Mission 7.近くに川と源泉があったので家まで引いて、夫婦でいちゃいちゃ楽しんだ件 その2
バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。
そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。
ソフィーを保護し、二人での生活が始まると、ソフィーはジェルンにどんどん懐いていって、彼女はジェルンへの恋慕を隠さなくなる。
可愛らしい少女の好意をむき出しにしたアタックに、徐々にジェルンもグラついていき……。
そして、ジェルンはついにソフィーを妻にすることにしたのだった。
ソフィーを妻に迎えたことで、家庭を持つことになったジェルンは、本格的に今後、ソフィーとの間に子供が生まれてくることなどを含め、将来を見据えた住環境の整備のため、自宅を大きく改築することにし、その準備に取りかかったのだった。
主人公:ジェルン
バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート
直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う
他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん
ダンジョン踏破には欠かせない職業
ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……
ソフィー
主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子
種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい
さまよった挙げ句、主人公の小さな家に迷い込んでいたところをジェルンに見つかり、拾われた。
以降、こちらの土地の言葉が分からないソフィーに言葉から山での生活に必要なことまで、優しく教え、保護してくれたジェルンに好意を抱くようになる。
町に出た時、変な噂の出ないようにと、ジェルンは建前上彼女を妻……ということにしていたのだが、その結果、逆にジェルンもソフィーを妙に意識し始めることに。
そして、二人は自然と一緒になることに……。
さて、川辺でお昼を済ませ、さらに山の奥に進んでもう1本大木を調査する。
こちらの大木も条件には当てはまるようで、目印の赤い綱とリボンを結びつけたら、山を下って家からほど近い場所へ戻る。
今度は、今日の本来の目的である、木の伐採に取りかかる。
危ないのでソフィーには十分離れた場所から伐採する木の倒れる方向を見てもらいつつ、斧で木を切り倒す。
手早く数本斬り倒した後、切った木の枝を1本1本払っていく。
この作業はソフィーも手袋をはめた手に鉈を持って、幹から細い枝を払ってくれる。
枝がたくさん伸びているので、この作業が結構かかる。
切り倒した木の枝を丁寧に1本1本切り払って、一本の綺麗な丸太にすると、だいぶ陽が傾いてしまってた。
「よし、今日はこのくらいにしよう。帰るぞ」
とりあえず、丸太は寸法だけ測って、今夜はこのままここに置いておいて、回収は明日にしよう。
「うん。帰ったらすぐに夕食準備するね」
「ああ。頼む」
そんなわけで、今日はここまで。
夕飯が楽しみだ。
翌日からは、切った丸太を家の敷地に運び、材木を切り出して、木の樋を作っていく。
一部、地中に埋める予定の箇所もあるので、そこについてはセメントで樋と、上からぴったりと填め込んで閉じる蓋を準備しておく。
その作業に精を出す合間に、俺はソフィーに薬などの調合の仕事を教える。
専門用語などもあるので、これに関してはソフィーの母国語で教える必要があったが、ソフィーは思った通り飲み込みが良く、それ以外は特に苦労することもなく、調合の基本的な理屈と、作業の方法をどんどん覚えていってくれた。
本格的な仕事はしばらくは俺が付いていた方が良いだろうが、そう遠からず、ソフィーに任せてしまうことができそうだ。
そんな感じに3日ほどで、とりあえず作れる分だけ樋を作り終えると、まずは近くの小川から水を引く作業にかかる。
小川が歩いて少しの場所に通っているので、必要な時は汲みに行けばすぐに水が手に入るので、それほど水に苦労はしていないのだが、それでも雨の日には汲みに行くわけに行かず、雨水を貯めて使う……などという感じになってしまうわけだが。
今回はそういう時にも川の水をいつでも自由に使えるようにするため、家の水場の所まで引いてやろうというわけだ。
水運びは距離が短くても重たいから、ソフィーにはやらせたくなかったからな。
だったら、その必要自体を無くしてしまおうということだ。
幸い、最寄りの小川の岸からは少しこちらの方が低い場所にあるので、水を引くのにそれほど苦労することはないだろう。
川岸近くは水面より少しばかり深めに水平に溝を掘って、そこにセメントで作った樋を敷設して埋めていく。
しばらくまっすぐ家の方に繋いでいくと、地表に完全に露出してくるので、そこからは地面に木の樋を連ねて家の水場の近くまで通して、とりあえず暫定的にはそれで完成。
最後の樋の出口の手前は地面より少し高くなるようにして、下には石臼を置き、水受け場にする。
そこまで完成したら、最後に川岸に戻り、一旦木の板を小川の岸の合流予定部付近に撃ち込んで、水止めをしてから、岸の部分を掘って、溝を繋げ、川の中に突き出すように取水部の樋を設置して繋げ、溝を埋める。
この取水部の樋は、小川の中に突き出す部分に金網を張ってあって、魚が入り込んでこないように工夫してある。
さすがに、あまりに小さい稚魚とかは難しいが。
そこまで密度の高い稚魚の魚影も見ないので、このくらいの対策をしておいて、あとは時折、流れてきた草とかが引っかからないとも限らないので、掃除に来れば良いだろう。
ここまで完成したら、最後はあとは水止めに打ち込んだ板を外して、無事に水道の開通だ。
急いで家の水場の近くに作った水受け場に走って様子を見る。
急いで走ってきたおかげか、水が到達するより前にたどり着いてしまったようだ。
しばらく出口をじっと見つめていると。
さらさらさら……と、静かに清流の水が置いた石臼に注ぎ出されていく。
良かった。成功だ。
順調に水を吐き出す水道の出口を見ながら少しホッと胸をなで下ろしていると。
「わあ……すごい。綺麗な水……」
俺の後ろからソフィーの声が。
「いつの間に……」
「だって、ちょうどそこの部屋にいたから。ジェルンがなんか真剣にじーっとそっちの方見てたから、何見てるんだろうと思って」
ソフィーはちょうど、俺が出した調合の課題を工房でやっている時間だったっけ。
そこの窓から俺の様子が見えていたようだ。
「すごいね。綺麗な水がたっぷり」
石臼には次々綺麗な水が注がれて、どんどん周囲に溢れて、辺りを水浸しにしつつ、土の中に染みこんでいく。
その様子を見たソフィーが少し苦笑いしながら。
「ちょっとその辺べしゃべしゃになっちゃうね……」
まあ、このままだと地面がぐちゃぐちゃになってぬかるんじゃいそうだな。
そういう時は。
「そしたら、この辺は河原から小石を取ってきて敷き詰めておこう。そうしたら歩きにくいと言うことはないだろう」
明日、天気が良かったらその作業を真っ先にしておくとしよう。
水受け場の地面の整備が済んだら、次は山の一段上の棚にある源泉から温泉を引く作業だ。
今度は高低差が大きいので、樋ではなく四角い菅を木材で組んで繋いでいくわけだが、小川から家まで水を通すとなると急峻な場所が多いので、なるべく安全な場所を選んで通すとなると、結構回り道をしなくちゃいけないし、それでも斜面自体は急なところが多い。
おまけに、ルートを曲げるにしてもあまり急に曲げると管の隙間から吹き出したり、場合によってはそこから破損したりしやすくなるので、一度に急に折り曲げるのではなく、短めに切った管を連続して少しずつ曲げて接合するなどして対策する。
そうやって、どうにかこうにか家の庭にまで管を何日かかかって繋ぎ終わったところで。
先日伝書鳩で町の大工のラファエルに送った木の調査報告に対する返事が家に届いていた。
その返事によると……。
どうも報告した2本ともすぐに見て、良さそうなら切って持ち帰りたいので、すぐにこちらに向かう……とのこと。
マジか。
「ソフィー」
俺が工事に出ている間、家で伝書鳩を迎え、その足にくくりつけられていた手紙を帰宅した俺に渡してくれたソフィーに声をかける。
「うん」
「急だけど、明日か明後日くらいに来客が来るぞ。対応できる?」
「お客様ですか?」
珍しい……という反応をする。
「まあ、見てくれ」
ソフィーに手紙を見せると、事情に納得してくれたようで。
「そうですか……。もしかして、泊まりがけ?」
「まあ、そういうことになるな。人数多いから収容はしきれないんで、テント持って来るみたいだけど。ただ、食事作ってもらうとか、人数増える分結構大変かもしれないが、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。任せて」
どんと任せておいてと言わんばかりに、ソフィーは頷いてくれた。
なかなかこういう時に心強い子だ。
「そうか。じゃあ、明日は受け入れの準備をしないとな」
「うん!」
にっこりと俺の言葉に頷くソフィー。
彼女本人も、ちょっと楽しみにしているのかもしれない。
ここだと、なかなか外から誰か来るということはないからな。
翌日、ソフィーと二人で一日かかって家の中を片付けて、とりあえず7~8人が家の中でくつろげる状態にして。
さらに次の日の昼頃、ラファエルが仲間の大工と娘のラヴィちゃん、それに、先日は留守だった奥さんのパメラさんも今回連れてきていた。
「よう! 久しぶり!」
俺の家の前に馬車を止め、良い笑顔で片手を挙げるラファエル。
「ずいぶんと大所帯じゃないか。おまけに奥さん娘さんまで同伴かよ」
「だってよ、こないだの手紙で庭に温泉引くって聞いてな。そしたら、一緒に来ると言って聞かなくてな。工事とか諸々手伝うからさ、完成したら入れてやってくれないか?」
「ふむ……」
庭の浴槽作りは確かに俺一人じゃ時間がかかる見込みではあったから、それなら悪い話じゃないな。
「わかった。そういうことなら頼めるか?」
「よしきた! これでパメラとラヴィも喜んでくれるだろう。あの二人はソフィーちゃんの方を主に手伝わせるから、なんでもこき使ってやってくれ」
「いいのか? お客さんをそんなこき使っちゃって」
「いいってことよ。どんな温泉ができるのか、俺らも楽しみでよ」
「設計図、見るかい?」
「ああ、見てもいいのか?」
「手伝ってもらうし、見てもらった方が良いだろう」
というわけで、立ち話も何なので、職人組は工房へ来てもらい、女性陣は居間でソフィーに相手してもらうことにした。
書斎にした部屋から図面を引っ張り出してきて、工房の真ん中の作業台に広げて、職人組に見せる。
「ほう……結構大きいな。5人で入っても余裕がある広さだ」
「まあ、家の外に作るから、スペースは広めにしようと思ってね」
「しかし……こんなの一人でやる気だったのか? 一人じゃ半月近くかかっちまうだろう?」
ラファエルに突っ込まれてしまう。
「まあ、人手がないのは仕方がないし、やるしかないかなとは思ってた」
「バカヤロウ。そういう時は相談くらいしろよ。手紙を見た時、ちょっと嫌な予感がしたんだよ」
「まさか、それで急にこっち来るとか言い出したのか? 妙に急ぐと思ったんだが」
「まあな、それも含めてな」
なんか、気を遣わせてしまったようだ。
悪いことしちゃったなぁ……。
「いやもう、こんな展開思ってもみなかったから、助かるよ……」
「そうだろうそうだろう。はっはっは!」
ラファエルは豪快に笑う。
そして、再びじっくりと図面を見て。
「うん、人手さえあればサクッと作っちまえるだろう。できあがるのが楽しみだ」
乗り気で手伝いに来てくれる友人はとてもありがたい存在だ。
となれば、こっちも本来のラファエルの用件もしっかりと手伝わなきゃな。
「ところで、今日はこのまますぐに木を見に行くか? 昼飯はもう済ませてる?」
「ああ、昼飯はまだなんでな。こっち着いたらキッチン借りて作るように嫁には言っといたんだが……」
「あ、じゃあ、もしかして、今頃……」
うちも昼はまだだったからな。
「たぶんな」
ラファエルが頷く。
きっと、そういう事情なら、ソフィーも一緒になってお昼を作っていることだろう。
すると、そこへ。
「あ、ジェルン? お昼ごはんの用意ができたんだけど……こっちに持ってきちゃっていい?」
工房のドアからひょっこり顔だけ覗かせて、ソフィーが俺に聞いてくる。
「ラファエルの言った通りだ。うん、こっち今片付けるから、持っておいで」
「うん」
ソフィーはラファエルが何を言ったか聞いていないから、ちょっと頭の周りに「?」が飛んだ顔をしていたけど、すぐに頷いて、一旦キッチンの方へ戻っていった。
俺も、手早く広げた図面を畳んで、部屋の元の場所に戻しに行って。
それから工房に戻ってくると、あらかた食事の準備が整うところだった。
「お……なんか、すごい豪勢だな」
「用意する人数も多かったですけど、作る方も3人居ましたから。結構あっという間にできちゃいました」
「そうか」
いつも、ソフィーと二人だと軽くワンプレートみたいな感じで済ませがちな昼食だが、今日はおかずが何品もある。
それを一品ずつ大皿に盛って、ちょっとしたバイキングスタイルだ。
「これはいいね。まあ、これだけ頭数居るからできることなんだろうけど」
素直にソフィーに感想を言うと。
「そうですね。二人だとちょっと難しいかも……。でも、家族が増えたら、こういう感じにするのも良いかもしれないわ」
ソフィーがそんなことを答える。
おい、ラファエルたちの前だぞ。
俺が思わず一瞬青くなると。
案の定。
「おおっ! さすが新婚! のろけるじゃねぇか!」
「「「わっっはははは!」」」
ソフィーの台詞にラファエルと仲間の大工さんたちが反応して爆笑する。
やべぇ。
恥ずかしいぞ、これは。
思いっきり冷やかされてしまった。
でも、ソフィーにはその冷やかしは全く通じていないらしく。
「だって、ジェルンといっぱい家族欲しいですから。二人っきりも良いですけど、やっぱり賑やかで仲の良い家族が作りたいので……」
どこか嬉しそうにそんなことを答えてしまう。
これには、冷やかした側のラファエルたち大工さんたちがキョトンとして顔を見合わせてしまった。
「うん、ま……まあ、こんなとこでふたりっきりだとちと寂しいからな。家族は多いに越したことはないぞ」
ソフィーの反応にたじろいだ感じを繕うように、腕を組んでうんうんと頷きながらそう分かったような返答をするラファエルだった。
そんなラファエルを見て、くすくす笑うのは奥さんのパメラさんと、娘のラヴィちゃん。
ラヴィちゃんは、ちょうど俺のすぐそばにいたので。
「ソフィーちゃんって……大物ですね……」
と、俺に耳打ちしてくる。
「まあ……言葉の細かいニュアンスが伝わってないかもしれないけどな……」
ソフィーがこっちの言葉を使うようになってから、まだ2ヶ月も経ってないからなぁ……。
「そっか。すっかりこっちの言葉を普通に話すから忘れてたけど、ソフィーちゃん、まだこっち来てからそんなに経ってないですもんね……」
ラヴィちゃんも頷く。
この短期間で彼女たちとも普通に違和感なく話せているくらい、こちらの言葉を話せるようになってるのは、考えてみたら結構すごいことなんだよな。
まだ若いからということもあるかもしれないが、彼女の物覚えはものすごくいい。
今やらせている薬品調合のノウハウだって、教えたら教えるだけどんどん吸収していく。
適性もあるのかもしれないが、若いと物覚えが早くて羨ましい。
俺とラヴィちゃんがそんな話に花を咲かせていることも多分あの様子では分かってないソフィーは。
俺たちがそんな話をしている間にも、てきぱきと昼食の配膳を整えるソフィー。
あっという間にすべてが整って。
「さ、皆さん! たくさん食べて下さいね!」
彼女のその言葉を合図に。
「うおお! 豪勢だ!」
「いただきます!」
大工連中は先を争うようにおかずを取り始める。
「俺たちもいただこうか」
「そうですね」
ほっといたら一気に全部食べ尽くしてしまいそうな勢いで、どんどん自分の皿におかずを取っていく彼らの様子を見て、俺とラヴィちゃんは話を切り上げて自分たちの分を確保することにした。
まあ、さすがにあいつらもホントに全部食っちまうような無神経な奴らじゃないことは分かってるけどね。