彼氏と彼氏の事情~あるいは海賊達の憂鬱リターン~
創造神が祝福した地、エルラド大陸を舞台に、北と西を制する大海賊ブッラクパールに拾われたセシルは神魔教団を壊滅させるべく魔術師となって海賊団の仲間になった。
アーチャーと神魔教団、二つの手掛りを求めて、再び山々に囲まれた小国マライトに立ち寄ったクロウとセシルだったが・・・事態は思わぬ方向に向かって!?
とんでも海賊達のギャグファンタジー物語。
海賊船長 通称:じいさん。本名 ユージン・クルー
ブラックパール号の船長。ブッラクドラゴンという、泣く子も黙る大海賊だった。
趣味は釣りと組手。
副船長 通称:船長。本名 クロウ・ユーイン
副船長。現在、海の生態系及び、魔物の習性を研究中。家事スキルが異常に高い。
趣味は魔物研究、菓子作り。
料理長 通称マザー。本名 モーリス
料理長。航海士の恋人。武器は拳とフライパン。
趣味は服飾デザイン。
航海士 通称ルーヴィッヒ。本名ルーヴィッヒ・スタンリー
航海士、及び航海長。お気楽なムードメーカー。料理長とは恋人。
腰には長剣、胸には拳銃を常備、首にはいつも赤いスカーフを巻いている。
趣味は航海と射的。
楽士 通称ペルソナ 本名 シャーロット・スペンサー
仮面の楽士。副船長と幼馴染。普段は雑用している。運動神経が抜群にして手品の腕も一流。相手に言いたい事がある時は、パペット人形をもって声帯を変えて話す。
純粋、純心なボケ担当。趣味は仮面収集。
狙撃手 通称ルシュカ 本名ルシュカ・カートライト
頭の回転も速いが、少しおっちょこちょいな面がある。銀の剣には氷の魔物 氷狼の長が宿っている。お調子者ルーヴィッヒの相方。趣味はカードゲーム。
雑用係り 通称:リオン 本名 リオン
副船長に拾われた子供。副船長に鋭利なツッコミを入れられるのは、この少年しかいない。
趣味はビー玉集め。
魔術師 通称:幸薄少年 本名 セシル
魔物に異様に好かれる体質。ガンダルシアの少年。
趣味は読書。
軍曹 通称:鬼軍曹。本名 バルナバス
力自慢の親分肌な豪快な水夫長。現場叩き上げ人物。。ガテン系な中年オヤジ。ミゲルと一緒に静かに酒を飲むが好き。祖国には妻子がいる、ちなみに愛妻家。セシルと同じ歳の娘と、三歳の息子がいる。趣味は模型造りと設計作業。
航海医師 通称:やぶ医者 本名 ミゲル
航海医師。船長ユージンの旧友の息子でもあり、性格的に孤独を好むがバルナバスと仲が良い。趣味はあらゆる生物の解剖。
双子水夫の兄 通称:茶髪兄。 本名アンリ
体格のいい体に、茶髪に茶色の瞳の三十代。筋肉フェチ、弟のジョセフと腕相撲するのが日課。バルナバスを兄貴と慕う、元海軍兵。
趣味はストレッチ。
双子水夫の弟 通称:金髪弟。 本名ジョセフ
アンリの双子の弟、同じ顔だが金髪に茶色の瞳の三十代。同じく筋肉フェチ、カードゲームが得意。髪は首の後ろでオールバックにして縛り、いつもバンダナを巻いている。元海軍兵。趣味はボードゲーム。
ウサギ殺しの赤帽子アーチャー 通称:裏切りのアーチャー
かつて船長であるユージン・クルーを裏切って、海軍の縄から一人逃げおおせた人物。
クロウにも、じいさんにとっても因縁がある。
マライト国 陸軍将校 ニコラス・コルベリー
物事を柔軟に考える合理性と、保守的な面を持ち合わせる金眼茶髪マライト国軍人。新婚旅行で妻のアリッサとジャパリアの町へ訪れていたが、偶然出くわした魔物の事件により、クロウ達と共闘する事になった。喩え負傷していても、一般市民を放っておけないという正義感を持ち、頑固な一面もみられた。二刀流でクロウ達を援護し、拳銃の腕もなかなかの腕前。だが普段は、完全なる優男である。厳つい軍人と言う肩書とは反対に、人の輪に自然に溶け込むことができる性格でもある。趣味はエドワードいじり。
マライト国 警備騎士 アルバ地区騎士団長エドワード・グリモス
ニコラスと幼馴染のアルバ町の庶民出身にして、アルバ地区の騎士団長。
金髪青眼のやや神経質にして几帳面な性格であるが、瞳が光りに弱いことから色眼鏡を常にかけ、加え私服が柄物シャツにじゃらついたアクセサリーを好むものだから、騎士の制服を脱いでいると残念なことに完全にヤクザである。ニコラスの柔軟で派手な行動力に、常にブレーキをかける常識人。だが、ここぞと言う所でニコラスを信頼しているので、麻薬事件や魔物事件を探る為、頼もしいぐらい働いてくれる、お人好し。趣味は料理。
豪傑の魔術師リーンハルト・アーベントロート 通称:尊師リースト
ジェーダイト、ガンダルシア、マライトの三国の術者の中で一番と言われるほどの、強力な力を持った魔術師。ジェーダイト国の守り刀。国王の良き相談役にして、公務を怠ける陛下を見張るお目付け役。クロウとペルソナに術指導をしていた元恩師。
趣味は切手集め。
紅蓮の魔術師ゴールデン・ルビーズ・アイ 通称:水晶の魔女
魔術師リーストと幼馴染の女魔術師。幼少の頃のクロウを引き取り、弟子入りさせて、ガンダルシアで隠居生活をしていた。賢者以上の高い先視をする予言のチカラをもっているが、偏屈な彼女は隠れて各地を放浪し、人知れない場所で隠れ住んでいる。
若い頃はかなり美人だったとか。いつも水晶を見つめて、嫌な高笑いをする老婆。
彼女の瞳が朱く、煌めく紅玉なので、紅蓮の魔術師と二つ名がついている。
趣味は旅行。
『星屑の壺』店主 ローグル・ダークネス 通称:嫌味ジジイ
山岳のマライト国港町アルバの裏路地にある、魔術道具屋『星屑の壺』の店主。
術者の相性を見極める術者でもあり、二つ名を『緑眼鏡の隠者』と、魔術師達の界隈ではそう呼ばれている。この店主の瞳には、どんな術者の魂の属性、術の相性を見極められる。そしてそれに応えて、道具を揃えるベテラン。趣味は魔道具生成。
『彼氏と彼氏の事情~あるいは海賊達の憂鬱リターン~』
今年も毎年恒例、肌寒くなる秋が来た。
南西に位置するここジェータイド国付近の海域も、秋が訪れるとやはり北方地方程ではないが、それなりに寒気が押し寄せて、皆着る衣服が半袖から長袖に、暖かいもの変わる。
そして、それに合わせて毎年、セシルは知らなかったが、海賊船ブラックパール号にも、お馴染みの何とも言い難い光景が見られる季節でもあった・・・。
「よし。できたぞ。」
副船長室のベッドから、コロコロ・・・クリーム色の毛糸玉が、床に落ちて転がる。
「落ちたよ、船長・・・はいこれ」
偶然開け放たれた、副船長室の前を通りがかって、廊下に転がって来た毛糸玉を、セシルは拾って手渡す。
「あぁ。すまない。」
「モーリスさん達から聞いて思うけど、すごいよね・・・毎年編むなんて、何編んでたの」
好奇心に負けて、首を傾げながら副船長室に入る。
大量の毛糸玉が入った、大きな藤籠が床に置かれて、眼をむいた。
「これか。じいさんの股引だ。どうだ?いいできだろう。これなら爺さんも、冬場暖かく寝れる。」
ベッドに大量の完成品と思われる。マフラー、セーターや手袋が、畳んで置いてある場から腰を浮かして、クロウが腕を前にして、クリーム色の毛糸で編んだ、股引を誇らしげに掲げた。
「うん、本当に、なんでそんな無駄な技術身に着けてるの船長」
「そうか?何でもやってなきゃ、生きていけないだろ。」
問題はそこでは無い様な気がするが・・・敢えて、ここではセシルは無視した。
「だからって、船の全員の要望に応えて、セーター、マフラー、手袋作る海賊の頭は、僕の中で貴方だけですが。」
「いいじゃねーか。秋冬服代が浮いて。皆喜でいるぞ。毛糸玉で作った方が、賃金安いし、世界に一つだけの一品もんだぞ。」
ゴソゴソ、余った毛糸玉と使っていたと思われる、編み棒やかぎ針を、机の引き出しに直し込みながら、クロウ流の力説を放つ。
「まぁ、そりゃそうですけど。」
だからって元貴族の成人男子が、普通編み物するかな?普段男らしいのに、変な所で合理的な母性が出ている。
この変わった御人を理解するには一生かかりそうだと、セシルは思った。
ふうーっと深いため息を吐いて、クロウは珍しく上機嫌に完成品を見渡した。
同じくセシルも、他の皆がリクエストしていた品々を、クロウの器用さに感心して見てしまう。
「これで最後だ。皆の分はもう出来上がってたからな。」
「へぇ~、凝ってるね、あ・この白いボンボン着いてる手袋は、リオン君のだね。可愛いなぁ・・・」
子供サイズの淡いブルー色の手袋に、白いボンボリ玉が手の甲にあしらってある、可愛い手袋が眼に入った。
「ボンボンは、夢が詰まってると思う。」
ボソリと横で、顔と雰囲気にも似合わない台詞を聞くが、聞かなかったことにして、セシルはマフラーに意識を集中させる。大量のマフラーを手にして、
「・・・あ!この水色のマフラーはルシュカさんかな~、・・・この如何にも凝ってる、白いマフラーは誰のかな」
「あぁ。それは料理長のだな。俺の大傑作。」
他の毛糸の質が明らかに違う、白いフワフワの純白マフラーを目にして、セシルは首を傾げる。
「ふぅん、でもこれ長過ぎない?」
「それは・・・料理長のリクエストでな。恋人マフラー使用なんだ。」
クロウは言いにくそうに、少し遠い眼をしながら、セシルに応えた。
「へ・へぇ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
何とも言えない、沈黙が辺りを包んだ。
恋人マフラー・・・なんだ。とセシルは心の中で、その言葉を反復し、クロウと同じく遠い眼をする。二人とも今日ではなく、明後日の方向へ意識を飛ばして。
「そういえば。」
唐突にクロウが、何かを思い出したように呟いた。
「ほぇ?」
「セシルは俺にリクエストしなかっただろう、今からでも作ろうか。恋人まふ・・」
「結構です!船長!!お気を使わずにっ、僕にはこないだ母から手袋もらったし!!」
クロウの最後の言葉を遮って、早口でセシルは捲くし立てる。セシルの心情として、言わせてなるものか!!コノヤロウ!!だった・・・。
「・・・・っち。」
明らかに眉間に皺寄せて、口惜しそうに舌打ちするクロウ。
セシルはあのまま最後まで、クロウの言葉を聞いていると、また丸め込まれそうなので、先手を打ったのだ。
「あ!そういえば、僕モーリスさんに呼ばれてるんだった!!では船長失礼しました!!」
舌打ちを聞いて、青ざめながら何とかこの状況から戦線離脱するべく、セシルは脱兎の如く退却する。
その時、セシルは最恐最悪な場面を凌げたと、大いに喜んだのだが、本当の最恐最悪はその後日、問答無用で副船長さえ巻き込み、他の船員達と共に、降りかかったのである。
ガンダルシア北領土・アカシア島、港町コルト。
マライトへ進路をほんの少し寄り道して、
凍てついた本格的寒波が押し寄せる、港町コルトに海賊船ブラックパールは停泊していた。
いつもなら、この港町コルトでは大いにお金を使ってくれ、町を襲わない海賊を歓迎し、
何処から聞きつけたのか、沢山の商人達や、娼婦、売り子が港に押し寄せ、人の活気と歓声に埋もれて五月蠅いくらいなのだ。
しかし、今日この日は、皆がみな、凍てついた寒波の様に、沈黙し活気と言うモノが失われていた。いつものように、沢山の商人達や、娼婦、売り子が港に押し寄せてはいるのだが、悪名名高いブラックパールから、降りてきた二人によって、港町は静まり返っていた。
「・・・おい、誰かあれ何とかしろよ」
副船長作、緑のセーターを着たバルナバスが、呻くように言う。
「できると思うか。」
黒衣のロングコートを着こなしている、クロウが応える。
「バルナバス、それは無理ってモンさ」
蒼い顔で、副船長作水色マフラーを巻いて、ルシュカが宥めた。
「船長にもできない事が、あったんだね」
いつも死んだ魚の様な眼をしている少年セシルは、紺色の手袋をして正直な感想を述べた。
(私ハ、何も見てナイ、見てナイ・・・)
涙を流した道化の仮面を被り、ペルソナは副船長作、臙脂のマフラーを巻いて、心で現実逃避する。
皆の視線の先には、ご陽気航海士ルーヴィッヒと料理長モーリスが副船長の大傑作。
白い恋人マフラーを二人で、嬉しそうに首に巻いて、腕を組みながら港を闊歩する姿だった。
「この後、いつもの場所で何か食べましょうよ」
「そうだな~☆何が良い?」
などと言いながら、俺達付き合ってます~、という甘過ぎるオーラを垂れ流す。それに胸焼け、及び眩暈や吐き気という、毒気に当てられそうになって非難する町の人々。
二人のバカップルの周りには、一人も人は寄りつけなかった。
遠くの方でそれを傍観していた、海賊トップ組の最年少リオンは、白いボンボンの付いた手袋で二人を指さしながら、バルナバスに爆弾を投下する。
「バルおじちゃん・・・あれって捕虜?」
「ちっ違うぞぉ~坊主」
引き攣った笑みでバルナバスは、そう否定する。
「だって、悪い人を括り付けて、逃げられない様に捕えてるんでしょ?」
リオンは昔、バルナバスに教えて貰った単語に間違いがどこにあるのかと、不思議そうに首を傾げる。
「ある意味、的を射ているけどな。」
「船長!余計なこと言わんでくださいよ」
腕を組んで仁王立ちの副船長に、ルシュカが話を拗らせないよう止めに入る。それに触発されてセシルも、リオンに間違いを教えるべく、必死になって言葉を探す。
「リ・リオン君、二人は何も悪い事してないでしょ~」
「え、でも・・・ママンとルーヴィッヒ兄は、海賊でしょ」
悪い人でしょ?と言うリオンにセシルは、どう説明したら良いものか、困っていると。
「違うぞぃっリオン、あれはな・・・愛の鎖なんじゃよ。本当に仲の良い恋人たちじゃ・・・儂も嬉しいのぅ」
スッと一同の後から、眼を潤ませて船長ユージンが更なる追い打ちをかける。
『爺ぃ!!アンタ何言ってんだ!その眼は節穴かっ!!』
幼いリオンを除いて、その場に居た全員がそう心の中で叫んだ。
どうやら船長のユージンは一度、家族を失った過去がある為か、その眼と脳内には、物事を都合よく(フィ)見る(ル)メガネ(ター)が掛けられているようだ。
「ふーん、そうなんだぁ!」
無邪気にリオンが納得する。
『リオン――――――!!納得しちゃったよこの子!!』
説明する気力もなく、喉に閊える言葉を一同は飲み込んで、行き付けの店で軽い軽食を取る事にした。そうでもしないと、収拾がつかないと思ったからだ。
が、しかし―――――――――――――――――――――――。
「おいいぃぃぃぃぃぃぃっつ、何だって同じ店に、あの二人が入ってくるんだよ!!」
ルシュカがガシッと、バルナバスの服を掴んで、扉から入ってきたバカップルを指さす。
「知るかぁっ、こっちが聞きてぇよ!」
悲鳴にも似た叫びを、バルナバスも声を抑えて盛大にあげる。
満月猫の亭の奥テーブルで、ある程度注文を済ませた、クロウ一行は最悪な状況に陥った。
『ご注文は・・・はい、はい、宜しいですね。』
いつもは、にこやかに世間話をしてくれる海賊団の癒しの的。
給仕のお姉さんも、今日ばかりは引き攣った笑みで、注文を取って、そそくさと厨房の奥に引っ込んで行く始末。
「でねぇ~ダーリン、今日のこの服、新しく仕立てたのよ。どうコレ?似合う?」
モーリスは椅子に腰かけて、花柄の刺繍が施されたシャツの襟を、正しつつハスキーボイスで航海士に問いかけていた。顔は端正な男性モーリスだ、黙っていれば問題ない。しかし、悲しきかな、それは彼の性格には似合わなかった・・・。
「やっぱり~♪朝からもしかしてって、俺も思ってたんだよ~。うん、大丈夫、十分すぎるくらい似合ってるよ☆ハニー♪」
だが、そんな事などお構いなしな、お気楽航海士ルーヴィッヒは懐がでかいのか、それともただ単に、底抜けの馬鹿なのか。さらりと、その場が凍える中に、甘ったるい言葉をモーリスに掛ける。
もはや、視覚と聴覚の有害である。暴力である。汚染である。
「・・・・・・僕、食欲ない」
カチャンとジャガイモのバター焼きを食べていた、フォークを置いてセシルが溜息を吐いた。その眼はいつもクロウに口説かれたとき以上に、死んでいる。
(・・・・・・同じく。)
「僕も・・・。」
それに続いて、ペルソナとリオンもファークとナイフを意気消沈し、テーブルに置く。
「俺も酒があまり喉通らねぇ・・・」
うんざりとした表情でバルナバスが椅子の背にもたれ、眼の前のサラダをフォークで突いていた、ルシュカも乾いた笑いをこぼす。
「もう、昼飯このトマトサラダだけで、いいんじゃね?」
「同感だ、何故だろうな。胸焼けがする。」
クロウも只でさえ白い顔を、さらに不健康に青ざめさせる。
「つか、何であんなモノ編んだんだ」
ルシュカが、誰もが思っていた疑問をさらりと零して、副船長を恨みがましく見つめた。
皆も同じ事を思って、無意識にもウンウンと頷いて賛同する。
「いやな。ルーヴィッヒに頼まれたなら、即却下だったんだが・・・、いつも世話になってる料理長の頼みとなると、断りにくくてな。」
クロウの言葉に、皆がみなそれは断れない・・・、と蟠りがあるが納得してしまう。
普段皆の世話を焼いて、無茶な要望にも応えてくれる料理長の頼みなら、断る事ができようか。否、誰ひとり居ないだろう。
だからと言って、こちらの精神力と体力がガンガン削られていくのは確かで―――。
『はぁ~~~~~~~~~あ。』
クロウ副船長一行は、テーブルに各々顔を尽きあわせて、盛大なる溜息を吐いた。
それは青い、青い、とても青い溜息だった。
後に彼等を遠くの方で見守っていた、店の店主はかく語る。
料理を囲みながら拷問に耐える、顔色の悪い海賊達と。
だが対照的に仲間を心配もせず、甘い声で愛を囁き合う、バカップルの声だけが嫌に響いていたという・・・。
夕方、クロウとセシルは二人で、買い物を終えて船に戻る為、波止場を歩いていた。
「船長・・・アレでも恋人マフラーしたいですか。」
「・・・・・。」
遠くの海を見つめて、セシルが昼間のあの二人の事を持ち出し問いかける。
「したら、アレと同じ立場になるんですよ。」
少し怒気を含めて声を出して、副船長に念を押す。
来年、自分に恋人マフラーを、強要しそうなクロウに、先手を打っておくためだ。
「・・・すまん。」
ガックリと首を落として、クロウは荷物を抱え直し、恋人マフラーを断念したのだった。
『彼氏と彼氏の事情~あるいは海賊達の憂鬱リターン~』終




