷撃機の編隊が襲い掛かり、放たれた三本の内、一本が右舷後部に命中。この攻撃で速力が落ちた事で、この後、将旗を『羽黒』に譲り、自らはブルネイへと帰還した。

 第一波の空襲は、三十分ほどで過ぎ去った。

 どうも『大和』や『武蔵』といった巨大な艦は、敵機に狙われやすいようで、第一部隊が集中攻撃を受けた。実際、『雪風』はこの戦闘の間、ずっと手持無沙汰のような状態が続いていた。


 第一波襲撃の後も、栗田艦隊は二十四ノットで北東に進んだ。


 そして十一時二十四分、栗田艦隊はマリンドゥーケ島とバントウ島の中間に差し掛かった辺りで、東に変針し、シブヤン海へと舵を取る。

 十二時頃、栗田艦隊の予想通り、第二波が来襲。約三十機の敵機が襲い掛かった。

 敵機の集中攻撃を浴びる栗田艦隊。やはり『大和』『武蔵』に攻撃が集中した。

 『武蔵』に爆弾二発、魚雷三発が命中し、機関が被害を受けた。これによって、『武蔵』は遂にその速力を落としていった。


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