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玉ちゃんのいる日常 

 玉ちゃんが来てからの僕の生活は一変した。

 なんてことは無かったけど、両親は、女の子になった僕を見て喜んでいた。

 神の後継者となれば一族的には万々歳なのだろう。

 妹の、伏見ふしみ 美華みかは初めは悲しんでくれたのだが、今となっては女の子になって良かったぐらいの変りようだ。なんか納得がいかない。



 一言でいえば、理不尽だ……



 現在は、家族で遅めの朝ご飯の最中だったりする。

 父さんは仕事に出かけてしまい、玉ちゃんも一緒に床に置かれたお皿の上の油揚げを食べていた。

 やっぱり好きなんだねとツッコミたくなるよ。

 この玉ちゃん。体も小さく出来るそうで今の姿は抱きかかえられるぐらいのサイズになっていた。

 実にプリティでちょっと頬擦りしたくなる程だ。

「桃香ちゃん。ちゃんと学校の準備は終わってるの?」

 母さん、伏見ふしみ 奈美なみが、目玉焼きを食べてる僕に話し掛けてくる。

 僕は断然半熟派だ。

 母さんの年齢は……うん、まだ死にたくないから言うのはやめよう、だけど、見た目と言動が子供っぽいので30台といわれても誰も信じないのではないだろうか。

 ボブカットにした髪が活動的に見えて、良く似合っている。

「母さん、その語尾の『ちゃん』なんとかしてよ。それと、僕は神様なんだし、勉強とかいらないんじゃない?」

「あらあら、女の子に『ちゃん』は当たり前だわ。それに神様になるってことは、森羅万象あらゆる事に付いて知識を求められるもの、学校に通うことはそれに繋がると思うわ。そのことついては、玉藻様も了承して下さっています」

 又この狐か……僕は玉ちゃんを軽く睨む。

 玉ちゃんはというと、そ知らぬ顔をして、二枚目の油揚げに舌鼓を打っていた。

「大体、急に女の子になったなんて恥かしくて言えないよ。どんな顔して学校に行けばいいのさ」

「別に、春休みのような長期休暇の後にカミングアウトしても誰も驚かないわよ。うちの桃香ちゃんは美少女ですもの。人気でるわよ!」

「うんうん、お姉ちゃんなら人気者になれるよ!」

 美華は黙って食べてような……

「そんなの成りたくないんだけど、大体さ、こういう時って他の学校に転校とかするのが

テンプレじゃないの?」

「あら、桃香ちゃんはお友達と別れるのが嫌じゃないの?」

「それはそうだけどさ……」

「なら、問題無いじゃない」

「十分あり過ぎだって!」

「大丈夫だよお姉ちゃん。私も今年からお姉ちゃんと同じ学校に通うんだもん。助けてあげるからね!」

 美華に協力されると、問題ばかり起きるから勘弁して欲しいのだけどね。

 実は、妹の美華は兄の僕から見ても美少女なのだ。

 子供っぽいところも男子受けするらしく、ちょっと垂れ目がちな優しい顔立ちも性格に良くあっていた。母さんを若くしたらそのまんまとも言える。 

 僕も変化する前は母さん似だったし、父さんってひょっとして可哀想なのかもしれない。

「それは、期待だけしとくよ。美華に助かられることは先ず無いしな」

「お姉ちゃんそれどういう意味!」

「そのまんまだけどなぁ……」

 美華がぷんぷんと頬を膨らませているのを横目に玉ちゃんを観察すると、三枚目の油揚げに取り掛かっていた。

 どんだけ食べるんだろ……そう考えていると、、

「ああ、桃香ちゃん。制服が新しくなるから、後で試着しなさいね」

 母さんがポンと手を叩いて、急に思い出したように声を出した。

「あれ? うちの学校って制服変るんだっけ。学ランだったし、ブレザーにでもなるの?」

「違うでしょ! 桃香ちゃんは女の子なのだから、女子用の制服に変ります」

「えええ! 別に僕は今のままでいいよー!」

「それが駄目なのよ。学校と話した処、女子が男子の制服を着るのは問題ありと言われたのよね。全く神様をなんだと思ってるのかしらね!」

 母さんは怒っているけど、玉ちゃんを見るに唯の狐にしか思ってないような……

 威厳もへったくりもないよね。

 はぁ……納得いかないよ!



 ご飯を食べ終わると、紙製の衣装ケースを受け取って部屋に戻った。

 その後を玉ちゃんがトコトコ歩いてついてくる。   

 早速、着替えなんてする訳も無く、ぽいっとケースをベットの上に投げ捨てる。

 それを見咎めるように玉ちゃんが話し掛けてくる。

「母御に言われたように着替えないのか?」

「うーん。別に焦ってないしね。というより、玉ちゃんて偉い神様なんだよね? なんで家に居ついてるの? ひょっとしてリストラでもされた?」

 玉ちゃんに溜息をつかれた。

「……なんでそうなるかのぉ。ワシ程の神になると、しもべが多いから奴等に任せてあるだけじゃ」

「へぇ、僕みたいな人が他にも居るんだ」

「お主は勘違いしてるようじゃが、稲荷神と言われる存在は、ワシとお主の二人だけじゃぞ? お主はワシの娘みたいなもんじゃからな」

「そうなんだ。ならそのしもべって何なの?」

「ふむ、今度紹介してやるとしよう。お主の部下になる身じゃしな」

「うん、判った。きっと玉ちゃんよりも、もふもふしてて可愛いんだよね!」

「何を言うか! ワシのこの愛らしさは天下一品じゃぞ!」

 そこは張り合うんだ……

「でもねぇ、小さい玉ちゃんは可愛いと思うけど、性格がひねてるからなぁ」

「神に向かってそんなこと言う奴はお主だけじゃ、もしお主以外がそんな戯言を吐いたら祟ってやるぞ」

「うそ! そんな酷いことするの!」

「冗談に決まっておろうが……」

 玉ちゃんは僕を嘲るようにコンコンコンと笑っている。

 絶対性格悪いと思うんだ!

「もう、そんなこという狐はこうだ!」

 僕は素早く玉ちゃんに近付くと尻尾を抱きかかえる。そして顔をスリスリしだした。

 うん、もふもふしてて心地いいね! 沢山あるのもいい感じだよ!

「こら! 何をする、くすぐったいじゃろが!」

「いいの! 癒されるわぁ……」

「たく、しょーもない奴じゃのぉ」

 しかし、玉ちゃんは口では文句を言うものの僕の好きなようにさせてくれた。

 先ほど言っていた娘云々という話はどうやら本気らしいのだ。

 生まれた時から僕に干渉してたぐらいだし、僕を見る視線は何処か暖かいモノがあるからね。

「よし、満足したよ!」

 玉ちゃんの毛並みを十分堪能し、開放してあげた。

「そうか、まだしててもいいんじゃぞ?」

「そうしたいけどね、いつでも出来るからしたい時にはするよ!」

「ほんに仕方ない奴じゃないのぉ、まぁワシも娘に甘えられてるみたいで嫌では無いしのぉ」

 考えてみると、稲荷神はニ人しか居ないというなら、今迄玉ちゃんは孤独だったのかもしれない。僕が同種になって嬉しいのだろうね。

「そういえば、僕って神様になってから、何もしてないけどこのままでいいの?」

「今は体調の変化やらで戸惑うこともあるからのぉ、少し様子見してるところじゃな。何事もなければ神通力の使い方、徳を積む修行を始めようと思っとる。まぁわし等には時間はあってないようなモノじゃ、気楽にしとるが良いぞ」

「そうなんだ。なら言われた通りにしとくよ」

 修行よりは遊んでた方がいいよね!  

こんな感じで進んでいきたいと思います。

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