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3、オラは人気者

リアルが忙しすぎて二月半ばとか言ってたのに全然余裕がないですすみません。

これも随分前の書き溜め分です。レベルダウナーの方を待ってる方は少ないかもしれませんが、話をキリのいい所までは書きたいという気持ちはあるのでもう少しお待ちください。

いつもなら学食で定食でも食べているであろう昼下がり、現在俺は女生徒たちに囲まれていた。俺も流石にこの今の状況を「モテ期がきた!」と喜ぶようなバカではない。

そもそもモテているのは俺ではなくこの黒猫だ。

俺の目の前には例の少女に見えた黒猫が机の上にご機嫌そうに座っている。

そしてその机は多くの女生徒たちによって囲まれていた。このクラスだけでなく、他のクラスの女生徒たちまで混じっているようだ。見覚えのない女の子が何人かいる。

普段昼休憩は一緒に行動している男子達は、そんな俺の様子を遠巻きに恨めしそうに見ている。

彼らの気持ちはわかる。しかし俺としてはむしろ変わって欲しい。

なぜなら授業の合間の休憩時間、トイレに立った時でさえこの猫は俺の後ろをトコトコと着いてきたのだ。そして事が終わるまで男子トイレの入り口前で座って待っていた。

このエピソードは当事者である俺以外には実にハートフルなものであったようだ。

この話はすぐさま学校中に広まり、その猫を一目みようと猫好きの学生達が俺の教室まで押し寄せる羽目になったのだ。

そして集団化するとなぜか男子は女子に勝てないのである。今のような状況になる、というわけである。

問題はそれだけではない。俺の昼飯がないのだ。今日は弁当がない。そして当然のことだが捨て猫なんか連れて学食に行けるわけがない。衛生面で問題がありすぎる。


空腹に加えて、本日何度目かになる「これ本当にあなたの猫じゃないの?」という質問に好い加減にイライラが爆発しそうになったその時、女生徒達の間をかき分けて珠子が現れた。


「全く、幼馴染の女の子をここまでアゴで使うとは。」


そう言って珠子は俺にジャムパンを渡した。パックコーヒーも机にドンっと置いてくれる。

昼休憩の初めに俺の昼飯を購買で買ってくるよう頼んでいたのだ。この状態の元凶として。

俺は焼きそばパンを頼んだはずだが買えなかったのだろう。まあ、あれ人気だし。


「間違いなくお前のせいでこういう状態に陥ってるんだぞ。

文句があるなら責任をとってお前が飼うかどっかにもってくかしろ。

俺、一限目の授業の出席がハンチャンになったんだぞ。

……そもそも俺はこの猫に構うなって言ったよな。」


俺がギロリと睨みつつそう言ってやると、


「だからそれは悪いと思ってるって言ったじゃん。

だから購買でパン買ってきたんじゃない。」


「悪いと思ってるなら普通は文句言わずに買ってくるんだよ。

この問題の尻拭いをなんで巻き込まれた俺が教師に命じられなきゃなんないんだ。

まったく……。」


さすがに自分が原因で迷惑をかけているのは自覚しているのか、珠子はバツが悪そうな顔をするが、何か言い返さねばという幼馴染の謎の義務感みたいな物でもあるのか、


「で、でも私が責任を持って放課後まで面倒みようと引き剥がそうとしても、すぐにそっちに戻っていくし。私クラスも違うし。」


「無理やりにでも……。」


と俺が言葉を続け用とした時、凛とした声が響いた。


「失礼します。こちらに黒猫を連れた生徒が居ると伺ったのですが。」


女子達に囲まれていたので声の主のご尊顔は拝めなかったが、ずいぶんと通りの良い声だ。それにとても涼やかな感じがする。

力のある声、とでも言えばいいのだろうか?

その声が響いた一瞬、教室中の声が全て止んだ。

しかしすぐにそこら中でヒソヒソという話し声が起こり始める。

何?本当になんなの?

女子生徒の囲みが割れて、その答えがすぐに目の前に現れた。


それは種村静香という美人で有名な先輩だった。


そしてその瞬間、ボンッと音をたてて机の上にいた黒猫が朝の少女になり、一瞬で俺の背後に回り込んだ。ブルブルと震えて椅子に座っている俺の腰にしがみついている。


な、何事?と、俺はどうすればいいのか分からず慌てる。

てか周りはどう判断してるんだこの異常事態を。


当たりを見渡すが周りの女生徒達は珠子も含めて俺の足元のあたりを見ている。そして女生徒の1人が「足にしがみついて震えてる、かわいー。」とご丁寧にも説明してくれた。


やっぱりこの猫が女の子に見えているのは俺だけのようだ。


いや違った。種村先輩だけはこの謎のネコミミ少女の顔の辺りを睨んでいる。


俺の視線に気づいたのかその顔はすぐ無表情なものに戻ったが。

彼女のその反応がなければ俺は真剣に精神病院に行くべきか悩む所だった。だがこれで納得する。やはりこの猫は何かおかしい。そして俺がそう確信している所に種村先輩が声をかける。


「やはりうちの猫でしたか。ご迷惑をおかけしてすみません。その猫はこちらで引き取ります。と、失礼しました。先に自己紹介を、3年A組の種村静香と申します。そちらのお名前を伺ってもよろしいですか?」


随分と礼儀正しくお辞儀してくれたので俺は自然と口を開く。


「ああ、俺の名前は……「ちょっと待ったあ!」」


何故か俺の自己紹介は珠子に遮られた。何故か先輩を睨みつけるような感じだ。


「なんでしょう?」


種村先輩の方は突然会話を途切れさせられたにもかかわらず割とフラットな感じで対応している。普通の人はこんな風に部外者が会話の邪魔をしてきたら怒るのではないのだろうか?


「その猫、本当に先輩の家の猫なんですか?それにしてはずいぶんと怯えているみたいですけど。」


幼馴染の俺の見解では、何故か珠子はずいぶんと攻撃的に種村先輩に食いかかっているように感じる。何故だろう?


「自分が怒られるとでも思っているのでしょう。

あるいはその猫は体を洗われるのが嫌いなので、帰ってお風呂にいれられるのを怖がっているのかもしれませんね。」


と種村先輩は淀みなくスラスラと言葉を返してた。別にその言葉だけ聞いてもおかしな所は何も無い。

だが俺にはそれが嘘だとわかった。俺の横で小さな顔が左右にふるふると揺れていたからだ。


「く、首輪がないのは……。」


「首輪を外した時、逃げ出したからです。」


「なら多分違う猫です。この子は捨て猫で、拾ってくださいと書いてある箱に入っていましたから!」


そう言って勝ち誇ったようなドヤ顔の珠子。

種村先輩は少し驚いたような顔して黙っていたが。ため息をついたあと、


「それはおそらく父の仕業でしょう。我が家で父だけこの猫を嫌っていたので。その件に関してはこちらでも確認しておきます。

とにかくその猫は責任を持ってこちらで引き取ります。よろしいでしょうか?」


と俺の方を見て言った。

先輩の言い分はややおかしい気もするが態度やしゃべっている様子に不自然な所はない、しかし背中にへばりついた少女の様子はやはりそれも嘘だと言うように震えている。この怯えようはなんだ?

様子を見た方がいいのか、それともさっさとこの猫を渡して平凡な男子高校生の日常生活に戻ればいいのか、どうすべきかが分からない。

とりあえず思うままに返事してみる事にした。


「その、引き取ってもらえるならそれでいいのですが、何か特にこれと言った事をしたわけでもないのに物凄く懐かれてしまって、引き剥がしたくても引き剥がせません。どうしたらいいですかね。」


と「なっ。」と何か文句を言おうとする珠子を手で制して言ってみる。

謎の少女も驚いた顔をしてこちらをみる。

見た感じのなつき具合からこちらが余りにもあっさりと引き渡す宣言した事に驚いているようだ。

確かに非情かもしれない、しかし俺は自分が責任の取れない事はしない主義なのだ。

この問題がさっさと解決するならそれにこしたことはない。


「それは、少し困りましたね……。」


種村先輩は顎に手を持って行って本当に困ったような仕草をしているが、こちらを見る目の奥によくわからない何かを伺っているようなものを感じる。

なので言葉でもうひと押ししてみることにした。


「俺もこいつをうちで飼う余裕なんてないんですよ。親父が猫アレルギーですし。

けど朝から何度試しても、まったく引き剥がせなくて困ってるんです。

遠慮せずに持って行ってください。」


もはや珠子は再び「な。」と言ったまま固まり、種村先輩はこちらが要求をのんだにもかかわらずスッと目を細めた。美人に睨まれると非常に怖い。

猫耳少女の方はさらにぎゅっとしがみついてくる。罪悪感が少しだけ湧いた。

種村先輩は少しだけ考えるように間を置いたあと、


「そうですね。それでは、よろしければ放課後までその子を預かっていただけませんか。もうそろそろ昼休憩も終わってしまうので今から先生方に色々と説明するのもお互い大変そうですし。放課後になったら第二駐輪場の方で待っています。その子を必ず連れてきてください。

あ、部活などは大丈夫でしょうか?」


「帰宅部なんで大丈夫です。」


「そうですか、ではまた放課後に……。」


そう言って種村先輩は頭を軽く下げた後、一瞬だけ少女を鋭く一瞥し、教室から出て行った。

放課後、学校一と言われる美少女と待ち合わせの約束を取り付けてしまった。

しかし、淡い青春の香りというよりはトラブルの香りしかしない。

復活した珠子をなだめつつそんな事を思うのであった。

来月中にはどちらかの更新が始められるといいな……。

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