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俺はジャイアン  作者: りっきぃ
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4 幸田孝の生涯 その4

 意図せずして中学校卒業とともに家業の肉屋で働くこととなったタカシではあるが、もともと両親の手伝いで店に立っていたため一年もしないうちに仕入れから惣菜の調理、肉を裁くことまで両親に引けを取らない腕前となっていった。


 学校では不良グループのリーダーと目されていたため周囲から煙たがられていたが、子供の頃から過ごしてきた商店街では幼なじみ連中が慕っている存在であり、その父兄達からの信頼も厚かった。父親とともに商店街の会合に参加するようにもなり、新たなイベントを開催して大成功を収めたり新商品の提案をして名物を作り出したりと商店街でも中心的な人物となっていった。



 ここでまたタカシの運命を左右する事件が起きる。



 以前から計画があったのだが、近所に大手のスーパーが開業したのである。商店街は駅前にあり駅の反対側は大きな工場が立ち並んでいたのであるが、その工場が立ち退いてスーパーが出店したのである。それによって駅からの人の流れは激変してしまい、商店街は閑古鳥が鳴く状況になってしまった。


 タカシが働くようになって盛況だった商店街は三年目にして次第に閉店する店舗もちらほらと見え出した。工業高校を卒業目前とした幼なじみ達の家でも店をたたむところが増えていた。幼なじみ達も卒業したら家業を継いでタカシとともに商店街を盛り上げていく気満々だったのだが、行き先を失ってしまったのである。


 幸田精肉店の経営も芳しくなく、末娘が高校を卒業するまではなんとか頑張ろうと思っていた両親も限界に来ていた。


 タカシは考えた。自分の人生のことなんかより両親と妹を路頭に迷わすわけには行かなかった。中卒のタカシにとって家業を継ぐ以外に一家を養っていくだけの収入を得ることはどう考えても難しかった。


 しかしその答えはひょんなことから解決することとなる。幼少時代からタカシの家は事あるごとに友達が集まる場所、いわゆる溜まり場になっていた。タカシのおかげで無事に高校に入学し、卒業を間近に控えた仲間達がいつものように集まっていた時のことである。彼らの家もすでに店を畳んでしまったかギリギリで踏みとどまっている状態であった。彼らの進路もタカシと同様にまた真っ暗だったのである。そんな時に一人がポツリと呟いた。


「俺、自衛隊に行こうと思っている。」


 

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