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人間大量破壊兵器の異名を取る男、ケモミミ嫁を拾ったので、生活環境を整え始めたら、いつの間にか癒やしの宿を作ってしまった件について  作者: 木場貴志
Mission 4.ケモミミ少女に○○を仕込むべし~山奥でふたりっきりの教育ミッション
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Mission 4.ケモミミ少女に○○を仕込むべし~山奥でふたりっきりの教育ミッション その2

バトルエンジニアという、罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う、戦う技術屋を生業にする男、ジェルンは、時として大量破壊を伴う仕事も多々こなすことから、冒険者や町の人から怖れられ、敬遠されているため、遠く離れた山の中に住んでいる。

そんな彼は、またひとつ大きな仕事をこなして戻ってきたとき、家の前の小屋に迷い込んで眠り込んでいたケモミミ少女・ソフィーを見つける……。

とりあえず、ソフィーを保護することにしたジェルン。

差し当たって、麓の町に繰り出してソフィーの服などの生活必需品を買いそろえ、ここから彼女と二人での生活が始まる。



主人公:ジェルン

バトルエンジニアという、その辺にあるもので何でも武器にして戦える戦闘のエキスパート

直接的に戦うと言うよりも罠や飛び道具や爆弾などを作って戦う

他、薬などを使った回復にも長けている、戦う技術屋さん

ダンジョン踏破には欠かせない職業

ただ、時には大量破壊を伴う仕事も多々こなすこともあり、町の人からは怖れられていて、あまり町での居心地はよくないらしい……




ソフィー

主人公の暮らす山の中に迷い込んでしまった獣人族の女の子

種族の中では発育が良くないらしく、きょうだいからもイジメに遭って、逃げ出したら気が付いたら知らない場所に出てしまっていたらしい

さまよった挙げ句、主人公の小さな家を見つけたが、留守だったので、鍵の掛かっていなかった道具小屋に忍び込んで、眠り込んでいたところをジェルンに見つかり、拾われることに。


 さて、そんなハプニングはあったものの、その後、ソフィーもよそよそしいような態度を見せることもなく。

 いつも通り、日々朝から献身的に尽くしてくれる姿勢は相変わらずで。

 自宅の改築作業が本格的に始まって。

 俺が作業をしている少し離れた場所で、ソフィーは毎日の洗濯物を干したり、庭の掃除をしたり、部屋の中を飾る布やカーテンの作成作業をしたりしながら、時折人手が要る時に呼べばすぐに手を貸せるように、待機していてくれている。

 まだまだ外も暑いことも多いので、家の中に入るように何度か言ってはみたのだが、本人は俺が作業しているのを見ていたいらしく、いつしかそこが定位置になってしまっていた。

「痛てぇっ!」

 やべぇ。

 ちとざっくりやってしまった。

『大丈夫ですか!?』

 ソフィーが慌てて駆け寄ってきて、切れた俺の指を見るなり。

『大変! 早く処置しないと!』

 そのままぱくりと傷ついた俺の指を躊躇うことなく口に含んで。

 傷口を優しく労るように、舌先で撫でるソフィー。

 そして、口ので指を綺麗にした後、ポケットにしまってあった絆創膏を出して、それを傷口に貼ってくれた。

『これで処置完了です。ジェルン、傷は痛みますか?』

『あ、いや……大丈夫だ』

 いや、目の前でソフィーの大胆な行動を見て、傷の痛みなんかどっかへ吹き飛んでしまっていた。

『そうですか。それなら良かった。ジェルン、気を付けて下さいね』

『あ、ああ……。ありがとう』

『どういたしまして』

 指先に、ソフィーに舌で撫でてもらったぬるりとした感触が残っている。

 思わず手当てしてもらった指をじっと見てしまい、ドキドキする俺。

『ジェルン? どうしたの?』

 ひょいっとソフィーが俺の顔を覗き込んでくる。

『顔……赤いよ? 風邪引いた?』

『あっ……いや、なんでもない……』

 思わず彼女の顔を真っ直ぐ見れなくて、視線を逸らしてしまう。

『ホント? ちょっと動かないで……』

『えっ?』

 やおら彼女は顔を近づけてくる。

 そして。

 こつん。

 おでことおでこをくっつけてきた。

 ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!

 思わず内心焦る俺。

 でも、ソフィーは焦る様子もなく。

『ん~……? やっぱりちょっと熱っぽいかな……? ジェルン、ちょっと風邪引いたんじゃない?』

 そう言って顔を離す。

 ふう……。

 熱を計っただけか。

 まったく、びっくりさせやがって……。

 それにしても、無防備にも程があるぞ。

 少し説教でもしてやろうかと顔を上げると。

 ソフィーが険を含んだ顔をしていた。

『まったくもう! 風邪引いて調子が悪いなら、ちゃんと休まないとダメじゃないの! ほら! こっちは私が片付けておくから、ジェルンはお部屋に戻って寝てて!』

 そう言って、彼女は俺を家の中に押し込もうとする。

『おい、ちょっと待てって! 熱なんかないから!』

『ダメです! 熱っぽいのほっといたら本格的に倒れちゃって、そしたら長引くんですから!』

 そう言って、彼女は強引に俺を家の中に押し込んでしまう。

 種族の違いというのもあるかもしれないが、女の子としては大柄でガタイの良いソフィーの力は結構強くて。

 強引に力勝負にして振りほどいたら振りほどけないこともないのだが、そんなことをして怪我でもさせるわけにはいかない。

 結局、俺は仕方なく彼女にされるがまま、部屋のベッドに寝かしつけられてしまった。

『はい! 後のことはわたしに任せて、ジェルンは今日はゆっくり寝ていて下さい。風邪はひきはじめに対処するのがいちばんなんだから』

『ああ……わかったよ……』

『それじゃ、ジェルン。お大事に!』

 そう言って、ソフィーは部屋のドアを閉じて出て行った。

 まったく……大げさなんだから。

 とはいえ、ああやって甲斐甲斐しく誰かから心配されるのはいつ以来だろうか。

 やっぱり、家にそういう誰かが居てくれるというのはいいもんだな……。

 そんなことを、ふと、思ったものだった。




 ベッドに寝かしつけられて、落ち着いてきた頃。

『ジェルン? ちゃんと寝てる?』

 表の片付けを終えてきたらしく、ソフィーが俺の部屋のドアをノックしてそのまま入って来た。

『ああ、ちゃんと寝てるよ。だからご心配なく』

 ベッドで寝転がったままそう返事すると、ソフィーはよしよしというように頷いて。

『うん、いい子いい子♪ ゆっくり休んで早く元気になってね』

 ソフィーはそう言って、易しく俺の頭を撫でる。

『なんだか俺の方が子供みたいだな』

 思わず苦笑してしまう。

 すると。

『ホントに、ムキになって風邪引いてないって言い張るとか、子供みたいよ』

 呆れたわよ、と言いそうな感じに肩をすくめるソフィー。

『でもね……』

 ソフィーはそう言葉を継ぐ。

『ジェルンが本当に高熱でも出したりしたら、わたし、今の比じゃないくらい心配しちゃうわよ』

『そんなに心配か?』

 そう聞き返す。

 すると。

『心配よ。だって、ジェルンはわたしにとってたった一人の大事な人なんだもん』

 そう言って、彼女は俺の首元に抱きついてきた。

『お、おい……ソフィー……』

『大好きよ……ジェルン……』

『え……』

『いきなり転がり込んできたわたしを家に置いてくれて、優しくしてくれて、言葉も、他のこともいっぱい教えてくれて、感謝してる……。だから、優しいジェルンのこと、わたし、大好きなの』

 ソフィーのむき出しの好意が俺の心臓を打つ。

『おい……やめてくれ……そうでないと……俺だって、男なんだぞ……』

 なんとか言葉を絞り出すが。

『うん、分かってるよ、そんなこと。でも、わたし、ジェルンのこと信じてるから。絶対にわたしにひどいことはしないって……。それに、わたし……そういうこともわかってるから……ジェルンだったら、いいよ……』

『え……』

『いいけど……ちゃんと、わたしのこともらってくれるなら……ね。わたし、ずっと、ジェルンのそばに置いて欲しい……』

 まさかと思って自分の中で否定していたパターンに内心面食らっている。

『ソフィー。俺こんなおっさんだぞ……。相手にするならもっと若くていい男がいるだろう。それこそ、もう3~4年もすれば、引く手あまただぞ。ソフィーは素材もいいし。もったいねーぞ』

『それでも、ジェルンがいいよ……。こんなに見ず知らずだったわたしに優しくしてくれる人、他にいないよ……』

『そうか……』

『だから、ジェルンにはずっと元気で居てくれなきゃやだ……。だから、ちょっとでも病気になったら余計に心配なのよ』

 そう言うソフィーの抱きつく腕に、さらにぎゅっと力がこもる。

『そうか……』

 そこまで俺の事を思ってくれているのか。

 毎日俺の世話を懸命にこなしてくれていて、しかもいつも俺と一緒に居たがるところがあったのだが、そういうことだったのか。

 これは俺もきちんと答えを出さざるを得まい。

 俺もなんとなくちょっと女の子として意識しだしていたところもあるが、ソフィーが良いからと言って、はいそうですかと安易に手を出すのも、その後万が一……ということになっては可愛そうだ。

『わかった。これからは、そういう前提でソフィーに接することにする。ただ、本当にソフィーのその気持ちを受け入れていいのか、まだ自信がない。だから、もうしばらく時間が欲しい』

 ソフィーにそう伝える。

 すると。

『ジェルンらしいね。いいよ、わかった。今はそれでいい』

 ソフィーは顔を上げて、はにかんだ笑顔を俺に見せる。

『どの辺が俺らしい?』

 そう訊くと。

『クッソ真面目なとこ』

『そうか。がっかりしたろ?』

『ううん。そんなところも大好き』

 ソフィーはそう言って、もう一度俺の首根っこにぎゅうっと強く抱きついた。


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