便箋48 鳥かご その5
俺は……
……魔女を死なせたくない。
「ふ、ふふふ」
魔女を抱きしめた。
強く。
抱きしめた。
「ふふふ! 魔女、どうしたもんかな」
「弟?」
「アダンをここに呼ぶには、どんな手紙で呼んだらいいかな? やっぱり俺の名前で招待するのが礼儀かな」
「……弟ぉ」
「それしかなさそうだな。弟ジバンは、ちゃんと生きてるぞと。魔界中に手紙をバラまいてやろう。アダンのやつ、血相変えて飛んでくるぞ」
「ぐす」
「安心しろ。俺はお前に命を助けられたんだ。今度は俺が、命に代えても守ってやる」
「ぐす」
「……ただ、どうやってその手紙を出すかだな。紙とインクが手に入っても、手紙を出せないんじゃどうしようもないな。前みたいにダークコンドルもいないし」
「……え?」
「そう言えば魔女、さっき手紙を出す考えがあるとか言ってたな。どうする気だ?」
「ダークコンドル……?」
「なに?」
「ああああああッ!」
魔女が急に大声を上げる。
驚いて、俺まで飛び上がった。
「ぐわ! 痛たたた!」
「わ、忘れてた! タマゴどこやったの!?」
「タマゴ……?」
「タマゴあったでしょ!? どこ??」
慌てた様子で布団をめくり、あちこちを調べまくる魔女。どこだどこだと大騒ぎをはじめた。
「お、おい魔女」
「あ、あれが無いとマズいのよ! ベッドに白いタマゴあったでしょ、いいから探してよ!」
「タマゴ? そんなもん無かったぞ。あったといえば、変なボールだけだ」
「へ?」
「ほら、マクラのそばに……あれ、どこに行ったんだ? ああ落ちてた。これじゃないよな?」
いつの間にか床に転がっていた球体。
拾い上げたが、どこからどう見ても白くない。赤と黒の不気味なグラデーション模様だ。
「ほらこれだ。な? コレじゃないだろ?」
「そ、それ!」
「これ? だって白じゃないぞ」
「よ、よかった。ちゃんと温まったんだ」
「温まる? ああ、そういやなんか熱いな」
「はへぇ、よ、よかった……」
ギシィ。
魔女がベッドに座りこむ。相当あせったらしく、冷や汗までかいてるじゃないか。俺もとなりに腰かける。
ギシィ。
「おい、これがどうしたんだ。これタマゴなのか?」
「そう。ちょっと! そんな無造作に持たないで! やさしく手で包みこんで持って!」
「なんなんだ、いったい」
「丁寧に持っててよ。白じゃなくなってるってことは、もうじき生まれるんだから」
「なにが?」
「ダークコンドル」
「……え?」
「それ、ダークコンドルの卵。もうじき孵化するよ。きれいな赤と黒のグラデーションになってるから、ほんともうすぐ」
「え!?」
「ちょっと! ちゃんと持ってて!」
驚いて床に落としそうになった。
って、いやいや!




