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水瀬京子先生

 4月も終わり変わり映えのない5月がやってきた。あまりにも変わらないから4月ツーとでも呼びたいくらいだ。この冗長な感じが五月病とかを産むのだろう。なまぬるい。


 部活動は全くといっていいほど成果がない。色々誘ってもらえたのは嬉しいけど、初々しいギター弾きやら、恥ずかしげドラマーなんかを見ていると、音楽を楽しんでいて、僕みたいな死にかけのデス笛吹きには彼らは眩しすぎた。


 挙手制の楽器決めで何にも手を上げなかったらあっという間にひとりぼっちになった。まあ、でもべつにいいもん。僕にはこの笛さえあれば……フフフ。


「あら、森くん。まだひとりなの」


 この部活の顧問の水瀬京子先生が話しかけてきた。


「ひとりはいい。いいですよ先生。なにせ自由」


「バンド目的じゃないの、最近流行りらしいし」


 水瀬先生は、かなり若く24とかだったかな。見た目も田舎にしては頑張っている。セミロングの髪を田舎色に染め上げていた。体は華奢で清楚な白のシャツを着ている。スカートで隠しきれていない大きいお尻がチャームポイント。


「べつに。音が出せるところならどこでもよかったんですけどね」


「じゃあみんなに仲間に入れてもらえるようにお願いしに行きましょうか」


 いや、それはまずい。あっいいこと思いついた。先生のことをからかうことにしよう。


「いや、先生。先生は幸運ですよ。僕と付き合ってください」


「はあ!?」


「僕は先生と一緒にバンドを組みたい。お互いひとりぼっち同士、仲良くしませんか」


「いや、私は一人ではないけど」


「もしここで僕と組まなければ先生は一生ひとりです」


「どういう意味かな?」


 声には少しばかりの怒気が含まれている。


「だから、結婚できないってことですよ。それでもいいんですか?」


「なんであなたと組まなければ結婚ができないの?」


 先生は腕を組み始めた。


「もちろん、先生の結婚相手が僕だからです」


 先生は呆気にとられたようで「アッハッハ」と豪快に笑った。


「そうね。独り身はいやだし一緒にやりましょうか」


「でしょ? よろしく京子先生、これからは二人でバンド活動していきましょう」


「水瀬先生ね。下の名前で呼ばないで」


 そんなことで僕の軽音部の活動が本格的に動き始めた。先生との愛の育みが始まったのだ。




「と、いうわけなんだ。ごめんな」


「何に謝っているのか意味わかんないだけど」


「いや浮気になっちゃうかなって」


「なってないから安心して」


 僕はオデコに正直に話した。オデコが勘違いをして嫉妬したら困るからな。


「僕にはオデコだけだから」


「ハイハイ」


 僕らは校舎の外、一階の窓の下で小さくなって駄弁っていた。廊下を歩く生徒たちの大きな笑い声が聞こえる。オデコはスカートのくせに白いコンクリートの上にあぐらをかいている。健康的な太ももが見えてえっちだ。


「で、そっちの方はどうなんだ? うまく馴染めてるか?」


「なにそれ、あたしが馴染めたないことなんてあった?」


「あるだろ、もうそれはそれは数えきれないくらい」


「教えて?」


 こいつ自覚ないのか。じゃあ中学のころのはなしをしてやるか。


「まずは彼氏作り放題事件だな。モテて仕方なかったのか、次々と彼氏を作っては別れる。すごい浮いてたぞ。しかも彼氏が僕に威嚇しにくるからうざったくて邪魔くさかった」


「……なんであんたのとこにいくのよ」


「幼馴染だからだろ。1番一緒にいる男だしな、何人きたか知ってるか? 12人だぞ12人」


「そんなに付き合ってないから」


「は〜コイツ。しかもヤンキーと化していたから女子とも険悪だったし、怖いやつ扱いだったしな」


「ヤンキーになんてなってません。むしろみんながいい子ちゃんになったんです」


「ま、そんな性格が悪いところもかわいいけどな」


「性格悪くないけど、ありがとう」


「あれなんの話をしてたんだっけ。あっそうそううまく馴染めてるか?」


「ぼちぼちね。それに中学時代のことは誰にも話さないで。黒歴史だから」


「わかった」


「絶対わかってない。あのねあたしもあのころ色々あって荒れてたの。蒸し返すような真似したら……」


「したら?」


「特に何もない」


「ないのかよー」


 僕はさっきからちらちら見えていた太ももをよく見るためにオデコのスカートをつまみ上げた。重なった脚がなんともいえない肉厚で柔らかそうなシワを作っていた。パンツは白だった。意外に清純。


「!」


 オデコは急いで立ちあがろうとしたがあぐらは急いで立つのは難しいのか、モゴモゴしていた。その隙に僕は軽々と逃げた。

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