Mission 7.近くに川と源泉があったので家まで引いて、夫婦でいちゃいちゃ楽しんだ件 その4
バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。
そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。
ソフィーを保護し、二人での生活が始まると、ソフィーはジェルンにどんどん懐いていって、彼女はジェルンへの恋慕を隠さなくなる。
可愛らしい少女の好意をむき出しにしたアタックに、徐々にジェルンもグラついていき……。
そして、ジェルンはついにソフィーを妻にすることにしたのだった。
ソフィーを妻に迎えたことで、家庭を持つことになったジェルンは、本格的に今後、ソフィーとの間に子供が生まれてくることなどを含め、将来を見据えた住環境の整備のため、自宅を大きく改築することにし、その準備に取りかかったのだった。
主人公:ジェルン
バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート
直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う
他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん
ダンジョン踏破には欠かせない職業
ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……
ソフィー
主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子
種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい
さまよった挙げ句、主人公の小さな家に迷い込んでいたところをジェルンに見つかり、拾われた。
以降、こちらの土地の言葉が分からないソフィーに言葉から山での生活に必要なことまで、優しく教え、保護してくれたジェルンに好意を抱くようになる。
町に出た時、変な噂の出ないようにと、ジェルンは建前上彼女を妻……ということにしていたのだが、その結果、逆にジェルンもソフィーを妙に意識し始めることに。
そして、二人は自然と一緒になることに……。
「うぉぉ……ちと飲み過ぎたか……?」
ヤバい。
頭痛が酷い。
あの後、風呂場になだれ込んだ男ども。
湯を浴びて身体を洗い、そろそろゆっくりと湯に浸かったあたりで、ソフィーたちが用意して入れる酒とツマミの準備が整い、風呂場の前まで持ってきてくれて。
そこからは裸の野郎どもの酒盛りとなり。
しかしまあ、雰囲気の良い風呂場と、温泉から引いた適温の気持ちいい、いい湯が相まって、すっかりリラックスした俺たちの酒盛りは盛り上がりに盛り上がり。
ガンガン酒が進んでしまったのだ。
ただ、一つマズかったのが、身体が温まっていたおかげで、酒の回りが早かったことだ。
調子に乗って飲んじまったせいで、酒の進みも早かったことも重なって、あっというまにゆでだこの出来上がりだ。
一人、また一人とのぼせるヤツが続出。
気が付いたら俺が介抱しては最低限服を着せてリビングのソファーや工房の床などに転がす羽目になった。
最悪なのはラファエルで、酔いが回りすぎた挙げ句、自分の家と勘違いしたのか、全裸で風呂場から出ていってソフィーと出くわしてしまい、彼女の悲鳴の声と共に、ラヴィちゃんがラファエルを一撃ノックアウトしたという一幕もあったりして。
その後、ラファエルは意識を取り戻したあと、こってりパメラさんとラヴィちゃんに絞られてたっけ。
次々のぼせた大工連中たちの介抱に奔走し、全員とりあえず寝かせ終わって、ヘトヘトになっていた俺がちょうどその場を通りかかったら、ラファエルのヤツ、こっちに救いを求めるような視線を向けていたけど……悪いな、ラファエル、こっちもそこまで面倒見れる体力残ってなかったんだ。
つーか、俺もかなり悪酔いして頭が痛かった。
そして、寝室のベッドに倒れ込んじまっているわけだ。
「ジェルン、大丈夫?」
ソフィーが気遣わしげにぶっ倒れている俺の顔を覗き込んでくる。
「ちょっとしばらくダメだ……。頭痛くて動けん……」
「濡れタオル、おでこ乗せる?」
「ん~……まあ、しばらくおとなしくしてれば収まるだろう。そこまでしなくていいや」
「そっか」
ちょっと残念そうなソフィー。
「いや、ありがとな……」
そう言うと、少し機嫌も直ったみたいで。
「じゃあ、お水でも飲む?」
「ああ、そうだな。水は欲しい」
「うん、じゃあ、ちょっと待ってて」
ソフィーはぱたぱたと足音を立てて寝室を出ていき、しばらくして水を満たしたピッチャーとコップを持って戻ってくる。
「はい、お水」
「ありがとう、助かる」
ソフィーが持ってきてくれた水をゆっくりと少しずつ口にする。
ゆっくりとコップの半分ほど飲んだところで、少しだけ身体が生き返った感じがした。
だいぶ水分を持って行かれてしまっていたらしい。
風呂で身体がいつもに比べてもかなり温まって、結構汗かいたし、それで水も挟まずガンガン酒飲んだら身体の水分不足しても不思議はない。
しばらく継続的に水を入れ続けていかないといけないな。
とはいえ、少し水を飲んでだいぶ気分が良くなってきたから、明日引きずらないで済みそうだ。
「はぁ……生き返る……」
ホッと息を吐く。
「やっぱり、温泉って違うよね。わたしも、今でもまだ身体がほこほこ温かいのよ。ほら」
ソフィーがこちらに手を差し出す。
それを握ってみると、確かにかなり温かい。
普段、ソフィーの手って、握っていると結構ひんやりとしているのに。
「すごいな。熱の回りがいいんだな」
「でしょう? だから、これから寒い季節も少し暖かく過ごせるかな……って。ただ、ちょっとのぼせやすいのは気を付けなきゃ」
「ソフィーたちも結構のぼせちゃってたか?」
そう尋ねると。
「なりそうにはなっちゃったかな。だから、適当にお湯から上がったりして調整しながら入ってたよ。3人で話してたの。これ、いいお湯過ぎて、うっかりしたらのぼせちゃうねって」
「そうか……。俺らは気持ち良くて勢いでガンガン飲んじまってたからな……」
俺がそう言うと、ソフィーは「しょうがないなぁ」という感じで、くすくす笑う。
「もう、子供じゃないんだから……」
「いや、とりあえず、俺は学習したぞ。あそこで酒をガンガンやるとヤバい」
「ホント、これからは気を付けてくださいね。わたしじゃ、倒れたジェルンを運べないし」
「ああ、それじゃあソフィーも困ってしまうだろうし、程々にしておくことにするよ」
「うん」
ソフィーも笑顔になる。
「ね、ジェルン?」
「ん?」
「ありがとね。あんなに素敵なお風呂まで作ってくれて」
ソフィーはそんなことを言う。
「別にソフィーのためだけじゃないさ。これからのことを考えたら、タダでさえ広い家じゃないし、ああいうスペースは外に放り投げようということになっただけさ。家族が増えても、あれくらい広ければみんなで一緒に入れるだろうし」
「そっか……そうだね。わたしもいっぱい家族欲しいし」
「でもって、元の浴室は、元の機能を残しつつ、少し改造して洗濯や天気が悪い時の物干し用に使えるように整えようと思ってる。すぐ目の前まで温泉の湯を引いてあるわけだから、寒い時には湯も使えるぞ」
「わあ……それ、すごく助かる!」
ソフィーは嬉しそうに満面に笑みを浮かべる。
これから冬場、水仕事は辛い季節になっていく。
お湯が使えるとなれば、水仕事の負担もだいぶ楽になるだろう。
ソフィーも喜んでくれているようで、よかった。
「あとは……やっぱり先々のことを考えてなんだが……」
「?」
俺はソフィーに、ラファエルから言われていた、作業場を移転することについて話した。
ちょうどこの先のこの家ことが話題に上ったし、ちょうど良い機会なので、相談することにしたのだ。
「まあ、さすがに実際にやるとしたら冬を越してからにはなるけどな」
とはいえ、やるならその時期までには設計図は引いておかないといけないだろうが。
……となると、本格的な冬になる前に、工房を移す候補地を探して、測量くらいはしておかないといけないだろうなぁ。
と、ソフィーに話をしながら、差し当たってやらなければならない作業が頭の中に次々と浮かんできてしまう。
職業病だねぇ……。
そんなことを諸々考えてしまいつつ、ソフィーに俺の考えをかいつまんで説明すると。
「そっかぁ……。そうね、確かに、ジェルンの仕事場、危ないもの多いもんね……」
俺の説明に、ソフィーも納得してくれたようだ。
が、ひとつ、注文がついた。
「でもね、場所を分けるにしても、すぐ近く……できれば家のすぐ隣とかが良いな。危なそうならしっかりした壁を立てて隔てればなんとかなるでしょ?」
ソフィーは作業場をすぐ近くにしておいて欲しいらしい。
まあ、確かに近い方が何かと便利で楽だし、作業中に家で何かあってもすぐに駆けつけられるだろうし。
高くて頑丈な壁は必要だろうけどな。
まあ、それでやってやれないこともなかろう。
「わかった。そうしよう」
「うん! そうしてくれると嬉しいな」
嬉しいとは……多分、子育て始まったらソフィーもそんなに足を踏み入れる場所ではなくなるとは思うが……なんでだろ?
いずれにせよ、場所を決めて測量しておかないとな。
そんなこともありつつ、それからラファエルたちは3日ほど我が家に滞在して、その間に目的の木を切り出して、持ち帰りのために軽く一次加工して、馬車に加工した木材をたっぷりと積んで、町へと帰っていった。
積みきれなかった分の木材や、一次加工した際に発生した端材などは置いていったので、濡れたりしないように防水加工した帆布でくるんで軒先に置いておくことにした。
これが思いの外たくさん残ったので、これでだいぶ冬場の木材が助かる。
冬の間はあまり外で木を切ってきたりとかはしにくいんで、木材加工の作業の時は、材木の残りを心配しながら……なんてことが多かったけれど、これだけあればここ最近のそういう作業での一冬分の消費量は余裕でカバーできるし、それに加えて家具作りとかもできそうだ。
「……なんか、すごく静かに感じちゃうね……」
ラファエルたちが帰って、また二人だけになった我が家。
さっきまでの賑やかさが一気に消え去って、静かになった我が家の中を見回して、ふうっと溜息を吐くソフィー。
「人数も多かったし、いろいろ大変だったろ。しっかりホステス役こなしてくれて助かったよ。ありがとな」
「ふふっ、ありがと。でもね、そうじゃないの……」
「え?」
「なんかね、ジェルンと二人きりなのもいいんだけど、やっぱりわたし、賑やかな方が良いなぁ……って」
ソフィーはちょっと遠い目をして、そう言う。
「大変じゃなかったか?」
「大変というより、楽しかったよ。だから、今、ちょっと寂しいかな……って、そんな感じなんだ」
「そうだったのか」
そうか。
さっき、溜息を吐いたのは大変だったというよりも、ちょっと寂しくなっちまったのか。
そういや、ソフィーはきょうだいとの折り合いがあんまり良くなかったみたいだけど、もともとは結構な大家族だったんだっけ。
そういう環境で育ってたんなら、やっぱり賑やかな方が良いのかもな……。
俺が少し考えに沈んでいると、ソフィーは俺が彼女のことで変に悩み込んでいると勘違いしたみたいで。
「あ、でもね、今は、やっぱりジェルンと二人っきりを楽しみたいのよ。夫婦水入らずっていうのも、子供ができたらなかなかできないし」
そう言って、彼女はやおら俺にきゅっと後ろから抱きついてきた。
「だから……ね? ジェルン。 ふたりっきりじゃなきゃ思いっきり楽しめないこと、いっぱい、しよ?」
「ふたりっきりじゃないと楽しめないこと? 例えば?」
ソフィーの誘いのセリフに、俺は素直に頷くのではなく、わざと聞き返す。
すると彼女は。
「やっぱり早く一人目欲しいし……ジェルンにその気になってもらわないとね♪ それに……まだ、ジェルンと二人であの温泉に入れてないよ。新しいお風呂ができるって決まってから、ジェルンと一緒にふたりっきりで入るの楽しみにしてたんだ」
「そんなに楽しみにしてたのか?」
「うん。ジェルンにいっぱい可愛がって欲しいもん……」
ちょっともじもじしながら、上目遣いにそんなことを言う。
可愛いじゃないか。
そこまで言われたら、こっちだって手加減なんてできるはずもない。
とことん可愛がってやろうじゃないか。
「煽ったのはソフィーだからな。覚悟は良いな?」
「うん♪」
俺はやおら彼女を抱き上げて、お姫様抱っこで運んでいく。
運んでいく先は決まっている。
「じゃあ、さっそく一緒に入るとするか!」
「やあん♪ もう、ジェルンったらがっつきすぎだよ……」
そんなことを言いつつも、一切抗おうとはしないソフィー。
俺の為すがまま、彼女は新しいお風呂場に運ばれて。
身ぐるみを剥がされて。
その後は……。
まあ、それは俺たち二人だけの内緒だがな。




