妹を生き返らせてもらうはずが、何故か隣にいた用心棒(生きてる)が生き返った話
世界の中心にある《光の世界樹》は、遠目にはただの白い柱に見えた。
だが近づけば分かる。
――あれは、木なんかじゃない。
空を貫く骨。
雲を裂く槍。
枝先から零れる光が、昼と夜の境界を曖昧にしてしまうほどの、世界そのものの心臓。
その根元に、円形の祭壇がある。
そして祭壇の前に積まれた金貨の山――一千万ゴールド。
金貨は重い。
触れれば指が痛くなるほど現実的で、冷たく、汚れていて、だからこそ価値がある。
この金貨は、二年分のボクの人生だ。
ボク――ノルグは、震える息を喉で殺して、祭壇の前に膝をついた。
(……妹を、取り戻す)
二年前。
疫病の流行で、妹のルナは――あっけなく、眠るみたいに逝った。
「お兄ちゃん……ごめんね」
笑って、そう言い残して。
そのまま閉じた目は、二度と開くことはなかった。
そして、それからの二年。
ボクは商人見習いから始め、荷車を引いて街を渡り、時には盗賊に襲われ、魔物に追われ、それでも金を稼いだ。
大人みたいに強くはなれなかったけれど、ボクにはボクの武器がある。
――人を見て、値を見て、勝ち筋を作る。
気弱でもいい。
怖くてもいい。
ボクは、妹を生き返らせると決めたから。
─────
「ふぁぁぁぁ……」
その時、背後で誰かが欠伸をした。
「で、いつ始まるんだ? 樹に向かって土下座するイベントは」
「レミッドさん……静かにしてください。神聖な場所です」
用心棒のレミッドが肩をすくめる。
背中には巨大な銃――《魔心銃》がある。マナを弾丸のように連射する珍しい武器で、彼女はそれで魔物を蹴散らす。
ただし、本人は笑いながらよく言う。
「これがな、災いを呼ぶんだよ。マジで」
(縁起でもない……)
けれど、彼女がいなければボクはここまで辿り着けなかった。
空腹で行き倒れていたところを助けたら、なぜかそのまま居つき、用心棒を名乗った――ガサツで乱暴で男勝り。
でも、困っている人を放っておけない人。
「ノルグ、泣くなよ」
「泣いてません……」
「目、うるうるしてるけど?」
「こ、これは光が眩しいだけです!」
レミッドがニヤついた、その瞬間。
祭壇の空気が、突然“重く”なった。
木の息遣いが変わる。
いや、世界の呼吸そのものが止まるような感覚。
風が止み、鳥が黙り、音が消える。
――世界樹が、こちらを見た。
目なんてないのに、確かに見られている。
胸の内側へ、声が落ちてくる。
『一千万ゴールド。願いの対価は確かに受け取った』
声は男でも女でもない。
それなのに、逆らえない。
『さぁ、願いを叶えよう。
心に浮かべ、生を返す者の名を告げるだ』
ボクは深呼吸して、言葉を整えた。
丁寧に。失礼のないように。噛まないように。
「……ボクの妹、ルナを――生き返らせてください。二年前に死んだ、ボクの大切な――」
『承知した』
早い。
拍子抜けするほど早い。
次の瞬間、祭壇が爆ぜた。
金貨が――光に溶けていく。
一枚ずつ消えるんじゃない。山が一瞬で“溶ける”。
現実が、神話に塗り替えられる。
光の柱が空へ突き刺さり、枝から降る光が雨になって、祭壇へ集まる。
そして。
光の中から、“誰か”が現れた。
――重い音。
膝をつく影。
肩までの髪。
傷のある手。
背中に、巨大な銃。
(……え?)
喉から声が漏れた。
「……レミッド、さん?」
影が顔を上げる。
その目は、見慣れたふてぶてしさで――
「……なんだよ。そんな顔すんなよ」
レミッドが、そこにいた。
ボクの妹じゃない。
用心棒の、レミッドだ。
辺りを見見ても、誰もいない。
(まさか、失敗した?)
そう思い始めた瞬間、声が響く。
『復活対象:器。儀式は完了』
――完了?
「ま、待ってください! おかしいです!」
声が裏返った。
丁寧に言う余裕なんて消えていた。
「ボクは妹を! ルナを生き返らせてって! ちゃんと言いました! 今、言いました!」
『記録に誤りはない』
祭壇に積まれた一千万は、もう灰だった。
キラキラしていたはずの金貨は消え、残ったのは焼けた金属の匂いと、灰だけ。
夢が燃えた匂いがした。
「……ふざけんな」
ーー低い声。
レミッドが《魔心銃》を肩に担ぎ直しながら、世界樹を睨んだ。
「アタシ、死んでねーし。勝手に復活とか意味わかんねぇ。金返せ。今すぐ返せ!!」
ボクは、頭が真っ白だった。
(世界樹は間違えない――って、誰もが言う)
じゃあ、なに?
ボクの願いが、間違ってる?
それとも――世界樹が“別の形で叶えた”?
理解が追いつかない。
だけど。
現実は、待ってくれなかった。
森の方角から、足音が来る。
甲冑の擦れる音。複数の靴音。
松明の揺れる光。
(世界樹の周囲には王都の監視が張られている――そんな噂を、今さら思い出した。)
「――見つけたぞ! 魔心銃の持ち主だ!」
「回収局だ! 大人しくしろ!」
回収局。
王都が作った危険武器取り締まり機関。表向きは正義。
裏では、武器も人も“回収”していく――って噂がある。
「チッ」
レミッドが舌打ちした。
「ほらな。言ったろ。災い呼ぶって」
「えぇ……? こんなタイミングで……!?」
「タイミングなんて選べねぇんだよ!」
松明の列が迫る。
黒い法衣の術師が混ざっている。
鎖と縄を持っている。
目が“人間を見る目”じゃない。
中心にいる、指揮官らしき男が叫んだ。
「器を確保しろ! 『核』を損なうな! 魔心銃も回収だ!」
――器? 核?
意味の分からない言葉が、背筋を冷やす。
ボクが息を呑んだ瞬間、レミッドの背の《魔心銃》が――ひとりでに唸った。
低く、獣みたいに。
銃の内部から黒い霧のようなマナが漏れ、地面に影を落とす。
それは普通のマナじゃない。冷たくて、嫌な匂いがする。
レミッドが苦々しく笑った。
「……ほら、こっちもやる気だ」
「やる気って……!」
「決まってんだろ」
レミッドは《魔心銃》を引き抜いた。
動きは荒いのに無駄がない。戦う人間の動きだ。
「ノルグ、後ろに下がれ!」
「む、無理です! ボクの一千万が灰になったばかりなのに、今度は殺されるとか……!」
「馬鹿野郎! 生き延びてから思いっきり泣け!」
回収局が突っ込んでくる。
術師が地面に手を叩きつけ、捕縛の陣が広がった。
足が重い。動けない――!
(まずい!)
ボクは反射的に目眩しの魔法を放った。
光の粒が弾け、術師たちの視界を奪う。
「――っ!」
「いいね、商人。やるじゃん!」
レミッドが笑いながら引き金を引いた。
“ダダダダダダ――!”
音が、森を裂いた。
マナの弾丸が線になって走り、捕縛の陣が割れる。
鎖が弾け、兵が転がる。
土がえぐれ、松明が倒れ、夜が明るく燃える。
強い。強すぎる。
その強さが、怖い。
(この人……どこで、こんな戦い方を……?)
「殺すな! 器は生かして連行しろ!」
(器――レミッドさんのこと?)
背筋が冷たくなる。
「レミッドさん! こっちです!」
ボクは祭壇の裏へ走った。
事前に調べていた。世界樹の根元には、巡礼者のための古い祈祷路が残っている。
入口は、人一人分の裂け目。
「こっちに逃げ道が――!」
「ナイス、商人!」
レミッドは撃ちながら後退し、ボクの方へ跳んだ。
最後に弾幕を一斉掃射し、追っ手を押し返す。
二人で裂け目に滑り込む瞬間、背後から術師の声が飛んだ。
「逃がすな! 器を失えば、統合ができぬ! 核が――!」
統合。核。器。
嫌な単語が、綺麗に繋がっていく。
─────
裂け目の中は、根の匂いがした。
湿った土と、白い光。
暗いのに、目が慣れる。
壁は木の根。脈打つように、光が流れている。
レミッドが息を吐いた。
「……はぁ。追っ手、しつけぇな」
「レミッドさん……あなた、何なんですか?」
ボクの声は震えていた。
怒りとも悲しみとも違う。分からないものが怖い。
「世界樹が、あなたを復活対象って……ボクの願いは、妹だったのに……!」
レミッドは歩きながら、少しだけ顔をしかめた。
「知らねぇよ。アタシはアタシだ。……ただ」
一瞬、声が揺れる。
「時々、夢を見る。子どもの声で、名前を呼ぶ夢」
「名前……?」
レミッドは唇を噛む。
「『ノルグ』って。……あったかい手で、頭を撫でる夢」
ボクの視界が滲んだ。
――妹が、よくやった癖。
泣き虫のボクの頭を撫でて、笑って言った。
『ノルグ、だいじょうぶ。だいじょうぶだよ』
偶然だ。
そう思いたい。
でも、世界樹は間違えない。
回収局は“器”と呼んだ。
そして――
レミッドの《魔心銃》が、また唸った。
今度は、さっきより強く。
黒い霧が、銃口からだけじゃなく――レミッドの胸のあたりからも漏れているように見えた。
銃と彼女の鼓動が、同じリズムで唸っている――そんな錯覚がした。
レミッドが舌打ちする。
「……くそ。これ、やっぱり――」
「やっぱり……?」
彼女は一瞬だけ言葉を止めた。
その沈黙が、答えより怖い。
出口の光へ走りながら、ボクは決めた。
妹のために稼いだ金は消えた。
でも、願いは終わってない。
(ボクは商人だ。取り返す)
――妹の真実も。
――レミッドさんの正体も。
――世界樹が“叶えた形”の意味も。
─────
出口へ飛び出した瞬間、森の空気が変わった。
冷たい夜気。だがその中に――獣の匂い。
前方の闇で、赤い目がいくつも光った。
魔物の群れだ。
そして背後では、《回収局》の松明が迫ってくる。
挟み撃ち。
レミッドが笑う。
最悪を楽しむみたいに、いつもの顔で。
「ほらな。災い、来ただろ?」
ボクは震える手でマナを練り、火の玉を作った。
小さい火。頼りない火。
それでも。
「……レミッドさん。合わせます」
レミッドが《魔心銃》を構える。
「おう。商人の根性、見せろ」
闇が迫る。光が裂ける。
牙が地面を擦り、低い唸り声が祈祷路の出口を塞ぐように広がった。
狼型の魔物。
筋肉が異様に盛り上がり、マナの流れが暴走しているのが、素人目にも分かる。
(……こんな数、聞いてない)
背後では《回収局》の松明が森を照らし始めていた。
前も後ろも、逃げ場がない。
「……挟み撃ちか」
レミッドが、軽口を消した声で言う。
《魔心銃》を構えた背中が、やけに大きく見えた。
「ノルグ。これ、長引かせるとヤバい」
「分かってます……!」
ボクは火の玉をもう一つ作った。掌サイズ。
正直、魔物を倒すには足りない。
でも――
(怯ませるだけでいい)
商人は、全部を倒そうとしない。
勝てるところだけを抜く。逃げ道だけを作る。
「レミッドさん! 右の群れ、少し前に出てます!」
「了解!」
ボクの火の玉が地面を焼いた。
狼の足元で弾け、熱と光が広がる。
「――ッ!」
魔物の動きが止まった瞬間、レミッドが引き金を引いた。
“ダダダダダダ――!”
夜が割れる。
マナの弾幕が一直線に走り、群れを横から削る。
血とマナが飛び散り、魔物が転がる。
速い。正確。ためらいがない。
(……強い)
でも同時に。
レミッドの体から、黒い霧が噴き出した。
「……ぐっ」
レミッドが息を詰まらせる。
銃の反動じゃない。霧は――銃より、彼女自身から溢れている。
「レミッドさん!?」
「平気だ……っ。まだ動ける!」
背後から、《回収局》の術師が詠唱を始めた。
「拘束陣、展開! 『器』を捕らえろ!」
地面に光る紋様が走る。さっきより強い。
逃げ道を塞ぐように円を描く。
(まずい……!)
ボクは歯を食いしばり、目眩しの魔法を重ねた。
視界が白く弾け、術師たちの詠唱が乱れる。
「――っ!」
「チッ……!」
それでも、指揮官の声だけははっきり通った。
「急げ! 『器』の負荷が上がっている!
『核』が完全に目覚める前に回収しろ!」
『核』。
その言葉に、胸が締め付けられた。
(やっぱり……レミッドさんの中に、何かある)
魔物の残党が、再び飛びかかってくる。今度は――ボクの方へ。
「ノルグ!!」
レミッドが迷わず飛び込んできた。
魔物の牙が、彼女の脇腹を裂く。
「――痛つぅっ!!」
血が飛んだ。
「レミッドさん!!」
「くぅ……っ」
「回復します!!」
ボクは震える手で回復魔法を流し込む。
マナが傷を塞ぐ――間に合った。けれど。
その瞬間、ふわりと懐かしい匂いがした。
草花。陽だまり。
妹が髪に結んでいた匂い。
(……嘘)
喉から声が漏れた。
「……ルナ?」
レミッドの動きが一瞬止まった。
そして――彼女の目が、柔らかく揺れた。
ほんの一瞬、戦場に似つかわしくない穏やかな目。
「……なんだよ。そんな顔すんな」
レミッドは無理に笑った。
「すみません……懐かしい匂いが少し……」
「……はぁ? 匂いで人を決めんな。変態か?」
「ち、違います!!」
でも否定しきれない。
指揮官が、確信したように言った。
「やはりな……『核』が反応している。
この『器』は――『欠片』として完成している」
『欠片』。
その言葉が決定打だった。
(妹の……魂の、欠片?)
理解してしまった瞬間、足が震えた。
「ノルグ!」
レミッドが叫ぶ。
「立て! 今は考えるな!」
魔物はまだいる。《回収局》もいる。
ここで止まれば、終わりだ。
ボクは歯を食いしばり、立ち上がった。
(……考えるのは、生き延びてからだ)
レミッドが《魔心銃》を構え、最後の弾幕を張る。
「行くぞ! 一気に突破する!」
「はい!」
二人で闇を駆けた。
弾丸が道を切り開き、火の玉が影を追い払い、回復魔法が命を繋ぐ。
背後で、指揮官の声が響いた。
「逃がすな!
その『器』は――世界樹が“選んだ”存在だ!!」
その言葉を背中で聞きながら、ボクは理解した。
――世界樹は間違えたんじゃない。
――妹を無視したんじゃない。
世界樹は、ボクに“選択”を突きつけたんだ。
妹を取り戻すか。
それとも、レミッドを生かすか。
逃げながら、ボクは決めた。
(商人として――この取引、最後まで見届ける)
─────
夜明け前の森は冷たい。
露が草を濡らし、息を吐くたび白く曇る。
なんとか――生きて延びた。
追っ手の気配が、少しずつ遠ざかっている。
レミッドが木立の奥で手を上げた。
「……待て。いったん休むぞ」
崩れかけた石の祠。
古い巡礼路の分岐点らしく、根と岩が絡み合い、外からは見えにくい。
二人は息を殺して身を潜めた。
しばらくしても松明の光は追ってこない。
「……撒けた、みたいですね」
「はぁ……さすがに、しつけぇ奴らでも森の奥までは来ねぇか」
その瞬間、レミッドの肩が大きく揺れた。
「――ぐぁっ!」
「レミッドさん!?」
脇腹の傷は塞いだはずなのに、顔色が悪い。
「……平気だ。怪我じゃねぇ」
レミッドは歯を食いしばり、《魔心銃》を地面に置いた。
銃身から、例の黒い霧がまだ微かに漏れている。
レミッドは少しだけ目を伏せた。
「昔、王都の地下に研究所があった。
《魔心銃》の開発と、“適合者”の選別をしてた場所だ」
ボクは黙って聞いた。今は質問を挟むべきじゃない。
「アタシは、そこで“成功例”扱いされた」
成功例。
その言葉が、妙に重い。
「マナ耐性が高くて、銃に耐えられて、壊れなかった。
だから……何度も撃たされた。敵役も、実験用の魔物も、全部」
胸が痛んだ。
「逃げたんですか?」
「あぁ……逃げた」
レミッドは短く答えた。
「逃げなきゃ、もっと“組み替えられる”ところだった。
魂とか『核』とか……訳の分かんねぇ話を、あいつらは普通にしてた」
(『器』『核』『欠片』……)
繋がる。嫌な形で。
「……ボク」
喉が震えた。けど、言わなきゃいけない。
「さっき《回収局》が言ってました。
“『欠片』として完成している”って」
レミッドの指が、ぴくりと動いた。
「……そうか」
それだけ言って、少し黙る。
「なぁ、ノルグ」
「はい」
「もしさ……アタシの中に、誰かの“一部”があるとして」
レミッドはボクを真っ直ぐ見た。
「それでも、アタシはアタシだよな?」
ボクは、はっきり答えた。
「はい」
レミッドの目が見開かれる。
「レミッドさんは、ボクを助けてくれた人です。
一緒に旅して、笑って、怒って……それは全部、レミッドさん自身です」
少し間があって、レミッドがふっと笑った。
「……ほんと、お前、変な商人」
「商売人の性分です」
「意味わかんねぇよ」
そう言いながらも、声は少しだけ軽かった。
ボクは深呼吸する。
(泣いてる場合じゃない)
妹のことも。レミッドのことも。《回収局》の狙いも。
感情だけで突っ込んだら、また奪われる。
(商人として考えろ)
「レミッドさん。今の状況、整理します」
「お、来たな」
「まず、《回収局》は、あなたを『器』として回収しようとしている。
次に、世界樹は、あなたを“復活対象”として選んだ。
そして、あなたの中に『核』――少なくとも“何か”がある可能性が高い」
レミッドは黙って聞いている。
「最後に……
《回収局》は……あなたを殺す気はない」
「……まあな。殺すなら、とっくにやってる」
ボクは頷いた。
「つまり彼らは、“回収して使う”つもりです。
それは、あなたにとって――最悪の未来です」
レミッドの拳が、ぎゅっと握られた。
「……だから?」
「だから、先手を打ちます」
ボクは顔を上げた。
「情報を集めます。
《回収局》の内部事情。『核』と『器』の正確な意味。
そして――世界樹の“例外”」
「世界樹の例外?」
「はい。一生に一度の復活が、どうしてあなたに使われたのか。
そこには、必ず理由があります」
「商売人は、理由の分からない取引はしません」
レミッドはしばらくボクを見ていたが、やがて肩をすくめた。
「……分かった。アタシは頭使うの苦手だ。そういうのは任せる」
「はい。任されます」
空が、少し明るくなっている。
「次の目的地は、巡礼都市です」
「エルディア……世界樹信仰の中心か?」
「はい。あそこなら、“復活の例外”について知っている人がいます。
表の記録じゃなく――裏の、消された話を」
レミッドがニヤリと笑った。
「……危ねぇ匂いしかしねぇな」
「安全な取引なんて、ありませんから」
レミッドが《魔心銃》を担ぎ直す。
「行こうぜ、商人。……アタシの命の値段、ちゃんと計算してくれよ?」
ボクは少しだけ笑った。
「高くつきますよ。とても……一千万じゃ足りないくらい」
「はは。最悪だな」
朝の光が森を照らす。
二人は歩き出した。逃亡者としてではなく、取引の当事者として。
─────
巡礼都市は、昼でも眩しい。
世界樹へ続く主要巡礼路の中継点として栄えた街で、白い石畳と金色の装飾がやたらと多い。
祈りのために作られた街のはずなのに――実際は祈りより金と情報が飛び交っていた。
「相変わらず人、多いですね……」
巡礼者。護衛付きの商隊。
僧衣の者もいれば、明らかに傭兵な格好もいる。
「まぁな。ここは、世界樹に近い分、人も情報も集まる」
レミッドが低い声で言う。
「でも同時に、嗅ぎ回る奴も多い。……《回収局》もな」
(だからこそ、慎重に)
街に入ってすぐ、二人は“商人らしい行動”を取った。
露骨に隠れず、露骨に目立たず。
ボクは市場へ。
レミッドは護衛を装って少し離れた場所を歩く。
(情報は、まず“無害な話題”から買う)
果物屋。香辛料屋。巡礼者向けのお守りの露店。
少額の買い物をしながら、世間話を混ぜる。
「最近、巡礼路が物騒だそうですね」
「ええ、魔物が増えたって噂で」
「王都の兵も増えてますよね」
「ああ、《回収局》の連中でしょ?」
――来た。
「《回収局》って、危険武器の取り締まりですよね?」
露店の男は声を潜めた。
「表向きはな。でも場合によっては“人”も持っていくって話だ」
胸がひやりとする。
「人、ですか?」
「そう。変わったマナを持ってる奴とか……世界樹絡みの噂がある奴とか」
ボクは深追いせず、果物を一つ多めに買った。
「……ありがとうございました」
情報は、少しずつ繋がっていく。
そうして、昼過ぎにボクはある名前を掴んだ。
――《帳簿屋のミレイ》。
表の商売は古文書と記録の仲介。
裏では“消された記録”を扱う情報屋。
(……高そうだな)
だが、行くしかない。
ボクはレミッドと合流した。
「当たり、引いたか?」
「はい。ただし……値段は高そうです」
「情報は、命より安い時もある」
「商売人としては、逆の感覚なんですけど……」
レミッドが鼻で笑った。
─────
路地裏。古い石造りの建物の地下。
重い扉を叩くと、中から声がした。
「――帳簿は、正直に付けてる?」
合言葉だ。
「はい。赤字も、黒字も」
扉がゆっくり開いた。
中にいたのは、細身の女性。年齢不詳。
目だけが異様に鋭い。
「……珍しいわね。随分若い商人だこと」
「ノルグと申します。情報を買いに来ました」
ミレイはレミッドを一瞥する。
「護衛付き? ……それも、随分物騒なのを」
レミッドは無言で睨み返した。
ボクは懐から小袋を出す。金貨が軽く鳴る。
「“復活の例外”について、知りたいんです」
ミレイの目が、わずかに細くなる。
「……安くないわよ」
「分かっています。ですが――“途中まで”で構いません」
ミレイが面白そうに笑った。
「賢いわね。じゃあ……まずはここまで」
彼女は指を一本立てた。
「世界樹の復活は確かに“一生に一度”。
でも例外が三つだけ記録されている」
「三つ……」
「共通点は――魂が“単独じゃなかった”こと」
レミッドの指が、わずかに動いた。
ミレイは淡々と続ける。
「強い感情で結びついた魂は、分かれることがある。
守りたい、代わりたい、生きてほしい――そういう願いが歪みを生む」
そして、その歪みを“資源”として見ている組織がある。
「王都《回収局》。正確には、その内部にある“再生派”」
「再生派……?」
「ええ。彼らは復活を“技術”にしたがっている。
世界樹の奇跡を、量産できる形にね」
レミッドが低く呟く。
「……だから『器』か」
ミレイは頷いた。
「『器』は魂を留めるための存在。『核』は元になる魂の中心」
ボクは震える声で尋ねた。
「『欠片』は……?」
ミレイはレミッドを見る。
「『欠片』は――もう一つの人生を、生きてしまった魂よ」
その言葉は重かった。
「……それを、統合すると?」
ミレイは一拍置いて答えた。
「『欠片』は消える。“元の形”に戻すためにね」
沈黙。
レミッドが、ふっと息を吐いた。
「つまり、アタシは……戻すための材料か」
「そうなるわね」
ボクの拳が震えた。
「……《回収局》は、今どこまで?」
ミレイは指を二本立てた。
「もう、あなたたちを認識してる。
巡礼都市に入ったのも、把握済みでしょう」
レミッドが《魔心銃》に手を置く。
「……って事は、間違いなく」
「来るわ」
ミレイは静かに言った。
「次に捕まったら――“交渉”はできない」
ボクは深く頭を下げた。
「……はい。ありがとうございました」
ミレイは薄く微笑んだ。
「若い商人なのに……いい顔してるわ」
地下を出た瞬間、街の喧騒が戻る。
レミッドがぽつりと言った。
「なぁ、ノルグ……怖いか?」
「はい。でも――逃げるより、マシです」
「だな」
二人が歩き出す。
その背後で。巡礼路の鐘が鳴った。
同時に、街の各所で黒衣の人影が動き出す。
――《回収局》が、包囲を始めていた。
─────
鐘の音は祈りの合図だったはずだ。
だが今鳴っているそれは違う。短く、鋭く、何度も。
「……非常鐘だな」
通りの向こうで人の流れが変わる。
巡礼者が足を止め、商人が店を閉め、僧たちが建物の中へ消える。
代わりに現れたのは、黒衣の集団。
人数はざっと二十。前後を挟む配置。
逃げ道を潰す動きだ。
(完全に、囲いに来てる)
指揮官格の男が一歩前に出た。整った身なり。冷たい目。
「ノルグ殿。そして――『器』」
レミッドの眉が跳ねる。
「その呼び方、やめろ」
「事実だ」
指揮官は淡々と続けた。
「あなたは世界樹の例外に該当する存在。国家の管理下に置かれる義務がある」
「義務だと?」
レミッドが《魔心銃》に手をかける。
周囲の局員が即座に術式を展開し、銃口が向く。
(……ここで撃ったら、終わりだ)
ボクは一歩前に出た。
「少し、お話をさせてください」
声は小さい。でも、はっきりしていた。
「あなた方の目的は“回収”ですよね。なら、破壊は本意ではないはずです」
「我々は国家機関だ。個人の感情で動くつもりはない」
「分かっています。ですが――ここで戦えば街に被害が出ます」
周囲には、まだ避難しきれていない巡礼者がいる。
指揮官も、それを分かっている。
「世界樹の街で流血沙汰。あなた方の“正義”は、どう説明するつもりですか?」
指揮官の目がわずかに細くなった。
「……脅しか?」
「交渉です」
ボクはきっぱり言った。
「ボクは商人ですから」
レミッドが横目でボクを見る。
(……やる気だな、こいつ)
指揮官は短く息を吐いた。
「……時間をやろう。だが、逃げ場はない」
「十分です」
(時間があれば、取引はできる)
「条件を提示します」
「聞こう」
「レミッドさんは『核』ではない。『欠片』として、すでに一つの人生を生きている存在です」
回収局の中でざわめきが起きた。
「統合は“消失”を意味する。それは回収ではなく、処分です」
指揮官の声が冷たくなる。
「言葉遊びだ。国家の未来のためには――」
「未来のために、誰かを材料にするのが正義ですか?」
ボクの声は震えていない。
「あなた方は世界樹の意志を無視している。世界樹は、彼女を“選んだ”」
指揮官が、はっきり眉をひそめた。
「……それ以上、世界樹を語るな」
(効いてる)
その時だった。
レミッドの《魔心銃》が低く唸った。
黒い霧が溢れ出す。だが今までと違う。
霧はレミッドを縛るようにではなく、外へ押し返すように広がった。
術師が声を上げる。
「拘束呪式が……拒絶されている!?」
レミッドが歯を食いしばる。
「……ノルグ。さっきから、なんか変だ」
「何がですか?」
「……中が、静かなんだ」
『中』。
それが何を指すか、ボクにはなんとなく分かった。
(妹の欠片……?)
指揮官が明らかに動揺する。
「馬鹿な……まだ目覚める段階では――」
(動揺してる。今だ……!)
「見ての通りです」
ボクは静かに言った。
「あなた方の管理下に置く前に、彼女は“自分の意志”を取り戻し始めている」
「……」
「ここで無理に回収すれば、“世界樹に選ばれた『器』を壊した”という事実だけが残る」
一拍置いて。
「――取引を、やり直しましょう」
指揮官は長い沈黙の末、言った。
「……条件は?」
「本日は撤退してください」
「それだけで済むと?」
「いいえ」
ボクは真っ直ぐ見返す。
「代わりに――ボクが“例外”を調査します。
世界樹の意志を、ボクなりに検証する。結果は、あなた方にも共有します」
指揮官が低く笑った。
「……子どもが、随分大きく出たな」
「商売人は信用が命です。嘘はつきません」
「ただし――彼女を材料にする研究には、協力しません」
再び沈黙。
やがて指揮官は手を上げた。
「……いいだろう。今日は撤退する」
局員たちがざわめく。
「だが――次はない。次に会う時は“結果”を持ってこい」
黒衣の集団が街に溶けるように去っていく。
非常鐘が止まり、空気が少しだけ戻った。
レミッドが肩の力を抜く。
「……はぁ。心臓に悪ぃ」
ボクもその場に座り込みそうになるのを堪えた。
「……ボクもです」
レミッドが少しだけ笑う。
「なぁ、ノルグ。お前さ――あいつらより怖ぇわ」
「そ、それは……褒めてますか?」
「あぁ。褒めてる……誇れよ?」
「……ありがとうございます」
「顔……赤くなってるぞ?」
「赤くなってません!」
レミッドが、くくっと笑った。
「……さて、行こうぜ。約束したんだろ?」
ボクは立ち上がる。
「はい。世界樹の意志を調べます」
その夜――二人は、街の最奥へ向かった。
《回収局》が引いた“猶予”は短い。使えるうちに使う。
────
《世界樹文書庫》は、巡礼都市の最奥にあった。
大聖堂の地下。祭壇のさらに下。
石と根が絡み合い、天井から白い光が滴る場所。
「……静かですね」
「あぁ。ここはな」
案内役の老僧――エルディア僧正が答える。
「ここは、祈る場所じゃない。“読まれる”場所だ」
文書庫に本は少ない。
代わりにあるのは石板、記録結晶、樹皮のような薄片。
どれも文字が刻まれているが、完全な文章ではない。
「……欠けてますね」
「世界樹は、すべてを書き残さない。都合の悪い記録は――“落ちる”」
レミッドが鼻で笑う。
「便利な神様だな」
「便利でなければ、信仰は続かん」
僧正は淡々としていた。
ボクは胸の奥で覚悟を固める。
「……復活の例外について、知りたいんです」
僧正はボクをじっと見た。
「若いな。だが――目が逃げていない」
ゆっくり奥の石板を指す。
「三例ある。正式記録には二例しか残っていないが」
喉が鳴った。
「……残りの一例は?」
「失敗例だ」
空気が重くなる。
「魂が分かれ、再統合を試みた結果、“どちらも壊れなかった”」
レミッドが僧正を見る。
「……どういう意味だ」
「二つの魂が、別々の人生を選び続けた。
世界樹は、どちらも否定できなかった」
(否定できなかった……?)
「その結果、どうなったんですか?」
「記録が、消えた」
僧正は静かに言った。
「存在が消えたのではない。“干渉できなくなった”」
ボクは、はっとした。
(世界樹でも手を出せない状態……)
レミッドが腕を組む。
「それ、つまり――」
「選択が本人たちに委ねられた、ということだ」
僧正ははっきり告げた。
胸に熱が灯る。
(それなら……)
「……その失敗例。『欠片』の方は、どうなったんですか?」
僧正の視線がレミッドに向く。
「――強い武器を持っていた」
「……は?」
「世界樹の加護を、拒むための武器だ」
ボクは息を呑んだ。
(拒む……?)
僧正は続ける。
「世界樹は奇跡を与える代わりに、世界への“接続”を強める。
だが、拒む者もいる」
「研究所……王都の地下」
ボクが呟くと、僧正は頷いた。
「世界樹の奇跡を制御しようとした者たちだ」
レミッドの背が強張る。
ボクは確信した。
「その武器……《魔心銃》に、似ていませんか?」
僧正はゆっくり頷いた。
「世界樹の干渉を弾き返す武器。奇跡を兵器へ落とすための装置」
レミッドが歯を食いしばる。
「……アタシは、世界樹を拒むために作られたのか」
「可能性は高い」
沈黙。
ボクは言葉を選ぶ。
「……妹のことは、まだ分かりませんか?」
僧正は首を振った。
「『核』の意志は、まだ静かだ。だが――」
一拍置いて。
「『欠片』が強く生きようとするほど、『核』もまた目を覚ます」
胸が締め付けられた。
(レミッドさんが、生きようとすればするほど……)
僧正は最後に言った。
「次に揺れるのは――彼女の“過去”だ」
レミッドが顔を上げる。
「……過去?」
「封じてきた記憶は、世界樹より先に本人を縛る。
避けられん。だが、知る価値はある」
文書庫を出ると、外は夕暮れだった。
空が茜色に染まっている。
レミッドがぽつりと呟く。
「……なぁ、ノルグ。次、アタシの話になる。多分、気分のいいもんじゃねぇ」
「それでも、聞きます」
「……覚悟、決めてんな」
「商売人ですから。知らないままの取引は、しません」
レミッドはしばらく黙っていたが、やがて静かに言った。
「……じゃあ、次は――アタシが逃げた理由からだ」
その夜。
焚き火の前で、レミッドはようやく口を開いた。
その声はぶっきらぼうで、どこか投げやりで――それでも、逃げなかった。
「……最初に奪われたのは、名前だった」
─────
「――次の被験体。番号《E-17》、前へ」
呼ばれた瞬間、胸の奥が冷たくなる。
でも、顔には出さない。
レミッドは黙って一歩前に出た。
(……また、番号)
ここでは誰も名前を呼ばない。
呼ぶ必要がないからだ。
王都地下研究所。
地上から見れば、存在しない場所。記録にも地図にも載らない。
載っているのは――成果だけ。
「年齢推定、十五。マナ耐性、高。精神抵抗、標準以上」
白衣の男が淡々と読み上げる。
「《魔心銃》適合試験、第三段階へ移行する」
レミッドは歯を食いしばった。
(第三段階……)
ここまで来て生き残っているのは、もう数人しかいない。
視線の先。
隣の檻――いや、待機室の床には、誰かが倒れていた。呼吸はある。
でも目は虚ろで、もう“戻ってこない”と分かる。
「――E-17、躊躇するな」
白衣の女が冷たく言った。
「これは、国家のための研究だ」
国家。正義。未来。
何度も聞いた言葉。
(……うるせぇ)
レミッドは無言で実験台に立った。
背中に、冷たい金属が触れる。
――《魔心銃》。
まだ“銃”と呼ぶには無骨な形。
銃身は太く、管のようで、内部にマナを流すための符文がびっしり刻まれている。
「……重いな」
ぽつりと漏れた声に、研究員は反応しない。
「接続開始」
拘束具が締まり、肩と腰が固定される。逃げ場はない。
「マナ供給、上昇」
次の瞬間。
――熱。
内側から焼かれる感覚。
(……っ!)
叫びそうになるのを歯を噛みしめて堪える。
「耐えている……」
「数値、安定」
「やはり適合率が高い」
誉め言葉みたいに言うな。
「次。疑似対象、投入」
檻の向こうから、魔物が引きずり出された。
鎖に繋がれ弱らされているが――それでも目は生きている。
「撃て」
命令は短い。
レミッドは引き金に指をかけた。
(……やらなきゃ、次はアタシだ)
分かっている。逆らえば“処分”されるだけ。
引き金を引く。
――ダダン。
マナ弾が魔物の胴を貫いた。血が飛び、檻に叩きつけられる。
「おぉ……成功だ」
研究員が満足そうに言う。
胃の奥がひっくり返る。
(……成功じゃねぇ)
その時、胸の奥で何かが、ひくりと動いた。
(……?)
ほんの一瞬。
頭の奥で、誰かの声がした気がした。
『……だいじょうぶ』
幼い声。女の子の声。
(……誰だ?)
幻聴だ。そう思おうとした。
「E-17。次は連射試験だ」
休ませる気はない。
《魔心銃》が、再び熱を帯びる。今度はさっきより――深く。
「……ぐっ」
視界が揺れる。世界が歪む。
「精神値、低下」
「構わん。限界を見ろ」
限界?
(……ふざけんな)
その瞬間、胸の奥の“何か”が強く反応した。
『……だいじょうぶ。だいじょうぶだよ』
はっきり聞こえた。
温かい。
頭を撫でられる感覚。
レミッドの目から、涙が落ちた。
(……なんだよ、これ)
「!? 精神反応、異常!」
「数値が跳ねた……!」
「だが――安定している?」
研究員たちがざわつく。
レミッドは荒い息を吐きながら、《魔心銃》を握りしめた。
(……アタシは、まだ壊れてねぇ)
白衣の女が、低い声で言った。
「……やはり、『核』がある」
『核』。
その言葉が、初めて出た。
「魂の残滓が、安定剤になっている。だから壊れない」
安定剤。
(……意味、分かって言ってんのか)
「E-17は成功例だ。次の段階へ進める」
成功例。
その言葉と同時に、レミッドは悟った。
(……ここにいたら、アタシは“アタシ”じゃなくなる)
実験台から降ろされる時、白衣の男が無感情に言った。
「安心しろ。君は国家に必要とされている」
レミッドは笑った。
――笑ってしまった。
(……だから、最悪なんだよ)
部屋を出る時、ガラス越しに見えた他の被験体たち。
名前を呼ばれない。未来を選べない。
(……逃げる)
その決意だけが胸に残った。
そして胸の奥で、あの声がもう一度囁いた。
『……生きて』
レミッドは唇を噛みしめた。
(……ああ。生きてやる)
それが、『器』が自分の意志を持った瞬間だった。
─────
逃げると決めた夜は、静かだった。
王都地下研究所。消灯時間。
通路を満たすのは、魔力灯の低い唸り声だけ。
レミッドは壁に背をつけ、息を殺していた。
(……今だ)
この数週間、ずっと観察してきた。
巡回の癖。鍵の交換時間。警備術式が一瞬だけ緩む“隙”。
研究所は武器を作る場所だ。
だから――油断している。
「被験体は逃げない」と。
レミッドは腰に巻いた簡易拘束解除具を引き抜いた。
自作だ。壊れかけの魔導具を寄せ集めた粗悪品。
(……頼む)
鍵が、かすかに音を立てて外れる。
その瞬間、胸の奥が熱くなった。
『……だいじょうぶ』
(……分かってる)
レミッドは通路を走った。
足音を殺し、影を選び、角を曲がる。
途中、別の被験体の部屋の前で足が止まった。
中にいるのは、少年。まだ子どもだ。
名前を呼ばれたことがない顔。
(……)
レミッドは歯を食いしばり、扉のロックを外した。
「……起きろ」
少年が怯えた目でこちらを見る。
「逃げるぞ」
説明はしない。時間がない。
二人で走る。
警報が鳴ったのは、その直後だった。
「被験体脱走! E-17、確保しろ!」
赤い光。通路に展開される拘束術式。
「……っ!」
レミッドは背中にあった“それ”を掴んだ。
《魔心銃》。
まだ完成品じゃない。制御も甘い。
撃てば、自分がどうなるか分からない。
(……でも)
止まったら終わりだ。
引き金を引いた。
――ダダダッ!!
マナ弾が通路を薙ぐ。術式が割れ、壁が砕け、研究員が吹き飛ぶ。
(……強すぎる)
その瞬間、胸の奥で何かが“弾けた”。
『……生きて』
声が、はっきりと重なった。
熱が、恐怖が、怒りが、全部一つになる。
(――これが、アタシの)
《魔心銃》が黒く唸った。
今までとは違う。銃が、レミッドに“合わせて”いる。
「な……っ、共鳴している!?」
研究員の叫び。
「『核』が――『欠片』が、主導権を!」
主導権。
その言葉に、レミッドは笑った。
「当たり前だろ。……アタシの人生だ」
出口は地上への緊急通路。警備が厚い。
追っ手。術師。兵。
「E-17! 戻れ! これは国家のためだ!」
レミッドは振り返った。
「……だから、嫌なんだよ」
引き金を引く。
弾丸は人を殺さない。
天井を撃ち、床を砕き、道を塞ぐ。
逃げるための弾幕。
(……殺したら、同じになる)
地上に出た瞬間、夜風が頬を打った。
空が――広い。
少年が震えながら言った。
「……ねえ、名前……」
レミッドは一瞬迷ってから答えた。
「……レミッドだ」
名前を口にした瞬間、胸の奥の声が嬉しそうに笑った気がした。
『……ありがとう』
それきり、その声は遠くなった。
(……消えた?)
いや。消えてない。
静かに、奥にいる。
それでいい。
レミッドは少年の手を引いた。
「行くぞ。ここからは――自分で決める」
その後、追跡を振り切る途中で、少年とは別れた。
彼は王都の外へ逃げ延び、二度と戻ってこなかった。――それでいい。
レミッドは歩いた。
闇の中を、ずっと。
逃げても、終わらない。
この銃と、この体がある限り。
だから、逃げ続けるしかなかった。
その先で――空腹で倒れ、
一人の気弱な少年に拾われるまで。
─────
夜明け前の巡礼都市は、妙に静かだった。
朝の祈りに向かう足音が聞こえる時間だというのに――気配が薄い。
「……静かすぎますね」
ノルグが呟く。
「嵐の前の静けさってやつだな」
レミッドは背中の《魔心銃》に手を添えていた。
過去を語り終えた彼女は、どこか落ち着いている。逃げ続けていた頃の“張り詰めた感じ”が、少しだけ薄れていた。
二人が回廊を歩いていると、空気が変わった。
石畳を踏む、揃った足音。四方から、同時に。
レミッドが即座に立ち止まる。
「……来たな」
黒衣。
《回収局》。
前後左右、逃げ道を潰す配置。
昨日とは違う。交渉の余地を残さない陣形だ。
指揮官が姿を現した。昨日と同じ男。だが表情は硬い。
「ノルグ殿」
ノルグは一歩前に出た。
「……契約の話なら、昨日――」
「破棄する」
短く、切り捨てるような言葉。
ノルグの胸が嫌な音を立てた。
「理由を、お聞かせ願えますか」
「必要ない」
指揮官は冷淡に続ける。
「上層部の判断だ。例外の存在は――危険すぎる」
レミッドが低く笑った。
「便利な言葉だな。“危険”」
「君は、世界樹の均衡を乱す存在だ」
指揮官の視線がレミッドに突き刺さる。
「『核』が目覚め始めている。これ以上、自由にさせるわけにはいかない」
ノルグは理解した。
(……時間切れだ)
「……昨日の取引は?」
「君は商人としては優秀だ。だが――信用に値しない」
「理由は?」
「感情を挟んだからだ」
鋭い言葉だった。
「妹。『欠片』。選択を先延ばしにする優しさ――それは国家運営に不要だ」
レミッドの殺気が一気に膨れ上がった。
「……言い過ぎだ」
《魔心銃》が低く唸る。
《回収局》の術師たちが一斉に術式を展開した。
ノルグは手を上げた。
「待ってください」
静かな声だった。だが、不思議と通った。
「……最後に、商売人として確認させてください」
指揮官が眉をひそめる。
「まだ話すつもりか」
「はい」
ノルグは深く息を吸った。
「あなた方は、レミッドさんを回収し、統合し、世界樹を“再現可能な装置”にする」
「そうだ」
「その結果、彼女は消える」
「『欠片』だからな」
ノルグはゆっくり頷いた。
「――なら、この取引は最初から成立していなかった」
「……何?」
「商売人にとって、“商品が消える取引”は詐欺です」
一瞬、場が凍った。
「次は、こちらから条件を提示します」
「第一に。レミッドさんは『器』ではない。“世界樹に選ばれた生”です」
「第二に。統合は拒否します。それは世界樹の意志に反する」
「第三に――それでもあなた方が彼女を欲するなら」
ノルグは指揮官を見据えた。
「世界樹の前で、決着をつけましょう」
指揮官が低く笑った。
「……狂気だな」
「取引の筋です」
指揮官はしばらく黙っていたが、やがて言った。
「いいだろう。ただし条件がある」
「何でしょう」
「世界樹へ向かう道中、我々は一切手を出さない」
一拍置いて、
「――代わりに、辿り着いた瞬間、君たちに選択権はない」
レミッドが歯を食いしばる。
「……それで十分だ」
ノルグは即答した。
「三日後。世界樹の根元で会おう」
黒衣の集団が静かに去っていく。
しばらく、誰も動けなかった。
やがてレミッドが低く言った。
「……なぁ、ノルグ。後悔してねぇか」
「してません」
ノルグははっきり答えた。
「逃げるより――価値を証明する方が性に合います」
「……最悪だな、ほんと」
「褒め言葉ですよね」
「当たり前だ」
三日後。世界樹の前で、すべてが決まる。
─────
世界樹へ向かう巡礼路は、驚くほど静かだった。
《回収局》は約束通り姿を見せない。だが、気配が消えたわけじゃない。
「……見られてますね」
「あぁ……視線だけは山ほどある」
レミッドは背中の《魔心銃》を無意識に撫でていた。
だが銃は唸らない。静かだ。
巡礼路の両脇には、白い石碑が並ぶ。
過去に世界樹へ願い、戻らなかった者たちの名。
「……多いですね」
「願いってのはだいたい“戻したい過去”だからな」
ノルグは足を止めた。
「……レミッドさん。もし、世界樹が“統合”しか認めなかったら……」
レミッドはすぐには答えなかった。
風が吹き、白い光が遠くの幹から脈打つ。
やがて彼女は言った。
「……アタシは、嫌だ。消えるのは嫌だ」
短く、はっきりと。
「誰かの都合で材料になるのは、もうごめんだ」
ノルグの胸が締まる。
「でも、お前の妹を想う気持ちが嘘だとも思わねぇ」
ノルグは俯いた。
「……はい」
「だから、お前が選ぶなら、アタシは受け止める」
優しすぎて、残酷な言葉だった。
ノルグは首を振った。
「……それは、取引になりません」
「は?」
「一方が全部を背負う取引は失敗します」
ノルグははっきり言った。
「だから、選ぶのは――世界樹と、ボクと、あなたです」
ノルグは懐から帳簿を取り出した。
旅の途中で書き続けてきたもの。金額だけじゃない。出会った人。助けたこと。助けられたこと。
「商売人は、最後に帳簿を閉じます」
「……重ぇ帳簿だな」
「はい。でも誤魔化しません」
帳簿を閉じる。
「妹の死。レミッドさんとの出会い。《回収局》。世界樹」
一拍置いて、ノルグは言った。
「“奪う願い”は、しません」
レミッドの胸がどくんと鳴った。
「妹を取り戻すために、誰かを失わせる取引はしない」
「それが、ボクの最終条件です」
沈黙ののち、レミッドが静かに言った。
「……お前に拾われて、良かった」
「……ボクもです」
「赤くなるなよ」
「……なってません」
「なってる」
「……朝日です」
「今、夕方だぞ」
「……」
二人は少しだけ笑った。
巡礼路の先が開ける。
空を裂く白――《光の世界樹》。
近づくほど、胸の奥が震える。懐かしくて、怖い。
その背後、遠くの丘に黒い影が並び始めていた。
《回収局》。
約束の時が近い。
─────
光の世界樹の根元は、音がなかった。
風も虫の羽音も、心臓の鼓動さえ遠い。
あるのは――“在る”という感覚だけ。
ノルグは自然と膝をついていた。
二度目の場所。
一度目は、夢を燃やされた場所。
白い光がゆっくり集まる。
世界樹の声が降りてきた。
『――再訪を認める』
「……ありがとうございます」
『願いは、既に一度消費された』
「はい。だから今日は、願いに来たんじゃありません」
『ならば、何を求める』
「確認です。ボクの願いは――妹を生き返らせることでした」
『……』
「でも、あなたはレミッドさんを“復活対象”に選んだ。そこには理由があるはずです」
『――理由はある』
『願いは、言葉だけで決まらぬ』
『願いとは、魂の向きだ』
ノルグの胸が震えた。
『お前は妹を失った。だが――お前は妹の代わりに生きようとした』
ノルグの目から涙が零れた。
『妹を“戻す”ことよりも、“一緒に前へ進む”ことを望んだ』
『その願いは、既に叶っていた』
光がノルグの前に集まる。
白い輪郭、小さな影。
少女が立っていた。
――ルナ。
二年前と同じ姿で、少し首を傾げて笑っている。
「ノルグ」
「……ルナ」
『『核』は、ここにある。だが『核』は“戻りたい”とは願っていない』
「……どうして」
「だってね。ノルグは、ちゃんと生きてる」
「でも……ボクは……」
ルナは一歩近づき、ノルグの頭を撫でた。
「わたしはね、ノルグが“誰かの代わり”になるの、嫌だった」
「だから……ちょっとだけ、借りたの」
ルナはレミッドをちらりと見た。
「レミッド、強いでしょ。生きるの、上手でしょ」
『『欠片』は、『核』の意志を守るために生まれた。生きることを拒まぬ存在として』
『『欠片』は、既に“別の生”となった』
『統合は、“喪失”を生む』
ノルグは震える声で言った。
「……じゃあ、ボクの願いは……」
『お前の願いは、“妹を救う”ことだった』
『そして、妹は――お前を救った』
ルナが、にっこり笑う。
「ね?」
その瞬間。
世界樹の根元に別の気配が広がった。
黒衣。《回収局》。
指揮官が一歩前に出る。
「……感動的だな。だが、感情で世界は動かない」
ノルグは立ち上がった。
「世界樹は、統合を否定しました」
「世界樹は常に正しいとは限らない」
世界樹の光が強くなる。
『――否』
『奇跡を否定する者に、奇跡を語る資格はない』
ノルグは言った。
「世界樹の前で、“誰が世界を歪めているのか”を示しましょう」
ルナは最後に言った。
「ありがとう。生きてくれて」
そして光に溶けた。
レミッドが横に並ぶ。
「……なぁ。アタシ、消えなくていいんだよな」
「はい。それが、妹の願いです」
白と黒が、調和する。
─────
世界樹の根元で、空気が張り裂ける。
白い光と黒い影。奇跡と管理。願いと制度。
指揮官が一歩前へ出た。
「君は奇跡だ。だが――奇跡は制御されねばならない」
『制御とは、奪うことか』
「最適化だ。魂は資源だ。分かれ、歪み、暴走する。ならば統合し、再利用するのが合理的だ」
レミッドが低く笑う。
「……やっぱりな。人の人生も“部品”か」
「感情論だ。君は『欠片』だ。元の『核』に戻ることで、初めて意味を持つ」
「違う」
声を上げたのはノルグだった。
「統合は救済じゃありません。失敗を隠す方法です。例外を“なかったこと”にする」
「死者の意思など、測定できん」
「できます。生きている者が、受け取ったからです」
指揮官は息を吐いた。
「……ならば力で証明するしかあるまい」
回収局の術師たちが詠唱を始める。
巨大な拘束陣が展開され、根元を覆う。
「統合術式、起動」
空気が重くなる。
レミッドの体に、黒い鎖のようなマナが絡みつく。
「レミッドさん!」
「……遅ぇよ」
《魔心銃》が白く光る。
黒ではない。拒絶ではなく――意志。
「アタシはな。もう、“借り物”じゃねぇ」
鎖が砕け散る。
「魂の主導権が……完全に――!」
レミッドは《魔心銃》を地面に突き立てた。
「ノルグ!」
「はい!」
「最後の取引だ!」
ノルグは一瞬で理解する。
「商売人として宣言します」
「レミッドさんは――世界樹が認めた“生”です」
『肯定する』
「彼女を統合しようとする行為は、世界樹への干渉であり、奇跡の簒奪です」
「取引条件は一つ。撤退してください」
「さもなくば?」
「あなた方は、世界樹に拒絶されます」
白い光が天を貫いた。
枝が雷のように輝き、術式を打ち砕く。
『統合を拒む』
『生を奪う理を、否定する』
術師たちが膝をつく。
指揮官だけが歯を食いしばって立っていた。
「……これで終わりだと思うな」
「はい。でも、今日は――あなた方の負けです」
沈黙の後、指揮官は踵を返した。
「……撤退」
黒衣が影のように引いていく。
静寂が戻った。
レミッドが力を抜く。
「……終わった、のか」
「はい」
『願いは、果たされた』
ノルグは静かに答えた。
「はい」
─────
世界樹の根元には、もう誰もいなかった。
《回収局》は去り、術式の残滓も消え、
白い光だけが、いつもと同じように幹を照らしている。
まるで――何事もなかったかのように。
ノルグは立ち尽くしていた。
胸の奥に、ぽっかりと空洞がある。
でもそれは“失った穴”じゃない。役目を終えた場所だ。
レミッドが少し離れたところで空を見上げている。
「……なぁ、ノルグ」
「はい」
「思ったよりも……あっさり終わったな」
「……はい」
空は青く、風は穏やかで、鳥は枝に止まり、光は揺れている。
奇跡の後なのに、世界は何も変わらない。
「……なんか拍子抜けだ」
「たぶん……世界樹が正しく働いた証拠です」
「正しく?」
「誰かの人生を壊さずに、誰かを前に進ませただけですから」
レミッドはしばらく黙っていたが、ぽつりと言った。
「……お前の妹、いい奴だな」
「はい」
やがてレミッドが言う。
「……で? これからどうすんだ」
ノルグは少し考えた。
妹を生き返らせる夢。
それは、もう追わない。
でも――
「ボクは、商人を続けます」
「だろうな」
「一千万ゴールドを貯める夢は、形を変えました」
「ほう?」
「誰かが回収されない世界を作るために使います」
「……重すぎねぇか?」
「はい。でも、妹が守った世界ですから」
レミッドがふっと笑う。
「……最悪だな。ほんと、最悪の商人だ」
「褒め言葉ですよね」
「当たり前だ」
巡礼路を戻りながら、ノルグは言った。
「……レミッドさん。これからも、用心棒……続けてくれますか?」
レミッドは足を止め、わざと乱暴に言う。
「給料、上げてくれよ?」
「賃上げ交渉は、受け付けます」
「……仕方ねぇな」
「行くあてもねぇし」
その言葉に、ノルグは少しだけ安心した。
巡礼路を抜けたところで、ノルグはそっと足を止める。
振り返ると、《光の世界樹》は、相変わらず白く、静かに立っている。
その根元に――ほんの一瞬だけ、少女の影が見えた気がした。
ルナ。
微笑んで、手を振っている。
ノルグは胸に手を当て、小さく呟いた。
「……ありがとう。行ってきます」
風が吹いた。
影は消え、光だけが残る。
レミッドが不思議そうに振り返る。
「……何か見えたか?」
ノルグは首を振った。
「いいえ」
それはもう“願い”じゃない。
記憶で、約束で、支えだ。
「行きましょう」
「ああ」
二人は歩く。
金貨の山は、もうない。奇跡を使う権利も、もうない。
それでも。
――生きる理由は、ちゃんと残った。
気弱な商売人と、男勝りな用心棒。
二人の旅は、これからも続く。
それは、誰かを取り戻すためじゃない。
前に進むための旅だ。
初めての短編でしたが、いかがでしたか?
さて、このお話は、「願いが叶わなかったら、それは本当に失敗なのか?」
という疑問を膨らませる形で書き始めました。
一千万ゴールドという分かりやすい“奇跡の代価”を用意しながら、最終的に描きたかったのは、
奪わない選択をすることの強さです。
ノルグは気弱で、特別な力もありません。
それでも彼は、商人として「価値を見極める」ことをやめませんでした。金ではなく、命でもなく、
“生き方”を取引に出した少年です。
レミッドは、武器として作られ、
欠片と呼ばれ、それでも自分の人生を選び続けました。
彼女が最後まで消えなかったのは、
強さよりも「生きることを諦めなかった」からだと思っています。
妹ルナは戻りません。
けれど、彼女の願いは確かに残りました。
それを受け取ったからこそ、ノルグは前に進めたのだと思います。
この物語が、誰かの「取り戻せなかった過去」を
少しだけ肯定できるものになっていれば、幸いです。
感想・評価・ブックマーク、とても励みになります。
ブログの方にちょっとした後日談もご用意してあります。
よろしければぜひお読み下さい。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。




