猫と妖精は仲が悪い
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シャー シャーという猫の威嚇で目が覚めた。
「テンどうかした?」
返事はないだろうけど、眠たい目を擦りながら一応聞いてみる。何かめっちゃ怒っておられる。虫か何かいたのだろうか。そんな時寝ているベッドのそば、窓がコンコンとノックされた。見るとそこには、ふわふわと何かが浮遊している。虫などではない。三頭身が愛らしい妖精だった。たぶんテンはこれに反応したのだろう。本来妖精とは気難しいものらしいのだが、この子は気さくに俺の元に遊びに来てくれる馴染みの妖精さんだ。普段は昼とか夕方なのだが今日は朝早い。窓を開けて迎え入れた。
「今日は朝早いなシルフィー」
「良くないことが起きたからもしかしてと思って様子みに来ちゃった」
良くないこと?俺に関係することはなのだろうか?
「何かあったの?」
「厄介者が逃げだし 君なんか嫌な匂いがする」
話してる途中シルフィーが俺の周りをクンクンと匂いながら飛び回る。妖精に臭いと言われると流石にショックだ。慌てて自分匂いを嗅いでみる。自分だとよく分からない。
「君の匂いをじゃないよ。薄汚い良からぬ匂いがする」
俺達人間には感じることができない妖精特有の匂いみたいなものが存在するのだろうか?
「僕が言えたことじゃないが君は色んなものを引き付ける体質だから少しは危機感をもったほうがいい」
「なにそれ?」
「君の隣は魅力的って話。最近なんか変わったことなかった?」
「最近?別に特に変わったことなんてないけど」
そこに部屋の中をテンが横切った。俺とシルフィーの視線が自然とそちらに向かう。
「君猫なんて飼ってたっけ?」
「もしかして薄汚い匂いって猫のこと?それだったら昔から飼ってるよ。知らなかったっけ?」
なるほど。納得。猫の獣ぽい匂いがシルフィーにとっては気に入らなかったのかもしれない。
「嘘だね。少なくともこの前来たときは飼ってなかった。具体的にいつから飼ってるの?」
なぜそんなことを聞くのだろうか?だがシルフィーの表情は真剣そのものだ。あれ?いつからだっけ?
「昔から飼ってる気がするんだけど、思い出せないわ。いつからだったかな?」
「暗示がかけられてるね。ちょっとその猫見せて」
俺が猫に暗示をかけられてる?そんなわけないでしょ。妖精の冗談はよくわからない。
「ほらテンおいで」
テンを呼び寄せてみるも、相変わらず全身の毛を逆立てて威嚇する。あらら嫌われてるみたい。
「来てみて正解だったね。こんなところにいるとは。1つ忠告しておく」
「忠告?」
「君にじゃない。聞いてるんだろ。そこの猫にだ」
猫に忠告?妖精は猫とも会話できるのだろうか?
「今のところは害はないみたいだから、見逃してあげる。大人しくしてくれるなら、僕もその方が都合がいいからね。だが、この子に何かあったらただじゃおかないからね」
いつもの気さくな雰囲気とは違う。慣れ親しんだ俺でさえドキッとしてしまった。忘れがちだがシルフィーもれっきとした妖精だったと気づかされる。
「いやシルフィー何も猫相手にそこまで本気にならなくても」
「君は本当にかわいいね。鳥籠にでもしまっておきたくなるよ」
鳥籠?なんで俺がしまわれるのかさっぱり分からない。
「まぁいいや、僕やることができたから一旦帰るよ。そういうことだから、気を抜かないようにね」
何だったのだろうか?いきなり来て、猫と喧嘩して帰っていった。もしかしたら猫と妖精は仲が悪いのかもしれない。俺が次から気をつけてあげないといけないな。
「よしテンおいで。朝ごはんにしよう」
俺はいつもと同じように朝の支度を始めた。
鈍感な主人公って書いてて楽しい