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死地を探して④

 この家の前には川が流れている。その川の果ては海につながっており、ゴロゴロした岩の隙間、清流が泳いでいる。魚影も見える生きている川。


 里美さんはバケツを持ってその川に向かい、水を入れ、家に戻りコンクリートブロックの上に置かれているドラム缶に水を移した。そしてまた川に向かう。私もそれを手伝い始めた。二人で二つのバケツを各10回ほど往復させただろうか? ドラム缶は満杯になった。そして、そのドラム缶はコンクリートブロックにより地面と隙間があり、その隙間に里美さんは木々の折れカスを置いた。


 ここまでくると鈍感な私でも里美さんがしたいことが分かる。


「ドラム缶風呂ですか?」


 里美さんは大きくうなずく。


「でも、火がないと……」


 心配する私を横目にチャッカマンでじゅぼっと木の折れカスに火をつけた里美さんだった。その顔はなぜか得意気に見えた。ガスはないだけでチャッカマンはあるんだな。至極当たり前なことに感動しさらに、チャッカマンというひどく平凡な道具の便利さに感動した。


「さて、ドラム缶風呂が温かくなる前にご飯にしよう」


 里美さんはこれまた木の折れカスの集まりに火をつけ、そこに水を入れた鍋を置いた。


 月が出て夜。星も出て、私は息を忘れた。


「空ってこんなに、綺麗だったんですね」


 泣きたくなった。空には一面星が出ていて、月並みな表現だが、その星は今にも落ちてきそうなほど、掴めそうなほど、身近なものに感じた。


「田舎だからね、都会と違って街灯がないからさ、星がよく見えるんだよ」


 里美さんはこの空を見慣れてるんだろう。空にくぎ付けになることはなく淡々と食事の支度をしていた。


 鍋に入れた水が沸騰し、ぼこぼこ鳴り始めた折、里美さんはおもむろに二つの料理を取り出した。


 それの蓋を開けて、お湯を入れる。それで料理は完成。美味しい美味しいカップラーメンの完成です。


「自給自足じゃないんですね」


「あたしは別に自給自足したいわけじゃないからね。この家だってライフラインがないから不便な暮らししてるだけで、ガスやら水道やらがあるにこしたことはないんだ」


「そんなもんですか」


「そそ、そんなもんそんなもん。でも一応さ畑はあるんだ。そこで多少の野菜は作ってる。それにあっち、ニワトリがいるよ。毎朝卵産んでくれるから、食べてるんだ」


 のどかだなぁ。私はそう感じた。


 そしてそれからだいたい3分ほど経った。料理ができた時間だ。

 

「どっちがいい?」


 カレーとシーフードのカップラーメンを提示され、私はシーフードを選ぶ。


「シーフード美味しいよね」


 里美さんは分かる分かると言った風にうなずく。満面の星空の下、私はカップラーメンを食べた。味はと言うと、本当に涙が出るほどに美味しかった。


「美味しい……」


 そう言葉が出てしまうのも致し方ないだろう。私は家にいたころ、重い体を這わせながら、何とか何とか料理していた。味など無視し、冷蔵庫にあるものを適当に形にした、まるで砂のような味のする料理。


 それと比較し、このカップラーメンのなんと美味しいことだろう。涙が出る。


「本当に美味しい……」


 里美さんは私を見て、微笑んでいた。


「空気も美味しいこの場所だからね。しかも満天の星空。そりゃあ、カップラーメンも絶品のご馳走になるよ」


 そして私は里美さんが沸かしてくれたドラム缶風呂に入った。満天の星空の下というロケーションで入ったお風呂が気持ちよくないはずがなく、私は久しぶりにちょっとだけ嬉しい気分になった。


 日も完全に落ちて、里美さんが懐中電灯を二つ取り出し、あたりを照らす。


 そして、家の中に入った。私は里美さんが用意してくれたパジャマ、背が違うから私にはぶかぶかな、パンダの顔がいたるところにちりばめられたそれに着替えた。


 そして疲れていたのか、里美さんが用意してくれた部屋で、里美さんが用意してくれた布団を見たところで、私の記憶は無くなった。


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