3 幸田孝の生涯 その3
中学生になったタカシ達は入学当時から先生や先輩からマークされる集団となった。ただ集団で会話しているだけで先生達から説教を受け、悪そうな先輩達からは事あるごとに喧嘩をふっかけられる毎日だった。
ここでも面倒見の良いタカシは仲間達をかばい、成長とともに順調に育っていった体のおかげでそんじょそこらの先輩ワルなんぞには喧嘩で負けることなどなかった。
そして最上級生になる頃には校内だけでなく他校のワル連中や警察にまで目をつけられる存在となってしまったのである。
ここでまたタカシの運命を変える事件が起きる。
高校受験である。
外では不良集団の実質的リーダーと目されるタカシではあるが、家に帰ると家の商売を手伝い妹を溺愛するよくできた長男であった。両親も妹もそんな孝のことを理解していた。だから店を継ぐにしてもせめて高校ぐらいは卒業してほしいと思う両親の想いに応えようと、地元の工業高校を受験することになった。
まともな中学校生活を送ってこれなかったため、タカシと仲間達は例に漏れず勉強はからっきしだったが、なんとか地元の最底辺の工業高校を受験することとなったのである。
その高校はいわゆる不良の巣窟と呼ばれており、自分の名前がまともに書けさえすれば合格するという噂がたつほど偏差値は低く、受験するのも市内の中学校の爪弾き者ばかりであった。
試験当日の朝、試験に向かう電車の中で、タカシ達は他校の不良に絡まれてれしまい、タカシは仲間達を逃して先に受験会場に向かわせ、たった1人で20人程の不良と大立ち回りを演じたのである。
結果、警察が介入するほどの大事件となり、タカシの高校入学の夢は儚く散ってしまったのである。
庇われて自分達だけが高校に入学することができた仲間達は、やり切れない気持ちでタカシに謝罪したが、ただ肉屋になるのが3年早くなっただけだと言い、仲間達の卒業と入学を心から祝福するのであった。
子供の頃からの幼馴染でずっと一緒に過ごしてきた仲間達は、この事件からより一層タカシという人間に惚れ込み、団結が深まっていくのであった。