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正義のヒーローおそうじマン‼︎

けたたましく鳴り続けるサイレンに僕等思わずは耳を塞いだ。ガランは顔を顰め、舌打ちしながらカーテンを開き外の様子を確認する。僕は部屋から飛び出してロビーに降りていった。他のお客さんも耳を塞いで蹲っていた。しばらくするとサイレンが止み、代わりに野太い男の声が聞こえてきた。


『やぁ!平和の国に暮らす諸君!緊急事態だ。美植山(びしょくざん)にて危険度Sクラスの魔物が現れた。今、ギルド協会や保安警察に連絡し討伐に向かって貰っている。』


危険度S…だとすると悪魔より少し弱いくらいか。でも、普通ならそれくらいでサイレンなんて鳴らさない筈なんだけどな。少し芝居がかった声で男は続けた。


『近隣住民の方々は窓やカーテンを閉めなるべく音を立てないでくれ!』


少し妙だな。窓やカーテンなんてSクラスでの対応だとは思えないけど。…本当はSじゃないのか?


『大丈夫だ!心配はいらない。この私…正義のヒーローおそうじマンが守ってみせるぞ!」


その言葉にお客の中にいた小さな子供が反応した。


「おそうじマンだぁ!ママ、おそうじマンがまもってくれるって!」


おそうじマンと言うと確かパンフレットに載っていた。この国限定の正義のヒーローだと書かれている。右手に大きなモップを持って悪い奴を掃除してくれるらしい。しかし、何故サイレンにヒーローが出てきたのだろうか?普通ならば自治体や町内会が街や村ごとにかける物なのに。国が一斉にかけるなんてよっぽどの事が無い限りは有り得ない話だ。いや、だがさっきまで震えていた子供がおそうじマンが出て来た時にとても喜んでいた。…もしかして子どもを安心させる為に出てきたのだろうか?ここは平和の国だ有り得ない話ではない。

改めて周囲を見渡すと一人の女性が隅で静かに泣いているのが見えた。…見て見ぬ振りは気分悪くなる。声を掛ける事にした。


「どうしましたか?」


「…うぅ…ひっぐ…。」


「どうして泣いているのですか?…僕に聞かせて下さい。何か力になれるかもしれません。」


女性は僕の方を少しだけ見ておずおずと話し始めた。


「…実は…夫と息子が…美植山に…うぅぅ…ぐす…。連絡もつかなくて……不安で…。」


「…美植山のどの辺りですか?」


「すぐ麓の方に…居ると思います。…すぐ…っぐす…下山するって言ってたからぁ…ひっぐ…。」


…多分今すぐ行けば間に合うと思う。ここで恩を売っておけば後々楽になるだろう。それに多少のスパイスは旅の中で必要だ。彼との関係を深める為にもここは利用しない手は無い。


「…分かりました。僕が向かいます。こう見えてS級冒険者なんです。」


「えっ…本当ですか…あ…あぁ…どうかどうか…助けてください!お願いします‼︎」


「はい!任せて下さいね。」


安心させる為には時に嘘も必要だ。僕は満面の笑みを女性にむけながらぼんやりと思った。

二階に上がればガランが部屋で僕を待っていた。


「…どうだった。」


「ガラン…頼みがあるのだけれど、いいかな。」


ガランの眉がぴくりと動いた。しかしそれ以上の反応は見せずじっと僕の言葉を待った。

突然だが僕はこの頼みをガランが都合良く受けてくれるとは思っていない。彼はあくまで悪魔だ。…駄洒落じゃないよ?人に悪影響を及ぼす、いわゆる病原体の様な者だ。そんな悪魔が人を助けるなんて聞いた事が無い。でも、もしその行為に納得のいく程の事情があれば…どうだろう。あぁ、本当に召喚に応じたのが彼で良かった。頭のきれる悪魔なら有る事無い事喋り尽くして上手く躱すだろうから。

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