Mission 8.厳しい山の冬もケモミミ嫁と二人ならあったかぬくぬく その2
バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。
そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。
ソフィーを保護し、二人での生活が始まると、ソフィーはジェルンにどんどん懐いていって、彼女はジェルンへの恋慕を隠さなくなる。
可愛らしい少女の好意をむき出しにしたアタックに、徐々にジェルンもグラついていき……。
そして、ジェルンはついにソフィーを妻にすることにしたのだった。
ソフィーを妻に迎えたことで、家庭を持つことになったジェルンは、ソフィーと夫婦二人での冬ごもりを見据えた住環境の整備のため、自宅を大きく改築。
近くに温泉もあったので、ついでにそこからお湯を引いた外風呂も完備し、すっかり二人の癒やしと憩いの場に。
こうして、冬を迎える準備を整えたジェルン。
ソフィーと二人で迎える初めての山の中での厳しい冬がやって来る。
主人公:ジェルン
バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート
直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う
他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん
ダンジョン踏破には欠かせない職業
ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……
ソフィー
主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子
種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい
さまよった挙げ句、主人公の小さな家に迷い込んでいたところをジェルンに見つかり、拾われた。
以降、こちらの土地の言葉が分からないソフィーに言葉から山での生活に必要なことまで、優しく教え、保護してくれたジェルンに好意を抱くようになる。
町に出た時、変な噂の出ないようにと、ジェルンは建前上彼女を妻……ということにしていたのだが、その結果、逆にジェルンもソフィーを妙に意識し始めることに。
そして、二人は自然と一緒になることに……。
さて、冬ごもりとなると、時折天気の良い時に軽く近場に採集に出る以外はほとんどを家の中で過ごすことになる。
もちろん、訪問者もほとんどいない。
極まれに郵便配達人がやってくることもあって、その時は暖かいお茶や、時間帯によってはランチを振る舞ったりもするのだが、それすらもほとんどは伝書鳩で済ませてしまうので、月に1回あるかどうかというところだ。
そんなわけで、必然的にソフィーが唯一顔を合わせる存在となるわけだ。
毎日可愛い幼妻とふたりきり、誰にも邪魔をされない状況、自然と会話もスキンシップも濃密になってしまう。
誰が訪れてくるわけでもない我が家の中で、可愛い幼妻が家の中をあっちへこっちへ、家事に励む姿を見ていると、急にムラムラきてしまうこともあるわけで。
いきなりソフィーをその場に押し倒して、そのまま……ということも何度もしてしまった。
ただ、これには少し裏があって。
最初に一度、押し倒そうとして思いとどまった時、彼女からの提案で、二人きりの時にいきなり押し倒しても良い時、ダメな時を一目で分かるようにしてくれたのだった。
赤い髪留めを付けている時はダメな時。
そうでなければ、いきなり押し倒してカラダを求めてもいい。
俺とソフィーの間で、そういう約束事になっているのだ。
そのおかげで、変に悶々としなくて済むようになって助かるのと同時に、俺のために、毎日のように、いつ求められてもいいように気持ちもカラダも整えてくれているソフィーのことを、さらに愛おしく思うようになるのも自然なことだ。
だから、俺としても、彼女の厚意に甘えて、その柔らかくしなやかなカラダに襲いかかって抱く時に、自分だけでなく、ソフィーにもたくさん気持ち良くなってもらえるように、これまで以上にねっとりと可愛がるのを心がけている。
そんなことも影響してなのか、もちろん彼女の感度もだいぶ良くなったようだが、それよりも顕著なのが、コトが済んだ後の彼女のデレ具合が半端なくなっている。
「ジェルン~♪ だいすき~」
そう言って、乱れた衣服のままベタベタ。
服を直して、お互いまた仕事に戻った後も、事あるごとに俺の後ろから抱きついてきてはごろにゃん。
たっぷり可愛がられて蕩けさせられた後、しばらくは決まってこうだ。
もう、なんというか……おもわずにやけてしまう。
そんな、甘々な日々が続いていたのだが。
このところちょっとした異変が。
ここ何日か、連続して彼女のまとめたお団子の髪の毛に赤い髪留めが。
時折、具合が悪そうにする時もあって、ちょっと心配だ。
あ、また……。
ちょっと口元を押さえて、椅子に座り込んでしまったソフィー。
まずいな。
こういう時、人里離れた場所っていうのは不便だ。
うっかり天候や気候のタイミングを逃してしまうと、医者にもかかれなくなってしまうからな。
幸い、まだ冬の寒さが最も厳しい時期には入っていない。
天候も安定しているし、医者にかかるなら早めにしといた方が良いだろう。
そこで、取り急ぎ伝書鳩を飛ばし、町の医者に往診を依頼する。
朝に伝書鳩を飛ばすと、夕方に戻ってきて、その足に付けているケースには返書が入っていた。
……良かった。明後日には来てくれるらしい。
あとは、急に天候が荒れないことを祈るだけだ。
往診を待つ間も、ソフィーはずっと具合が悪そうで。
さすがにこう日数が続いてくると、心配が募ってくる。
ソフィーの体調は上向く様子もないまま、2日が過ぎた。
往診の予定日。
昼頃に先生が到着した。
さっそく今日も具合が悪そうに椅子に座っていることが多いソフィーの所へ連れて行った。
診察の間、俺は席を外す。
自分の部屋に入って、診察が終わるのを待つ。
この待つ間が妙に長く感じる。
30分から小一時間待った気がするが扉の向こうからソフィーに声をかけられて、ぱっと時計を見たら、10分ちょっとしか経っていなかった。
「ジェルン? 先生が呼んでる」
「わかった」
俺は椅子から立ち上がると、自室を出て、居間の方へ。
すると、先生は妙に笑顔だ。
「先生、どうでした?」
俺がそう尋ねると。
「ご主人、大丈夫です。奥様は何も心配ありませんよ」
診察した先生はそう言う。
「でも……ここ3日4日、ずっと具合が……」
すると、先生は頷く。
「ええ。ですから……早い話が、おめでたです」
「え?」
「奥様はご懐妊されています」
「えっ!?」
俺は、思わず先生とソフィーの顔を見比べる。
ソフィーは、少し頬を染めて、ゆっくりと頷いた。
「ご主人、身に覚えはありますよね?」
先生にダメを押される。
「そ、そりゃ……まあ、あるなんてもんじゃ……」
「そうですか。それならば良かった。正真正銘、あなたのお子さんですね」
にこにことそう頷く先生。
その後、安定期に入るまでの生活の注意事項を先生から聞いて、診察はおしまい。
そのまま先生は往診代を受け取って帰っていってしまった。
だいたい、我が家があまりにも町から離れた山の中ってこともあって、ここを訪れる人は1泊くらいしていくのが普通なのだが、先生は急ぎで帰らなければならないようで。
途中、必然的に夜の山道を移動することになるわけで、心配でもあったので、夜の明かりと獣避けに、炎の魔法石を持たせておいたが。
そんなわけで、先生を見送ってから、ソフィーと二人きりになって。
「とにかく、ソフィーが病気にかかったとかじゃなくて良かった。とはいえ、これからはこれまで以上に無理をしないようにしないとな」
「うん……」
ソフィーははにかんだ顔で頷く。
まあ、心配していたような事態ではなくて良かったが……。
そういや、ソフィーはわりと具合が悪い中でも落ち着いた感じだったな。
もしかして……。
「ソフィーは、なんとなく分かってたのか?」
ちょっと、聞いてみた。
「う~ん……分かってた、とまでは行かないけど、もしかしたらとは思ってたよ」
「それでか。具合悪いわりには不安げな感じを見せなかったからな。もしかしてと思った」
「うん。そろそろ、できるんじゃないかな……って思ってたから、むしろそうだったら嬉しいなって」
ソフィーはそう言って微笑んでいた。
「まあ、いずれにせよ、これからは無理は禁物だ。身体を大事にしてくれよ。ソフィー一人の身体ではないのだから」
「うん、わかった……」
自分のおなかの中に宿った命の重さと幸せを噛みしめるかのように、彼女は自分のおなかに手を当てて、そっと小さく撫でるようにしながら、静かに俺の言葉に頷いたのだった。
さて、ソフィーの懐妊が分かってからさほど経たず。
外は本格的な冬模様になってきた。
それなりに外の積雪も多くなり、日によってはかなり吹雪くこともある。
しょっちゅう吹雪いて完全に雪に閉ざされる要だとちょっと辛いものがあるが、吹雪く日は月に2回か3回くらいのものだから、そこまで閉ざされた感はない。
とはいえ、寒さは結構厳しく、あまり外を出歩くような活動はしづらいところはあり。
俺は工房部屋で家具・道具作りや伝書鳩で飛び込んできた薬品製造依頼の仕事をこなしたりする日々。
ソフィーはそんな俺の作業する工房の片隅に、お気に入りの揺り椅子を持ち込んで、相変わらず何やらいろいろ編み物をしている。
「そういや、ソフィーって、いっつも編み物してんなぁ。そんなにいろいろ編むものあったっけ?」
そんなことをなんとなく聞いてみると。
「いっぱいあるよ? わたしは冬着があまりないし、ジェルンの新しいのも作ってあげたいし、それに、赤ちゃんのお包みとかも作っておきたいし……。それ考えたら、作るものなんて山のようにあるわよ」
「そうか? あんまり大変なら、俺の分くらいは削ってくれて構わないけどな」
俺がソフィーを気遣ったつもりでそう言うと、ソフィーは頬を膨らませる。
「嫌よ。少しでも作るもの考えとかないと、暇を持て余しちゃうわよ。誰かさんがわたしの仕事ほとんど取っちゃうから」
「ほとんどって……。洗濯と掃除を肩代わりしてるだけだろ」
実際、掃除は重いものを移動させたりする必要もあるし、洗濯だってしゃがみ込んで手洗いする姿勢がおなかに良くないし。
そういうのはなるべく避けた方が良いと思うのだが。
ところが。
「その理屈は分かるんだけど、そのおかげで、わたし、めちゃくちゃ暇になっちゃって……ちょっと困ってるのよ。編み物以外にはお料理くらいしかやることないじゃない」
……それでかなんだか知らないけど、もしかして、最近妙に普段の料理の手が込んでるのはそのせいだろうか?
そのことを彼女にちょっと聞いてみる。
すると。
「まあ、そういうことね……。まあ、お料理もいろいろ試してみたかったけど時間がなくてできなかったこともあるからいいんだけどね。でも、さすがにちょっと時間が有り余りすぎるのも問題かな」
ソフィーはそう言って苦笑いする。
そうは言っても、まだ安定期に入ってないから、用心はした方が良いと思うんだが。
彼女にとってはちょっと過剰気味に感じるかもしれないが。
それを彼女にも言うと。
「だから、あれもこれもってなんでもしてくれちゃうのは感謝してるのよ。でも、ちょっと暇すぎるのにはどうにも落ち着かなくて……」
そんなことを言う。
よくよく考えてみたら、ソフィーって、思いがけなく俺が拾ってからというもの、なんでもかんでも自分が引き受ける……みたいな感じで、やれることはなんでも引き受けてしまう勢いで、気が付いたら家のことはほとんど彼女に任せてしまっていた気がする。
おかげで、家の改築とかの作業にかなり注力できたが……ソフィーはちょっと働き詰めになっていた気がする。
うちに迎えた当初はメイドとして……ということだったから、働かないと存在価値がないとでも思ってたところはあったんだろうが。
それが、そのまま嫁になっても続いてしまっていた感じはある。
だからなのか、動いていないと落ち着かないのが身についてしまったようだ。
「まあ、ソフィーもつい最近まで結構働き詰めなところもあったし、この機会にゆっくり休みを取るのも良いんじゃないか? それに、これから子供が生まれたら、嫌でもしばらくは大変になるし、ゆっくりするなら今のうちだと思うんだが」
「それは確かに分かってるんだけど……やっぱり落ち着かないのよねぇ……。貧乏性なのかも」
ソフィーはそう言って苦笑い。
「だから、時間がある分、お料理の練習も兼ねていろいろ試してみたりとか、編み物とかしてるのよ。時間ができたからこういう事に手を出せたって所もあるし。そういうのなら、大丈夫でしょ?」
「まあ、そりゃ大丈夫だけどさ。もっと、ボーッとする時間があってもいい気はちょっとした」
「たぶん、わたしはそれだとあんまり気が休まらない感じなのかも」
ふむ……。
まあ、本人がじっとしてる時が休まらないというなら仕方がないな。
「まあ、それは仕方がない。とはいえ、今は意識して身体を労ってくれ」
「うん、わかってる……。ありがと、ジェルン」
ソフィーは俯き加減になりながら、微笑んだ。
それは、ただ嬉しいというだけじゃなく、女の子の幸せを噛みしめているような、そんな感じの柔らかな微笑みだった。




