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4、空気と化する子猫

こっそり更新して誰も望んでなさそうな生存報告をしておこう。

「これは、近所に住む知り合いの大学生の、そこに所属しているサークルの先輩の友人の話よ。」


「断じてこの春に高校生になったばかりの私の友人の話ではないわ。

そこには十分留意して欲しいわね。

まあ、話の内容的に明らかに高校生の話じゃないからそこは大丈夫よね……。」


「とにかく話は戻るけど、その友人の友人とやらは高校卒業後そのまま無事就職し、

そしていったいどこで知り合ったのか随分と美人な彼女ができたそうよ。

男子校卒、まじめ一辺倒だった彼に訪れた春に

友人達は皆羨ましい思いを持ちつつも暖かく祝福したわ。

ここまでは良かったらしいのよ。

しかし、もともと特にこれといった趣味も持たず、彼女に首ったけだったその友人は

時が経つに連れて周囲のことをないがしろにするレベルで

だんだんとその彼女だけにのめり込んでいったらしいわ。」


「周りの友人がほとんど大学や県外へと出て行き、

さらに職場に同年代がいないことなんかもそれに拍車をかけていたみたいね。」


「友人達が気付いた時は、既に彼は彼女に相当額貢いでいたそうよ。」


「友人の1人が突然カネを貸してくれと言われた事で

友人たちが集まり彼を問い詰めた所で発覚した事実でだったそうよ。」


「余談ではあるけどその時、その彼女が夜のお仕事をされていることも発覚したそうね。」


「果たしてその恋愛が商売だったのか純愛だったのかは、

当事者でなない友人たちにはあずかり知らない事だそうだけど、

このままでは彼が破滅へと一直線に突き進むことが明白だったので

取り敢えず友人達は彼を説得しその女性と別れさせることにしたそうね。」


「しかし全ては遅かったそうよ。」


「後で判明したのだけど彼は彼女への貢物のためにあまりよろしくない筋から

結構な額のお金を借りていたのよ。」


「彼は初めての恋に自分の感情をコントロールできなっかった事も関係しているのかも知れないけど、

彼が彼女と別れた時に、その借金は普通に働いたら返せないレベルの額に膨らんでいたそうよ。」


「さすがにこの問題に関しては友人たちそれ以上は踏み込めなかったのよね。

なので心配しつつもその後の様子を人づてに伺う事しかできなかったそうね。」


「しかし暫くすると彼女との関係に一定時間距離を置けたことが功を奏したのか

彼は当時の自分の彼女との関係の不健全さに気付き、

『つきものが落ちたような顔をして借金を返す為に働いている。』

という話が仲間内で囁かれるようになって

なんとか一安心、という感じに話が終わりかけていたそうなのよ。」


「けどそんな話を聞いた数週間後にその先輩のもとに

一通のメールが友人から届いたそうよ。

そしてそのメールには、あの彼が働いている店のホームページへの

直リンクが貼ってあったそうね。」


「特に気にした風もなくそのリンクを踏むと

やや婉曲な言い方になってしまうけど、

それはいわゆる性別などという瑣末なことに囚われない

真実な愛を育む風俗店だったそうよ。」


「もう少しストレートな表現をすると

本番ありのBでLなお店ね。」


「あれ?BでLなのは定義的にはおかしいのかしら?

まあ細かいことは私はいいわ。

由美子みたいにその辺は詳しくないし。

興味もないしね。」


「まあ話をもどすと、

この話を耳にした大学生の友人は恐怖したそうよ。」


「単純に彼女との確執からそっちの方面に行ってしまったか?

という可能性はわずかになきにしもあらずなのだけど、

どうも流れてくる噂話をまとめてみると、

おそらくこれは返しきれない借金の返済プランの一環として

その筋の方に斡旋されたものだったそうよ。」


「この話から彼は、

『どんなに困窮してもその筋の方からお金を借りるのはやめよう。』

そう心に誓ったそうよ。」



「……つまりこの話から私が何を言いたいかというと。

美人局(つつもたせ)には気をつけろ』

ってことよ。」


と何故かドヤ顔の幼馴染がそこにいた。果てしなく鬱陶しい。

と言うか話が無駄に長い。

あと彼女の友人の由美子さんは秘めたる嗜好をばらされてとんだとばっちりを受けてる気がする。

そうか、あの子は腐だったのか……。


時は既に放課後、

さっさと約束通り先輩との待ち合わせ場所に向かおうとした俺を手で制して、

滔々と語って聞かされた話がこれである。

と言うかこの元の話は俺も知っている。

近所の年上の幼馴染、現在同県の某大学に通う押上将太という僕らの兄貴分から流れてきた話だ。


「っていうか将兄(しょうにい)はそんな生々しい話をお前にしたのかよ。」


つい、そんな言葉が口から漏れる

いくら幼馴染とはいえ、年下の妹分にするような話じゃないと思うのだが……。


俺は自分たち2人の兄貴分である何時ものヘラヘラした顔を思い浮かべた。

彼の側には中々波乱万丈な人生を持つ方々がいるようだが

そこから得られているはずの世間の厳しさでさえ

彼の締まらない顔には影響を与えていない気がする。



ちなみにこの話の教訓ついて、彼はそんな風に語っていなかった。俺には。

そもそも、くだんの2人は普通にバーみたいな店で知り合ったのが馴れ初めだった気がするし、

最初は熱を上げていたのも彼の方だけって話だったような……。

まあ、その辺は伝言ゲームみたいなもんだろう。


そして肝心の話の教訓となる部分は、

彼がそこで働いていることを最初に見つけたやつは

どうやってそのホームページにたどり着いたのかを考えると

空恐ろしいものがあるって事だったような。


借金を背負ってしまった人物は返済のために前職を辞め、

その筋の方から斡旋された職に半ば無理やりついた

というのが真実らしいと言う部分は俺も聞いた。

しかも話の流れ的に当事者の彼は自分の仕事内容や働いてる場所は

家族にも知らせてなかったらしい……。

つまり、あのホームページに自力でたどり着いた何者かが

あのサークル内にいた可能性が非常に高いと言うことである。

そう、前情報なしに自力でBでLなページにたどり着く者が……。


これらの事実から将兄はしばらくの間

サークル内に潜むかもしれないノンケじゃない奴の影に怯えて

その可能性を否定したくて、

ついでに自身の身をちゃんと守るためにも

慎重に情報収集を開始したらしいが

ついぞ最初の情報源を特定できなかったそうである。


これには藪をつついて蛇(意味深)が出る恐ろしさのあまり

送られてきたメール方向からの情報収集を断念したことが関係しているとかなんとか……。

ちなみに最初に将兄に送られてきたメールは転送メールだったので

送り主の友人はあくまで可能性の低い容疑者止まりらしい。


将兄はこの状況下に置かれたしばらくの間は、

サークルの飲み会で肩に手を回してくる相手がいるたびにビクビクしてしまったらしい……。


まあ今はそんな話はどうでもいいのだ。

今はこの目の前の理不尽な幼馴染を乗り越えることが重要である。



「というか、同じ学校の先輩を何の証拠もなく

一方的に美人局(つつもたせ)呼ばわりするのはかなり失礼だぞ。」


俺がそう叱ってやると、ぐぬぬと唸りながら幼馴染が言い返してきた。


「とにかく、あんたは騙されやすそうなので私が着いて行ってあげます。」


はあ、何を言ってるんだこいつは?


「いや、いいよ。小学生じゃあるまいし。

というかさっさと部活行けよ。

入ったばっかの部活を意図的にサボるとかハブられコースまっしぐらじゃん。

ハブられた後で俺に当たってくるまで予想できるわ。」


そう正論っぽいことを言うと分かり易い珠子は少し、うっとした表情に変化する。

よし、この方面で攻めればいけるか……?


「でもその猫については私にも責任があるし……。」


「その意見は今朝聞きたかったね。

この猫をお前が朝から引き取って

放課後までちゃんと面倒見て、

それで初めて言える意見じゃねーか。」


全く、一番面倒なとこだけ押し付けるくせに言うことは言う奴ほど信用は置けない。


「でもでも、だって〜。」


と、さらにうざい展開になりそうになったその時

教室の入り口から俺に予想外の援護射撃が飛んできた。


「た〜まこ〜お、部活行くよー。」


先ほど話に出た由美子である。

腐女子疑惑が出た正にその人だ。

幼馴染の珠子と同じ部活の同級生で、

2人はこの春友人になったばかりだ。

この2人は一緒にいるといつも、特に意味などないと思われる会話を

きゃぴきゃぴと永遠に交わしているイメージしかない。

ちなみに俺とはそんなに絡みはない。

俺は彼女の登場を好機と捉えた。


「まって由美子。今大事なとこなの。」


「何々?告白でもするの?」


「ばっ、そんなわけないでしょっ!!!」


と、テンプレの如きやり取りを目の前で始めた2人。

因みに俺に珠子に対して特に恋愛感情といったものはない。

もちろん大事な幼馴染であるが……。

まあ出来の悪い年下の親戚みたいな扱いだ。

向こうがこっちをどう思っているかは正直よくわからないが

世話を焼きたがるあたり向こうも向こうで

こっちのことは出来の悪い親戚の弟ぐらいに思っていそうである。

誠に遺憾ではあるが。

とにかく俺は俺の問題を解決すべく

目の前でじゃれあい始めた2人の会話をぶった斬ることにした。

彼女たちが教室の入り口側を塞ぐ形で突っ立てるから

ここを突破しないと本当にどうしようもないのだ。


「ところで由美子さんや。」


「なんだい、おじいさんや。」


以外とノリのいいタイプなのは初めて知ったが、

これから彼女には会話に割り込まれてご不満な様子の珠子を全力で足止めしてもらおう。


「聞くところによるとBLに大層お詳しいと……。」


と、最後まで言い切る間もなく


「た〜まこ〜お、ちょっと校舎裏まで行きましょうか。」


先ほどと字面的には同じ呼び方ではあったが

由美子氏の声は実に不思議な強制力を持っていそうなものだった。

珠子は俺に、計ったわね。という感じの顔をしつつ

由美子には、はわわという感じで対応するという

実に器用な顔面百面相を展開してくれた。

俺はこれ幸いと、今迄完全に空気と化していた

相変わらず足元にまとわりついてきていた子猫を利き手で拾い上げ、

反対の腕で机の上の鞄を引っ掴み


「それじゃ、また明日。」


と、彼女らの脇をさっと通り抜けて廊下へと躍り出た。

離れていく教室の方からは、「待てー。」「いや、あんたが待て。」といった

コントのようなやり取りが聞こえたがもはやどうでもいいことである。

俺はこれで先輩と約束した第二駐輪場に行けると……。


あれ?第二駐輪場って校舎裏だよね。


あいつらは……、来ないよね?

由美子さん、さっきのは言葉のあやだよね?




ぼちぼちペースを上げていきたいかなあ。

いろいろな事情から2作品ほど結構な量書いていたのですが、掲載できなくなったのは痛い。

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