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突然の美青年

「…ア"ァ"⁈なんだコレはよぉ!」


彼は変化した自分の姿を見ると大きく叫んだ。目を見開き自分の体を確認する為にベタベタ触る。髪を引っ張ったり、劇的に変化した足を殴ったりしていた。しかし確認が終わると何事も無かったかのように冷静になった。僕の胸ぐらを掴み、説明しろと圧を掛けてくる。


「オイ…コイツはどういうことだぁ…?」

「街中じゃ君は目立つからね、人間になって貰ったんだよ。」


街中に悪魔なんて歩いていたら普通に通報される。悪魔はとても凶暴で、人を誑かす者だと知られているから皆恐れているのだ。今のところ野良悪魔なんて者も居るが大抵は魔物と変わらず知能を持っていないし、ギルド協会から退治されるから基本安全である。そんな中に知能を持っていて、なおかつ悪魔の中でも二つ名持ちならギルドは死ぬ気で退治しに来るだろう。

僕の答えに納得したのか、彼は大人しくなった。


「力は余り制限されていないから、悪魔の頃と大差なく使えるよ。戻す時は人が居なくて、絶対絶命の時だけにしよう」

「…チッ…まぁいいだろ…不本意だが仕方ねぇ。」

「伝えることはこれくらいかな。準備が出来次第出発しよう。何か欲しい物があるなら僕に言って。」


一応そう言ったが彼が何かしら準備する素振りを見せることは無く、ただただ椅子に腰掛けて僕を待っていた。

タンスにある服をあるだけ引っ張り出し、ローブを羽織る。金の装飾のされた真っ黒なローブは新品とは思えない程柔らかく、着やすい物だ。僕の家の家紋が彫られている金貨を財布に入れて、杖は咄嗟にでも取り出せるよう懐にしまった。他にも色々詰め込んだがそれは割愛しよう。合皮素材のリュックがパンパンになってしまったが、これでも必要最低限許して欲しい。


「じゃあ行こうか。ここから先は節約の為に歩きだけど、大丈夫かい?」

「ナメてんのか?…行くぞ。」


彼は先に部屋を出てしまった。僕も後から着いていく。

さて、これからどうしようか。出だしは順調だけど、これから先何があるか分からない。最悪の事態は避けないと…。懐に手を入れ杖を振る。


(肉体強化『physical strengthening』)


魔法を自分にかけると目の前を歩いている彼が勢いよくこちらを向いた。


「どうかしたのかい?」

「…魔力の気配がした。テメェだったのかよ…紛らわしいマネすんじゃねぇ!」


驚いた。彼は魔力の気配が分かるのか。これは悪魔と言うより獣のイメージだな。それよりも名前を呼んで欲しいな。


「僕の名前はテメェじゃないよ?アイと呼んでくれって言ったじゃないか。」

「うるせぇ。しつけぇんだよテメェはぁ。」


確かに少ししつこかった気もするがなるべく早く僕を名前で呼んで欲しいのだ。彼の距離を早く縮まらせる為に。彼に()を持って貰いたいから。そちらの方が都合が良い。僕達は荷物を纏めて玄関に向かった。止める者は誰も居らず、気にも留めなかった。彼はその事に訝しんでいたが僕がいつもの事だと説明したら、彼は追及するのをやめた。回復のポーションに衣類にお金、詰められる物は詰め込んだつもりだ。御父様の領地は馬車で進むがそこからは自分の足で歩かなければならない。今更ながら少し後悔した。


「ガラン。これから【平和の国】へ向かうよ。」

「平和だぁ?なんだそのクソみてぇな国は。」

「でも、実際平和なんだよ。犯罪確率は年間3%まで抑えられているし、自殺率なんて存在しない様な国だ。」


流石にここまできたらきな臭いが。彼は眼を大きく見開き絶句した。信じられない物を見た時の顔をしている。


「ハァア⁈んなもんありえねぇだろ!」


口を大きく開き叫んだ。牙が見え隠れしている。あんなものに噛みつかれたら一溜まりもないなとふと思った。

でも、実際にあるのだこうした国が。僕自身は行ったことも無いがそう言った事実が世界的にも功績として認められる。その【平和の国】の王様は史上最年少の15歳と言う人間離れした人間なのだ。普通有り得ない…しかし有り得ないと誰もが思った事が実際に起こる事は良くある話。そう考えると僕がこれからする事も、もしかしたらなんて思ってしまう。油断は禁物なのに。

そうこうしている内に馬車が止まった。降りると目の前には約10メートルほどの門がある。カントリーハウスによくありそうな、黒く鈍く光る門の前には二人の門番が居た。


「ガラン、着いたよ。」

「…ここか?」

「………うん。ここが【平和の国】の入口、国境だ。」

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