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Mission 3.ケモミミ少女に○○を~麓の町でのおつかいミッション その4

バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。

そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。

とりあえず、ソフィーを保護することにしたジェルン。

差し当たって、山の家にはソフィーには必要なものが不足しすぎているので、彼女の生活必需品を買いそろえるため、ジェルンは彼女を連れて近くの町に繰り出すのだった。



主人公:ジェルン

バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート

直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う

他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん

ダンジョン踏破には欠かせない職業

ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……




ソフィー

主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子

種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい

さまよった挙げ句、主人公の小さな家を見つけたが、留守だったので、鍵の掛かっていなかった道具小屋に忍び込んで、眠り込んでいたところをジェルンに見つかる


 そんなわけで、俺も軽く1杯珈琲をササッと飲んだ後、会計を済ませてカフェを出た。

『すまなかったな。随分待たせてしまって』

『ううん、大丈夫。結構こっちも楽しかったよ』

『そうか。それなら良かったが』

 退屈せずに済んだみたいで、そこはウェンディに感謝だが、さっきあんな風に絡まれた後だとなんとなく微妙な気分である。

『さて、これからどうしようか』

 銀行で時間がかかってしまった分、陽がだいぶ傾いてしまったな。

 日が沈むまで、1時間あるかないかといったところか。

『あんまり遅くなると、暗くなっちゃいますね』

『そうだな』

『それじゃあ、宿に帰りましょうか』

『あちこち見たかったんじゃないのか?』

『いいんです。それに、帰るといっても、ゆっくり帰ればその間にいろいろ見ていけるでしょう?』

『それもそうか。じゃあ、ゆっくり帰ろう』

『はい!』

 スッとソフィーの手が俺の腕に絡んできて、そのまま自然に腕を絡めて、宿へ向かう道をゆっくりと二人で歩いて行く。

 ふと、ソフィーの方を見ると、彼女もこっちの視線に気が付いたようで、こちらを見上げて笑顔を見せてくれる。

 ……おいおい、ホントの夫婦みたいじゃないか。

 思わず気恥ずかしくなってしまって一瞬視線を逸らしてしまうと、ソフィーはそんな俺を見てくすくすと笑う。

 やべぇ……なんだよこれ、甘酸っぱすぎんだろ……。

 なんというか……むず痒いというか、くすぐったいというか……そんな気分だ。

『ジェルン、なんか、照れてるみたいでかわいいです』

『いや、照れるというか……やっぱ、ソフィーみたいな可愛い女の子を連れてこんな風に歩いたことって、今までなかったからな……』

 厳密に言えば、単純に見た目にもそれなりのレベルの、年齢的にも適齢期な女性と一緒に歩いたことはあるにはある。

 ただ、それは仕事のパーティーの同僚として行動していただけであって、個人的に何らかの深い関係があったということはなかったのだ。

『じゃあ、わたしがジェルンの初めてのデート相手?』

『まあ、そういうことになるな……』

 そう答えると。

『そっかぁ……えへへっ♪』

 ソフィーはどこか嬉しそうだ。

 きゅっと俺の腕をしっかりと掴んで、心なしか彼女の足取りが少し軽い感じがする。

 ふさふさとしたしっぽをたゆんたゆんと揺らすように振りながら軽い足取りで歩くソフィーはすっかりご機嫌なようだが、こっちは周りの目が気になって仕方ないところだ。

 一応、会う人会う人にはソフィーのことは嫁さんということで紹介してはいるが、実際こうして歩いていて、傍から見て少女と人攫いとか、そういうかんじに見られてないかとかこっちはヒヤヒヤものなんだが。

 実際、すれ違う人たちは誰も彼も例外なくこちらを物珍しそうにジロジロと一瞥していく。

 ソフィーの見た目がこの辺で暮らしている人たちとわかりやすく違う特徴があったりとか、そういう反応になる要素はあるのだが。

 俺とソフィーの年齢差も一目瞭然だろうし。

 こうして歩いていて、夫婦だと思うヤツはいないよなぁ……。

 あ、いや、実際ホンモノの夫婦じゃないけどさ……。

 ソフィーは周りの目は気になってないのだろうか?

 ……本人に確かめようか、どうしようか。

 それとも、俺の意識しすぎなのか。

 しばらく悩んだ挙げ句、ソフィーに尋ねようとした矢先。

『あ、ねえ、ジェルン』

『ん? どうした?』

 ソフィーの方から声がかかった。

『ちょっとあそこ、見てってもいいかな?』

 ソフィーが指差した方を見ると、何やら人だかりができている。

『ああ、いいよ。なんだろう?』

 太陽が沈んで少し薄暗くなった街の中で、あそこだけ結構明るくなっている感じがするな。

 大きな木が真ん中に立っている広場が、何やら明るく照らし出され始めているようだ。

 ソフィーの手を引いて、その場所に近付いていくと。

 広場の真ん中の大きな木は何やら随分と飾り付けられていて、その周囲で順次ランプに火が入れられていた。

 用意されているランプの数は結構たくさんあるみたいで、一つ一つに火が入れられていく度に少しずつ薄暗くなっていた広場が明るくなっていく。

『わぁ……きれい……』

 木に取り付けられた装飾がランプの明かりを反射して、キラキラと輝く様は、そこに夜空の星が降りてきたかのよう。

『本当に綺麗だな……』

 俺もその様子を見上げて感嘆する。

 ちらりと隣にいるソフィーの様子を盗み見ると。

 彼女自身も瞳をキラキラさせて、目の前に繰り広げられる光景に見入っていた。

『いいですね……。なんか、お祭りみたいで』

『確かに、そんな感じがするな』

 でも、今の時期、この町でお祭りは特にないはずだよな。

 そう思った時。

「あれ? ジェルンじゃないか」

 背後から声をかけられた。

「あ、マスター。久しぶり」

 声をかけてきたのは、この町のギルドマスターをしているニールだった。

 冒険者関係からはだいたい「マスター」と呼ばれている。

 彼は手に種火を持っていた。

 つまり、ランプの明かりをつけて回っていたようだ。

「変わった女を連れてこの町に来ているらしいって、今日、噂には聞いていたが……おかげですぐに分かったよ」

「まあ、いろいろあってな」

「ふうん。奥さんらしいって話もあるが……」

「うん、まあ、一応な」

「そうか。そりゃめでたいな。でもなぁ……そういうことはちゃんと連絡くらい寄越せや。祝いも何も準備できてねーじゃんかよ」

「いや、そういうわけには行かねーだろうがよ。一応、大人の付き合いとして」

 マスターはこういうところは律儀なんだよな。

「それより、これはいったい何なんだ? 今の時期は特に祭りとかはなかったよな?」

「ああ、これかい?」

 マスターはライトアップされた広場の木を見上げる。

「どうだい、綺麗なもんだろ」

「ああ、まあな。彼女もだいぶ気に入ったみたいで」

「そうかい。それは良かった。夜のデートスポットみたいな感じを狙ってるみたいだからな」

「もしかして、商工会案件?」

「まあな。最近夜の人出がイマイチらしくてな。ちょっと盛り上げようってとこだね」

「それでか……なるほど」

 ここの商工会は結構誘客には敏感で熱心だ。

 少し町の賑わいが鈍ってきたと感じると、すぐにこういう企画をよくやるのだ。

「で、マスターは駆り出されたと」

「そういうこと。ま、毎日夕方にランプに注油・点火して、9時過ぎに消灯するだけの仕事だからな。お安い御用さ」

 マスターはそう言って笑った。

「ジェルンはまたいつものところに泊まってんのかい?」

「ああ」

「そうか。まだしばらく居るんだろ?」

「そうだね。あと3日くらいは居ると思うよ。いろいろ買い出ししなきゃならないからね」

「わかった。じゃあ、その間に一度はうちのギルドに顔出してくれよ。祝いの一つも渡したいしさ」

「ああ、わかった。ありがとう」

「いいってことよ。それじゃ、俺はギルドに戻るぜ。またな」

「ああ、また」

 マスターはまだギルドに仕事を残しているらしく、足早にギルドへ戻っていった。

『今の人は、誰ですか?』

 俺の隣で静かにしていたソフィーが、二人だけに戻るのを待ってから、俺に尋ねる。

『あれはこの町のギルドマスターだよ。いろいろ世話になってる人なんだ』

『ああ、それで……。随分親しげでしたから』

 ソフィーがそう言って頷く。

『ジェルンは結構この町で顔が広いんですね……』

『まあ、この町は俺の拠点の一つだからな。いろいろと仕事をしに来ることも多いし。だから、馴染みの人もかなりいるな』

 ソフィーにそう答える。

『これから、この町には折々に来ることも多々あるだろうから、早く言葉を覚えて、次来る時には一人でも出歩いて不自由しないくらいにはなっておこうな。そしたら、もっといろんなところを見て回れるぞ』

『はい! がんばりますね』

 ソフィーはにっこりと頷いた。

 さてと。

 辺りはだいぶ暗くなってきた。

『じゃあ、そろそろ宿に帰ろうか』

『はい!』

 俺はソフィーの手を引いて、宿への道を歩いて行った。




 翌日は織物屋へ行って、ソフィーの見立てで部屋の飾り付けやカーテンに使う布を仕入れて。

 それから、小物や雑貨類の買い出し。

 ソフィーはほとんど何も持たずにこっちに来てしまっているものだから、生活に必要なもので買い足さなければならないものはたくさんある。

 食器だったり、洗面や入浴の用具だったり、一人暮らしが二人暮らしになるので、用意があるものでもいろいろと足りなくなるものは結構あるもんなんだな。

 自分一人だと適当に済ませていたものも、一緒に暮らす人がいるとそういうわけにもいかなくなるというのも多々あって。

 ソフィーもこっちに買い出しに出てくる前に、俺の家の中をチェックして買っておきたいものの算段は付けていてくれていて、買い出しもスムーズに進んで、俺はほとんどくっついて歩いて荷物持つだけの存在だった感じだ。

 おかげで、予定を組んだ時に思っていたよりもずっと早くに今日の予定が済んでしまった。

『手際よかったなぁ……。随分助かったよ』

『ふふっ♪ 一応、メイドとして家のことを任せていただくわけですし、これくらいはできてないといけませんよね』

 そうは言うが、まだ十代半ば行くかどうかだというのに、ここまで普通にこなせてしまうというのは結構すごいことだと思うが……。

 そんなことを彼女に伝えてみると、ソフィーは。

『それがわたしの子供の時からの日常でしたから。結構、なんでもかんでもそういうこと押し付けられがちだったので、自然と覚えちゃった感じですね』

 苦笑いしながらそう答える。

 俺としては、嫁さんにしてもメイドにしても、ソフィーの居場所を作ってやるために、体裁的なところを取り繕うためで、そこまでガチでやらせようとは思っていなかったのだが、少なくとも彼女は普通にメイドとして通用しそうな能力がありそうだし、同時に彼女的にもやる気でいるようだった。

『しかし……本当にいろいろ任せてしまっても大丈夫か?』

 俺としては、まだまだ子供だし、あまり毎日あくせくしないで、年相応に毎日を楽しんで欲しいと思っているのだが。

『大丈夫です! いろいろと家事は得意なので、任せて下さったら嬉しいです』

 ソフィー本人はめちゃくちゃやる気だ。

 本人がそこまでやる気なら、辛くならない範囲でお願いする方がいいのだろう。

 こちらとしても、いろいろと助かることは間違いない。

 ま、あんまり頑張りすぎないようには気を付けてやらなきゃな。

 宿へ帰る道々、彼女の手を引きながら、そんなことを考えていた。




 そして、次の日は午前中には食料などの買い出し。

 またいつものレストランでお昼ごはんを食べた後、午後は銀行で支払いの手続き。

 そして、その後、先日マスターに言われていたので、町の冒険者ギルドに立ち寄った。

「おう、来たな」

 丁度マスターは午後の比較的空いている時間帯ということもあってか、明るいうちにという感じでギルド内の清掃作業中。

 入ってすぐに俺たちと目が合うと。

「まあ、こっち座れよ。おい、二人にお茶を頼む。すまんがちょっとそこで待っててくれ」

 掃除の手を止めて、俺たちを奥の席へ案内してくれた。

 そして、女性店員にお茶の用意を指示する。

 マスターはそのまま店の奥に入っていき、待つことしばし。

 途中、ギルドの店員さんがお茶とお茶菓子を持ってきてくれたので、それをいただきながらマスターを待っていると。

「すまん。待たせたな」

 10分ちょっとくらいしただろうか。

 ようやくマスターが店の奥から出てきた。

「これ、俺からのお祝いだ。受け取ってくれ」

 そう言って、彼は俺とソフィーの前に箱を一つ置いた。

 両手に抱えるくらいの大きさで、結構厳重に封がしてあるが……。

「これ……中身は?」

「中身か? まあ、開けてのお楽しみだよ。きっとあると良いモノだと思うぜ。家に帰ってから開けると良い」

「もったいぶらないで教えてくれよ」

「まあ、たいしたものじゃないけど、夫婦なんだしこういうのが一つあれば良いことあるかな……って代物だ。ワレモノだから、取り扱いには気を付けろよ。一応、緩衝材はたっぷり入れてあるけどな」

 そう言われて、ちょっとその箱を手に持ってみると、そこそこ中にずっしりと重たいものが入っている感覚。

 ワレモノと言うから、ガラスか、陶器か、その辺りだろうと思っていたが、重量バランス的に、金属が入ってないか? これ。

 なんかすごく重たい。

 それとも、結構ごついとか大きい何かだろうか?

 ……置物か?

 そんなことを一瞬ふと予想してしまう。

 まあ、何にせよ、彼なりに気を遣ってくれた祝いの品だ。

「そっか。悪いね、マスター。こんなに気を遣ってもらっちゃって。ありがとう」

 なんとなく、ちょっと罪悪感。

「いいんだよ。ジェルンにはうちのギルドも大層世話になってるからな。そのぐらいいいってことよ。それとな……」

 ん?

 他にもまだあるのか?

 マスターは何やら一緒に持ってきていたフォルダーから、数枚紙を取り出した。

「幾つか製作依頼がある。あんたに頼むのがいちばんだと思ってな」

 その書類を一枚ずつ目を通していく。

 ……ふむ。

 特殊工具の製作依頼に……農薬とか、試薬とかの調合、う~ん……結構あるなぁ……。

「一応全部引き受けられるけど……これだけあると時間はちと欲しいかな」

 一通り依頼に目を通して、マスターにそう告げる。

「まあ、それはそうだろうなとは思ってたが……。来月とかならどうだ?」

「期間的には大丈夫だけど、こっち来るかどうかはまだ分かんないな」

 マスターの提案にそう答えると。

「じゃあ、そうだな……今日が13日だから、来月の15日辺までにジェルンがこっちに顔を出さなかったら、そっちに誰か引き取りに行かせるよ」

「おっけ。わかった。じゃあそれで」

 話は決まったので、俺は書類をそのまま折りたたんで懐にしまって持ち帰ることに。

「……にしても、ちょっと今日は多くね?」

 マスターにちょっと文句を付けると。

「まあ、これもご祝儀代わりってとこだ。こういう時は金が必要だろ?」

「まあ、たしかにそうだが……」

 思いっきり人をこき使うと思いきや、これはこれでマスターの心遣いだったようだ。

 まあ、期間も十分もらったし、ありがたいといえばありがたい。

 報酬も合わせれば結構な額になるしな。

「そしたら、そろそろ俺たちは宿に戻るわ」

「ああ。明日帰るのかい?」

「そうだな。買い出しもだいたい済んだしな。明日の朝に発つよ」

「そうか。気を付けて帰れよ」

「ありがとう。じゃ」

 そして、俺が席を立つと、ソフィーもその様子から察して立ち上がった。

『じゃ、宿へ帰ろうか』

『はい』

 自然と俺の手を取って寄り添うように傍らに来る。

「さすがに新婚さんだねぇ……。うらやましいや」

「あはは……」

 思わず苦笑いが漏れる。

 ホントのことは今更ちょっと言えないなぁ、これは。

 おっと、もらったお祝い、忘れちゃいけない。

 テーブルの上に置いてた箱を小脇に抱えて。

「それじゃ、また」

「あいよ! またな!」

 俺とソフィーはギルドを後にした。

『ジェルン。結局、どんな話をしていたの?』

 ギルドではおとなしくお茶とお茶菓子を楽しみつつ、黙って俺の用が済むのを待っていたソフィーが、ギルドを出て二人だけになって、何があったのか尋ねてきた。

 まだ、片言くらいしかこっちの言葉が理解できないから、俺たちが何を話していたのかもよく分からなかっただろうに、空気を読んでずっとおとなしくしていてくれたんだよな。

『あの人はあそこのギルドのマスターなんだ。もう結構長いこと、仕事とかで付き合いがあってさ。俺がソフィーを嫁に迎えたと聞いて、お祝いをくれたんだ』

 そう言って、彼女に小脇に抱えた箱を指差して示す。

『そうだったんですか……。わたし、お礼も何も言えてない……』

 申し訳なさそうに俯くソフィー。

『まあ、仕方ない。ソフィーは話の内容なんかわかんなかっただろう? この次来た時にでも言えばいいよ』

『はい……。早く、こっちの言葉、覚えないと……』

 ソフィーはそう言って俺の言葉に頷いた。

『それと、仕事を幾つかもらった。持ち帰ってこの1ヶ月の間に片付ける。家の改築もあるから、これから忙しくなるぞ』

『わたしにも何かできることありますか?』

『もちろん。たんまりあるぞ』

『ほんとですか? よかった。がんばりますね!』

 ソフィーは嬉しそうな笑顔で頷く。

 そして、俺の手を握る彼女の手に、きゅっと少し力が。

 ……あ、やべぇ。

 なんか、今、ちょっと胸がきゅんってなった……。

 もういい歳のおっさんだぞ、俺は。

 ソフィーみたいな年頃の女の子にはお呼びじゃないだろう。

 思わず苦笑いする。

『ジェルン? どうかしたの?』

 首を傾げて下から俺を覗き込んでくるソフィー。

『いや、なんでもない』

 俺は平静を装い、そう答えると。

『ふうん……』

 ソフィーはそれ以上追及はしてこなかった。

 いずれにせよ、これで今回のこの町でのやるべきことはすべて滞りなく済んだし。

 今夜は宿で夕食をとって、あとはのんびりしよう。

 帰ったら、毎日が忙しくなるからな。


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