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Mission 3.ケモミミ少女に○○を~麓の町でのおつかいミッション その3

バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。

そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。

とりあえず、ソフィーを保護することにしたジェルン。

差し当たって、山の家にはソフィーには必要なものが不足しすぎているので、彼女の生活必需品を買いそろえるため、ジェルンは彼女を連れて近くの町に繰り出すのだった。



主人公:ジェルン

バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート

直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う

他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん

ダンジョン踏破には欠かせない職業

ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……




ソフィー

主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子

種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい

さまよった挙げ句、主人公の小さな家を見つけたが、留守だったので、鍵の掛かっていなかった道具小屋に忍び込んで、眠り込んでいたところをジェルンに見つかる


 ランチを済ませると、そのまま次の買い出しへ向かう。

『ねえ、ジェルン。次はどこへ行くの?』

 甘えるように俺の腕に纏わり付きながら、ソフィーが尋ねる。

『そうだな……とりあえず、木材の仕入れかな……。どのみちその場で引き取って持ち帰れるものでもないから、発注だけになるけどな』

『木って、先に発注しておくものなの?』

『ちょっとした端材なんかだったらその場で切ってもらって持ち帰ったりもするけどな。家を建てたりするのに使うようなヤツは、発注を受けてから切り出してくることがほとんどだから、早めに発注しておけば、帰るぐらいの頃にはうちに届けられるんじゃないかな』

『そうなんですね……』

 ソフィーが俺の説明に納得したように頷く。

『さて、そろそろ見えてきたぞ』

 目的の店に到着だ。

 そこの店主は……さっき会ったラファエルだ。

「よう」

 さっき会ったばかりなのに、また会うのはちょっと気まずい。

 おまけに、さっきはソフィーのことを妙な勘違いしてくれちゃってたからな……。

 まあ、今となっては開き直って、その誤解を利用させてもらうことにしたわけだが。

「おう。さっきも会ったのに、さらに夫婦仲睦まじいところ見せつけに来たか?」

 まあ、さっきのこともあって、こいつの反応はちょっとカチンと来るところはあるが、無理もないと言えば無理もないか。

「バカ言え。仕事の話だよ」

 すると、ラファエルもすぐに真顔になる。

「仕事か。なんだ?」

「木材を依頼したい。家を改築しようと思ってて」

「ほう。どんなのが欲しいんだ?」

「だから、ちょっと今手に入る木材を見たくてね」

「なるほど、それならこっち来いや」

 ラファエルが店の奥へ俺たち二人を呼び込んだ。

 呼び込まれた先は、店の奥の倉庫。

「最近入ってくるのはだいたいこの辺にあるヤツだな……」

 そう言って、倉庫の手前の一角を手で示す。

 俺はそこに立てかけてある木材をじっくりと見て、軽く曲げた指の関節のところで叩いて、硬さを確認する。

「お、良い感じに乾いてるな。ちょっと硬めだけど、水分が少なくて、加工しやすそうだ」

「建材にする材木としては、今取れてるのは申し分ない状態だと太鼓判が押せるよ」

「そうだな」

 ラファエルの言葉に頷く俺。

 そして、さらに。

「じゃあ、建材はこれでいいか?」

「そうだな。他に何かあるのか?」

「化粧材とかは要るか?」

「化粧材か。どんなのがある?」

「それはこっちだ」

 今度は倉庫内の別の一角へ。

「ほう……」

『ふわぁ……』

 色とりどりの化粧材が置いてあって、俺に付いてきていたソフィーも目をキラキラさせている。

「実は、今回、彼女の部屋を増築しようと思ってるんだ。女性の部屋に使うのにオススメの化粧材とかある?」

 ラファエルに尋ねると。

「そうだな……わりと部屋が明るい方が好まれる傾向があるから、床や内壁なんかは杉材とかかな。アクセントをつけるなら、腰壁にオークとかローズウッド辺りを使うなんてのもよくある。この辺は、腰壁とか部屋の装飾用に、こんな感じに彫刻の入ってるのもあるぞ。こんな感じに」

 彼はそう言いながら、積んであった板材を、おもむろに一枚引っ張り出して、俺たちに見せてくれた。

『わぁ……素敵です……!』

 ソフィーが両手を口元に矢って、目をキラキラさせてその板に見入っている。

「気に入ったみたいだ」

「そうか」

 ソフィーの反応を見て、直接言葉は通じてないけど、ラファエルも喜んでいることは分かったのだろう。

 どうだい?という感じにちょっと心なしか胸を張ってる感じだ。

「彫刻の柄は違う板材でも同じものを加工できるから、ここに柄は並べておくんで、嫁さんと相談して、板と柄を指定してくれたら、時間は少しかかるが、用意できるぞ」

「わかった。彼女と少し相談するよ」

「ああ。オーダーが決まったら声かけてくれ。俺は表にいる」

「ああ」

 ラファエルはそう言って、席を外していった。

 とりあえず、その場には俺とソフィーだけになる。

『さ、ソフィー。君の部屋に使う化粧材だ。好きな柄と板を選ぶといいよ』

『え? わたしが選んじゃっていいの?』

『いいも何も。君が生活する部屋に使うものだ。他に誰が選ぶんだい?』

『いいの? わぁ……どうしよう……』

『時間はたっぷりあるから、ゆっくる悩むといいよ』

 ソフィーはラファエルが並べておいてくれた化粧材の彫刻の柄に見入っている。

 そして、30分くらいあれでもないこれでもないやっぱりこっち……という感じに悩みに悩んだ末。

 彫刻の柄がなんとか決定。

 そこから、今度は板材の種類をどうするかでまた悩む……。

 さっき、仕立屋では俺は買い物の現場から席を外していたから見ていないけど、女の子の買い物って、こんな感じなのかと思った。

 話には耳にすることはあったが……ホントに迷って迷ってなかなか決められないということの連続なんだな。

 それでいて、そうやって迷うことそのものを楽しんでる節すらある。

 なかなかその辺の感覚は、俺には理解しにくいけどな。

 俺からすれば、ササッと決めちゃえば良いのにと思うけれど、それではどうも面白くないらしい。

 まあ、彼女の生活空間のことだし、納得して選んでもらった方がいいので、特にこちらから口は出さなかったけど。

 そんなわけで、全部決まるのに小一時間くらいかかっただろうか。

『じゃあ、この彫刻の柄で、この板にします』

 ソフィーが選んだ板の柄と種類のチョイスを聞いて。

 建材用の杉材と、床板と化粧材と。

 ラファエルに少し多めに発注して、到着の大まかなスケジュールを確認し、請求書をもらって、ここでするべき事はおしまい。

 しかしながら。

「……おい、ラファエル。請求額、ちょっと安すぎない?」

 請求書に書かれた金額を見て、俺は首を傾げた。

 どう見てもこれじゃ利益なんか全く出ないぞ……というレベルの金額。

 感覚的にだいたい半額くらいになってると思われる。

 すると。

「ああ、それでいいんだよ。俺からの結婚祝いだ。取っときな」

 そう言ってラファエルは笑う。

 やべ……変な気を遣わせてしまった。

 とは言え、今更ソフィーとの結婚の件が嘘というか、方便とは言えん。

 ……仕方ない。

 ソフィーもいずれうちを出る日は来るだろうから、そしたら別れたことにするしかないか。

「すまんな。ありがとう」

「いいってことよ。なかなか可愛らしい子をもらったじゃねーか。羨ましいぜ」

「ははは……」

 思わず乾いた笑いが……。

 まあ、しゃーないか。

 彼の好意をありがたく受け取っておくとしよう。

『よし、今日はこれでおしまい。宿に帰ろうか』

 ソフィーに声をかける。

『はい♪』

 そこはかとなく、ソフィーはご機嫌な様子だ。

『ソフィー、なんかご機嫌だね』

『やっぱり、あの板を使って、どんなお部屋が完成するだろうって想像したら、なんかすごく楽しみになっちゃって。お部屋の完成が待ち遠しいです』

『そうか……。まあ、帰ってから設計図を引いたりするから、まだまだ先だけどな。それに、ソフィーにも仕事はあるぞ』

『え? わたし、お手伝いできるの?』

『きみは裁縫が得意だと言ってただろう? 部屋の飾り付けはきみが自由にやるといい。明日、必要な材料を買いに行くよ』

『自由にやっていいんですか?』

『きみがこれから暮らしていく部屋だ。当たり前だろう?』

『やったぁ! 嬉しい……!』

 ソフィーは無邪気に喜んでいる。

『実家では、とてもわたし一人のお部屋をこんな風に自由にデザインできちゃうとか、考えられませんでしたし。夢みたいです』

『まあ、せっかく夢が叶うんだから、思いっきり遊んじゃったらいいんじゃないかな』

『はい、そうします♪』

『ただまぁ、さすがに生活空間だから、遊びすぎて後で困るなんて事にはならんようにな』

『あははっ。そこまではしませんよ~。でも、気を付けますね』

 まあ、ソフィーのことだから、そこまでしないとは思うけど。

 せっかくだから、とことん楽しんでくれたらいいなとは思っている。

『さて……まだ少し日が高いな。このまま宿に帰ってもいいが……。どこか、ちょっと近くをぶらりとするか?』

 まだそれほど陽が傾いていなかったので、せっかく町に出てきたこともあるし、このままただ宿に帰るのも勿体ない気がした。

 ソフィーも女の子だから、こういうところ出てきたら、出歩きたくもなるんじゃないかと思って、ちょっと提案してみたところもある。

 すると。

『だったら……ジェルンと一緒に、この辺のんびり歩きたいです』

 ソフィーは嬉しそうに頷いた。

『どこか、寄りたいところとかはないか?』

 そう尋ねると。

『来たことない場所だから、どこ入りたいとかは分からないけど、入りたくなったら言ってもいい?』

『もちろん』

 ソフィーの希望に、俺は頷く。

『じゃあ、行こうか』

『はい』

 俺が指しだした手を、ソフィーは自然に取って、俺たち二人は街中を歩く。

『そうだ、まだこの時間ならあそこが開いてるな……。1カ所、寄っても構わないか?』

『いいですよ? 何か用が残ってました?』

『いや、別に無理やり今日やらなくてもいいんだが、銀行がまだ開いてる時間だし、だったら今日の支払いさっさと済ませちゃえと思ってな』

 銀行はここから歩いてすぐのところにある。

 ゆっくりソフィーと手を繋いだまま歩いていても、程なく銀行の前にたどり着く。

『じゃあ、ちょっと手続き済ませてくるから……。ソフィーはその辺に喫茶店が何軒かあるから、適当に入ってお茶してなさい』

『でも、わたし……言葉が話せないよ?』

『あ、そうだった』

 そんなわけで、俺は一旦彼女と一緒に近場のカフェに入って一緒に席に着いた。

 ちょうど入ったこのお店、メニューにイラストが付いてるからわかりやすいんだよな。

『これならソフィーにもメニューわかるだろ?』

『うん』

『どれにする?』

『じゃあ、これと……これ』

『おっけ。じゃあ、注文しとくな。あと、少し時間かかるかもしれないから、適当に追加注文とかしといていいぞ。言葉が片言しか話せないのは言っておくから』

『うん』

『一応、少しばかりお金渡しておくぞ。念のためな』

 そう言って、いくらかお小遣いを持たせる。

『うん、いってらっしゃい、ジェルン』

 ソフィーの笑顔に見送られて、俺は席を立って、手近にいた顔見知りの店員にオーダーとソフィーの言葉の問題のことを軽く説明して、席を外している間よろしく頼むと頼んでおいて俺は店を出る。

 少し来た道を戻って銀行に入ると、だいたいいつものことではあるが、中は人でごった返していて、結構な待ち人数だった。

 順番待ちに小一時間ほど、俺の順番になり、今朝の仕立屋と、午後のラファエルの店と、2カ所の送金の手続きをする。

 ……とは言っても、ここの町で商売をやってるヤツは大抵ここに口座を持っているので、実際にお金を送りつけるとかいうわけではなく、帳簿上で振替処理をして、通知が行くだけだが。

「あ、ジェルンさん」

「はい?」

「あなたに領主名で入金がありましたよ」

 手続きの最中、窓口の事務員さんが、俺に一通の通知書を渡す。

 ……ああ、この前の仕事の報酬か。

 金額は結構な額。

 まあ、あの手の仕事はかなり派手にやらざるを得ずだいたいにおいて大量殺戮を伴う事も多々あったりするので、変な噂が立ったりとかもするから、あまり乗り気はしないんだが、やっぱり高額な報酬には替え難い。

 普段は山の中で自給自足に近い生活で、金銭的な実入りがあまりないことが多いので、そういう意味でも助かるんだよな。

 ソフィーの生活空間を作るための改築資材の費用の出費が結構大きかったが、それを余裕で補って余りある額が入って来てくれた。

 これで当分生活資金に困らなくて済む。

「ジェルンさん。手続き終わりました。こちらが証明書です」

「ありがとう」

 送金完了の証明書を2通もらい、銀行を出る。

 さて……結構時間かかってしまったな。

 待ちくたびれてるだろうなぁ。

 急いで戻ってやらないと。

 きっと怒ってるだろうなぁ……。

 申し訳ない思いでソフィーの待つカフェに大急ぎで戻ってみると。

 そこには意外な光景が繰り広げられていた。

 ソフィーがなんか店員ときゃっきゃと盛り上がっている。

 ホントに片言のカタコトしかこっちの言葉はまだ教えられてなかったから、それは信じがたい光景だった。

『あ、ジェルン』

 ソフィーが戻ってきた俺に気付いて、俺の方を振り向いた。

『これは……いったい、どういうこと? ソフィー、言葉話せないだろ?』

 目を丸くする俺に、この店のホールチーフのウェンディが。

「この子、言葉の飲み込みが早いわよ。一応、ちょこっとだけ片言が話せるというから、なんかあったらちょっと話してみようかなと思ってたんだけど、ケーキを食べてあんまり目をキラキラさせてたから、ちょっと声かけたの。そしたら、最初は美味しいって身振り手振りだったのが、結構色々覚えたのよ? これは何? こっちは何? 分かんないとあれ指してこれ指して聞いてくるの。あとは身振りで通じたらその言葉を教えたりとか」

「そうなのか」

「ジェルン。ちょっとダケ、コトバ、ハナセルように、なったヨ」

 たどたどしくて、イントネーションがまだまだ怪しいが、確かに全部こっちの言葉で、ソフィーが俺にそう言った。

 ちゃんと俺に話せるところを見せられたことが嬉しいのか、にこにこと笑顔で、心なしかちょっと胸を張っているようにも見える。

『すごいな。ちゃんと全部こっちの言葉になってる』

「えへへっ」

 この様子なら、もうちょっと本気でトレーニングしたら、日常会話くらいはすぐにマスターしてしまいそうだ。

『じゃあ、早いとこ日常会話がマスターできるように、練習しような。この分ならすぐできるよ』

『はいっ!』

 ソフィーはやる気に満ちた表情で頷いた。

「それじゃ、ウェンディ。俺にも珈琲を1杯たのんます」

「はいな。マスター! 珈琲一つお願いしまーす!」

 大きく通る声でオーダーを通した後。

「ところで、ジェルン。この子とはどういったご関係?」

 ウェンディがズバリと斬り込んできた。

「ああ、この子、俺の奥さん」

「えっ!?」

 驚きと共に、ドン引きしたような反応。

 うん、まあ、分かってはいたけどな。

「ちょっとあんた、いったい何をやったの? どこでこんないたいけな女の子を攫ってきたの!」

「言われそうだと思ったけど、ひどい言われようだな……」

 俺は深く溜息を吐く。

「だってそうじゃない! あんたみたいなおっさんに、言葉の通じない異国の女の子……しかも、どう見たってまだ10代半ば行ってるかどうか。こんなの、怪しい匂いしかしないじゃない」

 完全に疑ってかかっている……。

 参ったな。

 どう説明したものか苦慮していると。

 いきなり背中からむぎゅっとソフィーが俺に纏わり付くみたいに抱きついてきて。

「ジェルン~♪」

 俺の名を呼んで、すりすりと背中に顔をすり寄せていく。

 その様子を見て、ウェンディが固まる。

「え……。もしかして、マジ……なの……?」

 彼女は顔面を蒼白にして、めちゃくちゃ引いてる。

「だから、こんな事冗談で言うかよ」

「いや、でも……なんでこんな子が、ジェルンに引っかかっちゃうのよ……?」

 またもひどい言われようである。

「さすがにその言い草はちょっと失礼じゃないか?」

「だって、信じられなくて……」

「まあ、どういう経緯かということまで詳しく話す気はないが、そういうことなんだから仕方ない」

「そっか~……マジかぁ……。ちょっとショック」

 ウェンディはかなり衝撃を受けたようだった。

「なんでだよ」

「やっぱさぁ……結構いい歳の、それなりにイイ男にさぁ、そんな幼い娘に走られちゃったら、あたしらどうしたらいいのさ」

「……なんだ? ウェンディ、そんな目で俺の事見てたのか?」

 彼女の目に、俺がそんな対象になっていたとは知らなかったな。

「いや、あんたとそういう仲になるかどうかは別としてさ、年齢的には十分お互いそういう対象になる歳じゃん? それに、あんたは見た目もそんな悪くないし。そんな男をかっさらわれちゃ、あたしらたまったもんじゃないわよ。参ったわ~……若さってヤバい」

「ああ、そういうことね。俺個人に対してとか、そういうことじゃなくて」

 思わず苦笑してしまう。

「さすがにあたしとあんたじゃ、なんか変にお互い知りすぎてて、そういう感じにはなりようがないと思うんだけどね。けど、そういうの見るとさ、あたしもそろそろいい人捕まえるんだったら焦った方がいいのかな……ってね」

 ウェンディはそんなことを言う。

 いや、まだそんなに焦るような歳じゃないと思うんだけどさ。

 とはいえ、俺とソフィーはあくまで便宜上そういうことにしているだけなのだが、さすがにその辺の事情を説明するわけにはいかないからな……。

「ま、まだ、そんな焦るにはまだ早いよ!」

「そんなことないよ。うかうかしてたらいい男は次々売り切れてっちゃうんだから! とにかく、すぐにでも良い感じの彼氏を捕まえないと……」

 そう言って、彼女は俺たちの席を離れていった。

 はあ……参った。

 ウェンディの変な恋愛欲を燃え上がらせてしまったか。

 ……まあ、変に焦って妙な男に捕まるなよ……。


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