Mission 4.ケモミミ少女に○○を仕込むべし~山奥でふたりっきりの教育ミッション その1
バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。
そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。
とりあえず、ソフィーを保護することにしたジェルン。
差し当たって、麓の町に繰り出してソフィーの服などの生活必需品を買いそろえ、ここから彼女と二人での生活が始まる。
主人公:ジェルン
バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート
直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う
他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん
ダンジョン踏破には欠かせない職業
ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……
ソフィー
主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子
種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい
さまよった挙げ句、主人公の小さな家を見つけたが、留守だったので、鍵の掛かっていなかった道具小屋に忍び込んで、眠り込んでいたところをジェルンに見つかり、拾われることに。
「ジェルン。朝デス。起きてクダサイ」
朝、ソフィーに優しく揺り起こされる。
「お……おお、もうそんな時間か……」
たどたどしさはあるものの、しっかりとしたこちらの言葉での彼女の呼びかけに、俺は目を覚ます。
「それにしても、しっかりこっちの言葉言えてるじゃないか。特訓の成果だな」
「そうデスカ? うれしいデス」
俺がゆっくりとした口調で褒めてやると、ソフィーは嬉しそうな顔をする。
町から家に帰ってきてから4日が経つが、早くもソフィーは一部の日常会話に必要な言葉を覚え、限定的ではあるものの、こちらの言葉で話せる時は、俺にこちらの言葉で話しかけてくるようになった。
「おはようゴザイマス、ジェルン」
「ああ、おはよう、ソフィー」
ベッドから起き上がった俺に朝のごあいさつ。
「朝ごはんがデキていマス。顔、洗ってキテくださいネ」
笑顔でそう言って、一足先に戻っていくソフィー。
この分なら、来月にはある程度一通りの会話は余裕でマスターしてしまいそうだ。
山の中にぽつんとある我が家に戻ってきてからは、早速毎日が忙しくなった。
ソフィーの生活空間を新しく用意するために自宅も改築しなきゃならないから、それだけでも結構忙しいのだが、町のギルドのマスターが結婚祝いとばかりにたくさん仕事を寄越してくれたおかげで、余計に忙しくなってしまった。
とりあえず、昨日の夜遅くに増築の図面はなんとか完成したので、今日からは買った材木を寸法に合わせてカットして、部材に加工していく作業に取りかかれるが。
そう言えば、ギルドのマスターにもらったお祝いの中身だったが……一応律儀に家に帰ってから箱を開けてみたわけだが。
中身は予想通りというか、陶器。
というか、ペアカップだった。
なるほど、確かに夫婦ならこういうのの一つはあった方がいいのかもな。
ソフィーもなんかすごく喜んでいたし。
それよりも。
箱の重さと中のブツの重さがどうにも計算に合わないからおかしいと思ったら、ペアカップの下、緩衝材を挟んでとんでもないものが隠れていた。
箱の底に隠れていたのは、金。
マネーじゃない。ゴールド。
金の延べ板が忍ばせてあったのだ。
それも、1枚じゃない。
2枚を箱の底に並べてあった。
そりゃ、重いはずだ。
しかし……こんな高価なもの……これ、どうしよう?
こんなことなら、律儀に家まで持って帰る前に中を確かめておくべきだった。
返そうとも思うのだが、町まで迂闊に持ち歩ける代物じゃない。
少なくとも、中身を知らなかったから平気で持ち運んでたわけで。
こんなもの持ってるなんて下手に見られたら、盗賊に襲ってくれと言っているようなものだ。
そんなわけで、この延べ板はいざという時のために仕舞っておくことにして、当面は床下の収納スペースに大切に保管しておくことにした。
まあ、その分のお代は……どうやって返すかはちょっと考えないと。
どのみち、しばらく町に出る用事もないし、次に町に出る時に考えることにしよう。
そんなわけで、今日は引き受けた依頼の準備で山に入る予定だ。
材料を集めに行かなくちゃいけない。
それと、そのついでにちょっと見てきたい場所があった。
というわけで、ソフィーを連れて山に入っていった。
まずは近場で薬草取り。
ソフィーは薬草の知識もそれなりにあるようで、特徴を言えばすぐに必要なものを見つけ出してくれるので、必要量を集めるのも思いの外捗った。
思いの外薬草類が早く集まったので、午前中のうちに一旦家に戻ってお昼を食べてから、もう一度山に出かける。
今日はどうしても下見しておきたい場所があったのだ。
本当は、薬草の群生地から近かったので、作業のついでに行けば良いかと思っていたのだが、思いの外薬草類の採取が捗って、昼前に終わってしまったので、一旦食事に家に帰ったわけだが。
なので、午後はソフィーは家に居てもいいよと言ったのだが、ソフィーは一緒に来たいというので、一緒に連れて行くことにした。
女の子はとある理由で結構気に入る場所かもしれないし。
「わぁ……!」
目的地に到着すると、目の前に広がる光景に心を奪われた様子のソフィー。
ここは午前中に薬草を採取した場所からほど近い山の小川のほとりの狭い平場。
地面からはところどころから白い煙が上がっている。
川のほとりの平場に白い煙。
このキーワードで気が付く人もいるかもしれないが、ここは温泉が湧くポイントなのだ。
『ソフィーは温泉は好きか?』
『はい、大好きです!』
俺の問いに、笑顔で頷くソフィー。
『そうか。ここは、その辺を適当に掘れば土の中から温かい湯が湧き上がってすぐに溜まるから、簡単に温泉が作れるぞ』
『すごい……』
『まあ、掘るのがそれなりに一苦労だし、終わったら元通り埋めて帰るから、結構重労働だったりするんだがな』
『ああ……それは大変ですね……』
ソフィーは少し残念そうな顔になる。
『今までは俺一人だし、気が向いたらここまで歩いて上って入りに来ていたが……』
『羨ましいなぁ……』
『これを、家の改築が終わったら、庭に湯を弾けないかと考えている』
『そんなこと、できるのですか?』
ソフィーは驚いたような顔でこちらを見る。
『ほら、そこ、見てごらん。うちが見えるだろう?』
平場の端、木々の隙間から我が家の姿が下方にチラリと見える。
『あ、本当だ……』
俺の指差す先を見て、ソフィーもここが思いの外家から近いことを認識したようだ。
『若干傾斜が急だが、ここを樋を渡して通せばあっという間に家まで湯を届けられる。川の水も一緒に引けば、湯と水を自在に使えるようになるから、生活もより豊かにすることができるぞ』
『それって、もしかして……いつでもお家でお風呂入り放題にできるってことですか?』
『そういうこと。他にも、寒い時期でもお湯を自由に使えるから、いろいろ助かることは多いだろう』
『すごい! 素敵です……!』
ソフィーは目を輝かせる。
『そんなわけで、少しばかり測量をしていく。手伝ってくれ』
『はい!』
そんなわけで、持ってきた測量用の道具を組み立てて。
薬草取りに出る前に、家の敷地内に立てておいた目標とする赤い竿に対して、距離と角度を測定する。
その他、ここに来る道々、この平場の下を通るつづら折りの道の所々に付けておいた目印のところに対しても距離と角度を測定する。
同じことを、平場の上から目標地点の目印が見えるところで何カ所か場所を変えて、測定するということの繰り返しだ。
『よし、こんなもんか』
『わりとあっという間でしたけど、これでいいんですか?』
『ああ、あとは数値を地図に書き込んで……と。これで、一応設計の目安になる』
測量そのものは目標地点が定まっていれば、あとは測ってしまえばいいだだけだから、測定自体は道具を使っちゃえばすぐに終わるんだよな。
『さてと。これでやるべきことは全部終わったな。適当に遊んでってもいいが……どうする?』
俺一人だったら、ひとっ風呂浴びて帰るというのが定番だったが、ソフィーもいるからな。
男女で混浴というわけにも行くまい。
遊ぶと言っても川遊びくらいしかないわけだが。
『帰りましょう。早く帰って言葉のトレーニングしたいですし』
ソフィーは今はそっちにご執心なんだな。
時間が余ったとは言え、有効に使いたいんだろう。
『よし、わかった。じゃあ、帰ろうか』
『はい♪』
俺が荷物を担ぎ上げると、ソフィーは荷物を担いだ反対側に自然に寄り添って、手を繋いでくる。
いつの間にやら、これが俺たちの当たり前になりつつあった。
これじゃなんか恋人同士みたいじゃないかと思いつつ。
笑顔でこちらを見上げるソフィーを見ていると、まあ、それも悪くないかと思い始めている自分がいた。
そして、夜。
ソフィーの作ってくれた夕食をいただいた後、俺は自室に籠もって昼間測量した我が家と源泉の間の測量データと地図を見比べながら、湯と水を通すルートの選定と、大まかな工法、そして、必要となる資材の見積もりの作業に没頭していた。
まあ、必要な情報はだいたい揃っているので、あとは細かい計算が主なのだが。
……ん、コーヒーが切れてしまったな。
普段だったらソフィーを呼んでお代わりをいれてもらうところだが、ソフィーには夕食の片付けが終わったらそのまま適当にお風呂にでも先に入っててもらうように言っておいてある。
多分、今はお風呂に入っている頃だろう。
そしたら、今のうちにお代わりを作っちまうか。
ソフィーが戻ってくる前に済ませないとな。
そうだ、今度は別のお茶にしようか。
キッチンでお湯を沸かして茶葉と一緒にティーポットに入れて、しばらく蒸らす……。
さて、あとは少し待つだけか……と、食卓の自分の席に座ったところで。
突然、水場の扉が開いて、ソフィーが……。
『えっ……!?』
『…………っ!』
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!』
ソフィーは何も身に付けていなかった。
お互い一瞬固まった後。
ソフィーは両手で胸を隠しながらその場にへたり込むようにうずくまって、悲鳴を上げた……。
「うう……ゴメンなさいデス……」
あの後、一旦俺は自室に退避し、その間にソフィーにはお風呂に入り直してもらって、彼女が着替え終わった後、部屋に声をかけてもらって。
部屋に迎え入れた彼女がまず発したのはその言葉だった。
彼女の説明によれば、お風呂に入る時に何か忘れ物をしたようだ。
それで、お風呂に入ってからそれに気が付いて、取りに来たらちょうど俺と鉢合わせしてしまったということだった。
『いや……こっちも、申し訳ない……』
なんとなく、そんな台詞が口をついて出る。
なにしろ、思いっきり見てしまった。
ほんのちょっとだけど、それこそ全部見てしまった。
目の奥に焼き付く決して大きくはないけど形の整った胸から、おなかに向かっての美しいカラダのライン……そして、その下にかすかに見えた眼福……いや違う、そうじゃない……げふんげふん。
『謝らないで下さい……。きちんとタオルを巻いてこなかったわたしが悪いのですから……』
『そういや、なんでタオル巻いてなかったの?』
『それは……ジェルンは部屋に籠もって作業するって言ってたので、ちょっと忘れ物を取りに行くだけだし、居ないだろうと思ったので……』
『それでか……』
『ごめんなさい……』
ソフィーの予想は決して間違っていない。
俺も、たまたまコーヒー飲み終えるペースが早くて、お代わり用意するんじゃなきゃ、出てこなかっただろう。
『いや……俺も悪かったな。俺なんかに見られて、嫌な思いをしただろう?』
『そんなこと……!』
ソフィーはそう言って、首を横に振った。
『見られたのがジェルンで……ジェルンだったから、いいです……』
……え?
なに?
どういうこと?
『え……あ……あぅ……』
ソフィーは顔を真っ赤にして。
『ご、ごめんなさい! 変なことを言って……。お仕事邪魔しちゃうから、わたし、戻りますね!』
そう言って、ソフィーは俺の部屋を飛び出していってしまった。
え……まさか……?
いや、まさかな。
さすがに歳の差がありすぎるだろう……。
家族みたいなものだから、見られてもいいと、そういうことだと思っておこう。