section4 It's become a gale
バトルって書くの大変だよね
「女相手に三人がかりなんてめめしいまねしてんじゃないぜぇ? 追い剥ぎさんよぉ」
佳苗は目の前の光景を疑った。自身の危機を救ったのはさっき目の前から消えた男だったからだ。
「暁、さん……? 」
「今度からはそんな新品の服着てスラムは出歩かないこったな。真っ先に狙われる」
何事もなかったかのようにタバコを取り出し、火を点ける。追い剥ぎ集団の方を見向きもしない。
「大体、お前気付いてたか? あんなところで突然仕事の話なんかするからさぁ」
「てめぇ、ふざけんな!! 」
残る二人が同時にナイフを振り上げて突っ込んで来る。
「危ないッ!…… 」
思わず声が出る佳苗。しかし次の瞬間には二人そろって宙を舞い、ドシャア、と嫌な音を立てて地面に激突した。状況から考えて四霊がやったのは間違いないのだが、あまりの速さに佳苗には何も見えなかった。
「あなた、もしかして適合率が…… 」
「そりゃあ色々あるからな。そこらのチンピラよか強いよ、俺は」
煙を吐き出す四霊。次の瞬間、大男が吹っ飛ばされた辺りのガレキの山が持ち上がり血だらけの男が立ち上がった。
「おはよう。強めに蹴ったからそうそう起きないと思ってたんだけどな」
「……す」
「おん? 」
「ぶっ殺す!!!!!!! 」
瞬きも終わらないほどの瞬間に、10mほどあった間合いを詰めてくる大男。明かりの速さに佳苗は反応すらかなわなかったが、大男の拳が届くことはなかった。
「て、めぇ…… 」
「お行儀が悪いぜ。身なり整えてから出直してこい」
軽く振っただけで人を吹き飛ばすほどの筋力、それを総動員しての渾身の突きを、四霊はボールをキャッチするかのようにワシ掴みにしていた。
「ま、出直す機会はねぇがな。地獄で反省しな」
パチッ、と何かがはじけるような音が響き渡る。そして何かが焼けるような匂いが辺りを覆い、大男の体から煙が上がった。
「クッセ。この匂いだけはいっつも慣れねぇわ」
佳苗は全てを理解した。この匂いは何度も嗅いだことがあったのだ。
「焼死? 」
「あぁ。ちょいとビリっとしてもらった」
ドサッ、と焼死体を放り投げる四霊。そのまま無言で立ち去ろうとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!! 」
「んぁ? 」
「こんなの、過剰防衛よ! 立派な殺人罪!! 」
「っせぇなぁ、そいつは賞金首だぜ? あんた機動隊員のくせに賞金首リストも覚えてないのかい? 」
「え? 」
慌てて腰の端末を取り出し、警察本部のネットワークに接続して確認する。彼の言葉に間違いはなく、三人そろってリストのかなり上の方に『連続殺人並びに複数回の強盗』で殺害許可の下りている犯罪者だった。
「……ごめんなさい」
「はぁ……もうじき日も暮れる。詳細は今度聞くから今日はもう帰れ」