プロローグ
ここ最近になって異世界転生、異世界転移といったファンタジー世界を舞台にした漫画や小説をよく眼にするようになった。そのほとんどがひょんなことから異世界に来たことを自覚して思い思いの冒険や生活、恋愛を繰り広げる物語りだ。それを僕は、「特別な存在になりたい。」「どこか違う新しい場所で生きたい。」といった作者や読者の心の顕れだと勝手に感じた。かく言う僕も、そんな特別になりたい思いを抱く1人の平凡な大学生だった。これは僕と僕の友人が異世界で成長していく物語。
「回路理論の講義内容マジでわかんねぇよ。単位落とす未来しかみえね。」
僕の隣で騒いでいる彼は僕が大学に入ってできた友人のワタルだ。二枚目で、フランクなその性格から交友関係が広いいいやつだ。
「授業中スマホばっか弄ってるからだろ。自業自得だ。」
いつものように茶化してワタルに言う。
「そういうハルタは講義の内容理解できたのかよ。」
「全ッ然。」
いつも通りの会話、講義終わりに二人並んで人混みの中を歩く。毎日繰り返される生活の一部だ。僕はこの代わり映えしない生活が苦手だ。幼い頃は気にもしていなかったはずなのに、いつからだろうか決まったサイクルを繰り返す生活が当たり前になり、それを享受する僕がいた。嫌いなはずなのに何も行動しないで黙って受け入れることが当たり前になっていた。
「なあ、次の土曜って暇?」
僕の思考を遮ってワタルが話題を振る。
「朝まではバイトだけど?」
「土曜の朝まで?じゃあさ、次の土曜の夜遊ばね?また面白い場所見つけたんだよ。」
毎日似たような日々を送っている僕には、ワタルの思惑に検討をつける。
「また心霊スポットか?」
「いいだろ別に。俺の趣味なんだからさぁ。」
そう、何を隠そうワタルはオカルトの類いが大好きなのだ。今までにも何度かワタルに連れ回されて心霊スポットを回ったものだ。
「一人でいけよな。俺暗いの苦手だし。」
「俺だって一人で行くのは怖ぇよ。それに今回のは心霊スポットではねぇんだよ。」
「それよりさぁ、Amazon`sの新曲聴いた?」
そうやって他愛ない会話をしながらいつものように帰路についた。後になって僕は、ワタルの話をちゃんと聞かなかったことを後悔することになるのだ。
処女作です。勝手分からず悪戦苦闘するやもしれませんが、楽しんでもらえたら何よりです。