Mission 7.近くに川と源泉があったので家まで引いて、夫婦でいちゃいちゃ楽しんだ件 その1
バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。
そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。
ソフィーを保護し、二人での生活が始まると、ソフィーはジェルンにどんどん懐いていって、彼女はジェルンへの恋慕を隠さなくなる。
可愛らしい少女の好意をむき出しにしたアタックに、徐々にジェルンもグラついていき……。
そして、ジェルンはついにソフィーを妻にすることにしたのだった。
ソフィーを妻に迎えたことで、家庭を持つことになったジェルンは、本格的に今後、ソフィーとの間に子供が生まれてくることなどを含め、将来を見据えた住環境の整備のため、自宅を大きく改築することにし、その準備に取りかかったのだった。
主人公:ジェルン
バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート
直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う
他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん
ダンジョン踏破には欠かせない職業
ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……
ソフィー
主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子
種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい
さまよった挙げ句、主人公の小さな家に迷い込んでいたところをジェルンに見つかり、拾われた。
以降、こちらの土地の言葉が分からないソフィーに言葉から山での生活に必要なことまで、優しく教え、保護してくれたジェルンに好意を抱くようになる。
町に出た時、変な噂の出ないようにと、ジェルンは建前上彼女を妻……ということにしていたのだが、その結果、逆にジェルンもソフィーを妙に意識し始めることに。
そして、二人は自然と一緒になることに……。
さて、山の中の我が家に戻って2日目。
ラファエルから書簡が届いた。
頼んでいた家具の設計とデザインの図面が送られてきたのだ。
書斎に衣替えした俺の部屋で、俺の机の上に図面を広げて設計とデザインをソフィーと確認する。
「わぁ……。素敵……」
机と椅子のデザインを見て、感嘆の声を上げるソフィー。
機能的な部分を追求した、シンプルな感じになるのかと思っていたが、なかなかどうして、結構洒落た感じに装飾や彫り込みが入っている。
いかにも女性が好みそうな優美なフォルムである。
ラファエルのヤツ、こういうデザインもできるんだな。
「これが、ここに配置されるんですね? わぁ……すごい。想像するだけでわくわくしちゃう!」
ソフィーはもう既に机が届く日のことを思い浮かべて瞳を輝かせている。
「気が早いな……」
思わず苦笑が漏れてしまう俺。
「だって、実物を見るのがとても楽しみなんだもの。見て、この引き出しの図面。デザインも素敵なんだけど、上の方の引き出しは小さいのが幾つも並んでて、糸とか針とか細かい道具を分類して入れておけるようになってるの! 下の方へ行くほど引き出しが大きくなってて、少し大きなものもしっかり入るし、机の天板はここの所が外れるようになってて、そこにミシンを後からはめ込めるようになってる! すごいわ!」
図面のあちこちを指差しながら、興奮気味に俺にまくし立ててくるソフィー。
よっぽど嬉しいんだろうな。
でも、図面見ただけでこんな感じだと、実物来たらどうなるんだろうな。
化粧台の方も、大きい鏡が前面にはめ込まれてて、これもソフィーは気に入ったようで、特にリテイクもないようだ。
そんなわけで、明日返書を出して、作業机と化粧台の一式ができあがって届くまでだいたい1ヶ月くらいだろうか。
ソフィー、待ち遠しいだろうな。
そんなわけで、普段の生活に戻った俺とソフィー。
まだ季節が寒くならないうちに、いろいろと生活環境を整えられるだけは整えておきたい。
そんなわけで、まずは近くの川と温泉から水と湯を引く工事をして、それができたら今の洗濯場と浴室のすぐ外側に露天風呂を作って、今の二人では手狭な浴室のスペースを使って洗濯場を広くしようと思っている。
その具体的な作業に入る前に。
俺はソフィーを連れて近くの山に入る。
水や湯を引くための樋を作る木材を取るためだ。
そして、ここにもラファエルに先日探すように頼まれた大きな一枚板を取るための大木の候補が2本3本ある。
ついでにそれも実際に確認しに行くつもりだ。
……ということで、ソフィーと共に山に入る準備をして、家を出る。
ちなみに、ソフィーは今朝はいつもより早起きして、お昼のお弁当を作ってくれた。
昨晩、今日山に入ると伝えたら、目を輝かせてルンルン顔で今日のお昼のお弁当の中身をどうしようか、すぐに考え始めるくらい、やる気いっぱいだったんだよな。
で。
今朝、俺が起き出してくる前にソフィーはお弁当作りを済ませてしまっていたようで、結局何を作ってくれたのかは分からず。
聞いてみても。
「それはお昼の時間まで秘密だよ♪」
そう、笑顔で返されて、答えてくれない。
でも、その表情からかなり気合いが入ったものを作ってくれたのは間違いなさそうだし、彼女の言う通り、楽しみに待つとしようか。
そんなこともありつつ、ソフィーと一緒に家を出る。
ソフィーはデート気分でご機嫌な様子で、しっかりと俺の手を握って、足取りも軽く、俺を引っ張っていくくらいの勢いで山に続く道を歩いて行く。
「あんまりはしゃぐなよ。仕事だし、山は危険がたくさんあるからな、怪我するぞ」
「はーい♪」
俺の注意もどこ吹く風。
軽くぴょんぴょんと跳ねるように歩を進めるが。
ややあって。
ズルッと、地面に着地したかかとを緩くなっていた地面に取られて。
「きゃあっ!」
仰向けに転びそうになる。
「おっと」
とっさに腕を引っ張って俺の肩口で彼女の体重を受け止める。
「ほら、言ったそばから」
「ごめんなさ~い」
ペロリと小さく舌を出しておどけるソフィー。
「でも、ジェルンがしっかり守ってくれるでしょう?」
「まあ、手の届くところならな。それでも、守り切れんこともある」
「うん……わかった」
ソフィーはそう言うと、歩き方も普通に落ち着いた歩き方に戻る。
ちょっと落ち込んだかと思って顔を覗き込むが、俯いてしまうというよりは、どこか嬉しそうな顔をしていて、ホッとしたが。
さて……。
「よし、見つけたぞ。まずはこれか……」
目の前にそびえ立つ大木を前に、俺はその木を下から上へと舐めるように形を見る。
頭の中で、めぼしい大木のあるだいたいの場所はリストアップできていたのだが、実際に探し出すとなると少々骨だ。
この辺の森はちょっと深くて見通しが利かないから。
30分程、この辺りを探し回って、ようやく目当ての木を見つけ出すことができた。
ポケットの中からラファエルにもらった要件について書かれた紙を取り出して、条件の数々を確認する。
「ふむ……形には問題ないな。あとは、サイズか……だいたい足りるとは思うが……」
巻き尺を出して、ゆるーく地面から上に向かってくびれた幹の太さが安定する辺りで外周を測る。
「ふむ……あ、ちと足らんかぁ……」
残念。
太さがやや足りず、この木はNGだ。
次のを見に行こう。
「ダメなの?」
後ろで見ていたソフィーが首を傾げる。
「太さがほんのちょっと足りなかったな。形は良かったんだが」
「そうなんだ……。じゃあ、どうするの?」
「次の木を見に行くしかないな。次行こう」
「うん」
そして、俺たちはまた森の中の道に戻って、そこからさらに少し奥を目指す。
そして、2本目の候補はすぐに見つかった。
「あったあった。これだ。……これさっきより太いよな。これならいけるんじゃないか?」
早速、先程と同じように木の形を確認し、巻き尺で太さを測る。
「よし。太さは問題なし、形も条件に当てはまりそうだ。目印を付けておこう」
荷物の中から赤いロープを取り出して、木の幹に巻いてしっかりと結ぶ。
それから、近くを通る道までの間、所々に目印としてたどれるよう、通り道になる場所の木の枝などに結びつけておくための赤いリボンを用意してきたのだが……この木は森の中の道の道端にあって、丸見えなので、必要ないだろう。
これでよし。
「とりあえずここはこれでオッケー。次のを見に行こう。次が最後かな?」
「ここからどのくらい?」
「今度のは少し上まで登ってかなきゃいけないから、30分くらい見といた方がいいかな」
ソフィーにそう答えると。
「そしたら、どこか近いところでお昼にしない?」
「そうか、もうそんな時間か」
「食べられそうな場所って、あるかな?」
「じゃあ、少し先まで行こう。ここからそう遠くないところに小川が流れてるところがある。そこなら、座って食べられる草地もある」
「うん、じゃあ、そこまで早く行こう!」
ソフィーが笑顔で頷き、俺たちは川べりの草地を目指して足早に進む。
そういや、今日はソフィーがお弁当を気合い入れて作ってくれてるみたいだから、俺もすごく楽しみだ。
早く彼女が作ってくれたお弁当とご対面といきたいところだ。
さて。
歩くこと10分足らず。
目的の小川のほとりの草地に出た。
ここは川の両岸がちょうど森の切れ目となっていて、今は日も高いので、ちょうど良い感じに太陽の光が明るく差していて、暖かくなっている。
草も密度高く、かつ程良く伸びているので、そのまま地面に腰を下ろしても大丈夫そうだ。
「よし。ここでお昼にしようか」
「うん。今出すね」
ソフィーが肩にかけていた鞄の中から、お弁当を2つ取り出して、大きい方を俺に手渡してくれた。
「ソフィーの自信作、楽しみだ」
「えへへ……。まあ、あんまり期待しすぎないでね」
彼女はそう言うが。
お弁当箱を開けてみると。
「おお……」
綺麗に三角形に切り揃えられた色とりどりの具を挟んだサンドイッチが、2つずつ木のピンで刺してまとめたものが、綺麗に6セット並んでいて、他にタマネギとスモークサーモンのマリネが添えてあって、見た目にも美しい。
さっそく、サンドイッチから手を付ける。
「うん、美味い!」
いつもながら、ソフィーの作る料理は美味しい。
一人暮らしだった時は食事なんて適当そのものだったが、今では毎食、食事時を楽しみにしている俺がいる。
そんな俺の反応に、ソフィーもいつものように嬉しそうな顔になる。
「美味しい? 良かったぁ……」
サンドイッチ自体は普段から作っているし、間違いの起こりようのないメニューだと思うのだが。
ソフィーにそのことを聞いてみると。
「いつもできてることだって、時々失敗することもあるんだよ? だから、毎回ジェルンの反応はドキドキしながら見てるんだよ」
そんなことを言って、照れ笑いをしていた。
ふむ……そういうもんかね……。
心配しすぎだなぁ……と思いつつ、今度はサーモンのマリネの方をいただいてみる。
これはソフィーが作ってくれるのは初めてかも。
酒場なんかだと、酒のアテに出たりもするものだが。
「お……しょっぱすぎない感じでいいな。サーモン、塩抜きでもしたか?」
そう尋ねると。
「ううん。塩抜きはしてないけど、塩分はサーモンの身に含まれてる分だけにして、その代わり、少し時間をかけて全体に馴染ませたの」
「なるほどね」
ソフィーの説明に頷く。
普通、和えるだけのマリネだと、ちょっとサーモンの身がしょっぱく塩気が多く残ったままの状態で出てくることが多いが、ちゃんとそこまで気を配って作っていたか。
しっかり時間をかけて馴染ませているだけあって、タマネギ独特のエグみも目立たなくなっている。
美味いわけだ。
「ソフィー」
「うん。なにかしら?」
「これさ、普段から常備できないか?」
「あ、気に入ってくれた?」
「ああ、すごく。良い酒のツマミになりそうだから、常備しといてくれるとうれしい。保存とかに問題がなければ……だが」
そう彼女に頼むと、ソフィーは少し考え込む。
「そうですね……常備するとなると、日常的に消費するくらいでないと難しいかな……。でも、それだとちょっと塩分過多になっちゃうかも……。一応、塩を追加しないことで塩分量抑えてはいるけど……」
そうつぶやくように言って、しばし俯き加減になって。
最後、残念そうに溜息を吐いた。
「リクエストは嬉しいのだけど、やっぱり常備はやめた方が良さそう……。その代わり、折を見てちょくちょく作りますから作った時は言いますね」
「やっぱり保存が利かないか」
そう聞き返すと。
「それもあるんだけど……あんまり常備しちゃうと、塩分取りすぎになっちゃいそうだし、お酒を飲む回数も増えちゃいそうだから……。身体に良くないと思って」
そんなことまで考えていたか……。
そういうことなら仕方ないか。
俺の身体を気遣ってのことだから、ソフィーのいう通りにした方が良いだろう。
「そうか。それなら仕方がないな」
残念な思いがありつつも、俺がそう頷くと。
「でもね、ちゃんとちょくちょく作るから、期待はしてて」
ソフィーはそう言ってフォローしてくれる。
「ああ、期待してる」
俺はそんな彼女の頭を撫でながら、そう頷くと。
「うんっ!」
ソフィーは嬉しそうに笑った。