section7 a conflict that is not understood
新型コロナにかかってました。メッサしんどかったです
ロビーでの小競り合いから10分、気付けば署内のほとんどの警官が一ヶ所に集まっていた。というのも、先日起きた『機動部隊がいきなり消息不明になった一件』以来模擬戦闘ルームを使う者がいなかったのだ。
「珍しいじゃないか。柊君くらいなら外に連れまわすかと思ったんだが」
「まぁ確かに、ここまで騒がしいのは好まねぇな。それにあっちが吹っ掛けたわけだしな」
強度保持のため、二つある入り口の付近にしか窓がなく、集まった警官たちはそこに群がる形となっていた。一部の者は飲食物まで持ってきていた。
「柊中隊長が、かぁ…… 勝てると思うか? 」
「いや、無理だろう。俺はあの四霊ってやつと任務を一緒にしたんだが、強さは明らかに人間を超えていたぞ」
「でも佳苗さんは強いぜ? 装備整えれば勝てると思うが…… 」
既に場の空気は試合前のスタジアムのそれに近く、飲食物を片手にしている署員までいる。榊がどれだけたしなめても上がり切った興奮が収束しそうにない。
「で? あいつはなんでコルウス憎んでんだ? 明らかにスイッチが入ったように殺されかけたんだが」
「あぁ、その話だがな。佳苗は実は…… 」
耳打ちする榊。四霊は一瞬驚きの表情を浮かべたが、「分かった」とつぶやき、それ以降口を開くことはなかった。
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一方、佳苗は訓練室から少し離れた更衣室で静かに着替えを進めていた。
(うん…… 久しぶりに着けたけど、違和感はない)
アンダースーツ、強化装甲、関節装甲と一つ一つを確認しながら装着していく佳苗。外の騒ぎは気になるが、更衣室の奥で着替えているからか集中が削がれることはなかった。
「柊君、榊だが入れるかね? 」
「あ、はい大丈夫です」
律儀な三回ノックと共に榊の柔和な顔がロッカーの陰から顔を出した。
「……話は聞いたが、良いのか? 」
「はい。どうしても譲れなくて」
「……そうか。さぁ、時間だ」
「はい」
榊に肩を押されて更衣室を出る佳苗。訓練室前にたむろしている警官たちは、ガンメタ色の強化スーツを身に着けた佳苗を見て一気に静まり返った。
「……後悔はするなよ? 」
「はい」
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大きく深呼吸する佳苗。既に四霊は訓練室内で胡坐をかいている。ゆっくりと一歩を踏み出そうとする婦警を、男は右手をかざして制止した。
「お前、サブから何も聞いてないのか? 」
「はい、全力でとだけ」
「はぁ…… あのバカがよ…… 」
ため息とともに立ち上がる四霊。のぞき窓から榊の顔を確認したが、男は無表情で訓練室を眺めているだけだった。
「まぁ、たまにはこういう喧嘩も悪くないか」
四霊は小声でつぶやいた。