作画崩壊
大空が広がった。青い青い空が僕等を包む。通常の人間ならば体験した事の無い事を僕は今しているのだ。飛んでいる様だった。いや、実際飛んでいたが余りにも現実味が僕にはなかったのだ。足が宙ぶらりんのてるてる坊主みたくなってはいるが自然と恐怖は無かった。落ちない様に腕に強化魔法を掛け、力を入れた。死ぬ事は無いが余計な時間を消費したく無いのだ。ガランは大きな羽をはためかせながら、こちらを向いた。
「おい、飛ぶぞ。」
「え?」
僕はその言葉に(もう飛んでいるじゃないか。)や(どう言う意味だ?)などと考えたがそんな事を考える余裕はなかった。彼はジェット機の様な速さで空を飛び始めたのだ!後ろに僕が居ると言うのに彼はお構いなしだ。ゴォォォと風の切る音しか聞こえなかった。ついさっきまで顔を上げていたせいか、僕の顔は見せられないものとなった。最悪だ!慌てて顔に補強魔法を掛ければ、僕はいつも通りのプリティフェイスに戻った。心底安心した。
さっきまでの感動は何処かへ飛び、バライティーでよくある顔の皮膚が裏返り口が丸見えの状態になったのだ。ガランは前を向いていたから僕の顔は誰にも見られる事無い筈だ。
「うぶぶぶぶ…っぷはぁ!…ガッガラン、もう少し遅くしてくれ!髪もボサボサになったし、腕も千切れそうだ!」
「ア"ァ"⁈今何かっつたか‼︎」
風切る音が僕等の会話を邪魔してきたせいで、ガランはスピードを緩める事はしなかった。僕はうつ伏せになり地面が来るのをじっ…と待った。暫くすると音が止んだ。バッと顔を上げれば目の前には大きな山と猛獣の唸り声が聞こえた。ガランは此方を向くと「降りろよ。」なんて声を掛けた。僕は急いで彼の背中から飛び降りた。髪はボサボサ、服はほつれて、僕はみっともない姿に早変わりしていた。…バチが当たったのだろうか。僕が余りにも彼に要求するから天罰でも下ったのか。必要な事だった、許して欲しいと素直に思う。でも、僕等がこれから行うのは人助けだぞ?この仕打ちはあんまりだ。…解せない。今彼の姿を見たが、髪は整っているし顔も何ともなかった。…本当に解せない。
「…ガラン。どうして君は僕みたくなってないの?」
「ァア?テメェが弱っちいだけだろ。」
「納得いかないよ…!」
「んで、どこに居んだよ?その人っつうのはよぉ!」
「ガラン、落ち着いて。人なら索敵魔法で捜すから。」
僕は山全体に索敵魔法を掛ける。すると大きな生命反応が一つ、そのすぐ近くに二つの人型の反応が出た。
「不味い事になってる。魔獣の近くに二人とも居るから、このままじゃあ危ない。」
「…おい、何処に居やがるんだよ。とっとと言え!」
「分かった。君にも分かる様にする。だから君は魔獣の方を優先的に叩いて!」
僕はガランに共感魔法を付与し、彼にも分かるようにした。すると彼は大きく飛び魔獣の方へと突っ込んだ。
僕も敏捷魔法を自分に付与すると森の中に入って行った。走る途中途中で山全体が揺れる。きっとガランが戦っているんだ。僕も速く行かないと…強化魔法を掛けた。