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人助け

「…でなんだよ。頼みってぇのは?」


腰に手を当てながらジロリと睨みを効かせた。


「…簡単な事だよ。人助けさ。」


その言葉を聞いた時、彼はギョッとした。訝しげにした後上から目線で僕を見下ろし圧をかけてくる。僕は涼しい顔で彼の言葉を待った。…さっきからお互いに言葉を待つばかりだ。まだ距離感が余り掴めてない所為か簡単な受け答えも辿々しくなっている。


「…ハァ?人助けだぁ?…テメェ悪魔がそんな事を聞くとでも思ってんのか。」


「いやいや、そんな訳無いだろう?ただ…今回は事情があるからね。僕等が契約を達成する為に必要不可欠な事なんだ。」


間髪入れずに否定した。彼は呆れた表情をしていたが後者の方を聞くと耳がぴくりと反応し、眉間に皺を寄せた。


「…僕が最初に『その国の一番偉い人から許可を得る』と言ったことは覚えているかい?」


「…あぁ。」


「今回助ける人は普通の一般市民だけど…ここは平和の国だ。善行のレベルによって国からの褒美を与えられるんだよ。」


そう、この国は善行を重ねれば重ねる程、信頼も増えていくしよりその善行にどれほど汗水垂らしたかで国からの褒美が貰えるのだ。そのおかげか。この国ではゴミは一つも落ちていないし、財布が落ちていれば必ず交番に届ける筈だ。どれくらいかと言えば詳しくは分からないが、少なくとも二人の一般市民を助ける為に魔物を倒し嘘をついてまで安心させるなんて誰もが好む美談だと思わないだろうか。


「そこでだ。この国で一番偉い人…つまり王様から直々に許可を貰うんだ。褒美としてね。」


「…無理だろ。仮に助けたところで王直々に許可を貰うなんざよっぽどの事をしない限り出来る訳がねぇ。」


「それに、この国はどうもきな臭ぇ。まともに取り合っちゃくれねぇだろうよ。」


…なるほど確かに。彼の言う事も一理ある。たとえどんな善行を働いたとしても王様直々に許可を頂くなんて父兄に値するだろう。…もし仮にそのきな臭い部分を暴けたとしたらどうだろう。例えばそうだ王宮に一週間だけ滞在する権利などはどうだ。この国で王は民衆から非常に慕われているならば(イコール)で王宮に憧れを抱く人も少なからずいるだろう。王宮の資料室などは重要な書類があるに違いない。__余り悠長としてられないな。こうしている間にもあの人の家族が危険に晒されているかもしれない。


「…褒美の内容は一旦保留だ。でも、その人を助ければ確実に一歩前進出来る。契約内容を忘れた訳じゃあないよね?」


彼は僕の方をじっと見つめると「…チッ。今回だけだぞ。」と呟いた。


「で?何処行きゃあいいんだ?」


「ここから少し離れた山の麓…美植山だよ。歩きじゃ間に合わないかもしれない。透明魔法をかけて一旦人間化を解く。…君には大きな羽があるだろう?それで行くんだ。」


「ハァ⁈…テメェを乗せて行けっうのかよ。ふざけてんのか?」


「うーん。そう言われても、浮遊魔法は使えるけどそれだけじゃ君ほど早くは飛べないよ。…ここは二人で協力しよう?ガラン。」


僕が杖を一振りすると彼の体はたちまち大男に変わっていく。このままでは天井に角が突き刺さりそうだったがそれを察したのか少しだけ屈んだ。完全に悪魔へと姿を変えた彼に透明魔法と可視化魔法をかける。彼は空中で溶けて見えなくなった。次に僕の方に透明魔法と可視化魔法をかける。よし、これで見える様になった。


「………クソッ。おい、行くぞ。」


彼に腕を引っ張られ、そのまま窓から飛ぼうとしている。慌てて太い首の方に腕を回せば彼の皮膚からさぶいぼがたっていた。男同士でこんな事をするなんて普通は仲の良い男子高校生くらいだろう。しかし他に捕まる場所がなかったのだ。致し方ないと割り切ってくれ。

そして彼は羽を大きく広げ大空へと飛び立った。

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