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落ちこぼれ

「ねぇ、二人とも。御父様は何処に居るか知ってる?」


するとメイドの一人はこちらを一瞬だけこちらを向いたがそっぽを向いてしまった。戸惑っている表情だったが、僕が落ちこぼれだからか無視されてしまった。悪魔が後ろに居るから脅しになるかと思ったのだけれど。結局何も聞けずメイド達は早歩きで去ってしまった。一連の流れを見ていた彼が口を開いた。


「…チッ…おい、今のどうゆう事だよ。」


ギロリと僕を睨みつけた。身長が高いからか彼の顔に影がかかっているせいか、赤い目がギラギラ輝いて見えた。威圧感が僕を刺す。その手にある立派な爪を隠しもしないで。これは無意識でやっているのか僕には分からなかった。…あぁ、面倒臭い。


「どうって…見た通りだよ。無視されただけさ。」


「今のは使用人だろ?なんで主人に答えねぇ。」


「君には関係無い。アレらは無害だから放っておいても大丈夫だよ。」


実際、彼女等は無害だ。例え何をして来ようと僕の計画に支障は無い。


「とっとと吐きやがれ」


余り言いたく無いのだけれど、ここで言わなきゃ後が面倒そうだ。別に隠す事でも無いし、いずれバレると思っていたしね。


「…僕はこの家の落ちこぼれだからね。皆から嫌われているんだ。まぁ、才能の無い奴に構っている暇は無いしね。」


「落ちこぼれぇ?んなのどうだっていいだろ。興味ねぇな。」


「この家にとっては重要な事なのさ。…とゆうか君が話せと言ったんだろう。」


でも、彼女達の気持ちも分かる。僕もそこら辺の屑や下衆に構うくらいなら豆を箸で取る作業の方がよっぽど有意義な時間になるだろう。

そうだ。部屋に着いたら彼に今後の事を相談しよう。悪魔の立場からの意見、中々に貴重だろう。

廊下を案内し、部屋の扉の前に着いた。木製の扉でビターチョコの様な色合いだ。少し古いデザインで、こういうのをレトロと呼ぶのだろうか。

注意するのを忘れたが彼は身をかがめて僕の後に入って行くと机の近くの椅子へ窓に身を投げるように座った。2メートルもある彼の重量に椅子は悲鳴を上げている。

僕はベッドの上に腰を下ろした。


「じゃあ、僕達のこれからについて話し合おう。」


彼が部屋のあちこちを物珍しそうに見渡していたので、僕は軽く手を叩くとこちらに意識を向けた。魔界では珍しいのだろうか?考えてもしょうがない訳だが。


「先程述べた通り僕は魔界に行きたいのだけれど、その為には各国の許可証が必要なんだ。それも…その国で"一番偉い人"から貰わないといけない。」


彼は僕の言っている事をちゃんと理解しているだろうか。"一番偉い人"とはとどのつまりある程度の地位と名誉が無ければ一目見ることすら叶わない。それに仮としてその偉い人が陰から操られていたり、反乱など各国の問題もあるだろう。奇跡でも起きない限りどうしようもないものなのだ。アポメントは到着時間が分からないから取れないし、第一そんな偉い人が一貴族(いちきぞく)を相手にすると言うのか。答えは否だ。


「僕の出発の準備は出来ているから…後は君の容姿だね。」

「…あぁ?」


彼はジロリと僕を睨み、ドスの効いた声で唸った。

僕は懐から杖を出し、一振りする。すると彼の体から一瞬だけ煙が出ると、そこには少し身長の高い若い男が立っていた。なだらかな銀髪にウットリしそうな真っ赤に濡れた目、肌は優しい小麦色をしていて全身から不思議なオーラのようなものを放っていた。禍々しい角に鋭い牙、獣の様な足に長い鉤爪は消えて無くなり代わりに美しい肖像画のような…それでいて可愛いぬいぐるみみたいな…はたまたどちらでも無い蜃気楼の様にあやふやな存在をした美青年だった。

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