2話「赤髪の奴隷少女」
こうして俺はソロでモンスターを狩る冒険者となった。だが、しかし、レベル0の俺じゃスライム一匹すら倒せない。これならパーティーから追放されてもおかしくないよな。
そんな俺が半年もあのパーティーに居られたのにはワケがある。パーティーメンバーの女の存在だ。
かつてのシェリーとサラは俺に好意があったと思う。本来なら四等分する報酬も俺に多めにくれたり、ことある事に俺に新しい装備という名のプレゼントを渡してきたこともあった。
俺が無能でも仲間のサポートもあってそこまで大きな怪我をすることはなく、いつも帰還していた。が、それがブラッドにとっては気に食わなかったんだろう。
シェリーもサラも俺のレベルが上がるのを見越して可愛がってくれたが、その期待は虚しく俺のレベルは0のまま。二人はそんな俺を見て飽きれたに違いない。
男の俺からしてもブラッドのほうがカッケェし、レベルだってそこそこだ。それこそ勇者と互角レベルなんじゃないか? と一部ではウワサされている。
半年という時間は俺にとって友情を深めるには十分な時間だった。でも、今更何を言ったところでブラッドたちが俺を許してくれるわけがない。
「気を取り直して元気出せー! 俺ー!!」
バチン! と、頬を叩き気合いを入れなおした。
いつまでもクヨクヨしたってしたって仕方ないもんな。俺と同じ冒険者はブラッドたちじゃなくともたくさんいるだろうし。それこそソロ冒険者で実は仲間を探してる奴とかいるかもしれないし。
ソロ冒険者……って一見孤独に見えるかもしれないが、裏を返せば陰ぽっいし ?陰の殺し屋みたいな感じでカッコよくね? ようは考えようだよな。ネガティブ思考よりポジティブ思考のほうが先の未来も明るいし。
よし! まずは今の状況を整理しよう。
「シャァァァァァ!!」
「ぎゃぁぁぁ!?」
……詰んだ。完全に詰んだ。このままじゃ、俺はゴブリンの餌になる。ゴブリンさんよぉ〜、俺は食っても美味くないぞ。
つーか、ゴブリンって何食うんだ? って悠長に考え事してる場合じゃねぇ!
「そこのお兄さん! 避けて!」
「え?」
「ファイアーボール!」
ドカーン!!
炎魔法!? しかも無詠唱だと!?
衝撃音にビックリしたゴブリンたちはそそくさと逃げていった。が、運悪くファイアーボールに当たったゴブリンはその場で黒焦げになっていた。
た、助かった……。あのままじゃ俺のほうがゴブリンの餌食になっていた。しかし、初級魔法でこの威力って、魔力の量が桁違いすぎる。
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ」
手を差し伸べてきた相手を見て、俺は驚いた。何故なら俺を助けたのは俺よりも五歳は下であろうロリっ子だったから。
腰まである赤髪がとても印象に残った。と、同時に成長途中にも関わらず、やせ細った身体に違和感を覚えた。この子はワケありなんじゃないか、と。
今の俺じゃこの子を養っていくことはできない。だが、この子とパーティーを組むことが出来れば話は違うかもしれない。都合のいい話だってのはわかってる。けれど、この子を一人にしておくのは危険だ。
「なぁ。お前がよければ俺と組まないか? 実は元いたパーティーを追い出されて、今は一人なんだ」
「で、ですが……」
「なんだ?」
やっぱり、いきなりのスカウトは無理があったか? ……そうだよな。互いに名前さえ知らない仲だもんな。
「……っ」
「?」
自分の感情を押し殺すように少女は上唇を強く噛んだ。少女は迷っているのだろうか。それとも、俺が想像もつかないことで悩んでいるのだろうか。
「私、生まれつき魔力が強くて同い年の子には怖がられていて友達がいないんです。それに大人たちからは化け物だって言われてて……」
「そうか。それはつらかったな」
俺が少女の立場ならおそらく耐えきれず自ら命を経ったかもしれない。……この子は強いな。
「だからそんな私を仲間にしたいって言ってきたお兄さんが珍しくて。本当はお兄さんと一緒に旅がしたいです。でも……」
「一緒に旅が出来ない理由があるのか?」
「そ、それは……」
少女が泣きそうな表情を浮かべながら下を俯いた。
「……!」
少女の足には重い鎖が繋がれていた。
これが少女が俺と旅が出来ない理由。
……少女は奴隷だ。俺は一瞬で全てを悟った。
同い年の友人はいない。大人からは化け物扱い。その理由は幼いのに魔力量が多いこと。そして赤い髪で容姿も美しい。この子は奴隷商人の格好の獲物じゃないか。
この子がまわりから差別されているなら、ある日突然、街から消えても捜す者は誰一人としていないだろう。足枷が外れない限り、この子が自由になることはない。
「俺はアレン。お前はなんていうんだ?」
「アリアです。今は誰もその名で呼ぶことはありませんが……」
「いい名前だ。なぁアリア。お前はこのままでいいのか?」
「……」
アリアを助けたい。そう思った。スライムに殺られそうになった俺をアリアは助けてくれた。だから次は俺がアリアを救いたい。
「行動を制限される足枷を外したくはないか?アリア、俺と一緒に旅をしよう」
ここでアリアが「そのままでいい」と望むなら、俺はこれ以上なにも言うことはない。アリアの主人がアリアと合流次第、俺はここを離れるつもりだ。この場を去れば今後アリアと会うことはないだろう。
追放されたばかりで不信感も残る中、ここで拒絶されたら、俺は今度こそ誰かとパーティーを組むことはないだろう。こんな小さな子には難しい決断かもしれないが……。
それでも俺はアリアには自由に生きてほしい。心からそう願った。アリアにも届くように、強く、強く願った。
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