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もふもふ増えました

 それから数日後、自分のベットに座る僕の前には、二匹の子犬ぐらいのワンコが居た。

 両方とも白い体をしており、鼻筋についている青色と桃色の模様以外は瓜二つに見える。

 テーブル脇のクッションに座ってる玉ちゃんと合わせると、写真に撮って永久保存したいぐらいのもふもふ度だ。

「こないだ言ってたワシのしもべ、狛犬こまいぬの太郎と花子じゃ!」

「「違います(わ)!」」

 玉ちゃんの紹介に、ワンコ達が即座に否定した。

「ふぅ、冗談も通じんのか、駄目駄目じゃのぉー」玉ちゃんがヤレヤレとぼやく。

「玉藻様のは面白くありません! 改めまして、貴方が桃香様ですね。お会いできて大変嬉しく思います。私の名前が、此方の方がうんと申します」

 青いワンコが自分達について説明をし、桃色のワンコが「はじめまして桃香様」ペコリと頭を下げた。

「此方こそヨロシクね」 

「中々ええ名前じゃろ?」

 僕が笑顔で挨拶した後、玉ちゃんが胸を張った。

「何で玉ちゃんが誇ってるの?」

 ワンコ達は折角可愛い容姿なのに、名前が微妙だと思うんだけどね。

「ふふん。それはワシが名付け親じゃからだ!」

 ああ、それでこのセンスなのか……納得だね。

「はい、私達は玉藻様に名付けて頂いたのです。ですが……」

 阿君が苦渋の表情を見せている。吽ちゃんも同様な感じなのを見ると同じく不満がありそうに感じた。

「どうしたの阿君、吽ちゃん?」

「「いえ、なんでもないです……」」

 二匹の表情が優れないのがとても気になる。尻尾と耳がシュンとうなだれていた。

「おいお前達、何の不満があるんじゃ? ワシの前だからって遠慮することはないぞ? 折角桃香もいるんじゃからな」

「それでは……本当に言っても怒りません?」阿君が玉ちゃんの顔色を伺っている。

「おうさ、ワシは桃香と一緒で大変機嫌が良いからのぉ」

「…………」

 阿君は吽ちゃんの方に顔を向けた。

 そして、吽ちゃんが頷いたのを見て決心をしたような目を僕にする。

「玉藻様は名前のセンスが悪いんです! こんな名前嫌なので、桃香様新しい名前を付けてくださいませんか?」

「な!?」玉ちゃんは予想外の台詞に神社の彫像のように固まってしまう。

 頼まれた僕は、密かに納得してしまった。

 確かに可愛くないよね。

「本当に、僕が名付けてもいいのかな?」

「「是非に!!」」

 そこまで言われると断り難い。

「うーん。それじゃ、考えてみるよ」 

 二匹の視線がキラキラしていて、とてもプレッシャーを感じるよ。

 僕が悩んでいる間、二匹は尻尾を振りながらご機嫌な様子だ。

 本当に嫌だったみたいだね。

 ……それにしても、いきなり言われたって困るというのが本音だ。

 しかし、二匹の期待を裏切る訳にはいかないし……

 うーん、つけるなら僕と同じ――そうだ!

「こんなのどうかな? 阿君が竜胆りんどう、吽ちゃんが睡蓮すいれんっていうのは、僕が桃で花の名前だし、竜胆は青の、睡蓮は桃色の綺麗な花が咲くからね」

「「私が竜胆(睡蓮)」」

 二匹がその名前を確かめるように呟いた。

「どうかな?」

「いいです! 竜胆、最高です!」

「ありがとうございます。桃香様! 私この睡蓮という名前とても気に入りましたわ」

 どうやら、二匹共とても喜んでくれたようだ。

「いいんじゃ、いいんじゃ、ワシなんてセンスも何も無いからのぉ」

 それを聞いていた玉たちゃんがイジケモード絶好調です。いつの間にか復活してたみたい。 

 全く、本当に偉い神様なのか疑いたくなるね。 

 仕方が無いので、

「玉ちゃん、そう落ちこまないの」

 お気に入りのクッションに座っていた玉ちゃんを持ち上げ僕の膝の上に乗せた。

 そして、頭の辺りを優しく撫でると、途端に目を細めてトローンした表情になる。

「はぅ、桃香や、もっとやっておくれ」

 玉ちゃんは先程までの態度は何所へやら、とても気持ちよさそうだ。

「しょうがないなぁ。名前の件は許してあげて貰える?」

「むー。その件はのぉ……」

 まだ冷静な判断が出来るらしい――

 ならば、両手で耳の辺りと尻尾を撫でる同時攻撃を開始した。

「はぅ、うぅ、そこ、駄目!」

 もうちょいかな? 暫く続けていると――

「判った、判ったから。桃香の頼みじゃから、それでええ! 他の奴等には内緒じゃぞ!」

 僕の連続愛撫? に負けた玉ちゃんは遂に陥落した

「ありがとう玉ちゃん」感謝の気持ちを込めてそのまま抱きついた。

 玉ちゃんも満更じゃない表情なのを見ると喜んでるのかもしれない。

「桃香様凄いです!」

「流石、桃香様ですわ!」

 二匹が絶賛している。

「そうかなぁ?」

「そうですとも! 玉藻様と言えば神の中でもその者ありといわれるぐらい有名な神なのです。それをまるで子供扱いとは……」

 竜胆君の説明は確かに納得いくものがあった。

 稲荷神社ぐらいの規模の神社は無いし、そこに奉られているのだから、確かに凄い神なのだろうと思う。

「うーん。でも玉ちゃんって僕から見たらお爺ちゃんみたいなものだしね。家族だからなんともないよ」

 僕が家族と言った瞬間、玉ちゃんの目が大きく開いた。

 そして、ありがとう桃香という小さな声が腕の中から聞こえた。

 二匹には聞こえなかったみたいだけど、僕にはちゃんと届いたよ。

 玉ちゃんはやっぱり寂しかったのだろうね。



 その後、二匹は僕の初めてのしもべとなることが決まった。

 二匹も喜んでくれて、玉ちゃんが主より嬉しいと言った時等は、少しはらはらしたぐらいだ。

 普段は別の処で仕事をしているけど、二匹とは勾玉まがたまですぐ話すことが出来るので不便は無いことも判る。

 その勾玉は玉ちゃんから貰った。

 勾玉に神力を込めれば二匹はすぐに僕の側に来ることが出来るそうなのだけど、僕はまだやり方が判らない為、要修行ということになる。

 二匹には「頑張ってください!」と励まされたよ。

 玉ちゃんによると、これから神の修行するに辺り、手助けする者が必要だと思っていたらしいので、丁度良かったらしい。

 ちなみに、悔しそうな表情をしていたのをみると、どこまでが本気なのか微妙なところだね。

狛犬の名前は阿吽で正しいのですが、作者的に可愛くない! で変えちゃいましたw

呼び難いですしね。

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